無限の蒼穹に雷鳴は轟く IS× THUNDERBOLT    作:サンボル好き

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時間がかかりました。なのでか、今回は長めです。前回と前々回が2~3千文字程度でしたが、今回はがっつり7千文字ぐらいです




カード・オブ・スカム

 戦局は攻防戦、散逸的な戦いが散らばるのではなく、地形の位置関係に基づく攻めと守りの布陣で成り立つ。

 

 わずかな時間、罠によって戸惑う見方に鞭を打ち、ビリーは出来得る限りの防衛線を築いた。車両が止まった地点にチェルシー、そして中央にセバス、最前線にはビリー、それぞれアッガイに登場し、またガレの部下にもEOSに登場させ敵の進行を止める防壁とさせた。

 射線が通ることを避け、倒壊した車両のスクラップで簡易的な防壁を敷き、敵の進行を止めるべく射線を配置。

 

 戦況は強襲により乱戦が起こるとみられたが、彼らは必至に抵抗し敵の流れを跳ねのけた。

 

 戦場のペースは奪われていない。まだだれ一人として、勝ちの目を捨て去っていないのだ

 

 

 

   ×   ×   ×

 

 

 

―――後方―――

 

 

 

 チェルシーの駆る重火力型アッガイを筆頭に、ベルサーガ機が拠点防衛、そして

 

 

 

「いそげ、早く列車をどかすんだ! この二列目を先頭にすればまた走れる!死に物狂いで働け!!」

 

 

 

 つんざく叫び、ストレスで脳死しかねないほどに熱狂して支持を送るガレ会長。彼の言う通り、戦闘はワイヤーによる切断でつぶれているものの、列車自体はそれぞれの先頭に操縦系が備えられ、先頭車両さえどかし、ワイヤーを撤去すればすぐにでも発進できる。

 むろん、このまま逃げて敵を引き連れても状況が好転するとは限らない。だが、このまま逃げる足を失ってはそれこそ元も子もない。

 

 後方支援でバンカーミサイルを撃てば敵機に損害を与えられるだろうが、スポッターもなしにはそれも難しい

 

「……----ッ」

 

 加えて、この場を動けないのはチェルシーにも役目はあるからだ。

 

 車両の天井に座して、チェルシー機は右腕部スプレーミサイルユニットを上方に。迫りくる対地ミサイル。それらの軌道をそらすべく

 

 

「これでは、到底支援にはッ」

 

 

 放つ、マイクロミサイル弾頭はフレア弾。敵の弾頭を別方向へずらす

 

 だが、それで防げるのは誘導兵器。曲射された弾頭にミサイルでは遅すぎる。

 

 地上に降り注ぐ榴弾。高速で迫る点の打撃に対し、もう一人の狙撃手も引き金を引く。

 

 

 

「2……1……ゼロッ!」

 

 チェルシーの三歩後ろ、狙撃型カスタムのアッガイに駆る、唯一のエースカード

 

 IS操縦士、セシリア・オルコットの放つレーザーライフル狙撃。

 

 弾頭は空中で炸裂。EOSの装甲も打ち抜けない豆鉄砲ではあるが、対迎撃武装としては唯一無二の性能を発揮する光学兵器だ。

 

 むろん、そこにはたぐいまれなる狙撃技術が必須ではあるが、彼女であればそれは問題にならない。

 

 

 

「……ッ」

 

 

 

 予備のアッガイに駆り、慣れないEOSを扱って後方支援に徹する。そんな主人の姿は、先までの悲壮さにくれた少女の面影はない

 

 腹をくくった、一人の戦士のごとく。武器を取っている

 

 

 

「チェルシー、弾の補給は」

 

「……ッ、はい……問題なく、まだ大丈夫です」

 

 セシリアの声に我を引き戻す。

 

 悲しみに暮れるよりも、今を生き延びるために強く心を押し殺している。そんな主人への配慮すら、今は許されはしない。

 

 ISに乗る搭乗者だからこそ、エースの責務を理解している。

 

 守るはずが、頼らざるを得ない。

 

 思い人を失った苦しみから、胸に抱いてやさしく慰めることすら、今は

 

 

「……チェルシー」

 

「お嬢様……はい、チェルシーはここに」

 

 気丈にふるまう声、心配もする、情愛は痛む。されど

 

 

「今は……目の前のことに。気遣いはいりませんわ」

 

「……ええ」

 

 

 私が使える彼女は、かくも立派な主君であった。

 

