無限の蒼穹に雷鳴は轟く IS× THUNDERBOLT 作:サンボル好き
最後に、次章で出すキャラを先出ししてますので、そちらもお楽しみいただければ。
「クソッ、離せ!!離せ!!!」
アルベールたちが去り、その飛行機が天に去る姿を、ダリルはただ見過ごすことしかできなかった。
慟哭は雨に消え、失った現実と敗北の痛みだけが心に残る。意味のない抵抗、自分を抑える男たちを振りほどかんと先の無い手足を懸命に振り払う。
「っち、こいつ……手足ねえくせに」
「……ッぐ!」
抵抗はむなしく、髪を掴まれ顔面が泥に叩きつけられる。悲しみを上書きするように、泥の味が染みわたる。
ダリルは今まさにアルベールの部下に連れ去られようとしている。トラックに詰め込まれてしまえば、きっと自分の行き先は決まってしまっている。あの男がまず俺を生かす気など、天地がひっくり返ろうとあり得ないことだ。
死ぬわけにはいかない。
あの子を助けるためにも、おれはここで
「終われない、終われないんだ!!……俺は、こんなところで」
「っち、こいつ。…構わねえ、もうここでバラし」
ズダァアンッ!!!?!?
バラしちまえばい、そう言葉にすることは叶わず、それが名も知らぬ男の遺言になった。
「!?」
突如鳴り響く銃声。
それは自分に放たれたかに見えた。だが、それは
「…おい、今のz」
…ダン!!ダン!!ダン!!…ズダァン!!!
「!!?!」
雨音に紛れ、幾重もの銃声が辺りに飛び交う。地面に伏せているはずのダリルの前に、周りの男達が糸の切れた人形のように倒れ伏していく。
「…ナイスよ、スマイル。」
「!」
「なに、驚いた顔してるのよ。別に、もう初めてじゃないでしょ」
女が、ミラージュが近づく。そして、いつの間に用意したのか、それは取り上げられていたはずの俺の手足だった。
「……なぜ、お前は」
「……ふふ、さぁ、どうしてかしらね。まぁ、私はただ「隊長、車の用意が」…うっさい!!、今いい所だから話しかけんな!!」
乱暴に端末を切る。ミラージュは素知らぬ顔で、ダリルの手を取る。体を起こし、その足に義足をつけ始める。
「……ッ!?」
…どういうことだ。こいつは、一体何が
「…何がしたいか、まったくわからないって顔してるわね」
「……っく、そうだろう実際。お前は、何がしたいんだ?」
「…何って、そうね……私は何時でも、自分が楽しい方の味方よ、だから」
「助けてあげるわ、ダリル・ローレンツ」
× × ×
……こちらは先に帰投する。手はず通り、エサはそこで始末しろ。
……処理?方法任せる。お前の悪趣味でしたいようにすればいい。
……あの子にはもう歯向かう気力はない。ダリル・ローレンツの役目は終わりだ。決して生かすことは無いように、わかったな。
「……。」
録音が切れる。
ミラージュが流したのは紛れもなくあのアルベールの声だ。つまりあいつは、あの子の心を縛るために、態々俺を捉えて、そして目の前であれだけのことを
「……ッ!!」
「あぁら、怒ってるわね。ま、そりゃ無理もないわ」
「……くっ」
「なによ、そんなに扱いが不当かしら。残念だけど、ここにはシャワールームは無いの。…スマイル、もうちょい運転何とかならないわけ?ガタガタすぎて尻が痛いのよ!!」
「はぁ、勘弁してくださいよ。ここ、あんまり舗装された道じゃないんですし、普通の乗用車で無理言わんでください」
「たくっ、これだからハゲは」
「ハゲは関係ないでしょう!!」
「うっさい、さっさと行け!!」
「ちょ、なぁ!!」
「……」
…なんなんだこいつら?
聞くに堪えない罵詈雑言、運転手の迷惑など全く関係の無い座席への応酬、ミラージュというこの女は自分を強引に車に詰め込み、そして今スマイルと称する人物の手でこの車は山中深くへと突き進む。
「……」
…いったい、どこに行く?隠れ家でもあるのか?
