無限の蒼穹に雷鳴は轟く IS× THUNDERBOLT    作:サンボル好き

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投稿が続きました。調子がいいので、また近々投稿できそうです。




それぞれの戦い

―フランス東部、ブルゴーニュ郡リュミアーレ村

 

 

 晩秋の物寂しさを感じさせる町並み、枯れたブドウ畑の先にある丘の家、そこで男は立っていた。男の名はフェルシア・カフゴ、フランスマフィアにて若衆の頭を務め、この道10数年のベテラン組員だ。デュノア社を取引相手として、主に汚れ仕事などを引き受ける。マフィアは公共の権威に従わないアウトローな存在だが、こと彼らにおいては違う。その運営母体はデュノアに属し、デュノアの意のままに動くことを前提にしている。

 

 フランス社会で問題とされるマフィア組織でありながら、その実態は民間企業の私兵、彼らの多くはコーサノストラ系列、またはシチリア系マフィアからの流れ者であり、アルベールの意向に従うことでマフィアを許された無法者である。時にはヒットマンとして国内で銃を放ち、また必要があればEOSを纏い軍人まがいのこともしてみせる。

 

 このフェルシアという男もまたデュノアの意向で手を汚し、その命令のままに命を削ってきた。数日前、とある女の命令で、わざと敵に襲わせたうえで、油断したところを捕縛する、そんなふざけた任務まで背負わされたばかりであるのに、未だデュノアの意向に従い行動している

 

 車両の爆発で助手席の相棒は今もベッドの上、自分も顔の左半分に生々しい裂傷とやけどの跡が残っている。

 

 すべてが終わった後、クソの文句も言う暇もなく、男はまた次の仕事に向かわされる。

 

…金と地位のためなら文句は言わねえ、だが

 

 次の仕事は老人の拿捕、先にさらった少女の保護者らしく、とにかくまた非合法の仕事を押し付けられた。いつものこと、そう割り切るしかない。

 

 あのミラージュとかいう女の姿はいない。事務所に訪ねてきたデュノアの連絡役に聞いてみたが、今回の作戦にはあの女は関わらないらしい。どこまで信用できるかわからないが、とにかくあの女と組むのはごめんだ。

 

 ただでさえ捨て石の立場、狂った指揮官なんざ持ってしまえばどうなることか、それは幹部クラスに昇りつめてなお尽きることのない不安だ。デュノアのクソに従う苦みに耐えながら、俺たちは生きてマフィアの生業を続ける。

 

「……なのに、なのにだ」

 

 静か過ぎる家屋、ノックもするーして戸を開け、男は部下の数名と共に家を荒らしまわる。

 

 調度品を叩き落とし、しまったドアはクローゼットだろうと冷蔵庫だろうと、あらゆる可能性を探して回る。そして、見つけたのは一枚の扉、地下室につながるその奥に、彼らはいた

 

「なんでお前らがここに居る。ターゲットは、ジジイはどこに消えた!!!」

 

 先ほどまで静かにたたずんでいた男は傍にあったワイン樽を蹴り飛ばし怒りをあらわにする。

 

 楽な仕事といわれた矢先に、またも自分の部下がやられているのだ。

 

 部下と思しき男達数名、目隠しで拘束された上で虫の息になっている。手足には生々しい銃創が残る。

 

「だ、旦那……俺たちは、敵に」

 

「誰だ、誰にやられた!」

 

「ひっ!?…3人です。全員EOSを纏ってて、でも」

 

「でもがなんだ、言え!」

 

「一人は、EOSから降りて話しかけてきて、両手両足が義足の男で」

 

「!」

 

 男、フェルシアの脳内に映像が浮かび上がる。車両の窓から、微かに見えた視界にあの作業用EOSから降りた男、あれも確か義手のような手をしていた。

 

 あの男の為に、あの女は俺たちを餌にしたマッチポンプ、手前が楽しむだけのフィックス・マッチを仕込みやがった。

 

 つまり、この顔の傷は

 

 

「……義肢野郎、てめえのせいでか」

 

「俺たちを拘束して、そのまま去るとかいって、そしたら急に手足を撃たれて」

 

 男の顔が豹変する。かつてはコーサノストラの大幹部で、武闘派の名をいくつも掲げたやり手の戦闘員だった。

 

 元軍人、退役して身をあえてマフィアに落とし。裏世界で生き抜く道を選んだ。今でこそデュノアの下で落ちぶれてはいるが、男には野心も狂気も十分に携えている。

 