 ダンスのステップにつなぐ手は必要ない。無情とそしられようと、今は

 

 

「……お嬢様、頼らせていただきます」

 

「ええ、よくってですわ……それは、きっとあの人も」

 

 

 

 炸裂、空中で迫る曲射榴弾がレーザーの熱で融解、さく裂した。

 

 降り落ちる爆炎の煙、戦場の消炎と煤にまみれながらも、令嬢は美しく君臨して見せる。

 

 

 

 

「ダリルさんの望む結末、私たちは必ずイギリスに生還してみせます。そうでもしないと、報われませんッ」

 

 

 

 

 

 

 

 

―――前線―――

 

 

 

……ガキンッ‼

 

 

 

「……くッ」

 

 

 

 何度、この刃を合わせたことか。

 

 統合火力兵装、右腕部に装着した武器、バレッタナイフで幾度となく接近戦が繰り返される。

 

 ビリー駆るアッガイ火力型A装備、対する相手はカスタム改造された指揮官用のベルサーガ。高品質なドイツ製の名機体は、最新鋭の特殊機体と並べても性能差に遜色はない。馬力とスピード、その二点で差が生じているぐらいで、統合的に見て機体の差は等しい。

 

 

……くそ、等しいってか……だが、これは

 

 

 

『……ッ』

 

「!」

 

 接近戦用のヒートナイフを振るう。こちらもナイフでいなし、溶断される前に裁く。

 

 ヒットアンドアウェイ。ホバー軌道、と跳躍。高機動で軽快なアッガイの手数で、敵機の守りを突破せんと攻め手を止めない。

 

「……ッ」

 

 モニター越し。フルフェイスでモノアイの眼光のみ放つ無機質な敵、その思惑を推測戦と思考は動く。

 

 

……なぜだ、なぜ攻めてこない

 

 

 ビリーの中で、その疑問が決定的に解消しきれない。拮抗する者同士の戦い、駆け引きで守りに入る理由は分からなくもないが、だが

 

「お前……勝つ気。あるのかよッ」

 

 バックステップ、距離をとってマシンガンを斉射。同時にマイクロミサイルも追撃で放つ。

 

 左右に揺れる不規則な軌道。敵機対は重厚な機体でありながら、バックパックには機動力補助のプロペラ機関が二機搭載されている。30㎜徹甲弾の斉射を難なく受け流し、迫りくるミサイルには

 

『……聞いて、何になる』

 

「!!」

 

 敵機はナイフを持つ反対の左手で何かを薙ぎ払った。衝突寸前のミサイルがすべて爆破し、その煙の中から無傷のベルサーガが姿を現す。

 

『こっちとしては、お前たちを倒すために策を弄しているだけだ。懸命にな』

 

「……ッ」

 

『それよりも、いいのか』

 

「なに……--ッ」

 

 斉射。射撃のために距離をとったビリーの足元に、弾丸が降り注ぐ。

 

「…………ッ!!」

 

 背後に、ビリーが守る後方を塞ぐように、もう一機のベルサーガは銃口を向けている。

 

 相対するカスタム機と同じ、プロペラ機関を背負い、武装はバズーカ砲と三連装のバルカンユニット。デザートブルーの染められた二機は間違いなくこの舞台の中枢ともいえる存在。ナンバー1と2が相対するこの場で

 

 

……なぜ、時間ばかり稼ぐ

 

 

『二機で攻めてこない。それが不思議で仕方ないと……そんな感じか』

 

「!」

 

 覗き込むように、こちらの胸中を言い当てる。

 

 言い当て、そのうえでなおまた待ちの姿勢。ビリー逃がすことはしないが、かといって攻め落とすほどの必死さもない。

 

 

 

…………ズダ、ダダダッ

 

 

 

「……ッ」

 

 だが、かと思えば思い出したかのように援護射撃を放つ。もう一機の射撃が隙を作り、指揮官のこいつは白兵戦を仕掛ける。

 

 だが、それは同時に味方の射撃が停止することにつながる。

 

 

 

……なぜだ、こいつらいったい、この戦いをどう考えているんだ

 

 

 

 狙いは見えない。後方のお嬢の確保なら、逃げる足を整えられる前に、より深く踏み込むべきだ。

 

 後方にはEOSも備えている。歩兵が両横の深い斜面の森を駆け抜け、側面からたたくことは決してできない。ISのハイパーセンサーなり、熱探知や音響ですぐに特定できる。

 

