無限の蒼穹に雷鳴は轟く IS× THUNDERBOLT    作:サンボル好き

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久々の投稿です。

ずっと二章の内容が固まらなくて、そして今日いきなりふっと湧いて繋がって、勢いのまま二章の一話目を投稿しました。

リアルが忙しいので、あと他の小説もあるので少し待たせますかもしれませんが、そこはご了承を。

この作品は真剣に完結を目指しますので。


第二章・前編 Note de Laurent~ローランの手記~
寄り道


 

 

―場所はパリ市、ルーブル美術館の画廊にて

 

「……これが」

 

 芸術の都、その名称は時代が変わろうと健在で、むしろこの時代にこそ、その栄光は色鮮やかに存在している。

 

 それもそのはず、ここには資料でしか知らない、失われた文化の黎明が現実に目視できるのだ。

 

「ゴッホ、ダリ、フェルメール……はは、これだけあればコロニーだって買えそうだ」

 

 価値の基準が金銭になる辺り、今も昔も一般人にとって芸術の価値は数字でしかない。

 

 しかし、それでもこの美術館と言う場所で、厳かに展示されるその品々の評価に値する価値を、ダリルは肌身に感じてしまう。

 

 芸術への関心、そう言ったモノに精通しているわけでもないが、一般教養として失われた地球の文化は特に後世にも語り継がれていくもの。なまじその原因に荷担している勢力に自分がある事は……まあ、今はここにあるのだから、あまり考えなくても良いかと、そんな都合の良い独り言をダリルは飲み込んでいる。

 

「……混んできたし、そろそろ行くか」

 

 芸術の観察眼は一日にしてならず。本来の目的を忘れ、気づけばすっかり観光客ムーブとしゃれ込んでいた。

 

 古き良きフランス芸術を感じさせる雅な時間、ダリルが何故このような場所でサイトシーイングを堪能しているのかというと、それは少し時間をさかのぼって……

 

 

 

 

 

 

 

「……チケット、もうそちらで用意したのですか?」

 

「?……ああ。エコノミーで、明日出便して二日後にはパリ、そこからは陸路でイギリスに向かうよ。」

 

「……そうですか。では、まだ当分お会いには出来ないですのね」

 

 電話越しに伝わるため息、それほど楽しみにしていたのだろうか

 

「悪い。けど、気を遣ってビジネスクラスなんて方が気を使うよ。俺はただの従業員としてそっちに赴くんだ。うれしいけど、これぐらいは自分で何とかするさ」

 

「……ただの、従業員ですか」

 

「ああ。主人に仕えるただの………セシリア?」

 

「…なん、です、の」

 

「……機嫌を悪くしないでおくれ。道中、何か土産物を買っていくよ。お嬢様の好みに合うかは自信ないけど」

 

 行き先はフランスを経由する。何も無しで行くよりかはずっと良いはずだ

 

「……チョコレート………いえ、何でもいいので紅茶に合う菓子を所望しますわ」

 

「ふふ、了解だ。アフターヌーンティー、そっちでできるのを楽しみにしているよ」

 

「……はい。わたくしも、楽しみに」

 

「……あぁ」

 

 

 夜は続く。旅立ちの前日、空港前のモーテルでおれは彼女との談話を続ける。

 

 こうして、今彼女が生きてイギリスにいる事全てはほんの数ヶ月前に起こった壮絶な出来事、その果てに得た大切な結果だ。

 

 しかし、事の顛末は、果たして確かに解決したと言えるのか

 

 オルコットカンパニー所有の鉱山で繰り広げた襲撃事件、その実行犯である武装集団の母体、それこそが

 

 

 

…デュノア社、第二世代IS、ラファールを手がけたフランスの大会社

 

 

 

「……セシリア、君に聞いて良いかどうか」

 

「へっ…何です急にかしこまりまして、何か……あ」

 

「……フランスの、デュノア社の事だ」

 

「………」

 

 電話越しに、急に声が途切れる。一瞬回線が切られたのかと思ったがどうやらそう言うわけではなく、むしろ、余計な雑音を全て消し去ったかのようで

 

「……ミラ、あのラファールに乗っていたアイツらは結局」

 

「……ダリル様」

 

「?」

 

「…あいにく、この回線は密な話をするには不都合です。プライベートな話は、また後日に」

 

