無限の蒼穹に雷鳴は轟く IS× THUNDERBOLT    作:サンボル好き

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遅くなって申し訳ない。1月下旬、大学生には辛い時期です。でも落ち着いたので投稿


帰還

 一年と半年、俺が過去の世界に飛ばされてから、もうそれだけの日々が過ぎ去ったていた。

 

 右も左もわからないなか、どうにか働き口を煮付けた矢先に起きた事件。それからさらに異国に渡ってからも国を巻き込むレベルの大騒動、なんとも痛ましい自分には壮絶が過ぎる日々だった。

 

 ただ、そうした事件を越える度に、おれ自身も前に進んでいく感触はある。 

 出会いと再開、過去の因縁、それらを乗り越えてようやく、俺は未来の問題と向き合う。

 

 多くのしがらみよりも、今の俺の心はある一つに捉われたままだ。そう、リユースサイコデバイス、未来の手がかりだ。

 

 今回の事件、主にシャルとセシリアだけが関わる問題であったが、その中に自分と非常にかかわりのある見過ごせない問題も生じた。そして、その研究を行っていた篠ノ之束、イリスから聞く話、それにもとから知る世界的な経歴、実績もろもろ含めて、なんとも頭がいたくなる相手、というよりはラスボスだ。

 

 事件は解決したが、問題は未だ山積みだ。なにせ、元の世界へとつながる要素なのだから。もう戻れないと高をくくっていたが、これでは話が変わる。

 

 知ることは多い。知るためには行動を、それはつまり

 

 

 俺は、決めないといけないのだろうか

 

 

 未来という過去に執着するか、それとも

 

 

 

 この過去の世界で得た、今を大事にするか

 

 

 

 

 

 

 

 

〇 

 

 

 

 

 

――――ロンドン市――――

 

 

 

 

「…………」

 

 退屈、その二文字がずっと頭をよぎっている。個室の病室、広々とした部屋でベッドもふかふか。安いパイプベッドではなく、ホテルにも使われるような高級ベッドを転用したもの。設備に文句はない、贅沢は理解している。しかし

 

 

「……ッ」

 

 労働も何もないこの無為な時間は、半端に健康な体には逆に堪えるモノだ。

 

 どうせなら、数人まとめた雑居部屋の方がいくらかマシだ。他人がいないのは、少なからずというか、紛れもなく自分のせいではあるのだが

 

 特殊作戦に関わった民間人。その上、自分は件の機体を動かしてすらいる。ドーバー海峡を渡り、イギリスに着くやすぐ拘束、検査、そして隔離のコンボを食らうには確かに納得いく経緯だ。

 

 

「……くっ、あぁ……暇だ。せめて、雑誌の一~二冊ぐらい、差し入れがあってもいいだろう」

 

 

 セシリアが用意したこの病院は確かに居心地がいい。しかし、どんなに設備が良かろうと、入院患者は総じて退屈と戦うのが世の常、それを今自分は大いに痛感している。

 

 持っていた端末はとうにフランスで置き去り、思えば金銭やパスポート、貴重品が収まったカバンまでリュミアーレ村に置いたまま。なんとも、寂しい懐事情だ。

 見舞いには誰も来ず、ただ医者に検査を受けて、時折リハビリを受けて、あとはテレビを見るぐらいか。

 

 

 

「……ニュース」

 

 

 

 

 

 

……一連の事件、未だ犯人は特定されず、テロリストの声明は事件以前と事件後にも無いまま、真相は闇に

 

 

 

……デュノア社の代表取締役、アルベール氏が病に伏して一週間。未だにそれ以上の声明は無く

 

 

 

……アミアン自然公園区でおきた爆発事故、政府が封鎖処置をしてからも一向に発表は無く

 

 

 

 

「……」

 

 別段、面白いわけでもない。しかし、フランスで起きたこと、それが世の中にどれだけ影響を与えているか、それぐらいは気にかかった。

 

 当然、そこには情報統制もあるだろうから、知れることは大概だ。世間は不自然な事件の真相を追うも雲を掴むような結果しか見えず。

 

 肝心のアルベール、デュノア社はまるっきり黙したまま。だが、フランスの方と比べ、ここイギリスでは大きな動きが起こった。

 

「……またか」

 

