無限の蒼穹に雷鳴は轟く IS× THUNDERBOLT 作:サンボル好き
上手く書けてるかどうか
「くそ、本社の野郎 約束が違うじゃねえか!!」
調度品で飾られた華美な社長室は目も当てられないほどに荒れている。しかし、その原因は当の本人によってであり、必死になって鞄の中に権利書やら金銭に宝石など、価値のあるものを片っ端から詰め込んでいる。まるで今から不渡りで夜逃げでもするかのような有り様だが実質同じようなものだ。
「!!……頼むから、こっちに来るんじゃねえぞ」
今もなお響く銃声に身を竦め、自分の背丈ほどある鞄を抱え逃げ出そうとしたその時
「おっと、そんな大荷物でどこに行くんでさあ」
「!?」
部屋を出ようとして何かにはじかれる。その正体は
「ま、マツナガ!!ど、どけ 今なら逃げられるんだ」
「…今なら、ねえ。やっぱりあんたなんか知ってるくちだよな。」
「!?……、そ、そうだ、お前も手伝え! ここから逃げられたらわけま…!」
その先の言葉はなかった。よく肥えた顔面に皮のブーツがゴリゴリとめり込む。
「---ッ!!!?!?」
「おっと、義足の方で蹴っちまったか。まあ鼻が折れただけなら問題ねえ」
「―――ッ!!?―――ンゴッ!?!?」
床に押し倒すように踏みつける。倒れたガレには自分を見下ろすマツナガの姿、そしてその後ろに立つ若いイギリス系の女性の姿が
「……ッ!!?」
女の、チェルシー・ブランケットの手にはハンドガンが握られ、豚を見るような目と共に銃口が自分の眉間を捉えている。
「おい、正直に話した方がいいぜ。ことの原因、あの日の電話相手は何だ、お前さんが知っていること、全部話した方がいいと思うがな。」
「……ミスター・マツナガ、足をどけてくださいませ。」
義足がどけられる。鉄の塊に押された苦しみから解放されようやくまともな呼吸ができる。だが
「ふがっ!?」
わずかに開いた口に運ばれたのは酸素ではなく、鈍い金属の味と死の芳香だった。
「拷問は得手ではありません。なので手短に済まします。今ここで死ぬか、我々と協力して生き延びる道を選ぶか。」
「!?!?!?!!?!」
チェルシーが秒読みに入り、本気を悟ったガレはついに抵抗をあきらめた。
〇
「おい、待てって。義足なんだから、もう少し、ゆっくり……ッ」
「……!!」
少し時間を戻す。
会合が終わってすぐ、俺たちは遠くからの音に気付き、俺たちはそれが銃声であることを理解した。
不規則に連続する破裂音、軍人としての本能が敵の襲来を確信させる。
「……こりゃあ、おい」
「ああ、採掘プラントの方角だ。……けど、いったい何が」
「テロ、ではないでしょうか。」
…テロ、わざわざこんな僻地で…。
「民間人が襲われているなら、アラスカ条約の規定にのっとり、ISの使用は可能です。ダリルさん、プラントの場所を…」
「……君一人で行くのか、敵勢力も不明なのに」
「ええ。 ですが…今は救援を優先します。」
「……ダリル様、ことは急です。IS使用者は軍属でもあります。であれば、ここは現役の兵士にまかせては…」
「……兵士、か」
自分よりも幼い、人を殴ったこともないようなこの子に……でも
「ダリル、気持ちはわかるが仲間のためだ、ここは嬢ちゃんに頼ろう。」
「……ああ、わかった。けど、無理だけはしないでくれ」
端末を取り出し、鉱山のマップを表示する。端末に顔を近づけると、イヤーカフスがちかちかと点灯する。
「……マッピング完了です。では…」
青白い粒子を纏い、セシリアの体がひときわ大きいものに変わる。スカイブルーの装甲を纏ったそのいで立ちは強さと美麗さを兼ね備えている。
