無限の蒼穹に雷鳴は轟く IS× THUNDERBOLT    作:サンボル好き

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エピローグです。ですがまだ少し続きます。


リバース

BBC、ニューヨークタイムズ、SNS。…調べられる媒体はいくらでも見たけど

 

「…どこにも、オルコットの名前はない。経済誌で少し株価に変動があったけど、それだけだ」

 

「そりゃあそうだろ。あんな騒動晒されたらあの嬢ちゃんの会社もやばいし、この国もどうなってることか……」

 

「……」

 

 

あの日からしばらくたった。

 

鉱山で起きた騒動はその情報の一切が闇に葬られた。捕らえた敵兵やその遺体、あのラファールに乗っていたミラとか言う女も全て一瞬で連れて行かれたのだ。

 

セシリアが去ってから間もなく、現地当局の人間が一斉に流れ込み、こっちが状況を飲みきれず茫然としている間に事の全てが接収されてしまったのだ。けど、その集団の奥の方で何やら見覚えのあるメイド服の女性がいたことを、俺は決して忘れる事ができなかった。

 

 

そこからしばらくして、本社の人間と名乗る者が立て続けにやってきた。土地の中を隅々まで検査し、後日新しい作業用EOSやらなんやら、とにかく働く立場にとっては垂涎の代物が一斉に運ばれてきたのだ。

 

「……そうだな。セシリアは約束を守ってくれたみたいだ。」

 

「ああ。…人も増えたしモノも増えた。ついでに辞める人間は一人もいない、あのガレ社長も続投だって聞いたときはな……。」

 

「ああ、よほどチェルシーさんのお灸が効いたんだろうな。腰が低いわ改宗するわ、というかなんでブッディストになったんだ?」

 

「さあな。武器マニア改めて仏像マニアに転職したんじゃねえか。」

 

「なるほど………いや、それはなるほどなのか?……まあ、別にいいか」

 

…別に困るワケじゃない。平凡な日常の中ではちょっとした些事に過ぎない

 

そんなこんなで二人の談笑は続く。取り戻した平穏な日々の中、下らない事ありきたりな事で心から笑い会える。そんな日々を、勝ち取った結果を

 

 

 

だが

 

 

 

「………。」

 

「でよ、それでショーンのやつが…って、オイどうしたんだよ、ダリル」

 

「………えっ?あっ、いや」

 

「なんだよ、というかお前さん最近そればっかだぞ。どっか上の空でよ、まさか戦場が恋しいなんて言うんじゃねえよな」

 

「まさかそんな、そういうわけじゃないさ。」

 

「?…じゃあなんだってんだよ」

 

「……それは」

 

理由、それは……

 

○

 

結局、ダリルはフィッシャーの回答に答えることはできなかった。

 

「………んっ」

 

そして今、ダリルは一人、馴染みのバーで一人寂しくバカルディを空けていた。

 

「あらぁ、良い飲みっぷりね。でも体には毒よ、まだ若いんだから」

 

「ひくっ…いえ、別にらいじょうぶれすから」

 

「……まあ、最悪電話で迎えぐらい読んであげるから、まあほどほどにね」

 

「………はい」

 

酒をあおる。蒸留酒特有の焼けるような心地が喉と鼻腔を抜ける。水で割ってるとはいえ合成酒にしか慣れてないダリルには本場の酒はきついモノがある。しかし

 

「んっ……くっ、はぁ」

 

酒をあおる。酩酊に陥ろうとするが、どこか酔いきれない。気持ちよくなるというよりは無理によって不快感を重ねているだけだ。

 

「………」

 

…不満はない。金もある、仲間もいる、仕事の環境としては今ほど充実しているものはない。なのに……

 

「俺は………何を、しているんだ」

 

ふと、そんな考えに浸ってしまう。満足して、平穏を感じるたびに、そんな考えが

 

 

 

「本当に、何をしていらっしゃるんですか。」

 

「?」

 

急に話しかけられた。ジャケットとデニム姿の少年?目深に被った帽子で素顔がよく見えない。背丈から見て恐らく自分よりも一回り下の子供ぐらいか

 

「あら、お迎えかしら。あなた、この子の知り合い?」

 

「ええ、お代はここに」

 

「……」

 

