無限の蒼穹に雷鳴は轟く IS× THUNDERBOLT    作:サンボル好き

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久々の投稿です。


状況開始

 当該時刻、VIPの行動に変化なし。予定通り、宿泊先のホテルで三ツ星のレストランでディナーを囲む。

 

「…………」

 

 男が3人、うち二人は如何にもなSPの男、見るからに脳筋ラガーマンな輩だ。対して、もう一人は吹けば飛ぶような痩せ味の体格、態度の悪い猫背からもそのか細さが見てとれる。髭面もあいまっていかにもな三下風体だ。

 

 彼らは今、自分達の雇い主のディナーの間、こうしてドア一枚を隔てた廊下で空腹を紛らわすべく雑談にふけっている。一人を除いて

 

「でよ、その女が言い寄ってきてさ、ヒスパニック系かな?とにかく情熱的でよ。」

 

「また胸か。お前、カレッジの頃から趣味が変わらねえな。前もそれで抱いたら…」

 

 

 

「…………」

 

…隙だらけ、しょせん雇われの民間か

 

 内心、目の前の二人を卑下しながら、この痩せ味な男は自身の目的で動く。

 

 男は二人に煙を吸うとだけ言い残し、すぐ突き当たりの回廊先にある小さなテラスへ足を運ぶ。長い一本道の回廊テラスから突き通すように見える道に、15メートルほど離れた先で、まだ二人は談笑を続けている。

 

 

…離れても離れなくてもバレねぇな。

 

 もっとましなガードマン雇いなと、独りごちる。男はテラスにもたれ、胸ポケットからタバコを取り出す。電子タバコに偽装した連絡用の無線機、そのスイッチを起動する。

 

「…………よし」

 

 取り出したタバコが電波を広い、拾った電波から伝う音は腕に着けた時計がマイクとなり発せられる。当然、音声は出ず、腕輪をつけた手の指で耳のした辺りの骨ばったところを押さえる。骨伝導で耳の奥にはノイズが響く。

 

 乱れた不快音は次第に整い、甲高い少女の声色に変わる。

 

『…………こちら、ナイト・ストリクス。そちらの状況は」

 

「聞こえてる。お姫さん、こっちの収穫は無しだ。」

 

「…なにか、トラブルが」

 

「いや、こっちの仕掛けはバレていない。だが、傍聴用の装置に妙なノイズが走っている。収穫できるのは用意された毒草だ。道理で外の警備がゆるい。VIPに仕込んだお守りはすぐに切らせてもらった。そっちのスコープからはどうだい。天窓からはVIP御用達の席が見えるはずだ。」

 

『ええ、現在視認中ですが、ここからの倍率では関係性まで把握しきれません。音声がなければいくらでもごまかしは効きます』

 

「カードとしては弱いということか。どうする、続けるか?」

 

『…………監視を続けてください。必ず動きはあります』

 

 通話越しに、女性の落胆したようすが伝わってくる。無理もない、それは彼らにとって、垂涎とも言える機会が、ふたを開ければ手出しのできないただの行き止まりであったからだ。

 

 

 イギリス、オルコットカンパニー幹部、モーレス・ガルディー。そして、フランス、デュノア社軍事工業部門CEO、アルベール・デュノア

 

 この両者の会合を知り、秘密裏にその接触を暴くために彼らは行動する。

 

「お姫さん、俺の勘だが、これ以上は掴めるものはねえ。二人の接触は確かなんだ。少なくとも、これで裏に何かがあるっていう確証は得られた。今日のところはそれでいい。」

 

『……そのようですね。ペトロさん』

 

「へへ、理解してもらえて光栄ですぜ。」

 

 では、また定期連絡にと、通信を切る。

 

「へへ、仕事は未だ暗礁にただよう。されど、上司にはめぐまれた。て、あんまり固執すると犯罪だな、こりゃ」

 

 脳裏に浮かべる、自分よりも半分以下の時しか生きていない少女の顔を。いけすかない貴族でありながら、人懐っこい素直な性格で、そのくせ不器用なところにも愛嬌がある素敵な少女。ここまでやたらべた褒めなのはお付きのメイドさんの言い分をそのまま並べているだけだ。