「セシリア・オルコット、行きます!!」
スラスターとPICによるスムーズな慣性制御移動により音もなくその場を去っていく。残された俺たちにできることは……
「フィッシャー、俺たちも行こう。戦闘は無理でも救助ぐらいは」
「お、おう。…やるしかねえよな」
…あとの二人は、チェルシーさんはどうするか
「……私はISを持っていません。できれば、貴方たちの手伝いを……」
「いや、メイドの嬢ちゃんには俺と来て欲しい。」
「……マツナガ様」
「……今回のこと、なにかキナ臭えからな。あんたの情報が必要だ。」
「……決まりだな。」
それぞれの意思が固まる。二人は居住区の奥へ、俺とフィッシャーは重機格納庫に向かう。
そして、今
「……なあ、おい! さっきの通話は」
「ああ、ショーンは助かったみたいだけど。どうやらひどいことになってるみたいだ。」
電話越しに聞こえる銃声と悲鳴、思い出したくない、またあの戦場という舞台に俺たちは放りこまれている。
「フィッシャー、EOSを起動したら採掘プラントに向かう。やれるよな」
「おう、こっちとら元機甲師団だ。デカ物の戦いには慣れてらぁ……!」
「なら、頼りにさせてもらう!」
EOSは作業用重機として使われているが、一部では戦闘でも使われる立派な兵器だ。武装は無くともその剛腕だけで十分に戦えるはずだ。
敵の勢力は不明。だが、こちらにはISがあるこの世界におけるMSともいえるそれは戦場の優劣を決めるメインファクターだ。
音が近くなる。当然格納庫は採掘プラントの近くで、いよいよ顔の見えない敵の喉元に踏みこんでいる。だが、聞こえる銃声からそれは歩兵の持つ程度のものと予想できる。敵が歩兵だけならセシリアだけですぐにも制圧できるだろう。
だが
「……。」
…嫌な予感がする。
不安は的中し、そしてその悪寒は未だ胸の中で消えない。義足に無理を聞かせ、今はとにかく格納庫に向かうしかない。
「……セシリア」
信用して送り出したが、彼女の向かう先は本当の戦場だ。命の奪い合いが平然とまかり通る理不尽の象徴、そして俺たちは能力を理由にそんな場所に追いやってしまった。
……これじゃあ元の世界と同じだ。いつかに苦言を吐いた軍の上層部と同じで、少なくとも俺たちは子供を戦場に送り出してしまったのだ。
「………くそっ!」
「?……おいダリルってなあ!! 俺を置いてくな!!!」
〇
地下の大空洞プラント。大小の規模のある広い採掘場を網目のようにつなぐその場所を戦場に
未だ、セシリアは敵を倒すに至ってない。
「くっ!!」
敵の女の纏うISは第二世代のラファールのカスタム機。夕闇色の装甲に大きな四枚の装甲を張り付け、搭乗者の顔には何らかの電子兵装と思しき顔全体を覆うバイザーが付けられている。
「ほら、早く私を倒さないと救援に遅れるわよ!!」
「……貴方を倒して、すぐに向かいますわ!」
「言うねえ、なら……そうして見なさい!!
左の重機関銃で弾幕を張り、距離を詰めて右手の本命を、右手に握る刃で蒼玉色の装甲を貫かんとする。
「…ッ!?」
間一髪、バレルロールの軌道で回避と同時に敵の側面に回る。トリガーを引き、銃口から放たれるビームは敵の装甲を穿つ、近距離必勝の一撃……だが
「!!……また、あの盾に」
着弾と同時にビームが霧散する。着弾すれば機体がはじかれるなり、熱で融解した痕跡が残るはず。なのにそこには一切の傷もなく、敵は攻撃の事実すらなかったかのように返しの一撃で袈裟切りに刃をふるう。
ガキンッ!!
