無限の蒼穹に雷鳴は轟く IS× THUNDERBOLT    作:サンボル好き

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また深夜二時投稿です。

今回でちょっと一区切り、というか戦闘の終わりまで一気にやります。ちょっと長めですが楽しんでくださいませ。


反撃の円舞曲

少し、時を戻す。

 

 

 ダリルとフィッシャーの二人が格納庫につき、作業用EOSを装備してプラントの救助に向かおうとした、その時のことだ。

 

 二人は無事目的地についた。だがしかし、彼らがそこにたどり着いたとき格納庫にはEOSどころか運搬用のワークローダーすらなかった。

 

 

「おい、こりゃあ……」

 

「ああ、敵は用意周到のようだ。」

 

 EOSが収納されていたランチにはまともな機体は一つもなく、すべて等しく無残なまでに破壊されていたのだ。

 

「……。」

 

…狙いはわかる。作業用とはいえEOSは兵器運用ができる。だが、いくらなんでも早すぎないか。

 

 機体のどれもばらばらで、千切れた断面には熱で焦げた部分が目立つ。スプリンクラーで水浸しになったあたり一面、どうやら何か火薬などを用いた破壊工作をしたのだろう。

 

「……この襲撃、裏に何かがある。けど、今は…!」

 

 今はこの状況を乗り切るしかない。せめて、武装した敵に対する防御策ぐらい

 

 あたりを見渡す。壊れた残骸が散らばる景色の中、一点だけシャッターが閉じたままの格納スペースがある。

 

「!」

 

…こいつをな

 

…カードキー、ですか?

 

…うちの格納庫スペースでよ、使ってない奥の7番ランチがあんだろ、そこのカギだ。

 

 

「……!!」

 

…鍵、たしか

 

 ポケットをまさぐる。そこには、いつかに渡されたカードキーがあり、ダリルは鍵を握りしめ奥の一角に目を向ける。

 

「?……お、おい ダリル。 お前さん何を」

 

「フィッシャー手伝ってくれ! まだ使えるものがあるかもしれない」

 

 格納庫の奥も奥、長いこと使われていないどころか、使わないジャンクが丘のように積み上げられ半ば下半分が埋もれ隠れていた。

 

「おいおい、こんな状況で何をしてんだよ!?」

 

「いいから手伝え! どうせ、ここで装備を得られないとただ撃たれるだけだ。」

 

 気迫に押され、フィッシャーもジャンクの丘に登り、鉄くずをかき分けごみを蹴落とし。どうにか下へ下へと掘り進める。

 

「……あった!」

 

 掘り進め、カードキーを指す制御盤までたどり着く。どうやらまだ電源は動いているらしく、キーを差し込んでロックの赤いランプがグリーンに変わる。

 

 

 シャッターが上がる。ごうごうと機械音を響かせゆっくりとその大扉が開かれる。

 

 

「よし!ひらいた…ってぁああああ!!!?!?」

 

 ジャンクの波に巻き込まれ、吸い込まれるようにダリル達は奥へと流れていく。

 

「おおぉぉおあああああ!!!!!!?!?!??!」

 

 大の大人たちが声を荒げて転がっていく。そしてたどり着いた先にあるものは

 

 

「痛ってえ、ダリルてめえ!!これで腰振れなくなっちまったらどうしてくれんだ! ああ!!」

 

「………」

 

「って、この野郎無視し……て…」

 

 言葉が詰まる。無理もない。それだけの光景が眼前にあるのだから。

 

 二人が見渡すその倉庫の中は……というよりこの格納庫を一言でいうならまさに武器庫であった。

 

 壁面に並べられた銃器、弾薬……そしてなにより、目の前にある人型を模したその存在

 

「……はは、こいつはすごいな」

 

「…EOS、それも作業用じゃねえ、戦闘用の奴じゃねえか……!!」

  

 全体をカーキグリーンで統一されたそれらは、普段自分達が身に付けているものと似ているようで遥かに違う。

 

 すぐそばにある端末が起き上がる。画面にはそのEOSとおぼしきポリゴン上の図面と、その機体名が浮き上がる。

 

「戦闘用EOS、ベルサーガ……」

 

「おい、そいつはドイツ製の最新機種だぞ!資料しか知らねえけど、まさかこいつが」

 

「ああ、なんでそんなものがあるか疑問だけどな。フィッシャー、動かせるか調べてくれ」

 

 魅入っている暇はない、二人はすぐに傍の計器を確認し、一つ一つの起動工程を確認する。

 

「油圧計、電圧、ともに正常。フィッシャー、そっちは!」

 