 

「さて、業腹だが、糞みたいな上司に顔を会わせますかね。」

 

 背後から呼び掛ける声、取り出した機材をしまい、ペトロはSP達の元にもどる。

 

 イギリス軍特殊部隊、潜入諜報員ぺトロ、ガルシア。彼の立場は雇われのマネージャー、表上はイギリスの芸術保全活動を担う委員会の職員で、此度のフランスにおけるモーレスの来訪目的である催し、会議、会合の間を取りなす仲介役だ。

 

 モーレスはパリに滞在しながら、彼自身も様々な芸術興業の委員会に名を置く立場として様々な活動を続けている。見るからに古だぬきな成金親父にしか見えないのだが、その名は界隈の中では中々の重鎮らしく、身分上それを理解した上でかしづかなくてはならない。この仕事の辟易とする瞬間だ。

 

……顔には出さねえけどな。でも、今のところ収穫はなし、これはきついねぇ

 

 演技とはいえ、脂ぎったおっさんよりもきれいな少女の方がずっといい。いっそ、この仕事が終わればオルコット家の使用人にでもなろうかと本気で考え出すペトロであった。

 

…あぁ、憂鬱だねぇ。くそ、マジのタバコも吸っときゃ良かったな。

 

 

 

  ×  ×  ×

 

 

 

 

 新月の空に少女は浮いている。

 

「…………」

 

 取り出した専用のスナイパーライフル、スターライト。ただし、銃口の先には武骨な黒い筒が取り付けられている。専用特殊兵装、回転式の3眼センサーバレルのアタッチメント、超長距離の視認に特化した偵察兵装である。

 

 高度400kmの世界から地上の動きを観察する、豪風吹き荒れる蒼穹の入り口にて、彼女は一人の男を見続けている。

 

 いや、正確には二人。一見互いに正反対を向き同席のものと会話をしているようにも見えるが、実際は違う。高度を今よりも下げれば読唇は出来るかもしれない。だが、これ以上は管制塔の網、ステルス明細を施しているが、それも完璧ではない。管制塔の協力な電波を受ければその姿が視認される。

 

 あくまで偵察、安全な高度からの長距離視認

 

 

……このまま引き金を引ければ、どれだけ楽なことだろうか。

 

 一瞬でも、本気でそうしてしまいそうな自分がいたことにバカらしくなる。そんなことをすれば、自分はまさしくテロリストとして名を残すだろう。

 

「お嬢様、迷っておられますか」

 

「…………ええ」

 

 かつて、自分を殺めるために共謀した二人、彼らが裏で行う狙い、それを見張り、必要ならば阻止する。そのために、自分達は足を運んだ。隣国とはいえ、敵対した敵の入間市巣窟に。

 

 今彼らを見ているこのライフル、先端のアタッチメントを外せば通常通りのレーザーライフルとして機能する。さすがに、これほどの距離を打てば粒子は減衰し、よくて建物に火をくべるだけだ。

 

 建築材、火のまわり、もしかすれば自分はこのまま彼らを事故に見せかけて焼き殺せるのかもしれない。実際の要人暗殺にIS攻撃を用いた事例でそうした手口はある。  手段は足る、そう気づいてしまうと意思とは反して、自分の腕、ブルーティアーズの性能、着々と実際に行動に及んだ場合の予測事態を脳内で精査しだしていた。

 

「チェルシー、わたしくしが手をよごせば、全ては解決するのでしょうか」

 

「…………ええ。ですが、それは」

 

「正しい方法じゃない。そんなこと、かつて私の大事な両親を奪った奴等と同じこと…………できるはずがありません。できるはず」

 

 少し、言葉に間が生じた。頭では理解していても、感情的な部分がおぞましい選択肢に目移りしてしまう。

 

 見たくない自分の内側が見えてしまう、セシリアはスコープから目を離す。

 

「今から帰投します。予定通り、彼らと合流して次の報告を待ちましょう」

 

「了解、こちらからルートを指示します。管制塔の電波の網には気を付けてください、そのISには武装がつまれていないことをお忘れなく」

 

「わかっていますわ。…………はぁ、空は冷えます。早くシャワーでも浴びたいですわ」

 

