無限の蒼穹に雷鳴は轟く IS× THUNDERBOLT 作:サンボル好き
今回で終わる予定でしたが思いのほか終わらなかったので、前後編です。
それではどうぞ。
夜が明ける。
曇りがかった空にわずかだがほの暗い明るさが広がっていく。わずかに湿った空気の音がどこか不気味さすら感じさせる。
「……さ、時間ね。」
切り立った渓谷の小道でミラたちは後続からの補給物資と人員を補充する。大型トラックで五台、なかには精鋭の兵士たちが並び、その装備も先の戦いのモノと違い、最新鋭の火器、重火器を備えた抜かりない状態だ。
…裏側の部隊も配置済み、ガスは受け取った。内部に侵入し、地下を毒漬けすれば万事解決。晴れて仕事は完了
「けど、やっぱり面白くないわね。」
渓谷に待機したトラックの中、待機状態のISを背にミラはそう愚痴をこぼす。
「…ですが、これでよいのでは。工作員を一人残したおかげで奴らは内部分裂、ここまで音沙汰無いのなら籠城でしょうね。それならこっちの仕事は簡単に済む。それでいいではないですか」
スキンヘッドにゴーグルをつけた兵士、慣れた口調から部隊の中で高い地位にいるのだろう。隊長と呼称するミラに対し、比較的砕けた態度で接している。
「バカ、死ね。そんなねちっこい仕事がしたくて、私はISに乗ってなんかいないのよ。」
「物足りない。なら、途上国の対ゲリラ部隊とか考えなかったんですか。遊びたいなら、いっそああいうのが」
「……あれは飽きた。老人と子供殺してアクメ決めれるほど安いビッチじゃないのよ。こっちはね、もっと荒々しくて、こっちの命も天秤にかけるぐらい、そうじゃないとイけないのよ。わかる?」
露出の多いISスーツを着てるせいで、その健康的な肌や豊満なふくらみを惜しげもなく晒し、はたからみればなんとも蠱惑的な姿を映している。
言動やしぐさも見て聞く者の劣情を刺激してやまない。ただし、この場でそんな思いを行動に起こせばその指の引き金で昇天されることに違いない。
「……なるほど。とりあえず隊長が欲求不満だということはわかりました。自分はこれから部屋に鍵を閉めることを習慣にします。」
「なによ、本当に人を年中濡れ濡れのビッチみたいに、言っとくけどあんたみたいなタートルヘッドに貫かせる膜なんて一枚もないから。勘違いしてっとほんと埋めるから」
「……丁寧に埋葬してくれるだけ、自分はまだましということですかね。」
「あら、よくわかってるじゃない。…あ、そろそろ時間ね。先行部隊はどうなってるの」
「ええ、もうそろそろ正面ゲートに…」
ズダダダダダンッ!!!!?!?!?
「!!…銃声」
「あ~ら、やっぱりそうよね、そう来なくっちゃやりがいが無い!」
女が背に置いたISに叩きつけるように手を置くや全身が鈍い光に包まれ、全身が宵闇の装甲に包まれ一回り大きな姿に変わる。
「さあ、戦争の時間よ。撃たれて死ぬ最後の時まで
……私の、私たちの遊びは終わらない!!
〇
最初の戦端はEOSの銃撃によって開かれた。
「おらぁあっ!!元軍人をなめんじゃねえ!!!!」
「はっはぁ!こっちだって元世界の警察だぜ!!」
正面から颯爽と現れた二機のEOSは敵の先行部隊を一瞬で動かぬ死体に変え、さらに後続に並ぶ装甲車と歩兵に圧力をかける。
開かれた地形とはいえ、緩やかな傾斜と、無駄に掘られた採掘跡が自然の塹壕として機能する。正面二機のEOSを前線に、後方の塹壕に歩兵を展開させて射線を張る。緩やかな傾斜の上方に位置を取る地形が堅固な防衛網として機能する。
歩兵を半円状に展開し、EOSによる遊撃で敵をかく乱する。最初の流れはこちらが掴むことに成功した。
「おらっ、昨日の恨みだ!!鉛玉食らって死ね!!」
両手で斜に構えて斉射するEOS用のガトリング機関砲、後退する敵の装甲車が一瞬で鉄くずに変わり、エンジンに引火して空叩く黒煙が昇る。
「クソ、腕なし共がっ……ガハっ!」
「ひっ…!に、逃げ……!!」
逃げ惑う歩兵たちに降りかかる歩兵の銃撃、後退しながら斉射を続けるも身を隠すすべもない敵兵は成すすべなく一方的にハチの巣にされていく。
ダリルたち鉱山側の勢力はそれほど多いものではない。襲撃で犠牲者が出たのが大きく、まともに戦える兵士となると敵勢力の半数にも満たない。しかも、うち半分以上は裏側で内部の侵入を防ぐべく別に防衛網を築いている。故に正面はEOSと選りすぐった兵士による少数精鋭。尋問で得た情報から敵がガス兵器なる手段を持つと聞き、籠城の手段が取れないと知った今彼らの取る戦術は最前線での専守防衛であった。
……後ろに歩兵が10人、EOSが二機。だが、存外悪くねえ。このまま押し切って大将を引きずり出すか…!