「おう、ギアもさびていねえしアクチュエーターも対ショック機構も正常だ。すぐにでも起動できるぜ!!」

 

 二人は慣れた動きでスーツに手足を通す。ISとは違い、不可視の力で成り立つような動力もない、EOSはどこまでいっても現実的な代物だ。シールドエナジーがない代わりに首より下のほとんどを覆う装甲と一回り大きな手足、そして関節の代わりに外部の油圧シャフトのフレームで全身を動かす機構、素肌を晒すISの洗練さとは程遠い武骨な代物だ。

 

 だが、それらは対して問題にならない。ダリルにとって、今頼れる兵器が二足歩行の汎用兵器である、その事実だけでも胸が鼓舞される。

 

「バックパックと肩部装甲の内部コンテナ、腰と脚部に武装を詰めれば……フィッシャー、お前はそこの歩兵用の装備をかき集めろ。仲間たちと合流して戦線を張るんだ。」

 

 ここの鉱員のほとんどが元軍人だ。敵の規模はどうかわからないが、装備さえ整えばどうとでもなるはずだ。

 

「わかった。……で、お前さんはどうする」

 

「……俺は」

 

 先ほどの連絡から何度かコールを送っていたが、セシリアからは一向に連絡がこない。

 

…歩兵が相手ならすぐに鎮圧して終わるはず。だが、今も戦闘音は止まない、ということは

 

 

「……おいおい、俺でも察しはつくぜ。この状況、考えられる最低の事態ぐらい。」

 

「ああ。…敵にもISがいる。」

 

 今回の事態、おそらくなんらかの暗躍なのだろう。セシリア・オルコットという要人がいて、しかもここはそのオルコットカンパニーの重要な産業で、タイミングが嫌におかしいほどかみ合っている。

 

 

「…だから、俺たちが動く必要がある。敵にとって、おそらくこの増援はイレギュラーだ。かき回すだけやってやるさ。」

 

 EOSを起動させ。バックパックの電源コネクターが外れる。視界のバイザーに機体出力、火器管制のシステムが表示される。

 

 バックパックからサブアームが伸びる。左腕部にバッシュ付きのシールド、右腕部に主兵装のドラム式マシンガン。さらに予備を一丁とマガジン、対戦車用のパンツァーファウストを背部に積載、下半身のランチに近接武器と手投げグレネードを搭載。

 

…ザクと変わらないな。けど、狭い屋内ならこれで十分だ。

 

 

「よし、こっちも積み込み完了だ。俺は銃声の多い方向に向かう。お前さんは嬢ちゃんのISを追ってやれ!」

 

 十分に装備を整え、二機のEOSは格納庫から発進する。脚部のホイールを稼働させ、重厚な見た目とは裏腹に軽快なスピードで鉱道を駆けていく。

 

 道に転がる残骸や死体を越えて、ダリルはなおも足を止めない。

 

 気が付けばフィッシャーとは別れ、ダリルのみでいよいよ戦火の中心へと向かっていく。

 

「セシリア、君は今…」

 

 端末と同期させ、EOSの通信機能でコールをかける。広い採掘プラントで正確な場所を特定するには位置情報が欲しい。

 

「……受信反応…は、ない。戦闘中なのか……?」

 

 コールはない。ISが戦える場所はまだいくつもある。やみくもに捜索しては……

 

 

ズダンッ!!!

 

 

「!?」

 

「銃声、にしては大きい…。大口径のライフル……!!」

 

 聞こえた音の方角へ進む。音は嫌に鈍い音だった。直撃を貰ったのか、装甲ではじいただけか……。

 

「……ッ!!」

 

 義手に力が入る。主兵装をサブアームに持ち替えさせ、腰部の近接武装、ヒートアックスを抜く。

 

 機体を走らせる。重厚な見た目とは裏腹にEOSは軽々とした足取りで障害を越えて鉱道を駆け抜ける。

 

「…間に合えよッ!!」

 

 思考のスイッチが切り替わる。平凡な日常を送っていたダリルには久しく味わっていなかった感覚。死と生が等しく両立する世界、その身に纏うモノは違えど、引き金を握り刃をふるうことに変わりはない。

 

 サンダーボルト宙域に住まう毒蛇が目を覚ます。奇しくも同じ名を有するこの地にて、ダリル・ローレンツは今再び戦場に身を投じるのだ。

 

 

 

 

 

「!!……ッ」

 

 敵の動きは未だない。きょろきょろとあたりを見渡し、スモークが空調で取り除かれるのを待っている。

 

 先の一撃はあくまで奇襲、そうそうまた通用するとは限らない。

 

……こっちの武装で敵のエナジーを削る前に先にやられるだけだ。下手な手は打てない

 