 ライフルを拡張領域に収納する。

 

 形態を変更、スラスターを吹かしながら降下飛行を開始する。

 

 薄くかかった雲を対翼で切り裂きながら突き進む姿は夜と同化し、地上からは流星の軌道だけが残る。

 

 

 

 

 そして、シャワー中にビリー少尉が以下略

 

 

 

 

 

 

 

「なるほど、そうやってセシリアたちは活動を。」

 

 

 カップを片手に、ダリルはセシリア達の話に耳をかす。奇しくも、同じく国で今まで起きた事柄が二人の人物を介してつながった。

 

「シャルを助けるためには、チェルシーさん達はモーレスを引きずり下ろすために、互いの狙いは」

 

「ええ、アルベール・デュノアの狙い、それを知らないことにはなにも始まりません。」

 

 そう答えるチェルシー、茶請けのレーションをカットしたものを口に運び、紅茶を流す。

 

「…………」

 

 上品に茶を嗜むチェルシーに対して、一方セシリアはどこか不機嫌そうにチョコバーをばりばりと齧っている。まるでやけ食いのように食べているが、口が小さいせいか思いの外進まず、なんとも幼げで小動物らしさがにじみ出ている。

 

「お嬢さま、食べ方がなっていません。それと、そのチョコバーのカロリーをわかっていますか?」

 

「別に、わたくしはもう少しグラマーになりたいだけですの、やけ食いなんかじゃなくってよ!」

 

「……なあ、セシリア」

 

「……バリバリ、むしゃむしゃ」

 

「…………」

 

 セシリアの不機嫌、それもすべてはダリルのせいである。

 

 ダリルが目を覚まし、そして今はこうしてトレーラーハウスの談話スペースで茶をしばきながら、これまでの出来事を語らいあっている。 

 

 フランスで起きたこと、それはもちろんシャルについて触れるのだが、一緒の部屋に泊まったあたりからみるみる態度が急変してきた。

 

……ここは、わざとらしくてもおだてるべきか

 

 もとの世界では長男だった経験から出た対策法、ダリルはセシリアに優しく語らいかける。その言葉にはもちろん嘘はない、多少は誇張もあるが

 

「セシリア、まずはともあれ君にまたあえて良かった。色々あって大変で、でもまずは再会を喜びたい。」

 

「…………シャルロット」

 

……ギクッ

 

 

「その子は、ダリルさんにとってどんなお人なのですか?」

 

「…それは」

 

…おい!、なんでそうストレートに聞くんだ!…………チェルシーさん、なにか援護を

 

 

 瞬きと目力でメッセージを送る。しかし、目を一度会わせただけで、チェルシーは

 

 

「ええ、私も気になります。なにもやましくないのでしたら、隠し事なく語らいでください」

 

 いつにもまして楽しげな顔をしていらっしゃる。

 

 だめだ、この人完全に楽しんでる。

 

 

「…………」

 

 どうするべきか、なだめるためなら何もないと言うのは、いや逆効果だ。セシリアはよくも悪くも素直だ。たぶん、兄のように接していた相手に同様の相手が出てきたから、ようは兄弟間の嫉妬みたいなものだ。

 

 そうなると、シャルは三女なのだろうか、いや何で俺は前提に妹になる結末を置いているんだ。

 

……なつかれすぎた

 

 異世界に来て思わず発露した自分の才覚に頭を痛める。

 

「…………セシリア」

 

「なんですの」 

 

 不機嫌そうに、そっぽを向いたまま聞き耳をたてる。どうやら話は聞いてくれるようだ。

 

 言葉を飾ることはいくらでもできる。けど、今この場をおいては。

 

「…シャルロット・ローランは、俺の大切な人だ」

 

「!……ダリル様」

 

 思わず、ストレートな発言にチェルシーも口が塞がらない。

 

「それは、どういう意味で」

 

 おずおずとした様子で、セシリアは返答する。

 

「含みはない。シャルは俺が助けると決めた。だから、手を貸して欲しいんだ。俺一人じゃむりだけど、セシリア達となら、条件は傾く。勝機が見える」

 

「本気ですの」

 

