無限の蒼穹に雷鳴は轟く IS× THUNDERBOLT    作:サンボル好き

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 ダリルアッガイの販売が待ち遠しい。アニメ版の装備6種類プラスゾックフォートレスでバンダイさんおなっしゃっす。

 EOSとの戦闘です。少しサイエンス要素がありますが、まあ足りない知識は勢いで、それでもお気になる方は感想で指摘していただければ


反撃の円舞曲・プレスト

「……逃げた、いや」

 

 暗視センサーを切り替える。サーマルセンサーで周囲の温度から敵の位置を探す。

 

 

……熱源はバラバラ、荷の中のナマモノのせいか

 

 

 コンテナの上を足場に、下を見渡すが遮蔽物は多層に広がり、その上コンテナの内部にも温度反応がある。趣味の悪い金持ちの思考に唾棄する。

 

「……まあいい、見た所単独行動のようだし、やれるだけやりますか」

 

 アサルトライフルを背部に、その手に持つのはもう一つの獲物

 

 男の駆る機体はベルサーガタイプ、夕闇の色を纏う、静かなる執行者

 

「隊長と連絡が取れない今、俺は俺なりに動きますよ」

 

 男の名はスマイル、ファントムタスクのミラージュ直下の部下

 

 かつて、所属していた部隊はいわゆる特殊部隊、左目を失くし部隊から外されたが、未だその腕前は健在。

 

 死神と揶揄される国軍直属のエリート部隊、闇夜における敵の掃討にこそ執行者の本領は発揮される。

 

 

 

 

  ×  ×  ×

 

 

 

「……シャル、すまないがここに」

 

 コンテナの中、そこはお世辞にも良いといえない場所。檻や鳥かごには生きた動物が静かにこちらを見据えてくる。

 

 すえた獣臭、少し戸を開けなければ間違いなく害すら及びそうな場所。

 

 

……だが、ここならサーマルセンサーから隠せる

 

 

 敵の砲撃、それはダリルの回避コースを予測し、的確に放ったもの。まず間違いなく、音などでやたらめったらに撃ったものではない。

 

 この暗闇で使えるのは微細な光粒子を頼る暗視カメラ、そして温度探知のサーマルカメラ

 

……敵は俺と同じ、このアッガイと同タイプの機体か

 

 ダリルの駆るアッガイにもそれらの装備は備えている。だが、それでも今周囲には敵の痕跡はない。

 

 画面上には乱雑な赤い常温のものがちらほらと、先のような荷物もあるのか、それが深い霧のごとく視界を遮る。

 

 EMPの影響からレーダーは使えない。であれば

 

 

「……パッシブソナーで強襲、悟られる前に一気に仕掛けるッ」

 

 アッガイに備わる音波発信

 

 潜水艦のソナーのごとく、深海の闇から敵をあぶりだす。

 

 静穏駆動の歩行で行進、敵のいる位置にだいたいのあたりを付け、まずはシャルの位置から離れる。正方形のマップ、コンテナが詰まれ格子状に道が作られた中、中央の十字は大型のトラックが行き来できるほどに道が開けられている。

 

 暗視スコープを起動、大通りとコンテナ上に敵の姿は見えない。小道に隠れているなら

 

 

……いや、待て

 

 

 周囲を見渡す。自分がそうしたように、奴もコンテナの内部を利用していたら

 

 

……俺の場所だけが特定される。奴が待ち続ける伏兵なら

 

 

「あぶりだすか、デコイを使う」

 

 ロックを解除、装甲がほどけダリルはアッガイから降りる。

 

 待機状態のまま、後ろに回りすぐ様に行動

 

 ハッチを開き、内部機関から配線を外し、音波発信のパーツを取り出す。

 

「……頼む、まだ悟られるなよ」

 

 入念に気を使い、作業を進める。もし敵が徘徊をしているなら、EOSから降りたこの状態は間抜けもいい所だ。出来るだけ音を立たせないように、ダリルはアッガイから必要な部品をパージする。

 

 