「………」

 

「…セシリア」

 

 実戦の恐怖に飲み込まれている。見るからに手足の震えが納められないようだ。

 

「………立て、セシリア。まだ戦いは終わってない。」

 

手を伸ばす、けれども

 

「……ダリル、さん」

 

 眼に闘志が無い。いまそこにいるのはただISを身に纏っているだけの少女だった。

 

「……君は、もう」

 

…これじゃあ戦えない。実戦を目の前にして、まだ幼い彼女には無理もないけど

 

けど、今この場を乗り切るには

 

 

「……立つんだ、セシリア。君はまだ戦えるはずだ。」

 

「……そんな、ですが!」

 

「君が戦わないと、大勢が死ぬ……!」

 

「!?」

 

 ああ、我ながらひどいやり方だ。けれど、今かける言葉は歯の浮くような優しい甘言じゃない。無慈悲なまでに、理不尽な現実を直視してもらい、そのうえで立ち上がらせる。

 

 

「…君が戦わなければ奴らは止まらない。ISという絶対有利を覆さないとこの盤面は覆らないんだ。IS乗りの君なら、それはよくわかるはずだ。」

 

 

 この世界における戦場においてISの存在はMSと同じだ。戦場に絶対こそないが、それでも必ずといっていいほどにその戦力差は顕著なのだ。故に正面から対峙している以上、決定打にISの攻撃が無ければ勝ちきれない。

 

 

「セシリア、君を追い詰めた相手は確かに強敵なんだろう、分が悪かったんだろう。なら、次はそれを踏まえてやり直すんだ。」

 

「やり直す? ですが、私はもうすでに……」

 

「負けた。 けれど、君はまだ生きている。武器もあるし、手足も自由だ。だから、終わっていない!!」

 

「!?」

 

「手を貸してくれ、セシリア。せめて、あと一回だけでいい!」

 

 手をさし伸ばす。機械のマニピュレーターで、彼女の手を掴む。

 

 

「理不尽に打ち勝とう。 俺たちは、まだ終わっていない……!!」

 

 

 

 

 

 

「……。」

 

煙が消える。

 

 広い地下空間では常に空調が動き続けている。視界がクリアーになり、ハイパーセンサーで周囲を警戒する。

 

「……あの男、EOSでよくやるわね。 やっば、なんか楽しくなってきた!」

 

 両手にサブマシンガンを携帯。敵が奇襲で攻めてくるならそれを逆手に面で叩き伏せる。装甲があるとはいえ敵はISではない。

 

「いいわね。やっぱ男の子はあれぐらいでなんぼよ!…ん~、傷ありだけど結構悪くないし、持ち帰っていろいろしてみたいわね。」

 

 臆面もなく狂気を振りまく女の振る舞い、その一挙手一投足を陰から見続ける者がいる。

 

 

「………」

 

 改めて見る敵の姿、どこかふざけた調子でいるが決して侮れない。様子を伺い、音を立てないよう武器の構えを取る。

 

「……ッ!」

 

 敵の特性、その正体の推測、今ある情報を総動員して考えた即興の策

 

 頼みの綱は彼女の一撃、けれど、それでもやれるかどうかは依然怪しい。

 

……だけど、やるしかないよな。

 

 グレネードを構える。さっきとは違い炸裂式のものだが奇襲なら少しぐらい……

 

…せめて、あの盾を吹き飛ばすぐらいは。

 

 腰に携帯したグレネード三つをワイヤーで束ね、俺は全力で投擲する。

 

 ディーゼルエンジンの強靭な馬力から放たれた爆弾は水平に高速で被弾する。敵は気づき、盾を展開した瞬間、爆炎と共に黒煙が一面に広がる。

 

「!」

 

 敵の姿が表れる前にダリルは移動を開始する。やはりというか、対人用の炸裂火薬では所詮嫌がらせの爆竹だったようだ。

 

 だから、今のうちに距離を取る。網目のように張り巡らされた鉱道を猛スピードで抜ける。

 

「みぃつけたわぁああ!!ダルマくぅん!!!」

 

「うるさい、誰がダルマだ!!!」

 

…あんな東洋の土産物と一緒にされてたまるかっ……!!

 

 バックパックの下部からはスラスターの出力で加速、脚部のホイールで地面を高速で移動する。

 

「……っ!」

 

「逃げんなごらぁあ!!」

 

 敵は低空飛行で接近、両手からは9mmの弾丸が雨のように降りかかる。

 

「くっ……!」

 

 態勢を変えず、背部のサブアーム二本で二丁のマシンガンを後ろに構え後方に弾幕を張る。敵がISとはいえその防御力は絶対ではない。不可視の障壁があるとはいえまともに貰うのは避けたいはず

 

「ちぃっ…嫌なところに撃ってくれるわね!」

敵は機銃を収納し、代わりに取り出したのは

 

ドゴンッ!!!

