「一大事デース!!」
「うわ! どうしたの? 切歌ちゃん」
切歌が突然大声をあげる
「マリアが帰って来るデス!!」
「本当!? 良かったね切歌ちゃん!」
マリア・カデンツァヴナ・イヴは風鳴翼、天羽奏と並ぶリディアン出身のトップアーティストである
現在アメリカで風鳴翼、天羽奏と共に活動している
「でもよく休みが取れたね、忙しいのに」
未来が発言する
「翼さんと奏さんも近いうちに一旦帰ってくるって書いてあったデス!」
「本当!? 楽しみだね!」
切歌は思い出したように言う
「こうしちゃ居られないデス! 調にもこの事を伝えて来るデス!」
「あっ! 切歌ちゃん!?」
切歌はそのまま行ってしまった
「調ぇ! 一大事デース!!」
切歌は勢いよく寮の部屋のドアを開ける
「うわっ! びっくりした……」
部屋には謳歌が居た
「なんだあなたデスか……調は居ないんデスか?」
「調ちゃんならエルフナインちゃんとキャロルちゃんと一緒にお買い物だけど……」
謳歌が答える
「そうデスか、調は居ないんデスか……」
「良かったら部屋で待つ……?」
謳歌が提案する
「変態と2人っきりなんて御免なのデス!」
切歌は食いぎみに拒否する
「そ、そうだよね……」
「当たり前なのデス!」
沈黙の後、切歌は異変に気づく
「? どうしたデスか……?」
謳歌が固まって動かない、よく見るとポロポロ涙が流れている
「!? な、何で泣いてるデスか!?」
「ご、ごめんね? 何でも無いから……」
謳歌はそう答えるも、涙は止まらない
「ごっ、ごめんなさいデス! 私が強く言ったからデスか?」
「ちっ、違うのっ、切歌ちゃん、の、せいじゃっ、ないっ、からっ」
謳歌は益々ぼろぼろ泣いている
『ただいまー』
調達が帰ってきた
「切ちゃん? 何してるの……? !?」
調が目にしたのは、ぼろぼろ泣く謳歌とあたふたしている切歌の姿であった
「しっ、調!? 違うんデス! これには訳が!」
切歌が慌てて調に言う
「一体何があったの!?」
調は謳歌に駆け寄る
「わ、分からないのデス! いつもの調子で話してたら急に泣いてたデス……」
困惑する一同、そこにクリスが現れた
「遅かったかぁ……」
「クリス先輩? どうしてここに……」
クリスはゆっくり謳歌に近づくと、あやすような口調で語りかける
「大丈夫だ……大丈夫だから……」
そのまま謳歌を抱きしめる
「ごっ、ごめん、なっさいっ、ごめんなっ、さいっ」
謳歌は泣きながら言う
「大丈夫……大丈夫だ……」
謳歌が泣き止むまで、暫くの時間を要した
「本当にごめんね……」
謳歌は一同に頭を下げる
「あの……本当にどうしたんですか……?」
調が尋ねる
「うん……不定期でなんか涙もろくなっちゃうんだよね……」
「確か高等科にあがった位からだよな?」
クリスが尋ねる
「うん……確かそれくらいだったと思う……」
謳歌が答える
「一回お医者さんに診てもらった方が良いんじゃないデスか……?」
「いや、ウェル先生に診てもらった事あるんだけど、多分ストレスだろうって……」
「あの医者の言う事真に受けて大丈夫なのか……?」
キャロルが怪訝そうに言う
「とにかくよくあることだから……ごめんね迷惑かけて……」
「お前らにそれを伝えようとしたんだが……間に合わなかった」
クリスと謳歌は申し訳なさそうにしている
「分かりましたけど……次からはちゃんと私達にも伝えておいて下さい、ビックリします……」
調が言う、すると思い出したように切歌が言う
「そうデス!調!一大事デス!!」
「マリアが帰って来るんでしょ?」
調が答える
「どうして知ってるデスか!?」
切歌は驚き尋ねる
「切ちゃん……私にもマリアから連絡は来るから……」
「よく考えてみればそれもそうデス!」
切歌は納得したように答えた
1週間後、とうとうマリアが帰って来る日である
「なんだか緊張するのデス!」
部屋に装飾を施しながら、切歌は言う
「そうだね、久しぶりだもんね」
料理を作りながら、調も切歌に同調する
「ていうか私は居て良いのかな……?あんまり接点無いのに……」
「そこそこ知り合いなんだから良いだろ」
謳歌の問いに、クリスが答える
「謳歌さん、お祝い事は大勢の方が楽しいですよ(^-^)」
「エルフナインの言うとおりだ」
キャロルはエルフナインに同調する
「わぁ……!おいしそう……!」
「響?つまみ食いしちゃだめよ?」
響は所狭しと並べられる料理に、目を輝かせる
(やっぱり私は場違いなのでは……)
正直謳歌はあまりマリアと話した事はなかった
クリスが仲が良かった為よく一緒に行動していたものの、特別仲が良いと言うわけではない
(やっぱり何か適当に理由つけて、参加は遠慮しよう……)
謳歌がそんな事を考えていると、部屋をノックし扉を開ける音が聞こえた
「失礼するわ、……皆久しぶりね」
「マリアデース!!」