……背部ラッチのドローン、有線式コンソール、即席だが、頼むッ

 

 

 みるみる完成していく即興のデコイ、アッガイの腕部から伸びるワイヤーから繋がれ、自走機能を持つ偵察ドローンにソナーを取り付ける。

 

 はたから見ればリードに繋がれた犬、だがこの極限な環境であれば有効な打開策といえる。

 

 

「……ッ」

 

 アッガイに搭乗、東西横一線の大通りに向け、自走ドローンを先行。

 

 微かに聞こえるモーター音、この程度であれば反響する環境音に紛れる。

 

 

……ポイントまで、6m…………3m……1m

 

 

「……ポイント到達、ソナーON」

 

 画面コンソールを展開、コンテナに身を隠し、ドローンの周囲に広がる音の波紋、その波にかかる獲物を

 

 反響による3Ðマッピング。コンテナの壁に囲まれた迷宮に、波を不規則に遮る動き

 

 

「……来るか」

 

 ドローンの暗視スコープを展開しつつ、音を隠さず非行で追跡

 

 十字路で交差する瞬間、そこを狙い撃つ

 

 右腕部マシンガンを展開し、見えた瞬間にフルオート。EOSを倒すのであれば、十分な火力だろう。

 

 

……敵が接近している、迎え撃つなら

 

 

「……いや、待て」

 

 違う、敵が接近するのは、この状況ならおかしい。

 

 位置を悟られ、追跡してくる攻撃になぜ迎え撃つ。パッシブで明らかにしたドローンと敵の相対距離はさほど近くない。であれば、二度隠れるか、振り切る選択肢もあった。

 

 意をつくためか、だとしても仕切り直しの選択肢をこうもあっさりと捨てる。何かある、このままドローンを先行させるより、敵にデコイの手段を悟られるのを避ける方が

 

 

……待て、ちがうそうじゃないッ

 

 疑問、ふと思いつくそれは刹那の判断だった。

 

 サーマルセンサー起動、ドローンの全方位カメラでも同様に展開。

 

 まだ角には出ていない、コンテナの遮蔽物越しに温度を探知

 

 

……廃熱機関、熱の動きはそれ、大きさから言って小動物程度

 

 

 動きを見る。妙に機械じみたそれは、あまりにも不自然である。

 

 

……奴もデコイ、ならまだどこかに

 

 

 そうとわかれば転進、ドローンをこっち側に引き戻す。

 

 

 その時、ドローンにはこっちの映像が、反転させたことでコンテナに隠れる自分自身が移る。

 

 そう、移っているのだ。このアッガイの形が

 

 

「!」

 

 どういうことだ。

 

 何故俺の温度が映っている。

 

 廃熱機関は最小限に、止まっていれば映るはずがないほどの温度しかない。

 

 

 

……ちがう、これは逆だ

 

 

 

「!」

 

 背後を振り返る。荒い音を立たせるのに構いはしない。

 

 敵は近い、このどこかに

 

 

「……ッ!?」

 

 

 脳裏をよぎる雷、何かを察した。

 

 思考よりも前に、反応が体を突き動かした。

 

 

……間に、会えッ!!

 

 

 腰にラックしているハンドアックスブレード、握り剣の刃を横一線に振るう

 

「!?」

 

……ガギンッ

 

「……なに、おいおい」

 

 鍔競り合う刃と刃、不思議と火花は散らず、暗視で捉える敵の姿には闇にと変わらない黒々とした機体。

 

 前に一度、軍の払い下げ品を乗せるカタログで、その機体を見た覚えがある。

 

 

……ベルサーガタイプ、N型のカスタム機かッ

 

 

 ベルサーガシリーズ、ドイツ製のEOSの中で、N型は夜間任務に特化した特殊作戦使用。

 

 レーダーから逃れる特殊な装甲と塗料のおかげか、故にEMPの影響を逃れている。このアッガイと同じように

 

 生産年代はごく最近、スペック上であれば通常機体よりもこと攻撃性能において高い数値を叩き出す。

 