「……なあ、あんたは」
「おら、おら!! ん、なによ?…あいにく、ここにトイレはないわよ」
「………ミラージュ、お前は」
「……ッ、何よ乗り悪いわね。何、質問?」
だらけ態度でこちらに振り替える。その両足は座席の上、。ブーツを履いたまま運転席の男の頭を足蹴にしている。
「……いい加減聞かせろ、お前は何で、俺を」
何故に、助けた。あの状況で、いやそれよりも前に
EOSを与え、罠にはめたことも、今となっては疑問が残る。罠にしても、俺の身柄が必要なら、あの場で拘束すればよかったはずだ。わざわざ、自分を餌に
「…何がしたいんだ、お前は」
膝の上で、義肢の指が力強くきしむ。
何もできなかった無力さを、そして今、目の前にいるこいつが差し伸べた手を頼っている事実を。
「…教えろ、お前は、俺を助けて何をしたいんだ。」
「…隊長、いい加減、俺にも教えてください。あんた、何も言わずに突っ走るもんだから、付き合う自分の身にも…って!!」
「……はぁ、まぁいいわ。それもそうね、道中暇だし、知りたいこと、教えてあげる。」
「……」
「まず、あんたを助けたのは誰の意志でもない私の意志。でも、それよりまず、あんたは知っているの」
「いや、その意思の方がむしろ…………っ、わかった、聞いてやる。お前が言いたいことは、いったい何だ?」
そっちは言いたいことを言うくせに、こっちからの質問は無視と来る。
仕方なく。その問いに乗ることにした。そして、ミラージュ満足げに、その口を利かす。
「…イリス・ローランの秘密、知ってる?」
「?」
「……どうやら、まだ知らないみたいね。」
ミラージュはそう言うや、懐から、というかその無駄に大きな谷間から一冊の本を取り出す。
「…それが、なんだ」
「イリスが残した情報、というか研究記録ね。あるISについて、あの社長さんが喉から手が出るほど欲しがる正体、知りたくないかしら?」
「……それを知って、どうしろと」
「いやなにね、知らないなら知るべきよ。シャルロット・ローラン、今はデュノアかしら。まあいいわ、とにかくあの子を助けたいなら、まずは彼女の書記を探しなさい。制限時間は今日から二週間ちょうど、それを超えたらゲームの完全クリアは無理だから、忘れないように。」
「……ッ」
「何を言っているかわからないみたいね。でも制限時間は忘れちゃだめよ」
要領を得ない説明。しかし、それを単に捨て払うわけにもいかない。
狂った女の戯言、だが、そこには確かに真実を感じる。シャルの事情に、そのイリスという女性が大きくかかわっているのは事実だ。
「…お前が言っていること、それがもし本当だとして、今は飲み込んでやる。だが、その上で聞く、お前たちは、俺をどこに」
「……」
「おい、何急に黙って……ッ!!」
突然、車が急ブレーキを踏む。どこに付いたのか、雨で曇るくらい風景は何も見えない。
すると
「…スマイル、出なさい」
「……はい?」
言われるまま、男が車から出ると、続けてミラージュも外に向かう。
「…おい、お前たち、なにを」
ダリルも続けて、シートのベルトを外し外に続こうとする。だが
「?」
…外れない、ドアも……
「っく、開かない。…おい、ミラージュ、お前何を!!」
身動きが取れず、次第に雲行きは怪しくなる。
『……ガガ、……ね、…り、る』
「!」
声の主は右隣に、ミラージュがいた場所に、前にあずかったものと同じタイプの無線が置いてあった。
手に取り、無線の音量を上げる。
「…おい、これは何の」
『あら、私言わなかったっけ』
声の主はあの女、相も変わらずあざけた様子で、無線越しにその気味の悪い笑顔がちらつく。
『ねえ、ダリル……悪いんだけどさ、あたし嘘ついた』
「!……やっぱり、そういうことか」
薄々感づいてはいた。この女が、まともであるはずがない、裏がある筈に決まっている。
抵抗はできない今、結末は避けられなかっただろう。だから、余計に癇に障る。
「……どういうつもりだ、希望与えた上で奪って、それで悲しむ顔でも拝みたかったのか?」
ミラージュの狙い、端的にそうダリルは結論をつける。
今、ようやく天気が落ち着き、雨がやんできた。そのおかげか、正面のガラスの先に移る光景が目に留まる。
「…ミラージュ、お前は」
…ガガ
『なによ、ちょっと崖下にダイブするだけよ。ブレーキなしで、まっすぐに…ガソリンは満タンだから、いい花火が上がるわね』
「……この、外道が!!」
こいつ、どこまで、狂っている。
だが、そんな狂った相手でも、俺はその助けを頼りにしてしまった。その事実がどうしようもなく腹立たしい。
『ええ、外道ね。 正義のナイト様にはこのうえなく苛立つわね。だからぁ、ストレス発散にちょうどいいじゃない。往復なし、一回限りの絶叫マシーン、お客様、安全バーはお忘れなく』
「……ッ」
『なによ、もっと悪態付きなさいよ』
嘲笑の止まないミラージュ、だが、そんな狂人の遊びに、何故か俺は冷静でいる。怒りはある、だが、思考は疑問を抱いたままだ。
…本当に、こいつは俺を殺したいだけか?
