無限の蒼穹に雷鳴は轟く IS× THUNDERBOLT 作:サンボル好き
今後も執筆頑張ります。
「セシリア・オルコットを連れてくる!!」
「ばかっ、フィッシャー 声がでかい……!?」
「おい、ダリル。お前さん何をしでかした…?」
「……話せば長くなる」
鉱山に帰り、宿舎の一室で俺は親しい二人に打ち明けた。セシリアをここに招き、鉱山の実態を知ってもらいたいと。
俺は話した。彼女がどんな考えを持っていて、俺から見た彼女の人となりを伝えられる限り説明したつもりだ。
「……」
「……いい子ねぇ。確かに、前任者よりはましかもしんねえな」
「ああ、だからさ…話だけでもしてやってくれないか。きっと悪いようにはしないはずだと思う。もちろん、無理強いはしないし」
「……班長はどう思いで」
「………。」
「班長? マツナガ班長…!」
「!…ああ、まあいいんじゃねえか。ダリル、お前さんがそこまで言うなら乗ってやる。三日後に裏の搬入口でいいよな。あそこなら人もいねえ」
「そうだな。それがいいと思う。じゃあ、俺は彼女を連れてくる、話をするのは……」
「俺らだけでいいんじゃねえか。あとは…数人、適当に見繕っておくわ。」
「それで頼むフィッシャー。彼女も今回のことは大事にしたくないはずだ。少ない方がスムーズに進む。」
…じゃあ、決まりだな。最後に拳を軽くぶつけ、その日の話はこれで終わった。部屋に戻り、扉を開けようとした時
「なあ、ダリル」
「?…班長、まだなにか」
「いやな……なんつうか」
「?」
言いづらそうにしている。少し悩んで、すると班長は懐から何やら板のようなものを取り出し、それを半ば強引に俺の手に握らせる。
「……こいつをな」
「……カードキー、ですか?」
「うちの格納庫スペースでよ、使ってない奥の7番ランチがあんだろ、そこのカギだ。」
「……これを、どうしろと」
「いや、別にどうこうしろってわけじゃねえ。けど…」
「……班長」
「……まあ、黙って受け取っておけ」
「……。」
いつもの泰然とした振る舞いから遠い、どこか焦りを感じる。さっきの話の最中も、何度か注意が散漫で、なにやら別のことに思考が向かっているような様子もちらほらと目立っていた。
「よし、渡したからな。じゃあ、おれはこれで…」
「えっ、あの……」
呼び止めにも答えず班長はその場を去っていく。
「………寝るか」
明日も早い、この時は何も考えず俺は早く寝たい一心からすぐに床に就いた。これが、のちに起こる騒動で重要なものになると知らず。
〇
「ダリルさん!」
「!…セシリア、それにチェルシーさん」
夕方、街と郊外の境目の道路にて
そこに車を置いて数分前から待っていたダリルは手を振り声をかける二人に気づく。
「その服装、それに…チェルシーさんも」
セシリアとチェルシー、前日の二人の服は格式のあるドレスとスーツであったが、今日は二人とも動きやすいカジュアルな私服を身にまとっていた。
「ええ、観光客に見えますでしょうか。」
メイドのチェルシーさんはロングのタイトなズボンにポロシャツとスーツ風のファッションだが、セシリアの姿はまさにプライベートそのもので、白を基調としたふんわりとしたたたずまいはまるで映画のワンシーンを切り取ったような。
というか彼女の場合は本物のイギリス人でお嬢様なのだ。ダリルが知るいつかに見たフィクションの女性の姿そのものなんだろう。
「ダリルさん、いかがですか?」
…ああ、そう思う。というよりはむしろ映画のヒロインだ。
「ずいぶんめかし込んだんだね。じゃあ、二人とも…車に」
「「………。」」
車に乗ろう……とするが、どうにも二人の目が冷ややかで
「はぁ、ダリル様……」
「………あ、ああ!…二人ともよく似合っているよ。うん、すごくかわいいと思う……!」
我ながら言っていて歯が浮きそうになる。こうして年頃の子のおしゃれは素直に褒めるものだと、妹がいるダリルにはわかっていたはずだが、どうにも男所帯の環境で暮らすうちにそういう礼儀を失念していたようだ。
「!!……そ、そうですか。 殿方に褒められるのは、中々むず痒いものですわね。」