 

 

「!?」

 

 左の肩部コンテナが吹き飛ぶ。盾の役割を持つその装甲が複数の穴でひしゃげている。

 

「!!……散弾か」

 

 緊急回避、右の小道に入りに連射を躱す。後方を確認し、発射のタイミングを掴む。面で叩く砲撃は厄介だが、だが連射レートの感覚さえつかめれば……!

 

「……ッ、お前はなんだ!?なぜここに攻め入った!!!」

 

ズダンッ!!

 

「あいにく、クライアントの情報は言えないから! だからさあ…」

 

「!」

 

 曲がると同時に体を回す。曲がり角を抜けるターンと同時にラックのグレネードを投擲する。

 

「!?」

 

 遠心力で疾く投げつけられたそれは女の眼前で起爆、爆風の中からは先ほどと同じ灰色の煙が周囲を覆い隠す。

 

「!!……うざったい。 あの女差し出してくれればさ、こっちは面倒が無くて済むっての、さっさと諦めな!!」

 

「くそっ、同じ手は通じないか……!!」

 

 姿は見えない。だが奴の声は未だにこちらを追跡している。煙幕で姿を隠し、再度距離を測るつもりだったが、その手は通じず。残る武装は近接の斧とマシンガン、そして虎の子のパンツァーファウストが二本。

 

「まだだ、奴を仕留めるのはここじゃない……あと少し」

 

硬い地面を削るホイールの音だけが響く。

 

「……」

 

音が遠い。いや、あいつが遠ざかったのだろうか…?

 

狭い搬入口を抜け、広い採掘スペースに出る。

 

そこで体勢を立て直す。そこから次の行動に……

 

……違う

 

 

 思考のサーキットに電流が駆け巡る。言語化するよりも前に、肉体は反射で行動を起こしていた。

 

 

 

「!!!……違うっ」

 

 

 

 鉱道の狭い道を抜ける瞬間、すでに体勢を右に移し、手に持つまでもなくサブアームからファウストを着火させる。

 

「なっ!?」

 

 咄嗟に現れたラファールとその右手に握る散弾銃、レインオブサタデイから放たれたショットシェルは、発射された成形炸薬弾と衝突し、両者の間で爆発がおこる。

 

「……ッ!!」

 

 防げた、とっさに合わせられなかったらやられていた…!!

 

 態勢を直す。爆発で跳ね除けられたが未だ機動力は健在だ。すぐに反転し敵の攻撃が来る前に目的のルートに移動する。

 

 

「なぁっ、あそこで合わせられるとか、どんなエイムスキルよ!あんなのチートじゃない!?」

 

 壁面をスラッグ弾で打ち抜き、ショートカットによる奇襲を叩き込む算段は完ぺきだった。

 

「……なのに、あの男それを予期してたっていうの?」

 

 EOSに乗って、ISを相手にこうも接敵する。負けることは無いがだが勝ち切れていない。

 

「やるわね。褒めてあげたいけど……でも、もうそれも終わり。」

 

 採掘プラントの情報は既に獲得済み。故に複雑な鉱道でこの大広場につながる薄い壁を知っていた。

 

だから、この次の手もすでに決まっている。

 

 

「ふふ、貴方が逃げた先。もう袋小路だってわかるでしょ」

 

 まあ、それでも二~三ぐらいの小さい連絡路はある。だがそれを抜けるにはEOSでは無理だ。

 

「まあ、脱ぐならそれでもいいわよ。でも、男の着替えを覗く趣味は無いから、替えの下着真っ赤にしちゃうけど文句言わないでね……。」

 

 

 

 

 

 

 

「……はあ、クソっ!」

 

「こら、そんな口の悪い事言って、お姉さんあんまり好きじゃないわよ……。」

 

「なら、言葉遣いを正せば許してくれるのか。」

 

「いや、無理。追い詰めたのにリタイアとか一番萎えるじゃない。私、仕事も遊びも手は抜かないタイプだから。ダルマ君には悪いけど、ここで終りね。」

 

 銃口が向けられる。細い小道の行き止まり、この距離では散弾を躱しきることはできない。

 

 自身の勝利を前に、女はわかりやすいほどに愉悦に浸っていた。命を奪う権利を、勝者の特権をかざして慢心の笑みを浮かべている。

 

「……ずいぶん嬉しそうだな。まだ俺一人、倒したところで趨勢は決まらないだろ。こっち側のISはまだ健在だ。」

 