 だが、セバスからはその手の警戒の報告もない。自分が手合わせしている以外の機体も、中央のセバスの防衛網で段階的に防げているのだ。

 

 では、この手合わせは

 

 

 

……まさか、遊んでるつもりかッ

 

 

 

 余裕ぶり、もてあそぶような布陣。次第に脳内の血管が沸き起こっていく。

 

 仮にこれが策であろうと、自分に何か失敗を起こさせるのを企んでいたとしていても

 

 

『どうした兄弟、動きが鈍いなぁ』

 

「……」

 

 振り放つナイフ。ビリーは慣れた牽制を即座に対応。読み切って、バックステップとった

 

 アッガイの足裏が地面を踏んだ。その瞬間

 

 

「!」

 

 

 ビリーの足元、めくれ上がった土にまみれ、それが敷かれていたことに気づけなかった。

 

 後方に備えるもう一機の手元、そこから延びる一本の紐上のモノ。巻き取られた足、振りほどかんとするも間に合わず

 

 

 

 

『足元がお留守だぜ。やれ、ジェバン!』

 

 

「————ッ!?」

 

 閃光、周囲の背景の色すら青白く変えるほどに稲妻が迸る。

 

 地面が焼けこげ、大気にもスパークが伝播する。カスタム機の放ったスタンロッドがビリーの機体にとどめを刺した。

 

 差し合い、駆け引き、すべてはこの為、誰もが見てもビリーは二人の術中にはまりあっけなく終えた。そう解釈されてもおかしくない

 

 

 

 

 

 だが

 

 

 

 

 

 

「………………こんな……もの、か」

 

 

 

 

 

『!?』

 

 

 

 

 動くはずのない、動くはずがない機械の木偶が、音声を発した。

 

 人を焼き殺すには十分すぎる電圧を浴びてなお、アッガイはなお不滅であった。

 

 

……こんなところで終わるなら、俺は英国を背負っちゃいねえッ

 

 

「俺は、英国軍……第一機甲師団エース、ビリー・ヒッカム中尉だッ!!?」

 

 

『なに、どうして…………がッ!?』

 

『ジェバンッ!!』

 

 

 電撃を灯していたジェバンの機体、その胴体に一本の刃が撃ち込まれた

 

 スペツナブズ、ばね式の仕込み刃。ノールックで右腕を後方に、ビリーはうざったい電気ナマズを黙らせた。

 

「これで終わりかよ、なあ…………兄弟!!」

 

『!』

 

 意趣返しの返答。邪魔な射線がなくなった今、ビリーは中距離戦へ移行

 

「!」

 

 

 

……こいつの機体は重い。プロペラとホバーでそれなりに機動力はあっても、旋回精度はこっちが上だッ

 

 

 アッガイは脚部のホバー機動を全開。つかず離れず、敵の間合いの距離を保ちながら死角へと座標を置く。

 

 統合兵装をパージ、腕部に内蔵したプラズマエッジを展開し、両手に持った短刀でその首を駆らんとする執行人へと化す。

 闇夜に紛れるダークカラーが何度も視界の端で揺れる。その軌道を追い続けるだけで、フェルシアはいっぱいな状態だ

 

『……ッ』

 

「ほら、どうした……ッ」

 

 迫りくる紫電の刃、徐々にではあるが切っ先は届き、肩の装甲の一部が切り取られ、宙をはねた。

 

「どうした、さっきのは使わねえのか…………スタンロッド、電撃で黙らせる腹積もりだったんじゃねえのか」

 

『……急に、饒舌だなッ』

 

 距離をとるビリー、誘うように正面で、しかしフェルシアは鞭を振らない。もう片方の手で、腰に備えたドラム式マシンガンを構える。

 

 電撃は意味をなさない。何故なら、アッガイにはステルス仕様であるため、走行表面には微弱な電流を流し、滞留させるために処置が施されている。

 パルス・スキン、対レーダー傍受阻害電磁境界装甲。その副産物として外部からの電流は装甲表面で留まり内部には通電しない。受け流すことが出来るのだ

 

 両者の機体には性能差はない。スペック上であれば互角、だがしかし

 

 手持ちの武相の相性面として、そこには明確な差があったのだった。

 

 

 

『――――――ッ!!?』

 

「……仕留める、悪く思うな」

 

 牽制の弾丸事、アッガイの振るう光の刃は敵機の左腕を切り裂いた。

 

 断ち切るほどの火力ではないが、装甲の表面を融解させ、内部の生身に裂傷と火傷を負わせる程度の出力を、アッガイには出し得る。

 

