無限の蒼穹に雷鳴は轟く IS× THUNDERBOLT    作:サンボル好き

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ついにここまで来ました。

この作品のシャルロット編を書き出して数か月、ずっと書きたかったシーンが書けました。文章は前回よりもわりかし長めです。話を切らず一気に読んでほしかったので

あと、設定集と機体情報を分けました。一章の機体設定では足りなかったISの設定を足しています。

関係ない話で逸れましたが、それではどうぞ。感想の方もどしどし待ってます。


オルランドの手記/狂えるイリス

 

 閉じ込められた部屋で、私は不自由なく退屈な時間を過ごしていた。

 

 人と話すことは無い、あるのはテレビと雑誌ぐらいで、正直ネットが無いのは一番こたえた。動画サイトもSNSも、当たり前だと思っていた娯楽にかける時ほど、人は苦痛を感じることは無い。

 

 少し話が逸れた、だから私は監視カメラにお願いした。ジャパニメーションのコミックを欲しいとお願いして、次の日に食事のトレーの中にそれがあった。

 

 話し相手がいた。それは退屈をしのげる喜び、ではなく

 

 

 脱出できるチャンス、その回答が真っ先に浮かんだのだった。

 

 

 そう思ってから行動は早かった。私は時折そのカメラに話しかけた、最初はうんともすんとも言わなかったけど、少し色遣いを見せたらわかりやすく食いついた。

 

 服の上からマスターベーションのしぐさをする、追従するカメラの動きに私は確信を得た。

 

 その後、簡単な会話から監視の男は一人と知った。ストリートで培った知識を総動員して、カメラ越しに男と関係を深めた。

 

 そして、今日

 

 

 

  ×  ×  ×

 

 

 

 

「なぁ、シャルちゃん。本当にいいのかい、俺、君と」

 

「……」

 

 頷く。指で作ったわっかを前後させ、その先に舌を這わして見せる。

 

「!」

 

 目の前にいるのは自分を監視していた40代の男。ガードマンらしい服を着て、今は二人ベッドの上だ。

 

「い、イケない子だね。そんな、悪い遊びに」

 

 冷静を装うとするが、その口は閉じきっておらず目の前の青い果実に劣情を垂らしている。血走った目は見るに耐えない醜さを表している

 

 だが、そんな男を前にシャルは常に余裕のある態度で、その上今は蠱惑的な笑みを向けている。自分の娘ともいえる年ごろの少女が、大人顔負けに色気を醸しているのだ。男は辛抱たまらず、下腹部は劣情でひどく隆起していた。

 

「本当にするのかい、その、君みたいな少女が、俺なんかと」

 

「俺なんかは関係ないよ、大事なのは、気持ちい・こ・と」

 

「!!…へ、へぇ、そうなんだね」

 

「ストリート仲間と一緒につるんでたし、私みたいな女の子が稼ぐのってこれが一番なんだよね。いつもはファーストフード店のトイレだけどね。跨って踊るの。いっぱい、耳元でいい声出して……あん、あん」

 

「お、おう!……でも、いいのかい、俺童貞だし、第一君は……ッ!!」

 

 男の言葉が詰まる。膝の上に毛布を掛けて見えないが、シャルはその中からショーツを取り出した。ポイっと手渡されたそれは男の手で生々しい熱を帯びている。

 

「…関係ないよ。女が男を求めるのに、年なんて関係ないでしょ。未成年でも、童貞君でも……ね」

 

 次いで、フロントホックを外し、ブラまで脱ぎ捨てる。腕を前に大事なところだけを隠し、むしろその健やかなふくらみが余計に強調される。

 

「!?」

 

「おじさんも脱いでよ、あたしの中、最高に名器なんだって……皆、言ってたよ」

 

「…わ、わかった……今、脱ぐ!!」

 

 急ぎ立ち、男はベルトを外してズボンを下ろす。

 

 次いでパンツを下ろそうと、中で引っかかるものに苦戦し、前かがみになりシャルから視線を外した。

 

 その隙、シャルは見逃さなかった。

 

 

「………ッ!!!」

 

「へ?」

 

 

 

 

 

 

  ×  ×  ×

 

 

 

 

 