 懐に抱いた拳銃の重みがやけにずっしりと響く、負の感情を糧に血をたぎらせる。

 

 

「いいぜ、やってやる。お前ら、すぐに兵を集めろ!」

 

「…は、はい……でも、奴らどこに」

 

「EOSを使ったんだ、移動手段は車両だろう、このあたりの国道にあるカメラ、情報をさらえろ、デュノアに申し立てて当局の犬も動かせ!!……やってやるぜ、手負いの鹿狩りだ」

 

 

 

 

 

  ×  ×  ×

 

 

 

 

 

 

「……まさか、君が助けてくれるとはね」

 

「ええ、こんなことでは、俺の罪は償いきれませんから」

 

「謙遜せんでくれ、わしのほうこそ、あの子ににもしてやれなかったんじゃ」

 

 うつむく老人、彼はシャルロットの育ての親、少し前まで共に郷里で時間を過ごしたこの人をダリルたちはデュノアの刺客から救い出した。

 

 地下に隠れたお爺さんから連絡を貰い、敷地で捜索を続ける数人をEOSで強襲し即座に制圧、デュノアに雇われたゴロツキであるとわかり、俺たちはお爺さんを連れてトレーラーで移動している。

 

「…で、お主たちはどこに行くのじゃ」

 

「はい、ここから離れて……ひとまずお爺さんを安全な場所に、できるなら公共の乗り物を使って海外へ、たとえばイギリスに」

 

「オルコットの手のモノを回せば旅の安全は保障されます。ダリルさんのお世話になった方となれば、当然このセシリア・オルコットも力をかすこともやぶさか……って、チェルシーなんで引っ張って…って、イタイイタイ!!」

 

 久々に見せる貴族様ムーブ、割り込んでキラキラと大げさに振舞うセシリアがチェルシーに連れていかれる。ちなみにここはトレーラーを改造して作った居住スペース、後のほとんどはEOSなどの兵器格納庫だ。

 

「なんとも、元気のいいお嬢さんじゃな。シャルも負けられんわい」

 

「ええ、有り余っている所なんかは特に」

 

「なるほど、これはシャルも……ぼそぼそ」

 

「?」

 

「ま、そこは孫の努力次第じゃの」

 

「あの、いったいなんの」

 

「いやなに、老人の気まぐれじゃ、気にせんでくれ」

 

 

 ふぉっふぉっふぉと、陽気な振る舞いを見せる姿は先ほどまでさらわれかけた人とは思えない。

 

 動じていない。助けを求めた時も、どこか冷静だった。

 

 シャルと同じ、この人もただものじゃない。それはおそらく

 

 

「……お爺さん。いえ、グレン・ローランさん」

 

 改めて、その名を口にする。今は、その名字を含めた名前で呼ぶ方が良い。俺は今からこの人の内に土足で踏み込むのだから。

 

「聞かれたくないとは存じます。でも、俺達には必要なんです。シャルを救うために、あなたの娘であるイリス・ローランのことが」

 

「………」

 

 ダリルは言葉を続ける。

 

「イリス・ローランが残した兵器、ISをめぐって二つの国が動いている。シャルはそんな陰謀から、実の親に攫われた。あなたは、そのことを承知ですか?」

 

「……ああ、知っている。知った上で、わしは何もできなかったよ」

 

「知っていた。つまりアルベールの狙いも、その正体も」

 

「いや、わしはあくまでイリスの育ての親だ。アルベールについては知らんよ。ただ、イリスが何をしようとしたか、それは知っている」

 

「……手記、ですか」

 

「……」

 

 ダリルが取り出した手記、机に置きグレンの前に晒す。人柄のいい老人、それが今一冊の手記を前にして温度を下げた。冷え切った目で、どこか遠い過去を悲しむような、そんな目で手記を手に取る。

 

 

「夏の日、3歳のシャルに水浴びをさせた。風邪をひくと注意しながら、ホースを片手にはしゃぐあの子を追いかけて庭で泥まみれになった」

 

「……ッ」

 

 淡々と語り続ける。そこには確かに母親の娘を思う記録が記されていた

 

「……収穫祭、シードルの瓶を割ったあの子を叱った。義父さんに泣きついて、少し距離を置かれた。あの子の機嫌を取るためにショコラショーを作ろうとした。けど、冷め切ってないまま渡してしまって唇を火傷させてしまった。」

 

「……グレンさん」

 