「……ッ」

 

……パワーアクセラレータで負けている。索敵型のスペックでは、接近戦は分が悪い

 

 ブレードを構えたまま、腕部のガトリングを斉射、しかし敵の機体は容易に弾頭をいなし、直撃する弾は斜めに弾かれるだけでダメージは見込めない。

 

 コンテナ上部へ逃げられる。

 

 距離を開き、戦闘は一時仕切り直し、だが

 

 

「この状況はマズイ、仕方ないとはいえ火器を使ってしまった……ッ」

 

 周囲に散る放射熱。冷却機能だけではすぐに取り払えない温度

 

 しかも、今はそれだけではない。この状況に陥った根本的な原因。

 

 

……あいつ、この空間の温度を下げているッ!

 

 

 手段は不明、しかし現に周囲の温度はさっきよりもずっと低い。空調は使えない今、通気口の自然な空気循環だけではむしろ温度は上がっていく一方

 

 なのに、今このブロックは冷蔵庫のように冷えている。

 

 装甲表面に走る霜、機体熱は下げてくれるが、それ以上に敵に温度を見られてしまう。

 

 

……ガシャッ

 

 

「!」

 

 上段斜めから迫る刃、左側のバックルで受け止める。

 

 返す刀でハンドアックスのフック、だがそれも装甲に至る前に、敵の持つ小さなナイフ、いや、その形状から恐らくクナイ、攻撃は止められ、じりじりと根本のパワー差で押されていく。

 

『……あんた、意外とやるねぇ』

 

「その声、あの時のスキンヘッドかッ」

 

「……あの人にも見習ってほしいなぁ、こいつはファッションだ。ハゲでも亀頭でも、ねえッ!!」

 

 

 

……ギギ、ガギッ、ガギンッッ!!!

 

 

 

「!?」

 

 刃が組み込む。バックルを通り抜け、装甲を切り裂き骨子である義手にまで届く。

 

 

『あと少し、貰うぜ左腕』

 

「……させる、かッ」

 

 

……ボシュンッ

 

 

「!」

 

「フリッジヤード、展開!!」

 

 垂直発射する機雷ミサイル。空中で発したそれは水力を失いゲル状の化学物質を纏う網を広げ垂直に落下。

 

 敵が後退、千切れかけの腕を振りほどき、スラスターで緊急回避

 

 両者の間に距離が開き、同時に落ちた機雷が炸裂。

 

 爆炎が一瞬の光を照らし、その後黒煙が辺りを包む。

 

 

「……ッ」

 

 逃げるしかない。

 

 接近戦では勝ち目がない性能さ、そして何よりこの現象を暴かなくては

 

 

「……気づいたか、だがもう遅いな」

 

 スマイルはサーマルセンサーを起動。

 

 距離を置かれたがすぐにでも追いかけられる。

 

「冷ます暇は与えねえ。動き続けてもっと熱くなりな」

 

 

 

 

  ×  ×  ×

 

 

 

 

「……ッ」

 

 感覚がある。血が通い、肉が震える。

 

 骨が体を支え、自分の肉体は世界に立った。

 

「……そう、これは……この体は」

 

『――――ッ!!!?』

 

「?」

 

 騒々しい機械音、指向性をもって、乱雑に響く生きた音、さえたばかりの思考でも、それが戦闘であるとすぐに理解する。

 

 戦っている、だれが

 

……ダリル、ローレンツ

 

「そう、彼が……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……ッ」

 

 敵が迫る。回避コースへ向け的確にクナイが飛んでくる。見えている、サーマルセンサーで一方的に、こっちの位置を掴んでいる。

 

 

……これほどの低温、普通じゃありえない。まず間違いなく、何か細工をしている

 

 

 通路内を滑走していくうちに、床に見られる凍結と異様な水浸しに気づく。

 

 おそらく、敵の機体は過冷却水を使い、機体自体を極低温に冷やすことでステルス機能をもっている。そさらにその冷却水を散布することで、今この区画全体を冷やし周囲の温度差をより明確にしている。