「さて、とりあえず」

 

 場所を確認する。その手に持つのは先ほどの男から取り上げた端末。締め落とした男の指紋を使いロックは解錠済み、巡回目的なのか、その中には施設内のマップが記されていた。

 

 

「幸先良いね。でも、一発で決まってよかった。」

 

 

 パリの裏通りの悪ガキ、中でもストリートビッチで名高いミリーの直伝、盛った男を締め落とす色仕掛け裸締め、下町の荒くれに飲まれて身につけた技である。

 

「悪いことしたけど、未成年抱こうとするおじさんもダメだからね、恨まないでねっと」

 

 電子版のロックをIDカードで気味よく開けて進んでいく。童貞歴40年、儚い夢の終わりを踏みにじって手に入れた戦利品を手に、シャルは揚々と施設内を突き進む。

 

 しかし、ここがどこか全く見当がつかない。マップに道はあるが、どこがどこにつながるか、ひとまず一番近いエレベータの扉を目指す。

 

…バレずに行きたい、でも

 

 脳裏に浮かぶのは父の言葉、ダリルの命を盾に、自分を抑え込んだあの男を

 

「逃げても、わたしには………いや、あんな言葉信じられない。それに、お兄さんなら、きっと」

 

 根拠のない自身、しかし、今はこれにすがるしかない。現状から脱するために動き出した。アドレナリンで高揚した思考のまま、せめて希望に向けて走り続ける。

 

 マップを確認し、息を潜めながら通路を進む。

 

 エレベータまであと少し、曲がり角に飛び出ようとしたその時

 

「…ッ」

 

 向かってくる談笑の声、ここの職員なのか

 

 来た道を逆走し、シャルは下りのスロープを抜けて道を駆ける。マップ上では入り口がどんどん遠のいていく。

 

 ここがどこかはわからない。おそらく、あの男の持つ研究所なのだろう。SF映画のように、どこかの地下に作られた秘密基地のような

 

 所々にあるガラス張りの部屋、身をかがめ見られないように足を進める。

 

 どこにつながるかもわからない出口を求めて、シャルは彷徨う。

 

「…どうしよう、せっかく出れたのに」

 

 闇雲に進む。マップの先にあるのは一枚の扉を隔てた大きな空間、マップから顔をあげるとその向かう先には扉があった。

 

「エレベーター、外に出られる」

 

 人の気のない今しかないと、急ぎ駆け寄りIDで電子版を動かす。急ぐ期待に応えるように、扉が開くと滑り込むようにシャルは乗り込んだ。

 

「……ッ」

 

 壁にもたれ、戸が閉まったことで部屋は個室になる。少し安堵から力が抜ける。

 

 

…これで、上に

 

 

 壁横にあるスイッチを見る。だが

 

「!」

 

 動き出した。脳裏に浮かぶのは第三者の操作という原因、このままとが開けられてしまえば

 

 

…見つかる、ダメ!! 

 

 動き出したエレベーター、だが、そうであるなら少し変だ。落ちていく浮遊感だ。重力の増す感覚ではない。

 

「!!」

 

 ありえない、電子版にはこれ以上の下が無い。では、これはどこへ行くのか

 

 

「……どういうこと、どこに行くの」

 

 

 疑問が不安に変わる。大胆な行動で生じたアドレナリンが消えたせいか、感情のもろさは年相応なものに

 

 震える心臓を無理やり抑え込み、シャルはただこの浮遊感が収まるのを待ち続けた。

 

 長い時間、秒間にしてさほど長くない感覚、なのに気が遠のくほどに感じてしまう。それは内面から生じる物か、いや、きっとそれだけじゃない、そう確信する。

 

 

「…気持ち悪い、なのに」

 

 間の抜けた電子音、浮遊感が安定し戸は開かれた。

 

 奥に続くのはパイプの中のような通路。金網の床と鉄パイプの手すり、むき出しの配管に照明がぶら下がる。

 

 不気味な施設、足を踏み入れることもはばかれる気配すらある。なのに

 

 

 

……懐かしい、気がする。

 

 

 

 気が付けば、自分は足を踏み出していた。自分ではない何者かに押されているような、自動的な肉体は意思を置きざりにする。

 

