無限の蒼穹に雷鳴は轟く IS× THUNDERBOLT    作:サンボル好き

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明けましておめでとうございます。今年もどうかお付き合いください、遅筆な件をなにとぞ


ラストメモリー

 シャルロット・ローラン。呼称Sは基本世界線において4番目のヒロインとなる存在。出会い方、生い立ち、その過程は酷くつまらない平凡な過去。故に調整の必要があると判断。

 

 必要行程、母親を物語のキーポイントにするべく、バッドエンドの運命を調整。最適な処置として手足の欠損を元に筋書きをつくることが名案

 

 基本世界線、呼称Sとその母親個体の平穏な人生は破棄、破壊行程に伴い母親は役目を終えたのちに処理。以降は基本世界線を準拠しデュノア社の子飼いとして救い無き幼少期を経過。基本世界線から逸脱させ、呼称Sは最重要人物の覚醒を促す有用な要素として機能することが予想される。

 

 IS学園入学、彼はそんな彼女の境遇を知り、手を差し伸べ呼称Sを救う。以上をもって、現世界線の改竄を端的に要約、ここに帰結する。

 

 バタフライプラン、S項の完了の後、この記載を全て破棄。これは最高決定であり、当該者、篠ノ之束本人をもってしても否定は不可とする。

 

 

 

 

……以上、端末の記録より引用

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―某所― 

 

 

 うさ耳を付けたメイドの少女、バカみたいな表現だか、その通りとしか言いようがない。メイド服に機械で出来たウサギの耳。女はロッキンチェアーに揺られながら、目を閉じてどこか遠くを脳裏の先に見ていた。

 

 世紀の科学者、篠ノ之束。彼女は基本自身のテリトリーからは出ることはない。とくに、それがすでに意味の無い事態であるなら、彼女はただ機械を通じて情報を得るだけ。

 

 

 すでに、処分用の対人ゴゥレムはことを終え、最後の自爆も完了した。

 

 

 今、彼女は気分がいい。描いたシナリオ。その下ごしらえが完璧に整ったこと、それがたまらなく愉快で仕方ないのだ。

 

 

「さて、処分は終わったし……お茶でもしよっかな。」

 

 

 気軽に、スクールの宿題を終えたような気軽さで彼女は事態を流した。彼女の下した命令で、最低でも50ほどの人間が処分という名目で殺されたというのに。

 

 関心は持たない。篠ノ之束に平凡な人間らしさなど求めるだけ無駄である。

 

 

「ん、ねえまだ? お茶とお菓子、早く持ってきてよ……ねぇ。」

 

 

「…………わかった」

 

 束に呼ばれたその女性、メイド服を身に付けた赤毛の大人。感情に乏しい反応で、茶会の品を運び主にかしづく。

 

 

「……おもしろくないね、君は」

 

「申し訳ございません、マスター」

 

「ふん、その反応がツマラナイって言ってるのに…………あ~あ、オリジナルを見習って欲しいよ。ねえ、聞いてるの? ミラージュ・ツー」

 

 

 

 

  ×   ×   ×

 

 

 

 

 一瞬、数えで秒も至る間もなく、全てはことを終えた。

 

 振るった刃はゴゥレムを切り裂き、更には誘爆もさせる間もなく、その存在を食らい消し去った。

 

 世界初、リユースサイコデバイスを搭載したIS。リュミアーレ・ラ・デュランダル。その性能、特逸した能力。それらをもってすれば暴走IS三機の制圧も容易く行えた。だが、その代償はただではすまない 

 

 

 

 

「――――――ッ」

 

 

 

 視界が赤く染まる。拭えど拭えど顔は地にまみれている。

 

 脳が焼ききれるように痛い。ISの繋がりが立たれた今も、精神は火に炙られ今にも消え入りそうに。

 

 

 理由は、明確。リユースサイコとISがもたらす当然の結果。ただの人間は、ISのもつ膨大な情報量を受けきることはできない。通常の操作系統であるイメージインターフェイスは、人が生きたまま、リスクなくISを使用するための術である。故に、あの束はこのシステムに固執したのだろうか

 

 

「……ッ」

 

 

 待機状態、装飾剣の形に戻ったそれは未だなお自分と繋がっている。それはおそらく、使用者の生存を保つため

 

 一度システムを使えば、機械は使用者と密接につながる。これまでの欠点、リユースサイコへの適応値が低い人間がすぐ死傷するケースから、このISにも安全装置として目に見えないバイパスが伸びるように設計は立てられた。

 

 握った剣はもはや武器ではなく生命維持装置に他ならない。へその緒で繋がれて生存する赤子と大して変わらないのだ。

 

「……ッ」

 

 強く、刃を握った。自分も加担した、彼女の発明の犠牲。システム完成のためにどれだけの人間を灰人にして殺したか

 

 始まりは娘を助けるため、しかし結果は救いのないバッドエンド。イリス・ローランという人間には何も残らない。何も得られない。残ったのは一握りの罪。

 

 今、ここでISの初期化をすれば自分も彼ら彼女らと同じく、ISの演算補助が消え壊れた脳機能はそのままに、息を立つのに数十分もかからない。

 

 だが、だとしてもまだ

 

 

 

……まだ、まだできることはある

 

 

 

 自分は終わる存在、だから篠ノ之束は全てを見せて、そして嘲笑い私を片手間に葬った。

 

