無限の蒼穹に雷鳴は轟く IS× THUNDERBOLT 作:サンボル好き
「…………ッ」
行ってしまった。一度は諦め、けど心のどこかでは奇跡を祈っていった。そしてその奇跡は現実となった。なのに、待ち望んでいたあの人は、一言二言だけであっという間に去ってしまった。
無茶苦茶な機体で、ISでもないのに高高度からの降下と飛行までやってみせて、その上、敵の大将を引き受け見事この戦場の優位を取りもどした。
一瞬の出来事故に、去って少しして、ようやく思考がまともになってから、その行動が異常であると認識できた。
捨て身の策、またも無茶をしてと、本来なら今すぐにでも助けに向かわなければならないのに、不思議とそうすることを躊躇った。
顔を見たのだ。自分の知っているダリル・ローレンツの顔。だけど、あの時の顔は、その眼に宿した猛々しさが、有無を言わせずある一言を言い聞かされた。
言葉はいらず、ただ想いを通じてセシリアは受け止めた。こいつは俺に任せろと、覚悟を決めた男の背中に、セシリアは頷かずにいられなかった。
「…………いったい、何が」
疑問は消えない。自分たちと離れた合間に何があったのか、その原因は
『――――ッ』
思考に没頭していたセシリアの頭に不快音がひびく。それは警戒音の耳障りなノイズ、そしてその音を発生させたのは謎の飛行物体。空高く、夕日の光に影が見え、どんどんと大きく
「……あれは、ファットアンクル。軍の、輸送貨物機ですわよね」
ダリルが乗っていたのか、その飛行機が緩やかにホバリングで降下してくる。そして、四角い胴体のハッチが開き。微かに動く映像にハイパーセンサーが目を凝らす。
ズームする画像、そこには
「!!」
気づいた。そして、反応は早くセシリアは飛翔した。
落ちる少女。しかしその背にはパラシュートも何もない。ただ体を広げ、原則の態勢でスカイダイビングをしている。
……正気、ですのッ!!
空高く、400フィート高さからのスカイダイビング。仰向けに向かい合う体勢で、少しずつ速度を下げて相対スピードを一致。
失敗は許されない。ISの演算機能をフルに活用し、完璧に受け止めきれるタイミングで、セシリアは
「……ッ」
掴んだ、自分と同じ金髪で同年齢の少女の手を。そして抱き留めて、速度を合わしようやく減速に移る。
「あなた、死にたいのですかッ!!」
「……」
言わずにはいられなかった。しかし、相手はただ冷え切った顔で、病的なまでに落ち着いていて
「……確証はあった。ISが本気になれば、スカイダイビングの人間一人、余裕で保護できる。実際、問題はなかった」
「いや、だとしてもですわ……あなた、死ぬのが怖くないのですか!?」
「あぁ、そう聞かれれば確かに……まあ、もう死んだ身だから気づかなかったね」
「は?」
「失敬、それは忘れてくれ。まあ、無茶で君を冷やさせたのは申し訳ないが、弁明するならこれは彼も薦めていたんだ。セシリアなら、きっと受け止めてくれる。とね」
「…………ッ」
不意打ちの言葉、本人の言葉ではないが、間接的なおので十分に威力は発揮されてしまった。
「……あなた、本当にシャルロット・ローラン、同い年、ですの?」
「さあ、説明してもいが長くなるしね……それよりも」
指さす先、ゆっくりと降下するティアーズの高度から、それはすぐに理解した。
IS絶対優位で成り立った戦場。敵は混乱し、勝利を確信していたはずが急な展開に指揮もバラバラ。明らかに統率が乱れている。
下では少ないながらの戦力で十分に応戦。しかし、怪我人のチェルシーやセバス、ビリーのことを思えばすぐに行動に移るべきだ
「……ですね。理解しました」
「ダリルからの伝言、あとは任せた、必ず合流するから、だからみんなを守って欲しい……そう言っていましたよ」
「ええ、それはもう……わたくしにしかできないことですわ。承知です、ですが……あなた」
小脇にシャルを抱え、PICで安定、空いた片手でスターライトを構える。
片手拳銃を構えるように、その銃口を敵EOSへと向ける
「聞かせてくださいまし、あなたとダリル様に何があったか……そして、あなたが一体、あの方に何を差し出したか」
「……」
「ISに勝つ、ISと渡り合える手段……それが無ければ、あの方はあんな行動には出ません」
「……なるほど、ね」
差し出した。根拠もないが、セシリアにはある考えが脳裏をよぎった。
あの、ルーブル地下で、件の物はどうしたのか。回収はついで程度、だがそのISはこのシャルロット本人は有していない。
有しているそぶりもなく、そして何よりも