戦場の趨勢を決めるのはISであり、それを互いに所有する戦いとなればどちらが先にISを倒すかで決まる。しかし、互いにまだジョーカーは握ったまま、はした数字と絵札を切るばかり、このままいけばEOSと歩兵で押しとどめられる。だが、戦局はそう簡単に思い通りになるものではない。
「!!…ショーンッ」
「!」
フィッシャーの掛け声むなしく、ショーンの機体に何かが炸裂し小爆発が起こる。射線の先、EOSの装甲に泥を付けた相手は
「クソッ!!あっちにもあんのかよ、EOSがよぉ……!」
眼前に並び出る四機のEOS、腕部と背部から伸びるサブアームにそれぞれ四枚のシールドを搭載した重装甲タイプの装備、全身を覆う装甲が堅牢さと重圧感に身がすくんでしまう。
「う、撃て! 撃てぇっ!!」
歩兵から放たれる機銃と炸薬弾の連射、だが敵は何事もないかのように装甲と盾で跳ね除け歩を進める。
「硬い! フィッシャー、回り込んでくれ、盾の外から狙いを…」
「バカ、戦線を壊してどうする!広げた隙に突っ込まれたらそれこそ思うつぼだッ!!」
鉱山内の侵入を許せば中にいる負傷者と非戦闘員はなすすべなくやられる。故に、フィッシャーたちはここを死守せねばならない。
塹壕で身をかがめ、敵の強烈な射線から身を隠す。
……くそ、これじゃあじり貧だ。どうする、このまま撃ち合いしてりゃあいずれすりつぶされる。なら、いっそ接近戦で
腰に帯刀した近接武器、ヒートホークに手が届きそうになるが…
「いや、ダメだ。敵のISが出てくるまでは粘らねえとな。」
機関銃のトルクが回転する。身を乗り出し、行進を進める敵目掛け鉛玉の雨を降らす。
ズガガガガガッ!!!!
「おらぁあっ!!このフィッシャー、一度任された約束は死んでも破らねえぞ!!!」
鉛と火薬の音が轟く戦場という舞台。戦局は依然硬直状態だが、高所に陣取り防衛線を張る鉱山側の守りは堅牢である。敵の重装甲EOSも集中した砲撃に攻めあぐね、前面に展開した盾をすて、背部に背負った予備の盾を展開する。
「よし、効いてるぞ……!」
「いや、まだだ!無理に攻めない、あくまで引きずり出す……!あいつの言葉を忘れるな!!」
〇
時間を戻して、戦端が開かれる少し前
「…戦いのメインは正面ゲート前の地上プラントだ。敵が来るなら正面からだろう、今一番奴らが警戒しているのは町への逃亡を許すことだ。敵が暗躍しているならまず他国でこんな大きな騒動を起こせない。」
だから、町外れの鉱山地帯で戦端を開いたのだろう。多少の戦闘音も発掘作業の轟音とでごまかせる。そういう狙いだ。
「……ええ、では、正面から突破して町を目指すと……」
「けど、敵にはISがある。強行突破は最後の手段だ。ここにはまだ大勢の生存者がいるし、全員が生き延びるならやはり敵のISを無力化するのが絶対だ。」
そして、それは敵も同じことが言える。
敵が警戒しているのはピンポイントの狙撃、盾で防ぐことが出来なければ敵の軽装甲はすぐに絶対防御を作動させ、エナジーの多くが一瞬で溶かされる。だが、逆に言えば要はその一発さえ凌がれてしまえばこちらの負けだ。正面からの戦いではまず対抗策を持った相手にかなう見込みは薄い。
「…作戦は基本的に防衛だ。EOSと歩兵で戦線を張り、敵のISが出ればセシリアの狙撃で倒す。フィッシャー、だからむやみに攻め込むのはなしだ。敵歩兵に攻め入られる隙が出来てもセシリアはバックアップに回れない。慎重な戦いを心がけてくれ。」
「わかった。あとでショーンにも伝えておく。けどよ…お前さんはどうするんだ」
起動できるEOSは二機、ダリルが登場していた機体は近距離の成形炸薬の爆破に煽られ、その装甲のほとんどが使い物にならなくなっている。
駆動こそ可能だが、生身を危険にさらしては意味が無い。だが
「いや、俺はあれを使うよ。スナイパーには引き金と目があれば十分だ。」
「…スナイパー、お前さんが援護をしてくれるのか。」
「……いや、俺はタイミングが来るまで戦場には参加できない。だから……」
〇
「…だから、俺たちが代わりに敵を食い止める!敵のISが出てくるまで、ここは死守してやるぜ!!」