「……セシリア」

 

「乙女の内緒は危険な火薬と同じ、不意に扱えば要らぬやけどを負わせてしまいます。殿方なら、ご了承くださいませ」

 

「……わかった。執事になるからな、今の内からマナーには気を使うよ」

 

「あら、それは良い心がけですわね。」

 

「ああ。……すまない、そろそろ」

 

「ええ。……では、また」

 

 

「……」

 

通話が切れる。別に国際料金をけちっただけではない。

 

「……訳ありか。予想はしていたが」

 

 軍人としての身構えはある。経験も技量も確かだ、しかし今の自分は民間人で、しかも他国の政治に関わる事は論外だ。

 

 

……また、争いが起きるのか?

 

 

 セシリアが置かれた状況、それはダリルにもよく理解している。故に、何が起こってもおかしくはない。だから、まだ民間人である自分に要らぬリスクを抱えさせたくなかったのだろう。

 

「……はぁ」

 

 パイプベッドに大の字になり、天上に向けた視線はどこか遠い彼方を見ている。

 

「……」

 

 目を瞑る。思い出すのは広大な宇宙の庭

 

 デブリが散るその世界を、進退の延長である機械の四肢を駆って縦横無尽に飛び続ける。

 

……駄目だな。すぐに俺は、また

 

 

 未だ覚えに新しい戦場の感覚、それは過去の記憶をダリルの中から結びついて瞼の裏に張り付いて離れない

 

 しばらくして、眠気で意識が消えるまで、その感覚は途絶える事はなかった。夢と現実の狭間で揺れ動く、そんな感覚に身を包まれて俺は一人深い眠りに落ちていく。

 

明日、この地を旅立ち、目指すはヨーロッパへ

 

 

 

 

 

「……ふぅ」

 

 ダリルとの通話が切れ、セシリアは手を上に全身を伸ばす。服越しに見える、その発展途上のふくらみが慎ましくも彼女の魅力を放つ。

 

「お嬢様、はしたないですのでおやめください」

 

「んっ……別に良いじゃないですの。誰も見てないですわよ、貴女以外は」

 

「……せめて、ブラはちゃんとサイズのあったモノを付けてください。見栄を張って少し大きめの「う、うるさいですわ!!成長期ですもの、すぐに収まりますのよ!!」

 

 そう言い、ぷりぷりと感情をまき散らして年相応の色を見せる。立場はあれど、この子はまだ13歳で年頃の乙女だ。

 

「……そうですか。ですが、そうやって合わないブラを付けますと……垂れる危険が「チェルシー、すぐ着替えを用意しなさい」……素直な主を持って、チェルシーは幸せ者です」

 

「……チェルシーの意地悪」

 

「…褒め言葉と、受け取ります」

 

 

 からかい、しかしそこにはどこか安心のあるやりとり。両親を亡くした彼女にとって、改めて幼なじみで姉代わり兼、親友の間柄がよく伝わる。

 

「…まったく、本当にチェルシーったら」

 

「申し訳ございません。チェルシーの悪いクセです」

 

「……クセと分かっているならなおしなさい」

 

 

 衣装部屋に移り、成されるがままにセシリアはチェルシーの着付けを受ける。ドレスを脱ぎ、柔肌と発展途上のふくらみを晒したまま…ふと、セシリアから

 

 

「……チェルシー、私の判断は」

 

「……いいえ、お嬢様」

 

 神妙な趣で、二人は落ち着いたトーンで会話を切り替える。ダリルが提唱した問題。セシリアにとって、その問題は頭を痛くする原因の一つで

 

 

 

「……調査は」

 

「…依然、何も変わらず。しかし、一つ分かる事は……此度の件、おそらくは」

 

「ええ。………腑に落ちませんわ」

 

 

 

-某日、専用列車の貨物室にて

 

 山脈を縫うように駆け抜ける列車の中、すし詰めに詰められた中で二人だけがどこか気楽そうに車内を過ごしている。

 

「……」

 

 スキンヘッドの厳つい男がいる。名はニコラ、職業はもと軍人、そしてついさっきまではデュノア社が抱える傭兵の皮を被った私設部隊だ。

 

「…はぁ」

 

 ため息が出る。拘束されて、しかも寒い外気がまるまる直送される最早動く冷蔵庫だ。どんなに屈強な戦士であろうとため息の10や100ぐらい問題ではない。

 