「あぁ、得なんて無いただの偽善だとしても、俺はあの子を助けたい。それに」

 

 

 ダリルは懐から取り出す、それは一冊の手記

 

 

「聞いたところだと、俺たちを繋げるのはこれだ。イリス・ローランが残した遺産、それを暴く」

 

「……これが」

 

 セシリアは手にその手記を取る。ページを開き、内容に目を通す

 

「それにはイリスのメッセージが残っている。たぶん、その鍵を握る人を、俺は知っている」

 

「そう、ですか。でも、これには特にそんなものは」

 

 見開いたページに連ねる文章は、いたって普通の日記でしかない。ただし、その全文がイギリス英語で書かれていることを除けば

 

 

「イリスはフランスでそれを書いた。娘に向けるものとしては、少しまどろっこしい。だが、その手記はそれで正解なんだ。」

 

 気づきは初めてそれを目にした時、そしてミラージュが言い残したイリスを追えという言葉、そこから繋がる疑問がダリルに答えを導かせた。

 

 あの日、この手記をシャルから預かった日、俺はひそかにお祖父さんと密に話した。

 

 手記を見せた時、まるで腫れ物を見るようにお祖父さんは拒絶心を抱いた。そして聞いたのだ。

 

 

 もう一冊は、あったのかと

 

 

「イリスの手記は、二つ」

 

「おそらく、ローランの唄にちなんで、たぶん遊び心なのか、これはローランの手記だからイギリス英語だ。」

 

 娘を愛する親の心を記したもの、それはまさに純正の形を意味する。

 

 ローランの唄は各地でその内容が変わる。そして、ここフランスでは、ローラン、いやオルランドは別の意味を持つ。

 

 聖剣を携えた英雄でありながら、その旅路は狂行に堕ちていく。裸の獣となり、愛するものを見失った悲壮の伝承

 

「推測でしかない。でも、もしそれが存在するなら、それはイリスの真実を記した確かな手がかりだ。」

 

「………本気、のようですね」

 

「ああ、でも無理強いはしない。俺のこの考えは全部推論、肝心の動機だって、信用できない敵の言葉だ。乗ってくれるかは、二人に」

 

「…………」

 

 二人とも、少し思い詰めたように顔を見合わす。

 

「チェルシー、現状の調査だけでは進展はありせん。ここは遠回りですが」

 

「……ダリル様の、お言葉だからですか」

 

「それもありますわね、でも、当たれば大きい。お二人は、どう思われますか」

 

 セシリアが呼び掛ける声、それはダリルとチェルシーではない、この旅路の同行者、トレーラーを走らせる車の運転席

 

「ビリー、セバスチャン、あなた達二人の判断を聞かせください。」

 

「……と、おっしゃられていますが、ビリー少尉はどうです」

 

「……大事な判断を俺に託すな、たくっ」

 

「ビリー、君は「少尉だ!新参が呼び捨てにすんな!」………少尉、怒りっぽいのはタバコの弊害で「横入りすんな、あとタバコは関係ねえ俺の生まれつきだ!」

 

 トレーラーのなかに響く罵声、セシリアとチェルシーは辟易としている様子だが、軍人らしい性格にダリルは初対面ながら好印象を抱いている。 

 

……なんでか、親近感が湧くんだよな。不思議だ

 

「ビリー少尉、俺の案に乗ればモーレスとアルベールの動きがわかるかもしれない。可能性だから絶対はない、かける価値は十分にある。はずだ」

 

「……ちっ」

 

 わざとらしく聞こえる舌打ち、すると首をかしげて隣のセバスに意思を伝えるような所作を取る。

 

「では、行きますか」

 

「ありがとう、二人とも」

 

 雑に手を振るビリーをあとに、ダリルは今一度セシリアと向き合う。

 

 

……これで動き出せる。タイムリミットまでにあと少し、そのためにも

 

 

「取りに行こう、イリスの残した遺産。ローランの手記に語られない真実を記した鍵。狂えるオルランド、オルランドの手記を」

 




今回はここまで、いよいよ物語が大きく動き出します。ここまで来るのにすごく時間かかって、オリジナルを書くことに未だ苦戦してます。でも楽しい

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