リディアン音楽院の問題児   作:dedicates545

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 大遅刻でした•••


欠ける月

 

 

 

 少しだけ、ほんの少しだけ

 

 

 ヨセフの事が怖いと思ってしまった

 

 

 怒られたとかお化けとか、そういう怖さではなかった

 

 

 何というか、何か得体のしれないものに対する恐怖と似ている気がする

 

 

 それに唱歌の様子も少しおかしい

 

 

 おかしいというと少し自信がないのだが、妙に落ち着いているというか••あの凍りついた家を見ても、表情1つ変わらなかった

 

 

 唱歌は俗に言う‘‘視える体質’’だと言うので、あれくらいの事は日常的なのだろうか

 

 

 自分にはとてもじゃないが耐えられそうじゃない

 

 

 

「••••ラアルクちゃん••••ミラアルクちゃん?」

 

 

「あっ!はっはい!」

 

 

 

 今は村の商店が立ち並ぶ地区のレストランに向かっていた

 

 

 ヨセフが頑なに、‘夜は人がいる所に居たほうが良い’と譲らなかったのだ

 

 

 キルスティンの怪我の事もあるので唱歌は固辞していたが、家主がそう言っているので仕方なかった

 

 

 宿にはヨセフから連絡を入れると言っていたので、まずは食事という話になった

 

 

 

「•••ここにしましょうか」

 

 

「はい」

 

 

 

 小さなレストランだったが、平日の夕方だったので対して混雑はしていなかった

 

 

 老夫婦と20代くらいだろうか、作業着を着た男性が食事をとっていた

 

 

 

【•••••いらっしゃい】

 

 

 

 店主だろうか、カウンターの中から50代くらいの男性が声をかけて来た

 

 

 

【2人です••••••何か?】

 

 

【•••••••いや、奥の空いてる席にかけてくれ】

 

 

 

 壁際奥の席に腰掛ける

 

 

 

(うぅ•••まぁ全部フランス語だよね••••)

 

 

 

 残念ながらメニューは全てフランス語だった

 

 

 まぁ特に観光地では無いようなので致し方無い

 

 

 唱歌をチラリと見てみると、バチっと目があった

 

 

 

「読めないわよね、説明するから隣に座ってくれるかしら」

 

 

「•••すいませんいつも」

 

 

 

 申し訳無さそうにしているミラアルクを見て唱歌はクスッと笑う

 

 

 久しぶりに笑った顔を見たかもしれない

 

 

 料理はバッフ・ブルギニョンという牛肉の煮込み料理とガトー・ド・サヴォアというレモン風味のケーキを注文した

 

 

 料理を待っている間、聞けずにいた事を聞くことにする

 

 

 

「あの•••大丈夫なんですか?エルザのお母さん•••」

 

 

「そうね•••おなただけでも先にここから離れた方がいいかもしれないわね•••」

 

 

 

 大分間をおいて、唱歌はそう答えた

 

 

 一体何を言っているのか、質問とは全く違う答えが帰ってきたので困惑してしまった

 

 

 

「あの•••それはどういう意味で•••」

 

 

 

 ガシャン!

 

 

 大きな音に思わず驚いてしまった

 

 

 

「•••••••••••」

 

 

 

 テーブルの上には注文した料理と、あの無愛想な店主が立っている

 

 

 

【メ••メルシー••••】

 

 

 

 ミラアルクが知っている数少ないフランス語である

 

 

 なおも無愛想な店主は‘ジッ’っとミラアルクを見つめている

 

 

 

【•••••••••••あんた‘‘混じり者’’か?】

 

 

「?•••••あの•••」

 

 

 

 店主が何を言っているか分からないので、例によって唱歌に助けを求めようと視線を向けた

 

 

 しかし、視線の先には立ち上がり店主と対峙している唱歌の姿

 

 

 表情こそ穏やかだが、何か不穏な気配を感じる

 

 

 

【おぅおい!ビルぅ!なにやってんだよぉ!】

 

 

 