 信じられないことに、彼女は全てを知っていた。この先起こること、未来に何があるか、ISがもたらした世界の顛末、まるで人類という登場人物を操る戯曲家のように、高い位置から見下ろしているのだ。

 

 

……あいつのたわごとは、真実。シャルは、残酷な運命を背負った先に、イチカ・オリムラという青年に助けられる。

 

 

 私の書いた手記を頼りに、その男が娘を救う、それが正しい歴史だと彼女の見せた予知の日記に記載されていた。

 

 

「…………ッ」

 

 

 敵は異次元の存在、到底かなわない神のような相手。だが、このままただ朽ちるだけなら、せめて

 

 せめて、彼女の筋書きに、いやがらせ程度だとしても

 

 

 

 

……決められた運命を、変えたいッ

 

 

 

 

「理不尽に、抗いたいッ……私は、あの娘のために…………」

 

 

 

 

 

Fin~ラストメモリー~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―アミアン市・郊外―

 

 

 

 

 

 時は、現代に戻る。欧州に混沌をもたらす結末はすでに打ち砕かれた。残るは凱旋、理不尽を打つ倒した彼女ら、彼らは帰路を目指す。

 

 その地は、本来であれば何もない、ただ田園と丘陵地帯が立ち並ぶ場所。しかし、大昔にその土地て地盤沈下が起こり、かの地はフランスで最も絶景なジオ・スポットして近代に名を馳せた。

 

 フランス北西部、アミアン自然公園。大地の滑落が生み出した大渓谷、その地を走る列車はもとは観光産業の為、しかし自然保護のため一般市民が利用することはなく、産業用の路線として運用が成されている。

 警告を走る地下水の川、鉄橋から覗く景色はまさしく絶景、人の口を開かせて塞がなくさせるのも無理はない。

 

 

 

「……」

 

 

 貨物区、窓を開き見張りと銘打って、同席したガレの部下たちは戦勝気分から観光と腑抜けている。

 

 そんな彼らに目をくれず、彼ともう一人だけはこの状況のなか真剣に周囲の警戒を怠っていない。

 

 

「……ッ」

 

「少尉、黙らせますか?」

 

「いい、煙たがられるだけだ」

 

 セバスの気遣いをビリーはそっと降ろす。しかし、手渡された防寒のジャケットは仕方なく受け取る。

 

 ビリー・ヒッカム中尉、セシリアの護衛として派遣された正規軍人。今はその職務の継続、追手を警戒して車両の見張り代から周囲を目視で警戒。

 

 列車の天窓から覗く見張り台、突風吹き荒れる場所故に好みの煙草も吸うこともできない。今この頭に溜まるチクチクはニコチン切れか、それとも下の馬鹿どもの間抜けっぷりか

 

 

「……ッ」

 

 

……馬鹿どもが、まだ国境も超えていないのにうかれやがって

 

 

 実際、今は逃げているというよりは、足止めを食らっている方が正しい。自分たちが使ったのはアルベール、そしてモーレスの組織が作った非合法の品を運ぶための線路と、そして列車。特にこの列車は兵器運送もこなすためのもので空爆にすら耐えられる堅牢な仕組み、つまり見た目があまりにもいかつい。そんなもので市街地の路線を走ればたちまちパニックであるし、立場上これ以上他国で荒事を起こすわけにもいかない。

 

 故に、今は時間を食ってでもこの秘境にある架線を使い、イギリスドーバー海峡を横断するアクアライン、その脱出路があるカレー港にたどり着かねばならない。

 

 イレギュラーは、起こり得る。未だ安全などできない、ここは戦地で、自分たちは消耗した弱軍なのだから

 

 

 

「……ビリー少尉、代わりましょうか」

 

「いや、いい……お前はアッガイの整備を頼む。弾薬の補給、バッテリーは何時でも動くように温めておけ」

 

「……来るのですか?」

 

「……さあ、だが」

 

 

 

 

……ガタン、ガタン

 

 

 

 

 

「……ッ」

 

 何度目かわからない鉄橋を超える。河川を挟んだ渓谷を超えて、蛇行するように谷を進み、時間をかけて北へ進む。

 

 両側を斜面に挟まれた場所、カーブのある地点は正面から奇襲を頂くこともあり得る。

 

 警戒は万全にして足りないこともなく。そしてなによりも

 

 

 

……感じるな、嫌なむかつきを

 

 

 希少な戦力、唯一とってもいい戦場の空気を多分に知っている戦士として、ビリーとセバスは意思を同じくして感じ取る。

 

 敵は、自分たちを狙う第三勢力は

 

 

「来るさ、必ずな……俺たちは、まだ勝ちきってもいない。」

 

「……」

 

「審判はゲームセットを告げちゃあいない……引き締めて待つんだ。ここから先がアディショナル、最後の踏ん張りどころだッ」

 

 

 

 

 

 

 

次回に続く

 




 今回はここまで、ようやく物語の最新に戻って来れました。長い、長い過去編でした。

 読者の皆様、待たせてしまい本当に申し訳ございません。ですが、この過去編は必要なこと、この作品におけるダリルの目的、そしてラスボスの設定の為にこれまでの長い工程は必要でした。

 長い、本当に長く続いた物語、しかしそれもようやく終わりが見えてきます。イリス&シャルル編、これにてクライマックス。最後は熱く、かっこいい重厚感で締めくくってみせましょう。

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