顔を赤らめてもじもじといじらしい様子を見せる。どうやら耐性がないのは本当らしい。ただ、その相手が自分なんかにと思うと少し申し訳ない。服装は適当でいいというべきだったか。
「すまない、でも…なんだか悪いな。わざわざそんなおしゃれまでさせて」
「ええ、それはもう。ダリル様に見られて恥ずかしくない服をと、朝からチェルシーのことをこき使いまして。それはもう初デートに緊張する乙女のように「チェ、チェルシー!!!」
「あら、口が滑りました。申し訳ございません、つい寝不足で無意識に」
「絶対わざとですわ!ぜっっったいに、わざとですわ!!!」
「では、そろそろ行きましょうか……ダリル様、車を」
「ちぇ、チェルシー…!!」
二人が後部座席に座る。未だにセシリアはプルプルと涙目で抗議の視線を送り続けている。年の差も相まって仲の良い姉妹の喧嘩だ。
…でも、本当にそう言う間柄なんだろうな。
最初に見た時の外向けの笑顔に比べて、今の彼女は心の底から笑っている。
「なあ、セシリア」
「聞いてますか、だいたいあなたはって……あ、な…なんでしょうかダリルさん」
一部始終を見られていることを認識し、どこか恥ずかしそうに目線を逸らしている。
「ああ、いや。二人は本当に仲がいいなって。昔からの付き合いなのか」
「……ええ、そうですわね。チェルシーの家は長く我がオルコット家に仕える家系です。立場はメイドではありますが、幼いころから仲のいい親友ですのよ。…たまに意地悪ですけど」
ぼそっと付け加える。だが当の本人はどこ吹く風と表情を変えない。
「ええ、否定はしません。私にとっての日々の楽しみの一つです。」
「人をからかうのを楽しみに含めないでくださいまし!!」
「…なるほど。よくわかったよ。」
…気苦労の多い主人にそれをからかうメイド、中々いい間柄だな。
◯
車を走らせてしばらく、チェルシーがやれ意地悪だの、セシリアの天然エピソードといった、そんなたわいのない話が続く。鉱山までは距離もあり、退屈をしのぐには互いの身の上を紹介するのがちょうどいい。
「…へえ、代表候補生となると大変なんだな。家の役目と両立するなんてほんとすごいと思う。」
「いえ、そんなことは。…私はまだ助けられてばかりです。チェルシーや屋敷の皆、カンパニーにもお父様と親しくする人達も大勢います。本当に……助けられてばかりです。」
「……謙遜することは無い……いや、知らない人間が簡単に言うべきじゃないな。すまない」
「いえ、お気持ちだけでもうれしくございます。ロバート叔父様も同じことを言っていました。」
ロバート、確かその名前は…
「現オルコットカンパニーの副社長です。資材管理部門を立ち上げ、軍需産業関連の事業展開に成功した、まさにカンパニーの立役者でございます。」
「ええ、本来…わが社は一族経営で、お父様が社長を務め、その補佐として副社長があって成り立っていました。それは今も同じで…」
「……」
セシリアが言うに、両親が亡くなって霧散しそうになる会社を持ちなおさせ、自分に引き継がせるようにしたのもそのロバート氏のおかげであると、自分を傀儡にするでもなく、あくまで家督権のある自分に継がせることが父親の望みである。そう言い聞かせ、実際そうなるように尽力したらしい。
故に、彼女の原動力は亡き父の思いと、今を生きる恩人の思いに報いること、この二つがあるからこそ自分は立つことができるのだと……。
「……なるほど。いい人なんだな」
「ええ、幼いころはチェルシーと私を一緒に連れて遊びに行ったこともあります。参観日、発表会、お父様が来れなくても代わりに叔父さまが来てくれたり…」
「………」
「……わたくしにとっては、もう一人のお父様です」
「……セシリア」
少しだけ、彼女の姿が小さく見えた。両親を亡くしてまだ一年と少し、13の女の子なら寂しさで殻にこもってもおかしくはない。
だから、それでも立っていられるのは支えになる人がいるからで、それがセシリアにとっては今横にいる彼女と、話に言う叔父の存在なのだろう。
「……ダリル様」
……話、変えた方がいいか。
