無限の蒼穹に雷鳴は轟く IS× THUNDERBOLT    作:サンボル好き

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また深夜投稿です。オリキャラの味付けが濃すぎないかちょっと心配です。


ダンス・プレリュード

 

 オルコットカンパニーが所有する鉱山、都市から外れたへき地にある鉱床地帯、ある場所はすり鉢状に地面が彫られ、別の場所では蜂の巣のようにいくつもの横穴が彫られた無残な岩山がちらほらと並ぶ。

土地の名をアステリオ、雷光という意の名を付けられた理由は誰も知らず、また、この地で働く者たちもその疑問に思考を向ける者はいない。

 

ただ一人を除いて

 

 

 

 

 

 

 

 

 鉱山に至る道は主に二つ。一つは町から伸びる直通の公道、そして正反対の方向にある裏側のルートがある。

 

 鉱山のあるアステリオ地帯は急こうな山脈が並び、故に街を行き来するのは正面であり、逆に大きく道を迂回する裏側はめったに使うことは無い。故に、そこは人気のない、誰にも見つからないためには格好のルートである。

 

 

「……ようこそ、セシリア。この二人が」

 

「ええ、お話に伺っていたマツナガ様とフィッシャー様ですね。お初にお目にかかります。」

 

 育ちの良さを感じさせる上品な振る舞い。年若い少女の振る舞いにどうも調子が狂うのだろうか、フィッシャーの目が緊張で泳いでいるのは少し愉快だ。

 

「お、おう……お嬢ちゃん、本当にあんたがトップなんだよな。なんだか末恐ろしいぜ」

 

「ふふ、誉め言葉として受け取っておきますわ。」

 

 軽口すら上品に受け流される、別段女に慣れていないわけではないのだろうが、ここまで品行方正で清い相手で、しかも下手すれば娘のような年頃なのだ。完全に面食らって調子が出ていない。

 

「ああ、じゃあ……えっと」

 

 目配せで班長に助けを求める。どうやらこれ以上は限界のようだ。当の本人はニコニコとしているだけなのだが

 

「あー……、そろそろ行くか。話ができる部屋を用意してある。ついて来るんだ。」

 

 

 

 

 

 

 セシリアとの会合は地上にある居住区の一角、今は使っていない倉庫の部屋に作られた即席の談話室で行われている。中では俺以外の四人が話をし続け、俺は部屋の外で誰も来ないように見張りを引き受けた。薄暗い廊下の中、消えかけた照明のかすれた音がぢりぢりと耳に不快感を残す。

 

 

「………見張りか、でもまあ」

 

 人は来ない。今の時間はまだ鉱員たちも作業中で、何か用がない限りわざわざ居住区にまで来たりはしない。

 

……。

 

 ふと、退屈の誘惑に負けてラジオに手が伸びそうになるが、さすがに寸での所で手が止まる。

 

 部屋の方ではまだ話が続いている。何やら色々と質問攻めにあっているようだが

 

「はあ…まだ、終わりそうにないか」

 

「何が終わりそうにないんだ?」

 

「!?」

 

不意に、後ろかする声に振り向く。そこにいたのは

 

「………ふ、フーバー少尉、ですか」

 

「ああ?…またお前  いいか、俺はフラウ、バーレスク!あと軍にいた時は少尉じゃなくて大尉だ!  お前はいつになったら名前と階級を覚えられるんだっつの!?」

 

「……すいません、つい」

 

 フラウ・バーレスク、名前こそ違うがその外見、声、鼻に突く性格まであの少尉と何もかもそっくりである。

 

…大尉か。…少し、複雑だよな。

 

 以前の世界では部隊の上官だったが、敵にMSを奪取される際に額を撃ち抜かれて戦死となり、規定にのっとり二階級昇進を果たしている。それ故に大尉という階級には本人には

決して知りえない少し複雑な心境がダリルの中にはあったりする。

 

「たく、で…てめえはここで何してんだ。さぼりか?」

 

「あ、いや…さぼってるわけじゃ」

 

…いや、ナニかあると思われる方がまずいな。

 

