あけましておめでとうございます
雪音クリスは悩んでいた
どうすれば謳歌を学院祭に参加させる事が出来るのか
「みんなで頼めばきっと出てくれるネ!」
そう言うのはクラスメートの王苺音
「メイインさん?それで出てくれるならこんな苦労はしていないのですよ?」
冷静にそう諭すのは、イングリット・アレクサンドラ・グリクスブルク
愛称はイリーシャである
「イリーシャさんの言う通りね、そもそも開催期間まで謳歌さんを捕まえられるかどうか・・」
そう懸念の色を示すのはアレクサンドラ・エカテリーフォン・クロイツェル
こちらの愛称はエリーシャである
「そもそもどうしてこうも出たがらないのだろうね、
そこの所どうなのよクリス」
「・・・ただのわがままだろ!最終的には私が何とかする」
アイーシャ・アル=ガイスの問にやや投げやりに答えるクリス
ちなみにアイーシャは愛称ではなく本名である
威勢よく答えたは良いものの、本気で嫌がった場合どうしたものかとクリスは頭を抱えていた
これでも昔に比べたら授業には顔を出すようになったし、突然居なくなったりすることもかなり減ったのだ
たとえ居なくなっても、大概の場合 学院図書館かウェル先生の所に居たので探し出して連れ戻すのは簡単なことだった
「亜夜、そういえばクロエ達は?」
委員長の中島亜夜はクリスにそう尋ねられると、ため息混じりに眺めていた携帯から視線を外す
「なんでも迷ったみたいね、ウォルトに案内を頼んだって」
非常に広大なリディアン音楽院で、迷子は珍しいことでは無かった
総面積10.6km2、敷地内に飛行場や病院に様々な商店が立ち並んでいる
それだけ広ければ移動に難があると思うかもしれないが、校内を走る路線バスに、極めつけには敷地内を循環する地下鉄もあったりする
「亜夜、念の為確認ですが ''社''の方へは近づいてないのね?」
「大丈夫よ、そう言うと思って1番最初に確認済」
近衛文絵はそう聞いてふぅ..と少しばかり息をふく
''社''とはリディアン音楽院の約3割にあたる面積を占める北東に広がる広大な森の事である
周囲を巨大なしめ縄、もとい八丁標に囲われたその森は、どこか不気味な雰囲気を醸し出しており、立ち入りが厳しく制限されている
立ち入れるのは、皇族と摂家の当主とその子供、そしてわずかな神職関係者のみである
学院ができた頃に1度、一般の生徒が立ち入って呪われたとの噂もあり、生徒たちの間では畏怖を込め''黒い森''と呼ばれている
亜夜は自分の手元から教室を一瞥すると、安堵の表情でクラスメート達にこう伝える
「みんな朗報よ、ソフィー達が謳歌ちゃん見つけたみたい
今正門に飛んできたって」
「瞬間移動能力者・・・」
思わずそうつぶやいてしまった
「えぇ、初めてご覧になりますか?」
「あっ、はい・・ごめんなさい
少しビックリしちゃって」
ミラアルク自身、能力者にはいくらか会った事があるがテレポーターは初めてである
「でもすごく便利そうですね、この学校広いから楽そうです」
「えぇ、ただ残念ですが校内ではテレポート出来ないんですよ?」
「超能力対抗装置があるからね」
「ECM・・・ですか?」
あまり良く知らないが、能力者の能力を制限するものだっただろうか
「あぁ、何も全く使えないとかそういうものじゃないからね?」
「えぇ、どちらかと言えば外からの侵入に対するものですもの」
「それにエスパーの皆さんには
超能力対抗対抗措置装置が配られているので、緊急事態の場合は生徒のみが能力を行使できます」
つまり外からの防御は完璧という訳だ
「そういう事、じゃあ私はここらへんで」
そう言いいながら、謳歌はきびすを返してこの場から離れようとしたが、首根っこをガッシリとソフィーに掴まれる
「お待ちなさい!何をどさくさに紛れて逃げようとしてますの!」
「まぁまぁ、後で教室顔出すからさ」
「そう言って来た試しが無いからこうしてるのです!!!」
「いやうるさ・・・・ん?」
そんなやり取りをしている2人に、かすかに声が聞こえてきた
「おーい、あけてー」
微かだが、確実に人の声である
それも2人には聞き覚えのある声だ
「ねぇ・・クロエの声が聞こえる気がするんだけど」
「わたくしにも聞こえていますわ・・・」
2人はそのまま耳をすます
「ここだよー、ここー」
やはり間違いない、どこからか声が聞こえてくる
「わたくしの聞き間違いでしょうか・・・
このマンホールからクロエさんの声が聞こえる気が・・」
「同感だよ・・・・」
2人の表情を一言で表すのならこの言葉がピッタリだろう
´´またかぁ・・´´
「謳歌にソフィーだ、やっほー」
開けたマンホールから出てきたのは
クラスメートのクロエ・ノーブルであった