別に良い、気にするな、金ぐらい俺が払う、そう言った言葉を出そうにも思ったようにろれつが回らない。

 

「……!」

 

「ほら、行きますよ」

 

そう言い、突如現れた子供はダリルの肩を背負い、半ば強引に連れ歩き出す。

 

…なんだ、俺をどこに。というか

 

 

背丈が違うせいか、歩くたびに上下に揺れるのが……少し、いやかなり

 

……や、止めてくれ。気持ち…悪い……うぷっ

 

「ほら、もうすぐですから。」

 

どこか不機嫌そうに、ちょっと雑な扱いで連れまわされる。すると次第に…

 

「お嬢様……あの、酔っていますので変わります。」

 

「いえ、これぐらい。」

 

「あの、不慣れな方がやると……その、ダリル様も」

 

何やら、車の前まで連れ出されたようだが、もう…だめだ。

 

「……!!」

 

無理やり動かされて酔いがまわり、体の内から強烈な不快感がこみ上げる。

 

 

…まずい。出る……!!

 

回らない頭を必死に絞り、ダリルがとった選択は…

 

 

ガシッ

 

 

「へっ?」

 

白い……トイレ……

 

 

 

おぶぅぉおおおぉぉぉぉぉおお!!!!!!!!!

 

 

ぶちまけた。それはもう盛大に、口から内臓全部吐き出してんのかと言いたくなるぐらいに……。

 

「ちぇ、チェルシー…?」

 

「………。」

 

 

「うぅ……あぁ」

 

……なんだろう。すっきりしたけど、なんだか意識が

 

 

〇

 

 

………。

 

 

深い闇の世界。どこまでも落ちていくようなその世界で、ダリルの意識は目を覚ます。何も見えない。それが夢であることは理解できるが、その先がわからない。

 

この闇の先に、自分は何を見出そうとするのか。

 

なぜ何も見えないのか

 

……けど、なんだろう。この暗闇が少し懐かしい

 

懐かしい。きっとそれはこの景色が似ているからだろう。元の世界…いや、厳密にいえば未来なのか?

 

未来、だけどそういうにはこの世界は本当に過去なのか疑わしいものだ。

 

少なくとも、ダリルは学が無いより…むしろ商人の父親の元で育ったため教養は十分に備わっている。だが、それでもこの世界には理解できない過去の現実がある。

 

 

インフィニット・ストラトス、通称ISはこの世界にある物としてはあまりにも規格外だ。

 

 

知らない。俺は結局この世界についてまだ知らないことが多くある。なのに、ここが本当に過去の世界と断定していいのだろうか?

 

 

元の世界に戻る。それは叶うのであれば最優先に目指す目的だ。けれども、どこにもそんなSFをかなえる術は無いし。タイムマシンを作る術なんてのは元の世界にもない。だからといって夜に寝て朝が来れば全てが嘘になるなんて、そんな希望的な考えに逃げることもできない。

 

 

なら、いっそ

 

 

 

 

「………もう、いいのか」

 

この世界に骨をうずめる覚悟。仕事もあれば、仲間もいる。義肢だっていいものが手に入ったのだ。30になる前に嫁を得て、家庭を築くのも悪くない……のか?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

いや、それは駄目だろう!何を考えているんだ!!

 

 

まだ、あの世界に残している人がいるのに……俺は!!

 

「……!!!」

 

カーラ、君は……どこに……。

 

 

 

……カーラ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「カーラッ!!!!」

 

ガツンッ!?

 

 

「ぎぃっ!!!」

 

額に走る鈍い痛み。咄嗟に額を抑えもんどりうっていると急に体が下にへと引っ張られる。

 

 

「!!」

 

 

痛い?……いや、痛くない…のか?