 話声が目立たないようにとっさにラジオを鳴らす。受信して流れるDJの快活な口調でどうにか誤魔化せているようだ。

 

「えっと……他の人には、黙ってくれませんか?」

 

 とにかく、今はその理屈に乗るほうがいい。俺は懐から数枚の金銭を取り出し、そっと前に差し出す。

 

「へえ、お前さん案外やるじゃねえか。いいぜ、さっきの無礼も帳消しにしてやる。」

 

「……」

 

 受けとった賄賂をポケットに収め、上機嫌な足取りでフラウ大尉はその場を去っていく。

 

「……はあ」

 

…なんというか、嫌いじゃないけど…好きにはなれないな。

 

 プレイボーイ気取りで、人を小馬鹿にする性格、世界を超えてもその根っこは変わらないようで、以前と同じように仕事の関係以上にはなれないようだ。

 

―――ッ♬♪

 

「!!」

 

 受信している番組の曲線なのだろう。管楽器とドラムロールが乱雑に入り混じる荒々しいセッション

 

「フリージャズ、曲名は……ジャイアントステップ」

 

 ポップスよりの趣向なダリルだが、この曲だけは忘れない。忘れようにも決して忘れることなんかできない。

 

「あぁ、嫌な曲選だ」

 

 嫌な予感がする。雷の名を有するこの地に奴の音が響いているのだ。穏やかになれるはずがなく、心の中でハンドルのトリガーに指をかける。

 

「………」

 

…何かがおかしい。理屈も根拠もないのに、それでも

 

 それでも、なぜだかあの時の感覚、サンダーボルト宙域で感じた戦争の肌触りを、俺は今感じていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「へっ ちょうどいい小遣い稼ぎだな。」

 

 

 ポケットにしまった小金で気分を良くし、浮かれた調子でふらふらと足取りを進めていく。

 

 

……しかし、あの野郎あんな場所で何を

 

 

さぼるにしても自室にこもればいいものを、

 

「きゃっ!」

 

「!?…おっと」

 

 誰かにぶつかる。薄暗いせいか服装は黒っぽいコートにしか見えないが、その燃えるようなウルフヘアと整った顔立ちは嫌でも視線が奪われてしまう。

 

 

…うおっ、すげえ美人

 

 

「お、悪いな、お嬢さん。というか、あんた誰だ?」

 

「あいたぁ…! もう、暗いから見えなかったわ。悪いわね、義足のお兄さん」

 

 そう言い、出された手を掴み立ち上がる。というか妙に近い

 

「お、おう……で、あんたはいったい」

 

「ん…?ああ、確かに変よね。こんなところに女の子が一人でいるなんて。     ねえ、なんでだと思う?」

 

「え、ああ…それは」

 

…なんか、近いな…。ていうか、結構いい女、だよな。

 

 年は同じぐらいか、タンクトップ越しにでも十分すぎるぐらいな豊満な部位、労働で疲れがたまる体にはあまりにも毒だ。

 

「……あんたみたいな良い女が何でこんなところに、誰かデリヘルでも呼んだのか。」

 

 いつもなら歯の浮くような言葉を言うつもりが、目の前の女はそんな余裕を許さない。らしくないとはわかっていながら、口から出たのはそんな低俗な軽口だった。なのに

 

「ふーん、そう見えるんだ……。まあ、正解かな、気持ちいい仕事をしに来たわけだし」

 

「!?……へえ。 そりゃあ、さぞすごいんだろうな。」

 

……ていうか、ダリルの野郎。もしかしてあいつが呼んだのか?…わざわざあんな離れたところにいんのも変だと思ったが。

 

「人知れず楽しむなんざ生意気な。」

 

 欲が出る。わざわざ街を散策するよりも、今この目の前にいる極上の肉にありつきたい。ふつふつとフーバーの中で下衆じみた欲が沸き上がる。

 

「なあ、誰に呼ばれたか知らねえが……あんた俺に買われないか」

 

「ええ、なんか急ね……でも、あんた私の好みじゃないのよね」

 