「きゃあっ!?」
SEが削られる音、更に畳みかける後ろ回し蹴りでセシリアは後方の岩壁に叩きつけられる。
「くはっ…!」
一瞬意識がホワイトアウトしかける。だが、そんな暇は許されない。敵はまだ
「もらった!!!」
「!?」
間一髪、ブーストの急点火で横合いにずれたことで敵の追撃から逃れられる。すぐに距離を取りスターライトで牽制を続けながら体勢を立て直す。
エナジーの浪費とはわかっている。だが、それでも距離の優位まで無くしてはいよいよ勝ち目はない。
「あらあら、エナジーの大安売りね。」
「……ええ。ですがあいにく、これがわたくしの戦い方ですので。」
幾度も衝突を経て、セシリアは気づく。敵のアンロックユニットの表面を覆う四対の羽、前面に展開することで正面を覆い隠すほどのそれは対光学兵器用の絶対的な対抗策であった。
「…………その盾、ビームを反射…いえ、吸収してますのね。」
「あら、よくわかったじゃない。そうよ……対光学兵器用特殊装甲、フォトン・アブソーバ。同一の粒子帯を装甲面に展開し、ビーム粒子を逆説的に再変換してSEに戻す。あなたの機体の為に用意したのよ。ラファールには重くて仕方ないけど、結構便利なの」
「…ッ、確かにそうですわね。それほどの武装、是非とも言い値で買わせていただきたいほどですわ。」
と、冗談めいたことを口にはしているが、実際内心では非常にセシリアの精神は切羽詰まっていた。
ブルーティアーズの武装はビーム兵器を中心に構成されている。敵の盾が無制限に使える物なら持久戦では到底勝ち目など無い。ティアーズに搭載されている実態兵器は近接兵器のインターセプター、そして唯一の飛び道具であるグレネードを放つ腰に内蔵された二つのビット。
だが、虎の子のグレネードは段数に限りがある。下手に浪費しては毛頭意味はない。ビームを吸収されて持久戦に持ち込まれればこちらに勝ち目はない
故に、決めるなら速攻。
「――……ッ!!」
…覚悟を決めるしか、ないですわ。
距離の優位を捨てる代わりに得る一度きりのチャンス。スターライトを収納し、インターセプターを展開する。
「へえ、面白いじゃない。いいわ、受けてあげる!!」
互いに正面に加速しあう。刃を交えあおうとする刹那
「!?」
敵の刃が肉薄するその瞬間、セシリアはインターセプターを捨て、敵の両手を掴んで身動きを封じる。
「くっ…!」
…や、やりました!
「あら、非力ね。接近戦向きじゃないからパワーアクチュレイターが貧相ね。さあ、いつまでもつのかし…」
「いいえ、もう終わりですわ。」
「!?」
……ロックオンアラート…?
四方を囲む六つのビット。その照準は全て中心に向けられている。敵を拘束するセシリアをも巻き込んで。
「……あんた、正気?」
「ええ。…これだけ密着すれば盾は展開できません。」
ティアーズの機体が邪魔となり盾は展開できない。上から抑えるティアーズのPICによって機体の挙動を抑え射撃の点をずらすこともゆるさない。
「……なるほど。これがあなたのチェックメイトなわけね。」
「……余裕です、わね……けど」
……全方位から降り注ぐ高出力の砲撃、ラファールの装甲で防げるものなら防いでごらんなさい!!!