 

 つまりはじめから、敵は待ち伏せも何もしていない。温度差の優劣でこちらを狩りに来る前提で動いていたのだ。

 

 戦闘経過から数分、この広い区画でどれだけ冷却を維持できるか、散布する以上てきには能動的に冷却水を生成する機構があってもおかしくない。

 

「……ッ」

 

 しかし、元々こちらに持久戦の選択はない。

 

 脱出時間まであと数分、あと少しで列車の修理が終わる。セシリアなら待機するように説得してくれるかもしれないが、ガレやその部下達、さらにはビリーにセバスも、彼らはセシリアの身の安全とモーレスの身柄を優先するはず。

 

 待つ選択肢は無い、このままではじり貧だ。

 

 打って出るしかない。片腕を失った支援用の機体で、接近戦で

 

 

……賭けに出る、それ以外に活路はないッ

 

 

 腰にマウントした有線式のソナー、先に浸かったそれをもう一度投擲。ソナーを使ったのは本体ではないとまだ知られていない。一瞬、敵の索敵に迷いが生じれば

 

……一瞬だ、望み通り片を付ける、接近戦でッ

 

 スラスタージャンプ、音波に反応が合った方向へ飛躍。コンテナの上に陣取る敵の機影を暗視カメラで目視。一瞬で気を取られたのか、敵の投擲は間に合わない。モーションに入る前にこっちの射撃でつぶせる。

 

 

 

……一撃だけだ、一撃さえしのげればッ

 

 

 

『は、そこかッ!』

 

「らぁああッ!!」

 

 右腕部マシンガンを斉射、牽制の弾幕、しかし敵は避けるまでもなくそのまま突っ込んでくる。

 

 弾は当たる。が、不自然なまでに弾かれていく。

 

「やはりかッ」

 

 射撃が致命傷にならないのは想定済み。

 

 奴は過冷却水を循環させ、装甲面を極低温に下げている。故に弾丸は極低温にさらされ超伝導体となり、弾丸そのものにマイスナー効果が発生する。

 

 そして装甲表面に発生させる特殊な磁場、レーダーを阻害させるための電磁パルスが超伝導体の弾丸と反応し、結果弾丸は装甲を避けるように軌道を湾曲させる。

 

 

 

 つまり、敵の機体には実弾が通じない。弾丸は命中し衝撃を与えきる前に、磁場に流される。

 

 

 

「はは、効かねえさ……弾丸は勝手に避ける。近づけば、こいつだ」

 

 スマイルが構える。利き手にはコールドブレード、左にはコールドクナイ

 

 特殊な金属で作られた刃は極低温であっても強度と靭性を失わず、さらに触れる刃は敵の装甲を極低温で脆弱にし砕き斬る。

 

 接近でも驚異的、遠距離もいわずもがな、EOSというにはあまりにもハイスペックな機体

 

 想定している状況が違う。このアッガイは索敵支援、敵は強襲近接型。正面からかち合えば、その結果はあまりにも、あまりにも見えすぎている。

 

「……隊長、あんたには悪いが、先にやらせてもらう。その首貰うぜ、義足野郎!」

 

「!?」

 

 よりにもよってその耳障りな呼称を使うか

 

 

……あまり、苛立たせるなッ

 

 

 機体スペックで圧倒されるこの状況、いやでも過去と並べてしまう。

 

 だが、それでも俺は挑んだ。

 

 死中とわかった上でも飛び込む。戦場で死を見てなお、生存を、勝利の道を見逃さなければ

 

 

……活路は見える、絶対に見逃さない。俺は、スナイパーだッ!