射線を集中する。全体を対象に弾幕の面積をコントロールする。敵の盾は流線型で面積が広い。だがその大きな盾故に携行した火器をうまく取り扱えないようで、したがって砲撃に晒されている間は敵の射線はろくにこちらを向かない。
「はっ、素人が‼密集陣形なんざ時代錯誤だろうが!!」
もちろん、弾幕を散らそうと敵も散開しようとするが、左方に位置するショーンの射撃によりL字に囲んだ火線が敵の機動力を奪う。
「ははあっ!押し込めてる、押し込めてるぞ!!」
左腕部のバルカンと右手のドラムマシンガン、連射レートの違う機銃をうまく操り、絶え間なく弾幕を維持する。マガジンを輩出し、腰部のドラムマガジンを取り出そうとした時
「……ッ!!」
瞬間、ショーンがいた場所に爆発が起きる。瞬時に後ろに引いたゆえに直撃はしなかったが爆破のあおりを受けシステムに一時的な麻痺がおこる。
「重火砲、この威力……!」
ノイズが走るバイザー越しの光景に、ショーンは砲撃の相手を拡大して除く。
「!!?……あいつは」
敵のEOSのうち、重火砲を構えた一機が前線に乗り出し、盾を前面に展開して銃弾の雨を強引に進む。
「はっ…いい的だ!そんなでかいだけの銃でいったい「フィッシャー、下がれ!! そいつは…」
背部のサブアームから放たれる二門のパンツァーファウスト。対戦車を想定したその威力は折り紙付きであり、大抵の装甲であればたやすく高濃度の熱破壊によって一瞬で吹き飛ぶ。ましてはそれに特攻を仕掛けるなどまずもってのほかだ。
だが、それは敵がEOSの場合の話だ。
ドォオオオォオオオンンッ!!!!!!!
弾頭が炸裂し、爆炎が二機を包む。視界こそ見えないが、手ごたえは確かだ。
「や、やったか……!!」
勝利を確信する。敵の一角をつぶし、気を許したフィッシャーの口からは禁句が飛び出る。
「違う、早く引け!!そいつはあい」
ズダアンッ!!!
「!!」
腕が宙を舞う。強烈な衝撃と共に、右肩より先の感覚がいきなり途切れる。
「あら、ネタバレが早くないかしら。」
装甲などまるで意味が無いのだと。ISにのみ許されるPICの慣性制御によってのみ撃てる、超反動の超火力砲撃、ラファール用長距離重火砲ガルムの一撃は容赦なくフィッシャーの右腕をたやすく消し飛ばした。
「なっ、なにぃ!?」
「フィッシャー、今助けに「来るな!!」
助けに向かおうとした瞬間、フィッシャーの呼び声で体が静止したと同時に
「くっ!」
ショーンが身を乗り出そうとした先の空間に砲撃が行き交う。フィッシャーの重火砲の支援が無くなった今、敵の残りのEOSは砲撃を再開、更に後続からは歩兵までもぞろぞろと流れてくる。
「!?……おい、ショーン!!」
「このままじゃ、押される!!頼む、援護を……!!」
後方から飛び交う悲鳴のような要請、それは無視できない。…だが
「くっ、フィッシャー……!!」
「く、くそがぁ!!」
「……。」
EOSの装甲がはげ落ち、体が次々にISの装甲に切り替わる。夕闇のボディをその身に纏い、何もない両肩のサイドにアンロックユニットのバインダーが出現する。象徴のように浮かぶ羽のように広がる四対の装甲。
「はぁ…。やっぱEOSは窮屈ね。胸がつっかえて苦しいっつうの」
「くっ……!」
残ったフィッシャーの左腕を掴み、重厚な機体を軽々と持ち上げる。装甲がきしみ生身の腕にかかる痛みの圧迫感が恐怖を増加させる。
「……ッ!!」
「ほら、動かない方がいいわよ。手元が狂うから」
左わき下に刃が伸びる。ほんの少し、軽く上に振るうだけでその刃はたやすく左腕を肉体から引き離す。
「……女、何のつもりだ!」
「?…何のつもりって、そんなの」
女の顔が耳元に近づく。どこか色気のある、けれども一切の情も無しに
「貴方の左腕……それも切り落としたら、あの子は出てくるかしら?」
「……っ!!?」
戦場の趨勢はISの勝敗で決する。故に、たった一発の狙撃のチャンスを失ってはその時点でこの戦いの結果が決まる。敵はそれを理解して、その上で生きた盾を握っているのだ。
……こいつ、俺を餌に…!!