 ニュースキャスターが次の情報を映す。それは、ここ最近フランスの不審な事件よりも、国民をにぎやかす大きなゴシップだ。

 

 

 

……イギリス最大手企業、オルコット系列で名を馳せた、あのガルディエ製造業代表取締役、モーレスガルディー氏が書類送検されて早三日。未だ、余罪の追及は続いているとのことで

 

 

 

「……なんとか一人、身内の恥は雪ぎましたわ」

 

「!」

 

 

 聞き覚えのある声、入口へ振り返る。

 

 

「セシ……は?」

 

 

 だが、そこにいたのは長髪ブロンドのお嬢様ではなく。もう一人

 

 

「あはは、ごめんね……でも、あのお嬢様ならそう言うよね。えへへ、イタズラ成功」

 

「……」

 

 そこにいたのは、自分と同じ入院服を纏った少女。

 

 声色は依然と同じ、もう死人の魂は天へと帰ったのだろうか。

 

 

「……シャル」

 

 

「うん……ようやく、会えたね。私、傷物になっちゃった……なんて、ね」

 

 

 頬のばんそうこう、腕の包帯、生傷の治療跡が生々しい。しかし、その場で軽くターンして、変わらない笑顔を振りまいてみせた。

 

 

 

 

 

 

   ×   ×   ×

 

 

 

 

 

 

 入院して一週間。イギリスについて保護された俺はすぐに気を失い三日は眠ったままだった。治療、検査、取り調べ、取り調べ、検査、そしてようやく落ち着いて入院患者になれるようになって、それが一週間。

 

 ここはロンドンに在る病院で、恐らくはオルコットの息が強くかかっている施設だ。だから、きっと俺と同じように入院していると踏んだが

 

 

 

「……予想は的中、だったかって、おい」

 

「えへへ……久しぶりの添い寝」

 

 油断も隙もない動きを、そんなことに使うなとつっこむだけ無駄。というか、どうしてそう気楽に男のベッドに入ろうとするんだ。

 

「…………駄目だぞ。はしたないことは怒るからな」

 

「むぅ…………けちんぼ」 

 

 わかりやすい子だ、安堵のため息が出る。

 

 そして、注意されたらされたで、シャルはベッドの縁に座る。そこで、何でもなくただ笑っている。

 もう、不安なことは無いのだろう。痛いことも辛いことも、もうきっと

 

「……」

 

「で、検査も終わってね……監視役もいないから、ちょっと病院を探検。お兄さんの部屋はすぐにわかったよ。見張りもいたけど、なんか勘違いされてすんなり通っちゃった」

 

「……あぁ、だから」

 

「うん、あったことないけど似てるの?」

 

「いや、まあどっちも金髪だし、それに年頃も同じ。」

 

「可愛いのは?」

 

「同じ」

 

「……む」

 

 いそいそと、ベッドの上を四つん這いで移動する。何をするかと思えば、背中に張り付いて、またも

 

「……おい」

 

「ふん……お世辞も言えないお兄さんが悪い、かぷ」

 

「おい、はしたない……って、どっちも可愛いならいいだろ。実際、比べる要素ないぐらい良いんだ」

 

「知らない、それよりその子おっぱいは?私胸なら負けない自信あるよ」

 

「デコピン、追加されたいか?」

 

「やだ。だけど、てい!」

 

「!」

 

「ふっふ~ん! くっつくのはやめないからね、にしし」

 

「……ッ」

 

 猫にじゃれつかれている、そう思うことにダリルは決めた、というよりかは諦めた。

 

 パリの家、リュミアーレの村。なんどか、こういうじゃれつかれ方はされているが、きっと本心から甘えたがっているのだろう。

 

 親のことは、報告の段階でシャルにも知らされているはずだ。イリスの願い、それを狂わせた束の存在。すべて理解しても、やはり満たされないのは、幼さゆえに…………故に、ゆえ

 

 

……ちゅぅ

 

「…………おい」

 

「……痛い?」

 

「くすぐったい、だ……汚いぞ。男の体なんか」

 

「ううん、そういうのは気にしない。…………でも、なんだろうね。あっ、病院食美味しくないから、かなぁ? お兄さんの方がおいしいからつい夢中で」

 

「カニバリズムだそれは、バカ」

 