 

 痛みに悶えて、一瞬のスキを見せたビリーは早く、フェルシアの背後に回る。

 

 バックパックを焼き切り、動力源を殺して決着をつけた。

 

「降参しろ、命までは取るつもりはない」

 

 勝利を勝ちとった者の権利、ビリーは右手の銃口で首をつかむ。刃の発信機である嘗部で、生殺の決定権を文字通り握る形で

 

 

 

……これでいい、これでこの戦いも

 

 

 

 試合は、切り札であるエースを切ることなく、先にチェックを宣言した。敵が隠しているISを出さざるを得ない形、理想の形に勝負を持ち込めた。

 

 確信をもってなお油断はせず、ビリーはまず現状を伝達せんと無線をオンにした。

 

 

「セバス、報告だ……」

 

 

 ISが出張ってくる。セシリアには狙撃の用意を

 

 先に姿を現した間抜けを刈り取る、残るは楽な工程、そう信じて疑わなかった。

 

 

「……敵部隊のトップを抑えた。あとは」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『あとは…………その続きは、何かしら?』

 

 

 

 

 

 

 

 

「!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「少尉、ビリー少尉ッ!!」

 

 無線越しに、セバスは何度も叫び続ける。自身の鼓膜が破れようが構いなしに、なんども問いかけつづける。

 

 戦局は硬直、しかしビリーが敵EOS部隊の首魁を仕留めたと報告があった。だが、そのさなかに聞いてしまった。ずっと支え続けた彼の声を、慕い守ろうと誓った主の痛みを、言葉とも言えない叫びの中から知った。

 

 けしかけたのは誰か、敵の中にそれほどの強者がいたのか。EOS乗りとして高い技術を誇るビリーを上回る、それだけの敵が

 

 

「少尉、聞こえますか…………少尉ッ」

 

 

 

 倒壊した列車で作った即興のトーチカ、そこから躍り出てイチかバチか救援に

 

 

「少尉……今、私が」

 

「……おい、あんた」

 

「止めるつもりですか、悪いですが……私にはあの方が「違う、上を見ろ!!」

 

 ともに立てこもる味方、EOSに駆るガレの部下がそう叫ぶ。

 

 指さす先。メインカメラ越しに、セバスも見た。仰ぎ見て、気づいた。

 

 自分の主に手をかけた相手、その正体

 

 

「------ッ!!?」

 

 

 言葉に、出せなかった。あれほど叫んだ喉が、声を高々に出すことを恐れている。

 

 映像に移るは夕闇の装甲纏う使途。天に浮かび、刃と仕留めた獲物をもって、優雅なまでにただそこで降臨している。

 

 

 

 

「あ、アイエスッ……しかも、あれは」

 

 

 セバスの記憶、そこには報告書に記された、鉱山事件での一幕。

 

 ダリルとセシリアの前で名乗った彼女、ミラージュが駆るカスタム機体の詳細。対、BT兵器に特化した二種類の並走を備えたそれは、ダリルの手助けがなければ全くと言ってもいいほどに叶う相手ではない。

 

 

……アンチBT兵装、あの四枚羽は資料の

 

 

「……ッ」

 

 ズタボロになったアッガイ、その隙間から除くビリーの顔、かすかに生存を感じるそれは生きた盾か、それとも警鐘か

 

 だが、憤る感情をもってしても現状は覆らない。セシリアがブルーティアーズを駆る以上、この相手には勝てないのだ。

 

 ビリーが建てた活路。ISを出さず、勝機を見出すための通常戦闘。そこで得た賢明な勝利は今

 

 

 

「…………にげ、ろ。セバ」

 

 

「少尉!!」 

 

 

『----ッ!?』

 

 

 絶対的な戦場の支配者によって、たやすく覆されたのだった。

 

 ISこそ戦場の要、定説は覆らない。ISこそが勝敗を分けるなら、そのISで有利に立てばいい。フェルシアたちはそのことを熟知していた。故に

 

 この戦いは、エースを切るタイミングで勝敗は決まらない。

 

 ビリーたちがエースを優位にせんと勲をふるう中、彼らが選んだのは安全な戦場。狙い通りの硬直

 

 ミラージュと合流し、ここに至るまで続けていたISのセッティング。彼らは戦況を一定の時間まで長引かせるだけでよかったのだ。

 

 

 

『さぁ…………掃討戦のはじまり、かしらね』

 

 

 

 

 

 

 