謳歌が出ていく前に、マリアが到着してしまった
「クリス、あなた全然身長伸びてないわね?」
「うるせぇ!余計なお世話だ」
皆思い思いの言葉をかけている
(あぁ……やっぱり参加しない方が良かったかなぁ……)
謳歌は少し離れた所で見ていたが、ふとマリアと目があい、とりあえず会釈をすると、マリアはにこやかに笑顔を返した
「お腹空きました!早くごはんにしましょう!」
「あなたも相変わらずね」
響の発言に、マリアは微笑む
「それじゃあ乾杯デース!」
『乾パ〜イ』
切歌の音頭で乾杯し、パーティーは始まる
「でもよく休みが取れたねマリア?」
「えぇ、丁度財団の日本支部に来なければならなかったのよ」
マリアの出身であるウクライナは、親欧派と親露派の対立が激化し、首都キエフにて親露派の大統領の改憲に対し、弾劾を求めるデモ隊と治安部隊との間で衝突が起き、多数の死傷者を出す事件があった
その事件により大統領は失脚し、後に民間人殺戮に対する“人道に関する罪”により、国際刑事裁判所により国際指名手配された為、ロシアに亡命したとされる
その後親欧派による新政権が樹立させるも、新露派が多数を占める東部で抗議デモが多発し、3つの地域でウクライナからの独立が宣言された
政府側は独立を認めず、デモ隊鎮圧の為に軍を動員したが、独立を支持するロシアが軍事介入し、ウクライナ東部で紛争状態に陥った
多くの難民が発生し、また陣営問わず、医療施設や民間人が攻撃される被害が報告されている
マリアはこのような状況を憂い、財団を設立した
寄付金や、自らの収益を紛争被害にあった人々の為使用し、支援を続けている
「でも本当に懐かしいわ、先生方もお変わり無い見たいだったし」
パーティーを始めて暫くたった頃、響がふとマリアに尋ねる
「マリアさんって何で歌手になろうと思ったんですか?」
「あっ、それ私も聞きたいと思ってたの」
調も同調する
「いいけど、あまり面白い話じゃないわよ?」
『大丈夫です』
一同の了承が取れた所で、マリアは語りだす
「まず、私の母と祖母はキエフのプリピャチというところに住んでいたのだけれど……大きな事故があって今は入る事が出来なくなっているわ」
「大きな事故?」
皆ピンと来ていないようであった
「プリピャチって事は……避難されたんですね……」
謳歌だけは、そこで何が起きたのか理解していた
「あら、詳しいのね?えぇ、その通りよ」
マリアは少し驚いたような素振りを見せたが、続ける
「色々な所を転々としたと聞いているわ、それで最終的にたどり着いたのが、クロアチアのプレヴラカという所よ」
「えっ……大丈夫だったんですか……」
謳歌は尋ねる
「本当に詳しいのね?えぇ、母達が来たときにはもう既に停戦していたらしいわ」
クロアチアのプレヴラカ半島は隣国、旧ユーゴスラビア連邦共和国との境界にあたる地域である
クロアチアは旧ユーゴスラビアからの独立を求め、紛争に陥っていた
プレヴラカ半島は両国の軍事戦略上重要な地域であった為和平協議の際、緊張緩和の為非武装化された地域である
「プレヴラカに着いて直ぐに祖母が、その2年後には母も亡くなってしまったの、2人とも癌だったわ」
一同静かに話を聞いている
「私達は孤児になってしまったのだけれど、その時面倒を見てくれたのが日本人のご夫婦だったのよ
そのご夫婦に日本語と英語、そして歌を教わったの
奥さんがよく口ずさんでいた歌があってね?私達姉妹はその歌が大好きだったわ」
「マリア!聞いてみたいデス!」
切歌がリクエストする
「そうね……少しだけよ?」
マリアは静かに歌い始める
「♪〜〜〜〜」
(何だろう……すごく懐かしい感じがする……)
謳歌は歌を聞きながらそんな事を考えていた
「とっても綺麗な歌だね響……」
「そうだね未来……」
皆思い思いの感想を口にする
「その後日本に行ける事になってこの学院に入学して考えたの、私の歌で苦しんでいたり悩んでいる人を勇気づける事が出来ればって、これが私が歌手になった理由よ」
「良い話だね」
調が言う
「それじゃあマリアさんが歌手になったのは、その日本人のご夫婦の影響が大きいんですね」
「えぇ、私達にとってあのお2人は恩人だわ、たしかお名前が……珍しい書き方をする名字なのだけれど……」
マリアにキャロルが尋ねる
「どんな字なんだ?」
「えぇ、確か……」
マリアは紙に字を書いていく
「こう書いて“謡詠吟〔うえぎ〕”って読む方なのだけれど……」
「嘘……」
謳歌は、全身が総毛立つような感覚を感じた
難しいお話になってしまいました・・・
なんかもう全然コメディじゃなくて
申し訳ないです・・・
次回も頑張ります・・・
ご指摘、ご質問、感想等々、何でも構いません、
お寄せ下さい
新しい作品書いても良いですか・・・?(詳細は19話あとがきをご覧下さい)
-
良いよ
-
だめ