狂っている、そう結論をつけるのは簡単だ。だが、それだけでは納得できない。
この違和感は何だ。なぜ、俺はこいつが
「……ミラージュ、お前は」
『あら、なにかしら、もしかして遺言?いいわよ、それぐらいなら聞いてあげる』
「……本当か?」
『ええ、嘘はないわ』
「……なら」
答えは、出た。
「…じゃあ、ミラージュ、お前に伝える。……遺言は、まどろっこしい前振りは止めろ!どうせ、確実に殺すつもりは無いんだろ!!……ってな」
『………』
そうだ、こいつは殺せるなら俺をもう殺している。確かに狂った女だ。だが、だからこそ
「お前は結局、物事を楽しみたい性分なんだろう。なら、この結末は、果たしてお前が望むエンディングか?」
違う、そうじゃない。
こいつは俺に黒星を食らった。もし、俺が思う通りのこいつなら、きっとその結果を放置するわけがない。
「お前は俺に一度負けた。なら、その返しがこんな陰湿なわけがない。お前は、俺を試したい。そう言うことじゃないのか?」
おそらく、このミラージュという女は狂っている。戦場で、戦いに魅入られて情人の道から逸れた奴なんてのは山ほどいる。だが、そうした奴らが皆、ただ狂人のひとくくりにできるはずがない。逸脱しているからこそ、他者とは違う。
狂っているなりに、彼らには彼らだけの矜持がある。
それは、きっと俺にも言えることだ。故に、業腹だがこいつの心理を俺は理解する。誰にも理解できないであろう戦場の道徳、命を俯瞰にみる思考、それらを知り得るからこそ、そこには必ず意味があるはずだ。
『……』
「どうだ、どうなんだ、ミラージュ!」
『……ふふ、くすくすッ』
「!」
『けひゃ、きゃはははっ、ハハっ!!!!』
無線越しに聞こえる笑い、どうやら、回答は図星のようだ。
だが、これで運命が変わるとはいえない。
ただ
『はは、ひひっ……あぁ、はあぁ、あんたやっぱ最高ね。いいわ、期待通りよ!!』
…ガシンッ
「!」
突如揺れる車、とっさに背後を振り向く。
いつの間にか、そこには人型と思しい何かがいる。
「…IS、それで突き落とすのか」
『ええ、でも安心していいわ』
背後に立つ機会の化け物、しかしてその正体はミラージュ本人、身に纏っていたタクティカルスーツ越しにライトブルーのISを纏う。
「…それが、お前の専用機か」
「あら、感がいいわね。そう、でもこれで戦えるのはずっと先、まずは貴方が生きてここから脱しないと始まらないわ」
「……ッ、本気で、落とすつもりなんだな」
「!!…あぁ、良い顔ね。そんじょそこらの兵士とはわけが違う、戦場で、命の奪い方を知る本物の目、だから、ダリル。……あなたなら…普通の死に方じゃ絶対死なない」
車体がきしむ。後ろから押し、まるで本当のジェットコースターのように崖の寸前まで迫っていく。
「……やっぱり、お前は狂ってるな」
「ええ、あたしは何時でも正気に狂ってる。だからこそ、私は迷いなくあなたの背中を押せるわ」
…ガシンッ!!…ガガ
「!?」
いよいよ、車体が斜めに傾く。
眼前に見えるのは広葉樹林の樹海。まず、この高さで落ちては助からないかに見える。
「……ッ」
「身構えるわね。…ここ、実は自殺の名所なの、毎年、車で勢いよくラストダイブする人が多いらしくて、でも、不思議なことに死にきれない人もいたりするわ。まぁ、100人いれば20ってところかしら」
「……なら、十分だ。」
「あら、強気ね。ますます好みだわ」
「……なあ、好みついでにあんたの名、教えてくれ」
「?」
命の危機、問いただす目的は冥途の土産だからではない。
ダリルは死を見ていない。たった二割でも、十分に書ける価値のある二割だ。生き残る、そして、その果てに、必ず
「…俺はシャルを助ける。その上で、俺はあんたを殺す!!……いいか、お前殺すのは、リビングデッド師団のパイロット、ダリル・ローレンツ少尉だッ!!!」
奇しくも、あの時、サンダーボルト宙域で巡った時と同じく、俺はまた相手に名乗っていた。
殺す相手に名を名乗るのは二回目だ。一回目はその結果が知らずに終えた。だから
次は、外さない。
この手できっと、手段はEOSでもなんでもいい。
「どんな手を使ってでも、俺はお前を撃ち殺す!!切り殺す!!爆発で殺す!!!怯えながら夜を過ごせ、ミラージュ!!!」
「!?……あぁ、いいわ……いいわいいわッ!!!」
…ガキィンッ!!