 店主の男の肩に手を回し、喋りかけてきたのはカウンターに居た20代位の男性であった

 

 

 右手には、ビールと思われる瓶を手にしている

 

 

 

【••ジャストル少し飲み過ぎだぞ】

 

 

【うるせぇよぉ、それより何かわい子ちゃんにガン飛ばしてんだよぉ】

 

 

【••••はぁ、分かったから席にもどれ

 

 ••••悪かったな】

 

 

 

 ビルと呼ばれた店主は唱歌に一瞥すると、カウンターへと戻っていく

 

 

 

「悪かったなぁ、あのおやじは料理の腕は一流だが無愛想でいけねぇ許してやってくれぇ」

 

 

 

 そう語るジャストルと呼ばれた男は、流暢な英語で話しかけながらミラアルクの肩に手を回している

 

 

 

「いえ••••あはは••••」

 

 

 

 完全に酔っ払っているようである

 

 

 呼気のアルコール臭がすごい

 

 

 

【ジャストル、いい加減にしておけ】

 

 

 

 そう言いながらビルはジャストルをミラアルクから引っ剥がし、カウンターへと追いやる

 

 

 

【なんだよぅビル、まぁいいかぁ•••またなぁお嬢さぁん••】

 

 

 

 カウンターについたジャストルはそのまま寝てしまった

 

 

 

【悪かったな••こいつはサービスだ】

 

 

 

 そう言われた事を唱歌から伝えられ、ジュースのようなものを差し出された

 

 

 後から分かった事だが、出されたジュースはオランジーナという物らしい

 

 

 日本でもたまに飲んではいたのだが味が違うので気が付かなかった

 

 

 フランスの物は日本の物と比べ甘さには劣るものの、炭酸が強く果肉がたっぷりと入っていて飲みごたえがある

 

 

 

「あの••さっきあの人なんていったんですか?」

 

 

 

 よく煮込まれた牛肉を頬張りながら聞いてみる

 

 

 

「聞きたい?あまり面白い話じゃないわよ?」

 

 

 

 そう言われてしまうと気が引けるが、聞いておかないとなんだがスッキリしない

 

 

 

「はい、聞かせてください」

 

 

 

 飲み物を口にして、一呼吸おいてから唱歌は話し始める

 

 

 

「彼は、あなたが綯血じゃないかって言ったのよ

 

 それに、あの単語はあまりいい意味で使われる言葉ではないの」

 

 

 

 そこまで話を聞いて、どうしても疑問点が残る

 

 

 100歩譲って綯血者を嫌煙したり忌み嫌うのは仕方ない、もちろんいけないことだ

 

 

 物心ついたときに父から1番最初に教わったことだ

 

 

 だが同時にヨーロッパでは未だに差別的な言動をする人がいるということ、悪しき風習だということを父から常々言われてきた

 

 

 日本ではほとんどそういう差別は見られない

 

 

 世界を見ても非常に稀なことだ

 

 

 そしてなにより自分は綯血でもなんでもないが、どこで綯血と判断したのか

 

 

 それを唱歌にたずねようとしたその時であった

 

 

 

 

 プツッ!

 

 

 

 

「へっ?」

 

 

 

 突然目の前が真っ暗になってしまった

 

 

 キョロキョロとあたりを見回すと、窓から月明かりにてらされた場所はぼんやりと視認できた

 

 

 停電だろうか?窓際に移動し外を見てみても、あたりの商店や民家からは明かりが確認出来なかった

 

 

 そして、この暗闇をわずかにてらしている月の方へと何気なしに視線を向ける

 

 

 

「•••••••••何•••あれ••」

 

 

 

 ミラアルクの目に映るそれは、4方を砕かれまるでひし形のような形になった、奇怪な月の姿であった

 

 

 

 

 

 

 






 オカルトやホラーは好きな方です••


 ジワジワお気に入りにしてくださる方がいて嬉しい限りなのですが•••


 楽しんでもらえているのか不安なところです•••


 なるべく定期的に投稿します••


 何かあったら聞いてください••
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