 

 

「……ッ」

 

 鋼鉄の扉、4本の鉄柱で施錠された入り口、それが近づくだけでほどけるように開かれる。歩みを拒まず、シャルロットの来報を受け入れる。

 

「!!」

 

 幾重にも床から伸びる光線、何もない漆黒の空間で、その存在だけを確かにするためにライトは照らされた。機械の台座に立つ純白の鎧、膝をつき、剣を携える姿は主の帰島を待つかのように映る。

 

「IS、だよね」

 

「……そうだ、それがお前の専用機、リュミアーレ・ラ・デュランダル。イリスの残した遺産だ」

 

「!?」

 

 いつからそこにいたのか、その声は暗闇の中から這い出てきた。

 

 自分と同じ金髪の髪、端正な顔立ちと威厳のある風格、あの日別れて以来、また再開した。望ましくない再開だ。

 

「いたんだね、アルベール・デュノア」

 

「父とは、呼んでくれんのだな。親子というのも難儀なものだ」

 

「そうだね、じゃあ今すぐ辞めればいいよ。」

 

「そうはいかない、お前にはこれに乗ってもらわなければならない。なんとしてもだ」

 

「!」

 

 銃口がシャルをにらむ。取り出した拳銃の引き金には指が駆けられている。

 

「……撃つ気なの」

 

「それができればな」

 

「!!」

 

 重く響き渡る破裂音、一瞬見えたマズルフラッシュで瞼を閉じたその時

 

 

「ほら、こうなってしまう」

 

「えッ?」

 

 眼前にたたずむ大きな影、それは先ほどまでたたずんでいたIS、そのものであった。放たれた銃弾は装甲にはばかれ、何もない天井に埋め込まれた。

 

「……どうして」

 

「イリスの意思だ。お前を守ったんだよ、なんとも泣かせる話だ。お前の母は、未だ娘の愛を忘れてないようだ。まあ、それも納得のいくことだ。」

 

 拳銃をしまうアルベール、するとISは光を失い、その場でまた待機状態に戻る。

 

「!!」

 

 瞬間、シャルは考えた。

 

「………ッ!!」

 

 叩きつけるように、その装甲に手を置く。

 

「悪くないが、無駄だよ。それは」

 

「…なんで、動いて、動いて!!」

 

「調整はまだ終わっていない、封印が解けるまでまだ時間はかかる。

 

「…くっ」

 

「逃げ場はない。だが、ここまで来た娘に、父として褒美をやらんとな」

 

「誰が父親だ。私は、こんなところに「イリスの目的、それをお前に教えてやろう」……ッ!?」

 

 少し横に進む。アルベールの元に照明が照らされ、向かい合った机といすが表れた。

 

「腰掛けるといい、話はそれからだ。オルランドの手記、そこに記された内容を、君に伝えよう。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 俺たちがたどり着いたのはフランスの南部。

 

 渓谷を抜けてたどり着いたのは山に囲まれた盆地の地域、過疎化した町並みを行くと、そこは封鎖された発電所だった。

 

 がれきの陰に隠れるようにひっそりと、その入り口は開かれていた。

 

 先行するのは俺とセシリアとチェルシー、あとセバスとビリーは外で待機している。

 

 おそらく、ここは既に誰かに荒らされた後、所々に踏み入った真新しい痕跡がある。

 

 

…誰か来たのか、デュノアの配下か、それともあの女の

 

 

「……あの、ダリルさん」

 

「?……どうした、セシリア」

 

 一見、不安げに見えた俺はセシリアの手を取る。昔、妹にしてやったように、横を歩く彼女の手を握った。

 

「え、あっ……その、そういうわけでは、まあ……役得ですわ

 

「何か言ったか?」

 

「い、いえ!……その、少し気になって」

 

「……あのご老人のことです。」

 

 チェルシーが言いずらい主の言葉を代弁する。そう言えば、二人はその時席を外していた。

 

「あぁ、そう言えば話してなかったな。」

 

 ちなみに、今はグレンと行動を共にしていない、道中で呼び起こしたオルコットの手の者に預け、今頃陸路でイギリスに向かっている。カレー港にある海峡を行き、今頃保護されてる頃合いだ。