「なっ!?」
樹海を前に、車は勢いよく走り、いや落ちだした。
ミラージュが手を離した瞬間、車はほぼ垂直に近い坂を猛スピードで削るように落下していく。
「……ッ!!?」
体にのしかかる揺れとG,必死にシートベルトに掴まる。
同時に、握っている無線から、ミラージュのメッセージが届く。
「!!」
「…ええ、そうよ、私を殺しに来なさい!!ダリル・ローレンツ!!
無線機から届く声、眼前めがけて近づく樹海
衝撃で意識が飛ぶ数秒前、確かに、その名前はダリルの耳に届く。
「………ッ!!!!」
…死ねるか、こんなところで、俺は!!!
「ええ、あなたは死なない。生きて、あたしを殺すの」
無線に響かせる、女の声。
最初で最後の宣誓、本当の名を、今ここに叫ぶ。
「私は幻影、あの人の手でつくられた兵士」
『…そう、私の名はミラージュ!!ミラージュ、S、オリムラ!!!……忘れるな!!あんたが殺す、戦士の名前を……!!!!!』
-フランス東部、某所
「……なあ、おい」
「……」
男が呼びかけると、ベッドに寝る黒人の男は煩わしそうに体を起こす。
飄々とした白人の男、背丈は黒人のそれよりも小さい。だが、二人の関係は主従のようなかかわりがある。
「…なんです、少尉。見張りの交代ですか?」
「…違う、じゃなくてこいつだ」
そう言うと、男は懐から長方形の箱を取り出す。
「…いや何、お前はほんと俺によく尽くしてくれるわけで、まあ、正直うざったいが感謝はしている。だがな、なんで頼んだ煙草が違うモノなんだ?なぁ、こいつは嫌がらせか」
「……その件、ですか。ですが、それはいつも少尉が嗜んでるものですよ。近眼ならいい眼科紹介しますんで」
「ちっがう!!…こいつはタール3、俺が吸ってんのはタール5だ!!勝手に健康管理すんじゃねえ、お前はお袋か!!!」
抑えめの声で、しかし感情は荒く男は怒鳴り付ける。握りしめた箱を床にたたきつけ、床にはタバコの葉片が散らばってしまう。
そして、黒人の男は床の絨毯に広がる汚れに対して悲観する。
「……はぁ、お怒りになるのは良いですが、部屋を汚さないでください。少尉」
「うっせ、お前が変な気使うからだろ。こんな辺鄙なところで待機してっとイラつくんだよ。」
「…そのことは、まあ、私らが話してもどうもなりませんよ。上官の指示ですから。」
「……ちっ」
ベッドから立つ黒人の男、隣だつとその身長差は顕著だ。
しかし、立ち上がるやすぐにしゃがみ、その大きな手のひらは細々と
「……おい」
「……」
「……たくっ、悪かったって」
自分が撒いた葉片を一枚一枚拾う姿に、白人の男もさすがにいたたまれなくなる。並んでしゃがみゴミを拾いあう姿はどこか哀愁というか、ほほえましさすらある。
「おい、もういいっての。俺が悪いみてえだろ」
「いいですよ、掃除含め身の回りの世話は私の仕事です。少尉、ビリー少尉は外で見張りを続けてください。煙草は今度買い出しの時に買いなおします」
「…はいはい、そんで吸う量を控えろって言うんだろ」
「はは、よくおわかりで」
「……うっせ」
ビリーと呼ばれた白人の男、適当に掃除を済ませると、そのまま窓際に移る。
彼らのいる場所はトレーラーハウスの狭い居住空間、森林に囲まれたキャンプ場だ。今でこそ天気は悪いが、快晴であればその星海の景色に息を飲んでいたことだろう。
しかし、そんな時を待つ猶予は、彼らには与えられなかった。
「はぁ、風情もねえ場所だ。いったい、いつまでいればいい」
「…………」
「……なぁ、セバス…………っ!」
瞬間、セバスの示すハンドサインを見るや、行動は迅速に始まり、そして完了する。
中央の入り口、ベッドシーツ、戸棚から取り出したハンドガンを構え、慎重に外の気配を察する。
『…………二人』
『………了解』
静かに戸を開ける。外には該当もなく、トレーラーにも明かりはつけていない。闇夜に乗じて、二人はトレーラーの先にある廃屋、ダミーの小屋に足を運ぶ。