「……なんだか、ずっと二人の話ばっかり聞かされてるな。俺の話は…いや、あまりおもしろくはないか」
「いえ、そんな……良ければ聞かせてください。わたくしたちは、まだダリル様の話を聞いていません。」
「そうですね。差し障り無ければ、何か楽しい話をお聞かせいただけませんか。」
「……また難しい要求を」
だが、そっちのほうがいい。俺個人の話になるとどうしても軍にいたころの低俗なバカ話になりやすいし、かといって個人的な話でもこの義肢について触れそうになるのは避けたい。
「……家族の話、父親が商人で、幼いころはちきゅ……い、いろんな地域を渡りまわったんだ。よかったら、そんな話でいいかな。」
「!…ええ、ぜひ聞かせてください」
「……よし、じゃあまずは何から話すか。ヨーロッパよりもアジアのほうかいいよな。あれは……」
そこからはダリルが見た幼少期の思い出をたんたんと二人に語っていく。幼いころまだ家族と地球で暮らしていた時に見た地球の綺麗な自然、その時見た情景を拙い記憶ながら時間をかけて説明した。
戦争が始まる前、コロニー落としで荒れる前とは言え、彼女らからしたら遠い未来の環境だ。ときおり会話でぼろが出そうになると肝が冷やされたが、二人は逆にそれを不器用なユーモアだと思ってくれたようで、ダリルの話はそれなりに喜んでもらえたようだった。
〇
少し時間を巻き戻す。
ダリルたち一行が街を去ったときのことだった。
「……もう一度聞くわ。対象はどこに」
街中で、人気のない廃工場で人が集まっている。ただの集団なら別段さほど治安は良い方ではないこの街ではおかしくない光景だ。ただ、その集団は皆等しく、チンピラややくざというには纏う気風はあまりにも一般人とは程遠い。
集団の先頭にいる、装甲車のボンネットに胡坐をかいて座る女性、ウルフヘアの赤髪にラフな衣装を纏う、味方によっては街中で体を売るヤンキーの女に見えてしまう程だ。しかし、そんな女はこの空間の中でひときわ存在感を放っている。
「…追跡は、まあいいわ。かんづかれるのも面倒だし。観測班に任せてお前たちは待機なさい。」
乱暴に通信機を切る。そして続けて今度は携帯端末でまた連絡をかける
「もーしもーし。まいど雇われの人殺しで~す。ん、なによ…ちょっとふざけただけじゃないの」
電話越しに話す相手の声が聞こえる。どうやらタイミングが悪かったらしく、周囲のおt子たちにも聞こえるほどに文句を垂れているようだ。
「うるさい男ね、イギリス人は紳士じゃなかったのかしら。まあいいわ、本題に入るけど……あの娘、もう鉱山に向かったわよ」
「!?」
「で、どうするの。こっちは最低限しか装備を持ってないけど。もう攻めちゃったほうがよくない?てかいいよね、それで……じゃあ」
ブツンッ
「ふん、小心者のくせに」
一方的に通話を切り、もう用済みとばかりに端末を地面に叩きつける。
「はい、皆ちゅうもーく、お仕事の時間よ」
女が手をたたくや男たちは規律正しく一斉に並び立つ。人数にして30弱、小隊規模の軍隊がそこにはあった。
「予定を変更して、第一種目的の撃破を前倒し、及び第二種目的の掃討を兼ねた殲滅戦も考慮しなさい。さあ、準備に取り掛かるわよ」
女が呼び声をかけるや男たちはすぐに行動に移す。貨物トラックにコンテナを積み、彼らは手慣れた作業で思い思いに装備を身にまとう。
「……さて、私もそろそろ着替えますかね」
何を思ってか女は周囲に男がいる中で堂々と着替え始める。ラフな衣装を脱ぎホットパンツを脱いで、更には下着までも脱ぎ捨てる。鍛えられながらも出るところは出た魅惑的な肉感を大胆にさらす、しかし
「まったく。調教されてるのは良いんだけど、なんか女としては複雑よね。」
周囲は全く気に介することもなく、おのおの装備の確認を続ける。女もそれが当たり前と言わんばかりにバックから取り出した競泳水着のようなラバースーツを身に着け、その上から黒の軍服を身にまとう。
「……さあ、いきましょう。すべては、我らが会社の利益のために」
今回はここまでです。フラグ出したりオリキャラ出したりとしたくせにちょっと短めですが、キリが良いんでここらで止めます。
次回から戦闘です。