セシリアの思考操作を引き金に、四方のビットから一斉に砲撃が放たれる。
「……なるほど。悪くない策ね……でも
………残念だけど、貴方の負けよ」
「――……ッ!?」
イメージインタフェースはセシリアの思考をコンマ単位の誤差なく瞬時に伝達する。引き金は引かれたはず、なのに
「……どうして! なぜ!?」
四方を囲むビットからは何も打ち出されない。沈黙して浮遊したまま
「……もう、いいかしら?」
片膝の装甲がスライドし、中からブレッド・スライサーと同じ刀身が露出する。
「!?」
凶器を纏った膝蹴りがむき出しの腹部を穿つ。おおきくSEを削ると同時に。障壁越しに与える鈍い痛みが思考を鈍らせ、PICが途切れたティアーズは地面へと落下する。
「かはっ…!」
……どうして、エナジーも弾装も十分なはず。なのに
「なのに…なぜ撃てない。そんな顔してるわね。」
地面に降り立ちゆっくりと距離を詰める。勝利を確信し饒舌になっているようだ
「……種は簡単、あなたのBT兵器を無力化しただけ。欠陥だらけの未完成品だもの、気にしないでいいわ。」
「……BT兵器に欠陥!? そんなの、ありえませんわ」
「いいえ、あり得るのよ。それじゃあもう土産は良い、もう終わらせてもいいわね」
「……ッ!!」
重火砲ガルム、照準を向けたままゆっくりとセシリアへと距離を詰める。もはやその表情には先ほどまでの威勢は感じられず、むしろその瞳の奥には微かに恐怖が芽生えている。
「あらら、今更になって怖がるの?やっぱり実戦は初めてみたいね。」
「……実戦」
「そう、今の今まで繰り広げた戦いこそが本当の闘い。競技みたいなお遊びとは違う、本当の命の奪い合い。」
でも安心して。私、可愛い女の子はいたぶらない趣味なの。それとも、痛い方がいいかしら」
「!?」
ガルムの銃口が向けられる。引き金を引けばきっと数発でティアーズの鎧は砕け、そして残るのは自分の体のみ。それはつまり
………いや
ついに、精神の天秤が恐怖に傾く。勇ましく挑んだ捨て身の攻撃、だがそんなものは蛮勇でしかない、ではここにきた自分の意思は、貴族としての誇りは……?
「……い、いや!」
全てが無駄になる。言葉で拒絶の意を示してしまってはもう戻れなくなる。飛び方すらおぼつかなくなり、ただ後ずさるしか出来ない。
「……嫌、助けて…お父様、お母様。」
ズダンッ!!
「ひっ!?」
シールドではじかれる。SEが削られて、機体からはアラートが鳴り響く。
回数にしてあと数発。吹けば飛ぶほどの灯となり、ついに心が折れる。
「あぁ……やめて」
「やめない。殺すのが任務だから、我慢してね」
スダン!! ズダン!!!
「いや、いやぁああ!!!?!?」
…死にたくない!!こんなところで、まだ何もかも途中で……!!
「……死にたくない。私は…まだ」
……生きたい!!こんな理不尽につぶされてたまるか、わたくしはまだ…何も成し遂げていない!! だから、ここで終わるわけには……
「セシリアッ!!!!」
「なっ!?」
ガキィインッ!!!
突然現れたカーキグリーン色のパワードスーツ、振るった奔斧の一撃はガルムの銃身をたやすく溶かし斬る。
「だ、ダリルさん!!?「目を閉じろセシリア!!」
「……スタングレネードッ!?」
正面に盾を展開し、頭部センサーをカバーする。しかし、炸裂して解放されたのは閃光ではなく…
「!!……ただのスモーク、食わされたわね。」
スラスターを全開で吹かし、スモークを四方に散らす。だが、すでにそこには
「……いない。…いや、隠れただけね。」
実際その通りである。坑道の奥でセシリアを抱えダリルは息をひそめていた。
…ハイパーセンサはあくまで目視の延長、だよな。熱感知は……いや、あるならすぐ特定されているだろう。
「……だ、ダリルさん。」
「………セシリア」
眼の奥の光が鈍い。戦場を経験したダリルにはわかる、彼女の目は、脱落者だ。戦争という狂気に飲み込まれた正常な人間の成れの果てだ。
「……申し訳、ございません……!わたくし、わたくしは…負けて」
「……」
…悪い予想が的中してしまった。
こうなってはまず戦えない。だが、だからといってこのまま置いておくわけにもいかない。
敵は健在、このEOSでもどれだけ通用するか。いや、安く考えすぎか
ダリルはISの性能を侮っていない。故に、戦力の分析は冷静だ。
…せめて二対一に持ち込む必要がある。そのためには
「セシリア……奴を無力化したい。協力を「無理です…」
「!?」
「私は 戦えません」
今回はここまでです。
今作のセシリアは13歳の未成熟な少女ですので、まあ辛い目に合わせて色々と伸ばしていきたいです。(親心)(悪意)