 

「…大事な話だったよ。グレンさんも、きっとつらかったはずだ」

 

「そう、なんですか。イリス・ローランの過去、なんとも気になるお話ですが」

 

「あぁ、少なくとも今俺は語る気にはならない。それに………っ、セシリア、このドアだ」

 

「!…はい」

 

 通路の先、セシリアはISを部分展開し、硬く閉じた鉄戸をこじ開ける。

 

「……ここが、イリスの」

 

「あぁ、どうやらすでに空き巣にあった後みたいだ。でも、俺たちの目的はまだ先だ」

 

 ひときわ広い空間、何もない台座を中央に、あとはもう動くことのないだろう機械がちらばるのみ

 

 ガラスや鉄くずを踏み抜き、ダリルが目指すのはもう一つの部屋。

 

「表示された座標にはもう一つ、細かい数値が書かれていた。おそらく、この先に」

 

 大部屋を抜け、その先の区画、扉が並ぶ廊下を抜け、ダリルたちが目指すのは研究所のとある一室。

 

 鍵のかかっていないとを開ける、隙間が開いたその時

 

「!!」

 

 戸を開けた部屋に、動く何かがいた。咄嗟に拳銃を取りだし、後ろでチェルシーがライトを向ける。

 

「……機械?」

 

 アームが付いたドラム缶のような形状、緑色に点滅する眼光がダリルたちを見定め、しばし塾講するような様子を見せる。

 

「あの、これって急に襲い掛かったりしませんよね」

 

『…フーアーユー、フーアーユー』

 

「ひっ!」

 

「…ビビりすぎだ。たぶん、これは」

 

 白を基調としたボディ、顔にあたる位置になにやらウサギの顔が描かれた様に、敵意も何もない。

 

「道案内をしてくれるだけだ。…なぁ、俺たちはイリスに用がある。連れて行ってくれ」

 

『………ワイ、ワイ』

 

 理由を尋ねる。その回答は、すでに用意してある。グレンから託された紙に書かれた言葉。

 

「…手足を、取りに来た」

 

『……イエス、フォロー、ミー』

 

 点滅を繰り返す。了解したと伝えているのだろう。俺たちの合間を抜いて、その機会は廊下の奥へと進んでいく。

 

「行こう」

 

「…え、えぇ」

 

 

 

  ×  ×  ×

 

 

 

 区画を抜け、俺たちが付いたのは医務室の扉の前だった。

 

 機械がなにやら電子版を操作すると、ロックが開錠され重い鉄戸は開かれる。

 

…電気が生きている、この先にだけ何かがあるのか

 

 機械の後を追う、それなりに広い場所だったらしく、いくつもある扉を素通りし、俺たちが付いたのは一番奥の一室。

 

 

 一面に続く今までのどの部屋よりも暗く奥行きのある部屋。いくつも並ぶカプセルのような棺が並ぶ

 

「!…これは」

 

「…むごい」

 

 背後でえづくセシリアをチェルシーが支える。冷静を保っているが、ダリルもその光景に喉の奥に痛みを覚えた。

 

 部屋のプレートに書かれた文字は遺体安置所、おそらくここで行われた実験、その遺体が眠っているのだ。いま、眼に留まるだけで棺の数は軽く20から30はあるだろう。奥に進めば、より

 

「イリス、お前はいったいここで何を」

 

 気化された過去、ただし肝心の祖の所業は未だ不明だ。しかし、蓋を開ければ目を疑いたくなる光景が並ぶ。

 

 傍にある棺に視線を下ろした。長く放置されたのか、枯れ落ちてミイラになった遺体がそこにはある。人間の死体、眼をそむけたくなる姿。

 

 だが、その死体は

 

「?」

 

…これは、どういう

 

 

 

『ウェアー、ウェアー』

 

「!」

 

 突然、間の抜けた機械音が静寂を破る。機械はダリルたちを置いて、一つの棺の前で立ち止まっていた。

 

「…そこに、いるのか」

 

 ダリルは進む。未だセシリアはチェルシーに支えられ、その場で坐している。

 

「……」

 

『…プリーズ、ピックアップ、ピックアップ』

 