「ほら、貴方の大事な腕。このままだと切っちゃうわよ。嫌なら……どうすればいいか分かるわよね。」
「……ッ」
「あのお嬢様はどこにいるのかしら。ほら、目線をむけるだけでいいから。そうすれば後は私が偶然見つけただけ。貴方は裏切り者にならないし、特別に生かしてあげる。悪くない取引でしょ。」
淡々と告げる交渉の誘い。正直、今すぐにでも飛びつきたいほどのその言葉に、フィッシャーは……
「………取引、ねえ」
ゆっくりと、顔が横に向けられ、視線を北東の方向に向ける。フィッシャーの視線を追おうと、ミラの視線が横に向いた瞬間
「!」
バックパックのサイドアームが伸び、生きた蛇のように敵に目がけて食らいつく。
……断りだ、死ね!
開いたアームの中央から伸びるプラズマの青白い刃、追い詰められた最後に放つ超近距離専用の隠し武器が敵の喉元めがけて突き穿たれる。
「……」
「なっ! かはっ!?」
しかし、追い詰められた窮鼠の一撃は一瞥されることなく最小限の動きで躱される。サブアームは引き千切られ、豪腕が胸ぐらを鷲掴み刃の切っ先が自身の顔に向けられている。
「うぐぁ……」
「……ッ」
冷酷に、ミラはフィッシャーの首がみりみりとひしゃげていく装甲で圧迫される。酸素がうまく頭に回らず、意識がぼやけていく。
「……生かしてあげる、それは嘘じゃないわ。クライアントの依頼ではあるけど別に一人ぐらい死体が見つからなくてもどうとでもなるの。」
「………か、はぁ…」
甘い誘惑だ。死を目の前に突き付けられ、うかつにも思考が楽な道を選ぼうとしてしまう。
「……たす、かるのか」
「ええ。…貴方が協力するなら私には生かす義理ができる。あなた一人なら全然余裕よ。だから……」
「……ああ、なら」
「………」
「
「……そう、じゃあ」
刃を後ろに引く。下したわけではない、限界まで引いた刃を渾身の力で振りぬく。
…死ね。と、最後の言葉を言い切る前に極刑が下される。首がはねられる、そのビジョンが目に浮かんだ、その時
「!!?」
ミラの刃をふるう手を青い閃光が貫く。高出力で放たれたその一撃は絶対防御が作動する前に装甲を焼き、わずかに素肌が表面に露出する。
「―――ッ!!!?」
フィッシャーを捨て離し射線から退く。時間にして一秒もない時間だが、乾坤一擲の放射はミラの左腕に痛ましいやけど跡を残す。
「くっ!? やって、くれるじゃない!!……けど」
射線の位置を捉える。ハイパーセンサーは疾く離れた岩山の畝に立つセシリアの姿を鮮明にとらえる。射程距離、銃口の位置もすべて把握。
「晒したわね。さあ、切り刻んであげるわ!!!」
スラスターを全開に、空中を飛び一瞬で高速に達するISに地上の兵士たちはただ無為に仰ぐしかできない。
「お嬢ちゃん、逃げろ!!? スナイパーが位置をばらしたらおしまいだ!!」
「馬鹿野郎、他人の心配してる暇か!! 早く下がれ!!!」
「!!」
眼前に迫る敵のEOS。二機のEOSがショーンを抑える隙に、先にこちらのとどめを刺す算段なのだろう。シールドの隙間から機銃の銃口を向ける。
……クソがッ!ここで、終わりなのかよ……!!