 

 

 右手のアックスを放棄、腕部ジェネレーターを開放

 

 マニピュレータ中央の発信機から伸びるピンク色の刃、低出力だが紛れもなくこれは

 

『ビームサーベル、なるほどな……だがッ』

 

「……ッ」

 

 当然、反応してくる。袈裟切りに放つ直剣の刃は翻り、クナイを捨てた左で俺の右手首を掴む。

 

 振り下ろされる直剣、関節を狙った斬撃は容易に右腕を切り落とす。

 

 

……あぁ、当然そう来るだろうな

 

 

 物理的な攻撃の態勢なら、当然この一撃は防ぎに来る。完全に殺し、万全を切った上で殺しきる。

 

 敵は手練れの軍人くずれ、腕前も、読みも、必ずそう帰結するようになっている。

 

 

「だが……それを、読んでいたッ!!」

 

 スラスターを加速、腕を失ったまま機体を敵にぶつけ、さらに加速

 

『おまえ、まさかッ』

 

「……ッ」

 

 過冷却水は安定状態だからこそ液体でいられる。なら、そこに衝撃が加われば……当然液体は個体に変わる。血管をめぐる血液が全て凝固するように、精密な内部をめぐるパイプであれば

 

「固体化した冷却水は膨張し、機械を内部から破壊する!」 

 

『はっ、だからこのまま地面に叩きつければ勝ちってか……甘いなッ』

 

 スラスターが吹く。態勢は入れ替え、アッガイを下に敵のN型が空中でマウントを取る。

 

『落ちるのはお前の方だ。この機体の特殊過冷却水に衝撃はあたえられないッ……これで、最後だッ』

 

 

 

……ガギンンッ!!?

 

 

 

『……な、お前まさか』

 

「あぁ、そうだな……落ちるのは、お前の方だ、スマイルッ」

 

 引き金は引かれていた。条件付きで、敵と密着したこの体制になったとき、機体のプログラムが失った腕の代わりに最後の撃鉄を起こす。

 

 ただし、うち放つのは弾丸でもなければ、焼き切る光線でもない。それは、音響探査用に地中に放つ鉄心

 

 背部ラックに備わったそれは折り畳み式で、まるでサソリの尾のごとく足元から敵の背後に回り、今その毒牙を打ち込んだ。

 

「……地中から音を拾う、音響探査用バンカーピアース、本来の用途とは違うが、今は好都合だ」

 

 敵の背後にあけた穴、装甲を撃ち抜いたが、恐らく搭乗者にまでは届いていない。だが、これで十分だ

 

 スマイルの言う、その特殊な過冷却水に衝撃が届いた。準安定状態は崩れ、液体は次々に装甲内部、そして鉄心を伝って内部へ

 

 極低温の液体は全てを蝕む。それが肉体であれば、焼け焦げるほどに肌を痛みで焦がすだろう。

 

 

 

『ぐ、ぐぁああああぁあああ!!!?!?!』

 

 

 

「凍えて眠れ、そして砕けろッ……落ちるのは、お前の方だッ」

 

 

 

『あぁあ、まだだぁあああッ!!??』

 

「!?」

 

 爆発、アッガイとN型の双方ともに弾かれる。

 

 捨て身覚悟の自爆、違う、これは

 

「!!」

 

『落ちろぉおおおぉお!!?!?!?』

 

 スラスターで加速、腕が無いアッガイは容易に捕まれ、そのまま地面に追突され、さらに加速で地面を削る。背部からは知る放電、間違いなくスラスターがやられた

 

「なにを、どうして」

 

 間違いなく、超過冷却水は氷と化した。機体は活動を停止して、登場者に芯こっくなダメージが回ってもおかしくないはず。だが、現に今

 

 

……いや、あれはッ

 

 

 装甲が無い。

 

 爆発はおそらく内部の火薬、つまりは炸裂式の装甲。想定していたのだろう、過冷却水が漏れ出て、機体が自壊する危険に対した防衛機構。

 

「……機体に、冷却水が回りきる前に」

 

 装甲をパージすることで、致命的な被害は防いだと

 

『はは、クソが……機体内部に凍結が、まともに戦えねえな……コールドブレードもねえ、あるのはクナイが一本』

 

……がだ、てめえを殺るには

 

「一本あれば、十分だ……ハハ」

 

「……ッ」

 