「おいおい、そんな冷たいこと言うなよ。人は外見だけじゃねえってスクールで学ばなかったか。ベッドで裸になりゃあ、もっと互いに見えるもんがあるだろうってな」

 

「へえ、そう。でも残念、あたし中身重視なのよね。」

 

「だからよ、その中身を見れば話しも変わるって。なあ、金なら後で払ってやるから、こっち来いって…!」

 

 乱暴に手を引く、体勢を崩し女は男の胸にとびかかるように持たれる。

 

「……へえ、そこまで言うんなら。確かめさせてもらうわ」

 

女の手が胸板からゆっくりと下腹部に向かって降りていく。細い指先で艶めかしく、快感でくすぐるように

 

 

「……お、おう。結構大胆なんだな」

 

「ええ、だから……見せて、貴方の」

 

 

 

 

グシャアッ!!!

 

 

 

 

「?」

 

臓物(なかみ)、見るわね……。」

 

 

「………」

 

体が動かない。なぜ自分は床に倒れているのだろうか、床を伝う赤い液体は

 

「……なん…で」

 

「ふーん、確かに人は外見じゃあないわね。あなたの…ちゃんと綺麗よ」

 

 床一面に広がる赤一色、さっきまで生きていた人間を前に、女は眉一つ動かさず手に持つナイフの刃先で男の腸をかき回す。

 

「うん、やっぱり綺麗。ちゃんと健康に気をつかってるんだ。」

 

 ひとしきり見終わると女は手品のように血まみれの刃物をその手から消す。代わって手に出した通信用の端末を起動させる。

 

「……もしもし~。ターゲットは……いない。 事務所のスペースじゃないとしたら、どこかプラントの視察? 」

 

 会話を続けながら一枚一枚服を脱ぎ捨てる。スーツもタンクトップも脱ぎ捨て、最低限肌を隠すラバースーツ一枚に装いを変える。

 

「まあ良いわ。それなら人が多い所、そこに襲撃しなさい。でもすぐに片付けちゃだめよ。適当に殺して、適当に引っ張り出させなさい。」

 

 女の周囲に鈍い色の粒子が集まる。次第に粒子は夕闇色の装甲となり、女の体を一回り大きな姿に変える。

 

「さあ、腹ごなしも済んだし。お仕事頑張るとしますか」

 

 

 

 

 

 

 

 

「クソッ!! なんでこんなことに…」

 

「知るか!そんなこと俺に…」

 

 言葉が途切れる、横にいた同僚の額には風穴が空いていた。

 

「ひっ!?」

 

 死体が倒れる。コンテナに身を隠し、せめて義手で頭を覆い身を敷い策するのが精いっぱいだった。

「あああ……なんで、また」

 

 地下の採掘プラント、広々と大空間で響くのは地面を削る音ではなく、今響き渡るのは火薬の破裂音と断末魔のみ

 

 記憶がよみがえる。歩兵として戦い、この両手を失った時と同じ、あの戦場の景色

 

「ああ、くそっ! クソッ!!!」

 

否定したい、こんなものは…もう

 

ザッ、ザッ…!

 

「!!」

 

 歩兵が近づく。サブマシンガンを構え、確実に自分の命を刈り取ろうと

 

「―――ッ!!?」

 

 今はまだ気づいていないようだが、いずれすぐに気づく。命が終わる、そう確信した時

 

「…ッ!」

 

 懐に入れた端末が震える。取り出し通話をオンにする、その相手は

 

……ダリル、なのか

 

 離れた敵兵に警戒しながら、恐る恐るスピーカーに耳を当てる。

 

「ショーン、ショーン・三田寺だな……。」

 

「あ、ああ……そうだ。 頼む助けてくれ、いきなり武装した敵が表れて、同僚も数人、このままじゃ俺も」

 

「いや、大丈夫だ。いまそっちに助けが向かってる。」

 

「助けって、奴らは…」

 

「問題ない。今そっちに向かってるのは……」

 

 

 

 

―――――ッ!!?!?