……ダリルさんの腰に、見たことのない剣が
装飾を施した宝剣、そのレプリカの様な雑な見栄え。しかし、それこそが間違いなく待機状態のIS
リユースサイコデバイス、そして手足の無いダリルの体
思わずにはいられない。そんな、都合のよすぎる、奇跡ともいえる顛末を
「……フフ」
「な、何を笑って」
「……いえ」
ただ、と
神妙で無機質な表情から一点。破願した笑みで、シャルではないイリスはセシリアに続けて語った。
「差し出したなんて、そんなおこがましいことじゃないわ。あれはただ、持ち主のもとへ帰っただけよ」
〇
―――大渓谷―――
「…………落ちないのかよ、化け物」
ダリルは、そう独り愚痴のような言葉を送った。
周囲は広く、河川ではあるが水かさはかなり浅い。本来であれば神秘的な秘境であったかもしれない場所が、ダリルが今しがた破棄、そして炸裂させたV1の残骸で辺りには燃え続ける残骸もちらほらと
燃料のオイルが燃え、そのせいか薄暗い渓谷が少し明るい。
そして、周囲を照らす最も濃い光源は、今目の前に
「絶対防御、すごいな……ルナチタニウムよりも堅牢、かもしれないな」
瓦礫が、岩壁の崩壊した残土の中から、彼女は姿を現した。
夕闇の装甲羽をまとったラファール。だが、今はもうその面影はない。
「無茶苦茶ね、絶対防御もないEOSで……ほんと、おもしろい男よね、ダリル・ローレンツ」
「誉め言葉なら受け取っておく。倒す相手だからな、聞けるのも最後だ」
「あら、気が早いのね」
軽口を交わしながら、ダリルは状況を冷静に把握。特に、今の自分の戦力いついて
用意したV1の特攻劇は確かに成功した。ありあわせのもので突貫的にプランを立てた手前、これでも十分なのだろう。爆発と衝撃で装甲ははげ、ミラージュの姿が露わになる。
しかし、今自分が見ている奴の機体は
……あの時の、機体か
崖から落とされた時、後ろ目に見た奴の機体。ラファールとは違う簡素な機体だが、それが余計に不気味だ。
装甲は仮初、あの機体、ラファールナイトシーカーではなく奴本来の機体。偽装外殻は落ちて、今真の姿を露わにしている。
「専用機か、それがお前の」
問いかけた、不敵に笑いながら二歩三歩と近づき、そして立ち止まった。
露出の多い軽装な見た目。申し訳程度のスラスターと思われるアンロックユニット故に、注目する箇所は両手のガントレットに集まる。
基本色が白に、青色の追加装甲で飾られた機体。ボクサーを思わせるヘットギア上の頭部パーツにはVラインを模した形状が見られる。
……まるでガンダムだな。空似とはいえ不愉快だ
「……近接特化。日本製の第二世代試作機、一年前に強奪被害に遭ってから行方は知れず……だが、それも今は目の前」
「へぇ……調べたんだ」
「あいにく、時間はあったからな。機体の色と形状は変わっていないから、すぐに見つかったよ。機体名、ストライカーカスタム。それがあんたの愛機、そう思っていいんだな」
「そうね、仕事柄いろんな機体盗んでは使うけど……これが一番しっくりくるのよねっと」
「!」
瞬間、ミラージュの両手に光が灯る。足元の水がはじけ、数m離れた位置だというのに放電が飛び交ってきそうだ。
両手のガントレット、それは近接武双のトンファー。しかし、その形状は青白い閃光の刃
IS故に許された、高出力のビーム兵装を意味する。
「……」
「ほら、わかる? ビーム兵器、コアエネルギーじゃなきゃまず実現しない超未来の兵器。正直、ISとEOSの差ってそこなわけなのよね。実体のないバリア、実体のない弾丸、そして実体のない刃、本気でかち合えば勝負なんて成立しないの。」
「……なら、どうしたというんだ」
「あ、わからないのかしら……じゃあ逆に聞くけど、そのEOSで勝てるわけないんだし、使うなら使いなさいよ。あ・い・え・す」
「……ッ」
ミラージュが自身の手で後ろ越しを叩いた。指し示すように、ダリルの機体に固定された、一本の聖剣を抜くよう急かすように
「知ってるんでしょ、理解したんでしょ。リユース・サイコ・デバイスの可能性……男でも、ISを使えるかもってこと、まあ、手記にはひどい内容ばかりだったらしいけどね。失敗すればISは暴走、適合すれば、機体を最大限まで使いこなせる……ハハッ、いいじゃない、待ってあげるわ。じゃないと、楽しめないじゃない……殺し合いを!!」
「……ッ」
殺し合い、最後の一言はなんとも嬉し気に言葉を紡いで見せた。あぁ、なんとも嫌になる相手なことだ、この女は