「……あぁ」

 

 その返事を了承と受け取り、機械はその棺の戸を開く。

 

 冷えた空気が漏れ出て、中にいる遺体、乾ききったミイラの女性がいた。おそらく、この人が

 

 

「…お前が、イリス・ローランなんだな」

 

「!…ダリル様」

 

「……ッ」

 

 意を決し、俺はイリスの手に握られた一冊の手記を取った。

 

「……これでいい、死体のあんたに言うこともない。あんたは、もう眠れ」

 

『……』

 

 ダリルが手記を取ったのを見届け、機械はそのランプを消した。

 

 手に持った手記、そこに刻まれた銘はイリス・ローラン、しかしその手記こそが紛れもなく

 

 

「…セシリア、チェルシー、ひとまず出よう。」

 

「え、ええ」

 

 チェルシーはセシリアの背中を押し、続けてダリルも部屋を後にする。

 

 三人が部屋を出たその時、人知れずアンチ室のドアは閉まる。

 

「!」

 

 

 扉の液晶画面のランプが緑から真っ赤に染まる。そこに表示される文字、焼却という文字が表示されている。

 

 重く響く機械音、床に敷かれた棺の下にはレールが敷かれていた。おそらく、中では今

 

 

「……ダリルさん、これは」

 

「…行こう。俺たちにできることは無い、思うところはあるけど、今はそれより」

 

 手に持つ手記、全ての理由はここに収められている。

 

 混濁した感情を無理やり流し込み、ダリルは今、そのページの一枚目を開く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お前の母と出会ったのは、まだ私がデュノアの性を名乗る前だった」

 

 

 

 語りだすアルベールの言葉、シャルは今恐らく生まれて初めて父の言葉と正面から向き合っている。

 

「ふぅん、昔の話とかするんだ。のろけ話でも聞かせるわけ」

 

「いや、期待しなくてもあれとそこまでの関係は無い。実際、あれは私がデュノアの性を手に入れるのに邪魔になったからな、その関係は白紙にさせてもらったよ。だが、まさか身ごもっていたとは、その時はずいぶん悩まされたものだ。」

 

「……ッ」

 

「そう苛立つな。あれも承知だ、私とイリスの関係はそこで終わるはずだった。だが、事情は変わった。」

 

 そう言い、アルベールはシャルの前で手記を開く。

 

「これを見なければ、私はあれに関心を持つことは無かっただろう。」

 

 日付と共に書かれた文面、フランス語で書かれているが、それは母の字ではない。

 

「これが気になるのか、これはイリスの手記の写しだよ。あの研究所の職員がひそかに持ち出したものだ。だが、この情報を世に出すことは何故かしなかった、理由がわかるかい?」

 

「…知らない、興味なんてない」

 

「恐怖したからだ。イリスの発明に、その思想に」

 

「!……それは」

 

 開いたページ、そこには人の形と、おそらくISの図形か、専門的な言葉と共にこと細やかに記されている。

 

「あの聖剣の設計だよ。そして、これが」

 

 ページを開く、そこにはひときわ大きく人の姿が記されていた。

 

「なにこれ、なんで手足が……ッ!?」

 

 言葉を失う。その図に記された絵の人物名、確かにそこには自分の名前が記されている。

 

 手足が無い人間、その名前が自分であったのだ。

 

「…どういうこと、これは」

 

 

 

 

  ×  ×  ×

 

 

 

 奇しくも、同じタイミングで彼もまた手記を開いている。

 

 イリスが作り出したIS、その設計を記したページで、ダリルたちは言葉を失くした。

 

「…ダリルさん、わたくしは何を見ているのでしょうか。こんなこと、どうして」

 

「あぁ、悪夢なら、是非とも冷めて欲しい。」

 

 痛ましい、だが、その事実はダリルにとって理解を得る物だった。なぜなら、それはかつて自分にあったものなのだから。

 

「どうりで、あの被験者に欠損部位があったはずだ。」

 

 確認しただけで、彼ら彼女らには腕や足、そのどちらかまたは両方とも欠損していた。

 

 そして偶然にも、自分には欠損した手足でのみ機能する、あの技術の知識がある。

 