「う~ん、ふふ……あむ」

 

「……」

 

 首筋に触れる生々しい感覚。まだ幼いとはいえ、発達するところはしていて、正直あまりよろしくないだろう。

 

「おい……シャル、いいかげんに……ッ」

 

「……」

 

 暖かい感触が、ひときわ大きくなった。

 

 無言で、首から歯を離したと思えば、今度は両手が前に、背後から強く抱きすがる。 

 

「……おい、あのなぁ」

 

 当たっている、そう率直に言おうにもさすがに鼻が痒い。

 

 13歳、本人が自称するだけあって膨らみは中々に、少女ではなく女なのだと感触で気づかされてしまう。

 

「……ねえ、お兄さん」

 

「?」

 

 手が、首に回したシャルの手が、やたらと体をペタペタと触りだす。胸板、腕、密着したままに

 

 

……甘えるにしては、さすがにこれ以上は

 

 

 子供のすることだから許すべきと、そう考えるも背中の感触はさすがに看過できない。

 

 というか、入院生活故疲労が色々と、それこそ男としても色々に溜まっている身としては、これ以上の破廉恥は許容できない。

 

 

 

「おい、シャル……よさないか」  

 

「……」

 

「なあ、聞いて……って」

 

 ペタペタと、シャルの手は顔の方まで登ってきた。後頭部にはシャルの額の感触が、手の平で俺の顔の形を確かめるように、頬や鼻、顎に、口と

 

 

 

 

「……形、覚えておかないとね」

 

 

 

 

「?」

 

「聞いたよ、私の体……普通じゃないんだね」

 

「……ッ!」

 

「私の手足、移植されたものだって……無かったんだね、手足」

 

「……それは」

 

「いいよ、もう色んなことがありすぎて、正直実感わいてないから……でも、ね…………うん、やっぱり怖い。嘘、強がりだったね」

 

「……」

 

 背中に感じるシャルの体温、温もりが伝えるのは人の感情。熱をもった体の奥で、シャルの感情が冷えていくのを感じ取る。

 

 手で触れようとする意味。この子なりに向き合おうとしているのだろう。忘れないように、生身の手で感じる温度を、感触を、伝わる感情を、この子もまた

 

「……だが、シャル」

 

 しかし、そうシリアスなことを考えるほどに

 

「いいのいいの、さてさてくよくよしても始まらないし……うん、パンフレットってないのかな? どうせならさ、ちゃんとかっこいい義手が良いよね。お兄さんと同じ三本指だとさ、女の子としてはさすがにね、おしゃれしたいし、指輪とかのアクセもつけたいし「シャル」

 

 

……駄目だな、これ以上は、さすがに

 

 

「シャル、シャル……おい、止まれ、聞け」

 

 

「き、気にしてない! 陽気にね、私ポジティブなのがウリだし、下町育ちだからそれぐら……」 

 

 

……ビタンッ! 

 

 

 

「!!」

 

 鈍い音が大きく響いた。ダリルの放つ渾身のデコピンがシャルの鼻っ面を捉えた。

 

 ベッドで転がり悶絶する姿を見て、さすがにダリルも笑う気がなくなり呆れでため息を漏らす。

 

「シャル、周りからは何も聞かされていないのか?」

 

「へ?」

 

「……そうか、なら仕方ないか」

 

 ダリルは頭を抱えた。まだ事件を終えて間もなく、情報の整理が出来ていなかったのだろう。

 

 というか、イリスから直接聞かされた話は、無意識に避けていたのかもしれない。どんな理由が荒れ、視認から聞いた話なんて信じられないだろう。

 

 

……シャルには、話した方がいいな

 

 

 おそらく、記録上でシャルは遺伝的な欠陥の体質があると明らかになっただけ。あの事件の日々、シャルに起こった体の変化は、まだ知られていない。

 

 変化は、確かにあった。それは、亡き母親からの確かな贈り物。

 

 

「……シャル、単刀直入に言うぞ。お前の手足、無くならないぞ」

 

「へ?」

 

 




今回はここまで、長くなりそうなのでここで区切り。

次回こそ最終話。そして新章への繋ぎ


感想、評価などあればよろしくお願いします。次回もできるだけ早めに、したいなぁ
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