 重い足取りで、ゆっくりとこっちに迫る。もはや期待の駆動部分であるN2ドライブも麻痺しているのか、無駄に重い鎧をまとって迫る姿は酷くゆっくりだ。しかし

 

『義足、いや……義肢野郎のあんたには、もう逃げることも、それを脱ぐこともできねえな』

 

 腕が無い今、手動でアッガイから降りることは叶わない。

 

 万策尽きた、その事実が嫌でも理解できてしまう。

 

「――ッ!」

 

 ここまで来てやられるのか。

 

 シャルを助けて、あと少しで脱出という所で

 

 

「……ら、れるか」

 

『あっ?』

 

 ここで終われるか。

 

 助けると誓った。あと少しなんだ

 

 腕が無ければなんだ、まだ足は動く

 

 

……考えろ、ここで終わるわけにはいかない。シャルを、あの子を助けると誓ってここまで来たんだ

 

 

「死ねるかッ、こんな場所で、まだおれは!」

 

 腕が動かないくらいでなんだ。立てないくらいでなんだ

 

 理不尽に抗った。どんな局面でも、例え死人に落ちてなお、俺はまだここで生きている。生きて、抗い続けている

 

 

『もういい、お前は死人だ……死人は死人らしく、墓に沈めッ』

 

「――――ッ!?」

 

 迫り来る、刃の軌道は心臓への直進。

 

 起き上るにはまだ遅い、悲鳴を上げるフレームで回避が間に合うか。

 

 

……避けろ、数センチ、それだけでいいんだッ

 

 

「まだ、死ねるかぁあ―――――ッ!!!!」

 

『終わりだあぁあああッ!!??』

 

 

 迫りくる凶刃、生還への分帰路はすぐそこに

 

 避けろ、避けろ

 

 数センチでいい、ほんの少し、この足を動かせばいい。

 

 

……動け、動いてくれ

 

 

 

「……おれは、俺はッ!!」

 

  

 

 

 

 

 

『死なない、あなたは死なせわしない』

 

 

 

 

 

 

 

 

「!?」

 

『…………なッ』

 

 刃が止まる。切っ先はあと数センチ、その距離が今絶たれた。

 

 暗く重い闇の世界で、輝きが空間を照らし続ける。暗視カメラが切り替わり、通常のカメラ機能がそれを捉えた。

 

「……ッ」

 

『嘘だろ、なんでISが』

 

 IS、スマイルの目にも見えている。それは紛れもなく、最強の兵器が放つ神々しさだ。

 

 だが、それよりも

 

 その純白の鎧をまとう騎士、登場者の方に俺は意識が向く。

 

 手に持つ大剣、それは確か、シャルが持っていた剣と酷似している。

 

「……消えなさい」

 

「!」

 

 一瞬、背丈ほどある大振りの大剣を片手で振るった。

 

 乱雑に振るった剣は切れ味はないのか、鈍い音と共にスマイルが吹き飛ばされた。大破しかけとはいえ、こうもあっさりと。

 

「……これで、もういいかしら」

 

 冷ややかな目で、静かにISを解く。

 

 やはりその姿は、ISスーツを纏う金髪の少女

 

「……シャル、いや」

 

 カメラ越しの映像で、その目つき振舞い、明らかに何かが違う。何かが降りている。

 

「まさか、お前は」

 

「……お前呼びとは、あまりよろしくないわね」

 

 低い声、年相応とは思えない落ち着きよう。

 

 暗闇の中、光ない世界で俺の目を見て彼女は言った。

 

 

 

 

 

「私はイリス、イリス・ローラン……娘の体を借りて蘇った、ただの屍よ。ダリル・ローレンツ、あなたと同じ……ね」

 

 

 

 

 

 




反撃の円舞曲、3部構成でお送りしました。

アレグレット=やや早く
ヴィヴァーチェ=活発に、より早く
プレスト=急に、最高に速く

こんな感じで意識して書きました。なんか付け加えてるけどなんやこれと思われた方、こんな意味です。



次回、イリスがゲスト参加で過去編挟みます。
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