次回に続く

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ピットインは追わった。エースをたやすく屠るジョーカのカードを前に勝機はない。

 

 カードオブスカム、大富豪という遊びにおいてこの数列は決定的だ。覆らない定説、握るカードは残酷なまでに敗北の二字を示す。

 

 

 定説は覆らない。そんな条件下でも、彼らはまだあきらめはしない。

 

 

 長く続いた異郷の地の物語、その果てに何があるか

 

 

 

 

 

 

 

   ×   ×   ×

 

 

 

 

 

 

「……くっそ、ひでえやけどだ」

 

「隊長、手当てを」

 

「あぁ、悪い……」

 

 最前線であった場所、機体を捨てた二人は後方の部隊を待つ。フェルシアその傷顔を不満げにしかめ、部下であり右腕であるジェバンの介抱を受ける。

 

「もういい、さっさと後ろに行くぞ」

 

「……しかし、傷が」

 

「あいにく、焼かれたせいで出血はねえ。くそが、しばらくはファックもお預けだ……おら、歩くぞ」

 

「……はい」

 

 ピットインを終えた今、彼らは仕事を終えた。あとは、敵の主戦力が排除されたところに歩兵を向かわせるだけ。

 

 手傷を負い、愛器を失えど、自分たちは成功した。そのことで胸は満たされている。

 

 

 

……これでいい、これで

 

 

 

 デュノアの後ろ盾はなくなったが、彼らは新たな寝床を手に入れた。ミラージュの条件をのみ、この戦いでブルーティアーズの機体を確保、及び奴らが奪取した美術品を献上する形で、最高の結果へと至る。

 

 

……ファントムタスク、世界を相手取る幻の存在に自分たちも加わる。

 

 

「悪くない、悪くない結果だ……なあ、ジェバン」

 

「……」

 

「おい、どうした……太鼓持ちぐらい、くれても……ジェバン、どうした」

 

 振り返りおのが相棒の立ちつくむ姿を見た。

 

 ただ茫然と、その視線は自分よりも、さらに高い位置へ

 

「……なにを…………なに、を」

 

 フェルシアの視線、それは遠く、ここよりあと数百mも離れた場所。理解は早々に、その位置は

 

 

「!………おい、後方部隊、何があった! 報告しろ、すぐにッ!」

 

 

 見たのは、空に昇る消炎。後方に待機させたベルサーガと歩兵に放たせていた支援放火、その在りかであった。

 

 砲撃ポイントを敷いた箇所、急ぎ走り渓谷のに挟まれた道を出て、渓谷と渓谷をつなぐ、大渓谷に躍り出る鉄橋の上、見晴らしよく視界が通るその地で、フェルシアは見た。

 

 

「――――――ッ」

 

 

 大渓谷、下は数百メートルはあろうという崖をつなぐ鉄橋、それが見る影もなく崩れ去っていた。

 

 下をのぞけば、深く下の河川でガラクタとなっている僚機の末路。大破したベルサーガ、高射砲、そして部下たち、それらが一緒くたに、鉄橋の残骸とともに朽ちていた。

 

 

「……誰が、まさか事故か。暴発の爆発で」

 

「そんなわけがあるか!これは……頑強な鉄橋が、倒壊するほどの爆発、そんなものじゃぁない……ッ」

 

 残骸は、一部きれいなまま

 

 まるで、その構造の脆弱性をついたかのように

 

 

 

……撃ちぬいた?橋の弱所をピンポイントに? いや、そんなこと

 

 

 

 周囲は見晴らしよく、しかしそのどれもが深く茂る木々と急斜面。

 

 それで、容積が高層ビルほどはる建物を、たとえロケット砲なり、対物ライフルを持ち込もうと、容易に崩せるとは限らない。

 たとえそうだとしても、一射目の時点で、味方は必ず反撃を講じる。

 

 そうであるはずなのに、しかし

 

 

……ありえない、立った一発で、鉄橋を

 

 

 

「……連絡を取れ、ジェバン。ミラージュにつなげ!!」

 

『戦況が変わるぞ! イレギュラーは、この戦局を変えるナニカが……現れたッ!!』

 




今回はここまで、読了お疲れさまでした。

いろいろ書きましたが、この話のメインは一応ビリー中尉です。サンボル18巻みたいに難民達守るスーパービリー中尉を見せたかったのですが、さすがにニュータイプ化させないと難しかったか。


感想・評価などいただければ幸いです。次回もよりサンボルらしく、むせかえるような展開を目指します。
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