ここまで来て、この女に在るのは自分の快楽。理解に苦しむ哀れっぷりだが、戦場の強者と見るならそれは正常になってしまう。勝ち続けて、殺し続けて、罪を背負ってものうのうと生きていられる、それが戦場の狂人というものだから。
戦場でジャズを流し、そのビートに乗って戦いに身を投じる。あいつの方がまだましなのかもしれない。
……殺し合い、か
そう口にした。だが、その意味は相互的な意味はない。あるのは、自分自身の絶対的な優位。
自信があるのだろう。この聖剣を起動して、ISに乗ることが出来た俺に対しても、ミラージュは必ず勝つと、信じて疑わない。
裏付けもあるのだろう。幾重もの戦場を渡り歩き、そのISで勝利を得たのだろう。
IS、確かにそれはすごい兵器だ。納得もいく、戦争の形態をかえるのも最もだ。
戦場を自由に駆け抜ける、人のもう一つの体。人の形で人を越えた力を手にする。そんな力に酔いしれて、目の前で興を得ている。
…………いいかげん、うんざりだ
「井戸の中の蛙は大海を、いや…………もっとでかい世界を知らない。この世界に、宇宙には…………ISよりも」
「は、何よ急に……いいから、さっさと抜きなさ「わかったよ」…………ッ?」
武器はない。あるのは、腰に備えた曰く付きの剣
だか、イリスはそんなものを俺に託したかった訳じゃない。どこぞのイカれた科学者の機体じゃあない
それに、俺のような死人が纏うものが、清廉で汚れ一つのない真っ白な機体だというのは、なんともミスマッチだ。
「――――ッ」
息を吸った。これから行うことは、一種の当て付けだ。
俺を救って、力をくれた恩人。その贈り物に、顔も知らない中世の馬鹿野郎が要らぬ手を加えた。
……何が、聖剣だ、ISだ?
……そんなものはいらない。デュランダルなんて、逸話をなぞらえた大層な名もいらない。
「…………ザク」
「?」
「知っておけ、俺の祖国が作り出した、世界の先を示した機体だ。そして、これは」
掴んだ聖剣、その刃を向けるは、地に落ちた残骸。
「あなた、何を……」
「……ッ」
大きく、切っ先を高々と掲げる。剣筋はまっすぐではない、あえてずらした。
EOSのC装甲。壊れたとはいえ、その硬度は戦車と並べるほどだ。故に、ちょうどいい
「――――ッ!!」
振り下ろした。いや、ダリルは聖剣を荒く、その残骸に向かって叩きつけた。蛮行ともいえる異常な行動、だが剣はそんなダリルの意思に答えるように
……バキンッ
「!」
聖剣は折れた。砕け泣き別れになった刃は宙を舞う。その手に残る折れた剣は、紅い雷光を帯びていく。
× × ×
…………最適化中断、機体の展開に深刻な問題が発生…………IS起動、アンネイブル……エラー、エラー…………
これでいい、聖剣なんてものはいらない。俺の欲しい機体は、初めから一つだけだ
……再構成、参照情報適合……搭乗者、ダリル・ローレンツ……不明、不明、不明
……不適切なプログラムを確認……ミノフスキー粒子、モビルスーツ……ザク、リユースサイコデバイス…………不明、な……情報を、参照……決定しますか YES/NO
……コアロック解除……搭乗者、ダリル・ローレンツ登録……IS適性、計測不能…………使用OS、リユースサイコデバイスtyp InfinitStrats適用
…………機体情報初期化、基本装備破棄及び装甲材質の不適化を6割確認…………執行確認、認証、デリート再開……創造参照……
……対象兵器、該当記録無し、初期化完了、一次移行開始…………
……機体名消去…………機体コード、MS‐06R…………新規名称……登録意思確認……
……インストール、完了…………
「……ッ!?」
心臓が高鳴る、世界が広がる。時は遅く、感覚は体内を超えて外側にあふれ出す。
時間も空間も曖昧に、ただ残るのは……新しい、偽りの手足の
「!!」
迫るミラージュ。その姿を目が追った。ビームトンファーを展開し、全てを溶断する粒子の刃を拳に乗せて振り放つ。音を超え、光にすら至らん至高の速さ。
迫りくる狂人を前に、避けるでもなく、この腕は折れた剣で迎え撃たんとする。刃の軌道、弧を描く線と線が重なる瞬間……ガチリと、撃鉄は火花を起こした。
……引き金を引け、叫べ!! 魂の底から、その名を!! この世界に呼び戻せ、俺の……本当の手足を!!!サイコザクをッ……!!!
「……こい……甦れッ」
『サイコ・ザクッ!!?』
今回はここまで、一応これにてサイコザク登場。まだ全容は明らかになっていませんが、それは次回のお楽しみに。
感想・評価などあればよろしくお願いします。次回、早ければ明日か明後日に