 否定したい、だが、それこそがイリスの求めた研究の成果なのだ。

 

 実の娘を捨て、秘密裏に完成させたIS、だがそれはあくまで外側、建前、装置を許容する器に過ぎないのだろう。彼女の発明は、パイロット自身に起因する

 

 手記に記された名称、それは神のいたずらか、繋がるはずのない未来と過去に一つの共通点が生まれた。人型兵器のスペックを最大限に発揮させる夢のインターフェイス、四肢に接続された義肢から直接機体のコントロールを促す。

 

 遠い宇宙の彼方、雷鳴轟くサンダーボルトの海で、両軍の間に悪夢の名を轟かした兵器、そしてそれは、今もダリルの手足に焼き付いている。

 

 

 

 

「プログラムコード……リユース・(サイコ)、デバイス。……使用条件は、パイロットの四肢の」

 

 

 

 切断。そう言い放ったその時

 

「――――――ッ!!!?!?」

 

「お嬢様!?」

 

 聞くにおぞましい思想、耐え切れずセシリアは床に吐しゃ物をまき散らす。だが、無理もないだろう。吐きたい気分は俺も同じだ。

 

 かつては自分たちの救いになった彼女の作った子が今、過去の異なる世界にて災厄の元凶としてその存在をあらわにしたのだから。

 

 

…タイムリミットは二週間、その言葉の意味はこれか

 

 

 どうしてかは不明だが。イリスはこの時代で作ったのだ。凡人を超人に変える究極のシステム、リユース・(サイコ)・デバイスを、それを搭載した兵器を

 

 そして、その理論は今、シャルをパイロットにすることで成立している。

 

「…えぐ、ひぐっ……どうして、こんなことを」

 

「お嬢様、落ち着いて……お気持ちは察します、ですから」

 

「だって、それが本当なら、イリスは、アルベール・デュノアは、実の娘を!!」

 

「……あぁ」

 

 義手に力が入る。みちみちと、ギアがきしむほどにモーターが熱くなる。

 

「胸糞悪いよな。だが、現実だ……アルベールは、シャルを、リユースサイコの秘検体にしようとしている!……あの子の手足を、切り落として、だッ!!」

 

 壁面を叩く。自分でも驚くほどに感情が燃え上がっている。

 

 許せるはずがない、そんな理不尽を、どうしてあの子が背負わなければならない!!

 

 

「セシリア、チェルシー」

 

「……はい」

 

 語る言葉はいらず、その意思は一つに

 

 この世界に自分が存在する意味、それを今ここでダリルは知った。

 

 やることは依然変わらない、自分は兵士で、ただのパイロットだ。戦う相手は見えた、挑む道理もここで明らかになった。

 

 

…やらせてたまるか。手足を失くす悲しみを知るのは、俺みたいな奴で十分だ!

 

 

 誓いを抱き、戦士はその心に炎を灯す。

 

 

 遠き未来のソラから来たりし戦士が、否、生ける屍が撃鉄を起こす。

 

 

 今、黄昏の彼方より、罪におぼれた生者へ夜をもたらす。

 

 

 死をもたらす屍の夜(トワイライト・リビングデッド)、雷鳴の彼方より銃口は向けられた。

 

 

 

「シャル、安心しろ。俺がお前を救う、そのためなら、俺は」

 

 

 

 ミラージュだろうと、アルベール・デュノアだろうと、イリスの遺産も、全て関係ない。

 

 

 

 

 

 

 

「立ちふさがる敵は全て、俺が殺す……ッ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




今回はここまでとなります。

ついにリユースサイコデバイスの設定を出しました。ようやくサンボルらしさが出てきた気がします。

ここまで来るのにずっと長くて、本来なら二章で納める話が気付けば三章にまで長引きました。軽い展開にするつもりが、フランス編がここまで長くなるとは正直想定外でした。むしろなんとか三章の序盤でここに着地できたことに安堵していたりします。オリジナル展開は難しいものです。

とにかく、これでアルベールの株がとことんまで落ちたはずです。敵として抜かりはなし、今後のダリルが魅せる主人公ムーブにご期待ください。そして最後に、もっとサンボルはやれ、二次創作界隈に、ハーメルンに
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