「全部、懐かしい思い出だよ。あの子は感情的な部分が人よりも機械的でな、こうして記録を取ることを幼い頃に勧めたんじゃ。他にもローランの歌が好きだったり、慣れない手つきで菓子作りに及んだりと、あの子は人らしく懸命に母親をしておったよ」

 

「…でも、シャルが8歳の頃に」

 

「ああ、あの子は去った。研究のために……それは」

 

 お爺さんが懐から取り出すシガレットケース、そこにはいちまいの紙が挟まっていた

 

「それは」

 

「手記の続きじゃよ。だが、あくまでその在りかじゃがな」

 

 手渡す紙を受け取る。

 

 

「…座標と、アドレス?」

 

 座標はおそらくその研究所の場所だ。だが、アドレスということはつまり

 

「…お爺さんは、連絡を」

 

「あぁ、ここ数年前まではの。だが、ピタッと連絡は無くなった。わしはイリスの親として、あの子を騙していた。それが、わしにできる二人の幸せじゃったから」

 

「でも、シャルには母親が」

 

「その母親が、近くにいてはならん。あれは、とうに壊れている。壊れているなりに、人らしくあろうとして、だがついぞ耐えられなかったんじゃ。そう、確か白騎士事件が起きたあの日、あの日からイリスは壊れだした。シャルのためにも、イリスのためにも、二人は離れなければならん。だが、その結果がこれでは」

 

 救えんなと、落胆の言葉を吐くグレンさんの背中がやけに小さく見えた。おそらく、この人がずっと抱えてきた闇、今俺は逸れに触れようとしている。

 

「……グレンさん、聞かせてくれませんか」

 

 むごいことだとはわかっている。だが、俺はこの人から聞き出さなければならない。

 

 この人たちのために、俺も背負わなければならない。

 

「受け止めます、あなたの過去。イリスの過去を、教えてください」

 

「……いいとも」 

 

 

 グレン・ローランは語りだす。彼の過去、二人の女性の人生を見届け、そこで何を知り、何に触れたか。

 

 語り部の物語は遠い過去、イリス・ローランの出生から始まった。

 

 グレンとダリルが過去を語らい、セシリアはチェルシーに説教を食らう。

 

 運転席のビリーとセバスはダリルの指示通り、イリスの示した座標を目指す。行く先はフランス南部、旧発電所施設へ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『……なあ。これでいいのか』

 

「ええ、いい演技だったわよ」

 

『そうか、なら報酬通り俺たちを元の組に……』

 

 そこから先、音声は続かなかった。

 

 町のオープンカフェでくつろぐ赤髪の女がいた。優雅に茶をたしなみながら、その手には携帯端末が握られている。画面に生じされた爆弾のマークから指を離し、女は端末をオフにし机に置いた。

 

「ねえ、店員さん。タピオカ入りのカクテルシードル、あとレーズンパイをお願い」

 

「はい。……お客さん観光ですか?

 

「ええ、ちょっと祭りにね」

 

「あぁ、でもこの村はもう祭りが終わって」

 

「大丈夫よ、別の祭りだから。……М18クレイモアで3000個のベアリング乱反射、綺麗なバラが満開だったわ。見てないけど」

 

「?」

 

 意味が分からず、店員はその女の言葉を気に留めなかった。

 

 女は運ばれた料理に舌を打ち、口の中の味をシードルの酸味で洗い流す。

 

「…うん、いい味。私はしばらく観光してるから、せいぜい頑張りなさいよダリル。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

次回に続く

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―某所、地下居住施設

 

 

 

 

 

「ふぅ」

 

「……グタッ」

 

「起きないでね、頼むから」

 

 一糸まとわぬ姿、シャルは監視カメラの挙動を確認し、問題が無いことに安堵する。

 

 

…見張りはこれ以上いない、IDはこの人のを使えば

 

 

 男の懐からカードを抜き取る。ついでに腰掛けていた警棒と端末も回収する。脱ぎ捨てた衣類を再び身に纏い、シャルは堂々と部屋のロックを解除し、外への脱出、その一歩を果たす。

 

 

…どこまで行けるかわからないけど、できる限りやるしかないよね

 

 

「……よし、シャルロット・ローラン、行きます。」

 

 




今回はここまでで。キリがいいので一度区切ります、次回もなるたけ早めに

最後のシャルがどうして裸なのか、気になるところですがこれは全年齢で書いていますので、残念な方はごめんなさい。

でも、そのうちダリル×セシリア・シャルとかでちょっとむふふな話も書きたい。需要あるかわからなしだけど
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