「……隊長、起きてますか?」

 

「……」

 

……寝てるか

 

 話しかける相手もいない。しかし、この寒さをしのぐには一人語りぐらいでは叶わない。左目の負傷を理由にこんな職場に半ば左遷され、しかしなんだかんだでやりがいを持って楽しく働いていたんだ。

 

「……隊長」

 

「……」

 

「まあ、いいんすけどね。独り言なんで、誰も聞いてないからむしろはなせるってもんでさあ」

 

 左目が見え無くなった。けど、俺にはそれを差し引いても能力はあった。現場指揮官として、依然変わりなく働けるはずなのに。

 

 だが、結果は出世競争の煽りを受け、なんだかよく分からない派閥やらなんやらでくだらない職場は勝手に俺の元から離れていった。

 

 けど、救いはあった。クソみたいな仕事ばかりの日々も、この目の前でぐーすか寝ている精神年齢ティーンのサイコビッチな上司だが、こんな人でも俺にとっては恩人だ。

 

「最初は村落の人間狩り。けど、あんたは笑って引き金を引いていたな」

 

「……」

 

「…別に、俺はアンタみたいに行為を楽しむ事はないが、それでも任務を成し遂げる事は俺には救いだった。持っている能力をフルに使って、仕事を成し遂げた後に吸うタバコは舌がうねった。」

 

 この人は行為に対して清濁の偏見はない。成し遂げること、引き金を引いて刃物を突き刺す理由があれば何でもよかった。

 

「……おれは他人の痛みに対して感情が動かない。生まれ持ってか、人の痛みが分からないんだ。けど、アンタぐらい狂った奴がいるなら、俺の心のいかれ具合なんてただの個性だ。」

 

「……」

 

「感謝はしているよ。捨て駒として処分される前に、この恩だけは伝えたかった」

 

手足を拘束されたまま、繋がった両手の中からマッチとタバコを取り出す。

 

「…ん……よっと」

 

 器用に付けた火にタバコを灯す。加えて吸い込む暖かな煙は、薬品的な甘さと共に肺にいっぱいのニコチンが吸収されていく。

 

「ふぅ……」

 

「……くさい」

 

「…やっぱり、起きてたんですね」

 

 むくっと顔を上げる。どこか不機嫌そうに、こちらのタバコを見つめてくる

 

 

「……吸いかけで良ければ」

 

「ん……あんがと」

 

 拘束された手で器用に受け渡す。2度3度吸って返すと思いきや、そのまま加えて普通に一服しだしている。

 

 

「……隊長、それ俺の」

 

「……固い事言わなくていいの。ふう……で、今何時」

 

「……?」

 

「処刑時刻よ。もうそろそろ本国の処刑人が何かするはずよ」

 

「ああ……」

 

 処刑人、つまりはこの列車が移動中に俺達は

 

「人生の最後は爆死ですか。いやはや、せめて腹上死ぐらいは願ったんですが」

 

「ぷ、なにそれ…アンタ誘ってるわけ」

 

「…いえ、隊長のは遠慮します。名器過ぎてちぎり取れてはかまいません」

 

「……」

 

「?」

 

 足か手で小突かれるぐらいは覚悟したが、急に黙してどこか真剣な……いや、笑っている

 

 

「隊長…いったい、なにを」

 

 

しかし、その瞬間

 

 

「――――――ッ!!?!?!」

 

 

 一瞬、光に包まれたと思いきや衝撃が全身を包む。

 

……爆発、これが

 

 光に包まれて何も見えない。しかし、にしては何か妙だ。

 

「……ッ!」

 

 光に包まれて、五体が消し飛んだと思ったがそれはむしろ逆だ。自分の体と、そして横にいる隊長を除いた、周りの全部が消し飛んだのだ。文字通り、なにもかもが

 

 

「……あぁ」

 

 気づく。視界のホワイトアウトは感覚ではなく周囲の物理的な光景だった。自分と隊長の周りを包むバリアーのようなそれ、しだいに粒子となって消える内に視界の光景が露わになっていく。

 

「……!」

 

 先ほどまで押し詰められた狭く暗い車内が嘘のように。そこは砕け散った車両の残骸と死体の荒野。引火した燃料の灯火が辺りを照らし、その無惨たる光景を明らかにする。

 