 

 

 

「!!」

 

 外壁を破る青白い熱線、隔壁を破り大空洞に降り立ったその正体は

 

「なっ……あれは!?」

 

「この世界の最強兵器、最高の守護天使を降臨させてやったよ。さあ、暴れてくれ…セシリア」

 

 

「!!……敵勢力を確認、これより対テロ規定にのっとり」

 

 長距離砲、スターライトを収納し、肩部の非固定部ユニットから計四つのビットを展開する。

 

「!!……撃て」

 

 一人の男が指令を出し、動揺で静止していた兵たちが各々銃口を向け、ブルーティアーズに実弾の雨を降らす、だが、たかだか対人間を想定して、しかも屋内を想定した短銃の弾丸がいくら集まろうと、それはISという絶対兵器の前ではなんの意味もなさない。

 

「……命までは取りません。ですが、民間人に対するこのような非道、セシリア・オルコットの名に懸けて決して許しはしません!! ISによる武力行使を実行!敵勢力の無力化を開始します!!」

 

 出力を抑えた対人のビーム砲、計四門のビットは不規則に宙を舞い、敵兵に向けて閃光の雨をその身に穿つ。

 

「!!?!?」

 

 一瞬だった。分隊規模の歩兵が一瞬にして倒れ伏していた。手足をビームで焼かれロクに抵抗の出来なくなった兵は歩けるものを抱えこの場から引いていく。

 

「………すげぇ」

 

「そこのあなた!」

 

「!!……お、おれ」

 

 コンテナから這い出る。自分よりも年若い少女が心配そうにけが人を抱え、コンテナから這い出た自分のもとに駆けよる。

 

「私は敵の制圧を続けます。あなたは無事な人達をまとめて……」

 

 避難を、そう言葉を口にしようとした時、わずかに感じる殺意の一撃にAIがレットコールを鳴らす。

 

「インターセプター!!!」

 

 口頭による武装展開。逆手に持った近接のブレードを縦に、背後からの斬撃を間一髪で受け流す。

 

「!!……ビットッ」

 

展開した二門の砲撃、対人用に威力を落とした時とは違い、確実に敵ISを仕留めるための高出力砲

 

「よっと」

 

 苦し紛れとはいえ光の速度で放つ一撃を、この相手は簡単に避けて見せた。

 

「……!!?」

 

「あらあら、狙いが甘いわよ。それでもBT計画の走りなのかしら?」

 

「……あなた、いったい!?」

 

 フランス製の第二世代型IS、ラファール。しかし、その全身を纏う夕闇の装甲と頭部を覆うバイザーは一般的な流用しているモデルとは細部に至るまで異なる。

 

「名乗るのは嫌いじゃないけど、さすがに仕事中はね……でも、特別にお姉さんって呼んでいいわよ。セシリア・オルコットちゃん」

 

「……くっ!」 

 

 スターライトを構える。この閉鎖空間でどれだけ戦えるか、今目の前にいる相手はそれだけの脅威で、決して機体のバージョン程度では測りきれない、そんな危険性がひしひしと肌で感じる。

 

「……!!」

 

「あらら、警戒しちゃって。でも、まあ仕方ないわね」

 

「……!!!」

 

 セシリアは残った二門のビットも展開し、スターライトの銃口を向ける。全砲塔が敵の挙動を一切見逃さない。動いた瞬間、軌道予測で一気に射線を叩き込む…!!

 

「……あら、こんな狭い所で。分が悪いから降参しなさい。できる限り安楽死を心がけるから」

 

「ご心配なく。たとえどんな状況でも、どんな射程でも、わたくしのブルーティアーズはあなたを確実に打ち抜きますわ……!!」

 

「へぇ……自信があるのね。でも」

 

 敵が武装を展開する。右手に近接武器、ブレッド・スライサーを、左手には重機関銃デザート・フォックス

 

「残念だけど、貴方にはここで終わってもらうの。そう言う依頼だから、恨むならクライアントを恨みなさい!!」

 

「!!?」

 

 

 

 

 




今回はここまで。ダリルの出番は次からですね
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