銃口からマズルフラッシュが瞬き、装甲を鉛玉が貫かんとするその瞬間
「フィッシャー! 大丈夫か!!」
「!」
敵のEOSを貫く別方向からの射撃、その主は
「は、班長」
「ああ、どうやらいいタイミングだったみたいだな。」
班長の身を包むEOS、どうやら作業用のEOSを改造し、装甲を付け火器を使用できるようにしたものなのだろう。
「……ショーン、そっちは大丈夫か!」
「はあ、なんとか……。というか、俺二機倒したのに、誰も見てないとか……」
ショーンの眼前に倒れ伏した二機のEOS。ショーンの機体の手から伸びる鞭が巻き付いており、どうやら高電圧を流す兵器で一気に倒したのだろう。機体はバッテリーが切れたのかその場でしゃがみ込み動くことができないようだ。
「すまんな。だが、ひとまずは休んでおいてくれ。こっちは、俺らで片づける」
EOSは倒した。だが、敵の歩兵は健在で、その手には対戦車ミサイルや対EOSに使える重火器を持ち、ずらりと待ち構えている。
「たく、ここを突破できたからって、嬢ちゃんがやられちゃあ意味がねえってのに。」
「……セシリアの嬢ちゃんか。」
作戦はセシリアの狙撃による不意打ち、それが失敗してしまった今勝つ確率はこの上なく薄い。万一ここを突破しようと、肝心のセシリアがやられては意味が無いのだ。
「……なあ、班長。ダリルの奴はいったい」
出撃前に言った、自分は戦えない。結局その意を最後まで聞くことはできなかった。何か策があるのか、保険と言っていたが、結局その方法とは
「…フィッシャー、お前さんの不安はわかる。けど、あいつが作戦を言わなかったのは必要だからだ。そして、なによりあいつは俺たちを信頼した。」
「………」
「なら、迷う必要はねえ。ともに飯食って、汗をかいて、そして今同じ戦場に身を置くあいつは間違いなく戦友だ。なら、ごちゃごちゃ考える必要なんざねえ。違うか」
「………はっ、なるほどね」
不安が消える、気が付けば表情は緩み、こんな絶望的な状況であるのに自然と同胞わら氏がこみ上げる。
「ああ、違いねえ。まったくもってその通りだ!」
残った左腕で機関砲を持ち上げるサブアームを伸ばし、グリップを握り照準を定める。
……たくよ。お前さんを拾って一か月、それがまさか命をたくせる戦友になるなんてな。人生はおもしれえ。
「ダリル、頼むから生きて帰れよ。曲の趣味が合う奴には死んでほしくねえんだ……!!」
銃声が鳴り響く。戦局はひとまず安定を迎え、そして舞台はもう一つの場所へと変わる。
〇
地を這う戦いはひとまず幕を閉じ、次に開かれるのは空中を飛び交う蒼穹の天使たちの決戦。曇りがかる空にはいつしか雷鳴がとどろき、暗く、重い空を割るように光の網が広がっていく。
「…嫌な天気だ。あの
記憶に浮かぶデブリと雷鳴が行き交う最後の戦場の記憶。ふと、ダリルの中であの時の景色が嫌に鮮明によみがえる。
…止めよう。今は、もう違う。雷鳴に曲げられるような悪運と戦ってたりしていない。敵は…
とある地点、カモフラージュで身を隠したダリルは端末で常に辺りの状況を確認する。マップに表示される二点のマーカ、そこに割って入るように明後日の方向から猛スピードでアンノウンの表示が向かってくる。
「……来たか」
バッテリーを起動、身に纏うEOSを起動させ、ダリルは横に置かれた長大な銃持ち上げる。
……とりあえずは予定通り。だな
ダリルとセシリアによる最後の策、策というにはあまりにも荒唐無稽で、実現させるにはあまりにも度し難い。これはそんな荒業だ。
…けど、俺と彼女なら
「ダリルさん、来ます。」
通信で流れるセシリアの声、敵は今のところ想定通りの行動であり。ダリルたちはシミュレーション通り、互いに最後の準備を確認する。
「さあ、始めよう。サンダーボルトの悪夢を、この世界に再現させてやる……!!
ハーモニクス・オブ・ラブ、深い意味はないですがここぞという所で使いたかったタイトルです。
次回は少し空きます。それでは
サンボルもっと流行れ