 

「……隊長、これはいったい」

 

「絶対防御の応用。まあ、コアなしじゃ数秒だけど、タイミングがあってよかったわ」

 

「タイミングってまさか…!これを、隊長が」

 

「違うな。車両をぶっ飛ばしたのはあたしだぜ。そこのハゲ」

 

「!!」

 

 後ろを振り向く。そこには巨大なグレネードを構えた第二世代アラクネ、まごう事なきISの姿が

 

「…ッ!」

 

「はい、おつとめご苦労さま。ねえ、はやくこれはずしてくんない?」

 

「……ちっ」

 

「?」

 

 目の前のIS搭乗者の前で気さくなやりとりを続ける隊長達、どうやら会話の中からその搭乗者の名前はオータムと理解する。会話の内容もさながら、その身に纏ったISは

 

…アラクネ。確か、アメリカ製の

 

 ラファールと違って、アラクネの採用率は高くはない。外国での機密運用としても、広く世界で認知されて、かつ汎用性と安定性の高いラファール以外を、わざわざ捨て駒の処分に使うとは思えない。

 

……つまり、この搭乗者は…隊長の

 

 

 聞いた事がある。世界を舞台にする災厄のトリックスター、とらえどころのないその牙で全てを噛み砕く。

 

「……ファントム・タスク……それが隊長、いや……ミラさんの古巣ですか」

 

「!」

 

 副腕のひとつがこちらを向く。先についた銃口が僅かに光るが

 

「…まって、ニコラは始末しなくて良いの。まだここで死なれたら困るモノ」

 

 そう言い、拘束バンドを切ったナイフを片手にこちらに近づく。

 

「……ニコラ、アンタあれを見てどう思う」

 

 そう言い、指さすのは焼けただれた死体。確か同じ部隊でEOSの搭乗者だったか。3mはなれたこの位置からも鼻につく焦げた匂いが漂ってくる。

 

「…ねえ。あんたはどっち」

 

「……」

 

 少し考える。この非人道を字で生きるような人間が求める、そして俺らしい答えは

 

 

「……早く手を付けないとレアがミディアムになりますね。」

 

「……あんた、それ冗談のつもり」

 

「ええ。……ですが、自分は死ぬとしてもその結末ぐらいは選びたいですね。その為なら、他人がいくら焼け死のうが刻まれようがどうでもいい。私は私の満足の為に、命を軽視する。…それが私の答えですよ…隊長」

 

 長々と説明した自身の本音。おそらく少しでも言いよどむなり選択を間違えるならあのナイフは俺の喉にでも収まっているだろうに。だが、どうやらナイフは首を通り抜け拘束を切るのみで

 

どうやら

 

 

「……ふふ。どう、オータム!…あたしの専属部下にこいつ連れてくから!」

 

「ちっ……二人も抱えさせんな面倒くせぇ」

 

「まあまあ」

 

「たく、ミラージュ…さっさと掴まりな!そこのあんたもだ」

 

 

「あ、はい!」

 

 いそぎ、後ろの腹部?クモで言うその部位に乗っかる。どうやら飛行ユニットがついているらしく、そのまま安定した機動でどんどん地上から離れていく。

 

 

「……」

 

 不意に眺めるのは地上の光景。赤と黒の斑点しか次第に見えなくなっていく。

 

「あら、前の仕事に心残り?」

 

「……別に、そんなんじゃありませんよ」

 

 下に見たのは敗者達だ。目的を成し遂げられず、勝利後の一服や一杯、または一発すらなしえずに朽ちていくのだ。

 

「……」

 

デュノアの子飼いから国際的テロリストへ。

 

 ファントム・タスク、文字通り見えない牙で世界を貪る。そいつは

 

「そいつはなんとも……働き甲斐のある職場だ。」

 

 

 以降、男の名はニコラから改めてスマイルとなり、ミラ改めミラージュのパートナーもとい配下として、その身を捧げていくのだった

 

 

 

 

…しかし、スマイルはないよな

 

 

 後日、命名された名に不満を覚えながらも、なんだかんだでその名を気に入るニコラ改めスマイルであったりもする。

 

 

 

次回に続く。




今回はここまで。あんまり進んでないですし、もしできるなら明日あたりに二話を投稿します。

それでは
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