追跡、捜索の手を欺くため、トレーラーは廃棄者に見せかけたダミー、生活感をわずかに醸させた小屋は、言うなれば害虫駆除用の箱、みたいなものだ。
………素人、だろうな。
『民間人なら無視、当たりなら始末して即効引っ越しだ』
『了解です。自分は二階を押さえます。』
段取りを決め、二人は行動を開始する。
正面には木製のドア、これには音が出ないようにあらかじめ摩擦音が生じないように加工したものだ。1度目は音がスピーカーから鳴るが、2度目からは音もなく俺たちを入室させる。
……正面はクリア、さて、侵入者の方は…と
正面玄関から入り、耳に届いたのは水の音
聞こえる。というかうるさいし、なんだったら暖房もついている。
『くそ、民間人か?』
民間人であれば、このまま出ていくまでやり過ごすほうが先決だ。だが
…ここまで音をたてられるのも厄介だな。
『セバス、薬の用意しとけ。黙らせたあと、ここでのことは夢にする。いいな』
『…了解です。』
入り口からすぐの階段でセバスとは別れる。
ビリーが進む先、部屋の構造はシンプルに横長の長方形、左にダイニングキッチンとトイレや物置、そしてくだんの浴室があるわけで。
…間抜けめ
『どこぞの浮浪者なら玉を潰してやる。』
『…………あの、ビリー少尉』
『なんだ、対象が近い、短く』
『撤退、進言、教育的な問題』
『………はっ?』
一言め、二言目はわかる。だが、最後はなんだ?
『なんだ、ふざけているのか?…………目標が近い、通話を切るぞ』
『ちょ、あっ、…………』
……たく、あいつの過保護も病気だな
気を取り直し。目標に意識を向け直す。足音を殺し、浴室の戸を開けると、そこは光のない暗闇の空間だ。
何故か、明かりをつけずに湯を出しているらしく、脱衣場も辛うじて服が重ねられているのが見える。
…くそ、暗視ゴーグルを用意するべきだった。
暗闇での奇襲はできない。なら、取る手段は
「…………ッ」
壁面のスイッチに手をかける。押して明点した瞬間に、同時に制圧する。
呼吸を整え、指先に神経を意識する。銃は使わず、奇襲で相手を拘束し、無力化して締め落とす。
「………、ッ!!」
スイッチを押した瞬間、暗闇にいる敵の姿が今
「………へっ!?」
………取った!……このまま腕を
-ライトON
「…………腕を、うで……を…………を」
「…………っ!?!!?」
浴室を照らす光、文明の灯火は余すことなくすべてを照らす。
そう、照らすのだ。なにもかも
「…………あぁ、これは」
「………」
掴んだ腕はあまりにも細く、そして肌は色白で美少女のものだ。けっして男の浮浪者なんかじゃない。咄嗟に手を離し、一歩下がったせいで余計にその姿が一望できてしまう。
発達途上だが十分に膨らみと柔らかさを感じさせる肉付き、長く延びる白金がかったブロンドヘアー
そして、意外なことに見覚えがある。というか、知らないわけがない。なんだったら、こいつは俺たちの
カチッ
「…………セバス、セバスー」
『………はい、やっと繋がりましたか。ビリー少尉、そちらは』
「あぁ、なんというかこれは」
「ーーーーッ!!?」
目の前の少女、セシリア・オルコット嬢は胸を隠し、その手で掴んだシャワーホースを勢いよく掲げる。
その手に装備した鈍器は、真っ直ぐに自分めがけて。
「……あぁ、セシリア嬢がいる。あと、すげぇ怒ってる。」
「……同情しますよ。ビリー少尉」
「へ、…………へへ、へん」
…セバス、教えてくれ。これ、俺が悪いのか?
「変態っ!?」
バツコーンッ!!!
中編へ続く
なんとかここまで来ました。ずっと煮詰まってましたが、無事まとめられた気がします。そう思うことにします。
次章はおいおい、ダリルがここからどう巻き返すか、下げた分は必ず取り返す展開にします。熱くて噎せるサンボルを目指すので、お楽しみにくだせぇ
そして最後に、もっとサンボルの二次創作流行れ