 

 

どうやら、ベッドから落ちたようで。だが、不思議なことにあまり体が痛くない。宿舎の床は打ちっぱなしのコンクリに安いカーペットを敷いただけなのに。どうやら、自分がいる場所はまったく知らない場所というのは理解できる。

 

柔らかくて、どこか良い匂いもする。

 

「…抱き枕、にしては暖か……」

 

思考が冴えていき、ようやく自分のしたになっている何かを視認できる。その目に映ったものは

 

「ひくっ…えぐっ……!」

 

「………。」

 

……何故なのだろう。ものすごくデジャブを感じてしまう。

 

「えっと……」

 

「なんで、なんでまた……ひぅ。」

 

額を抑えて両目に大粒の涙を浮かべる少女。見事なまでに美しいプラチナがかかったブロンドヘアーと蒼玉のような瞳は依然と変わらず。

 

短くも長い、壮絶な時間を共有した相手、忘れるわけがない。この娘は

 

「せ、セシリア なのか。」

 

「はうぅ……あたま、痛い……」

 

体勢的にはちょうどセシリアの上に自分が跨っている。しかも彼女は自分に泣き顔を晒し、しかもその原因が自分にあると来ている。

 

…額、ちょっと赤くなってる。

 

ふと、無意識に義手の指で前髪をかき上げ患部を確かめるように触れる

 

「はうぅ!!」

 

「あ、すまない!」

 

どうやら少し腫れているようで。とにかく何か冷やすものをと、ダリルは辺りを見渡す。ちょうど、ベッド横の小さいテーブルに水を張った洗面器とタオルがあるのを確認する。

 

 

「セシリア、ちょっと起き上がれるか?」

 

「……」

 

少し、どこかジト目で訴えるような視線を向けている。無理もない、恐らくまた彼女は自分を監護してくれていただけなのだろう。なのに、また起き上がると同時に額をかち上げてしまったようだ。

 

「……」

 

のそのそと、無言で今度はセシリアがベッドに横たわる。さっきの自分とは逆の態勢だ。

 

「痛いです。こぶが出来ましたわ」

 

「それについては本当にすまない」

 

「別に怒っていませんわ」

 

擬音にすればプリプリというべきか、その姿はまさしく年相応のあどけない少女だ。

 

「悪かった。君は俺に……」

 

「……謝るなら、もう一人最優先の人がいるのでは」

 

目線を横に向ける。つられて顔を向けた先、そこには

 

「…おはようございます、ダリル様」

 

「チェルシー、さん……?」

 

ダリルから見るその姿。前に見たメイド服やラフなスーツ姿でも。どっちかというとハイスクール用のジャージ服というべきか、いつもの上品とは違いどこか抜けた印象だ。

 

「……あの、チェルシーさん」

 

「はい、なんでしょうか。」

 

…なんだろう。目がちょっと怖い。恨まれているような、けどどこか理不尽な運命に打ちひしがれているかのような

 

 

 

「……昨日はたいそう酔っていらしてましたね」

 

 

 

「!!」

 

 

 

 

 

 

白い……トイレ……

 

 

 

 

 

 

 

「…………あの」

 

急に全身からどっと冷や汗が流れ出る。鮮明によみがえる記憶、間違いなく自分は

 

 

 

「いえ、吐いてしまったものは仕方ありません。私たちはあなたに返しきれない恩義があります。ですから…」

 

「……ですから、なんでしょうか」

 

そう言うや、チェルシーは瞬時に電卓を取り出し、速攻で計算を終えダリルに価格を提示する。

 

「オーダメイドの衣装代、装飾品、精神的被害もろもろ……。ざっとこれほどで」

 

「………すまない。」

 

提示された金額。それはまともに応じれば軽くダリルの背負ったローンを3倍に膨らますことだろう。到底、今の仕事では返しきれない金額にダリルの目は光を失う。

 

……あはは、笑えない。笑えないよな

 

「………ゴホン、ダリルさん。」

 

「………あぁ」

 

どこか死んだ様子で返事をする。振り向くとそこにはいつの間にかセシリアが復活していた。

 

さっきまで泣き晴らしていたくせに、今はどこか満足気で、まるで今からいたずらに興じようとする子供のような悪い笑みを浮かべている。

 

「ダリルさん。弁償の金額はまあかまいません。チェルシーならメイド服の二枚や百枚ちゃんと用意してるはずです。」

 

「お嬢様、私を何だと「そこで、このセシリア・オルコットから素晴らしい提案があります!!」

 

 

 

「……」

 

 

 

「ダリルさん、貴方を当家の執事にヘッドハンティングしますわ!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「は?」

 

 




続きは鋭意執筆中です。キリがいいのでここで切りました。


次回で一章の最終回です。
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