「それってあの娘のこと。なら希望的な考えね、あの娘はもうだめ。戦士になりきれない一般人ほど脆いものはない。」

 

「……脆い、か」

 

「ええ。…あの娘、戦闘センスは悪くないけど、所詮競技レベル。立ち上がれないあの子にはもうワルツは踊れない。さあ、そろそろいいかしら。あなたの戦いもそろそろクリアさせてもら「そんなことは、ない!」

 

 

「……?」

 

「なあ、あんたにはわからないんだな。」

 

セシリアは確かに折れた。戦いに負け、一度は地に膝をついてしまった。

 

 

だが

 

 

「あの娘は簡単に折れないさ。かならず、自分の足で立ち上がる……!」

 

「あの娘…そんなに親しい仲なのかしら?」

 

「いや、出会ったのは少し前だから。そこをつつかれると痛いな」

 

「なら、ますます言ってる意味が「けど、それでもわかることがある……!」

 

 

 

…あの娘は、あんな歳でいろんなことを背負って、それでも心配させないよう他人に優しく、明るく振舞える。それはひとえに心の強さだ。理不尽にくじけようと、奥底の芯が折れない限り、彼女は何度でも立ち上がる……!!

 

だから、彼女ならきっと……!!

 

 

 

「……もういいかしら。舞台は幕引きよ」

 

 薬莢を輩出する。左のスラッグガンを捨て、散弾を両手で構え突きつける。

 

引き金が引かれればそれで全てが終わる

 

だが、これでいい。

 

 

 

すでに舞台は終わり。……いや、むしろ逆だ!!

 

 

 

 

 

「舞台はここからだ。  踊れ!! セシリアッ!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

撃て!!!(Shoot)

 

 

 

 

「!?」

 

 ダリルの機体が横にずれる。その瞬間、岸壁から一筋の閃光がラファールを貫く。

 

「!!…なッ」

 

 ダリルの取った策はシンプルだった。敵が先に仕掛けた奇襲と同じであり、行き止まりである鉱道の先、貫通工事の途中であった反対方向で待機し、薄い岩壁越しに誘導した敵に向けて一撃を放つ。

 

 一度限りの危険な賭けだが、その結果は上々だった。咄嗟のことで敵の対ビームシールドの展開は間に合わず、生身の本体に直撃しつづけるビームの放射はエナジーを異様な速度で減少させていく。

 

 

「絶対防御がっ、くそぉっ!!」

 

「はぁああああぁあああ!!!!!!」

 

 この隙を逃さない。バックパックのスラスターを全開に、俺は左のシールドで敵のアンロックユニットをかちあげる。

 

「!!…調子に、のるなあぁあ!!?!?」

 

 膝の装甲からブレードが伸びる。だが、敵の隠し武器が装甲に届くことはなかった。

 

「!?」

 

 サブアームから放たれる最後のファウスト、ゼロ距離も等しいその間合いから穿つ弾頭はアンロックユニットを砕き、くだんの装甲のうち半分を破壊し飛ばした。

 

「―――――ッ!!!!」

 

 爆発に吹き飛び、ダリルのEOSはその装甲のほとんどをあたりに散らす。なんとか外部の強化外骨格に支えられてるだけで、すでに防御力は皆無だ。今なら拳銃の一発で落とせるだろう。

 

 

「あんた、よくもやって…!!」

 

「はあ、あの娘と同じ、捨て身の策さ。上手くいったのが御の字だ。」

 

「ダリルさん!!」

 

 気づけば、敵の後方にスターライトを構えたセシリアが立っている。防御力を半分失い。武装もエナジーも不確かな状況、もはや趨勢は完全に巻き返した。

 

「……なるほど、理解したわ。ISを対策すれば勝てる算段だったけど、どうやら間違いだったわ」

 

 素直に認める。敵の実力を見誤ったのは油断からではない。これもまた実戦の故だ

 

けど、だからこそ。

 

「認めましょう。そして、その上で貴方たちを殺す。」

 

「!」

 

「…くっ」

 

 戦況は依然不利だ。策はもうない、あとはセシリアのスターライトのみ。

 

 

…だが、もうこの状況では

 

 女が武器を構える。ブレッドスライサーを構え残る盾を前にして…

 

 

だが、その時

 

 

「ダリル、ダリルか!!」

 

「!!」

 

 端末からの通信、声の主のフィッシャーは興奮した様子のまま言葉を続ける。

 

「こっちはオッケーだ。生存者と合流して戦線を張った。奴ら、分隊規模の歩兵だがロクな火器はねえ。こっちが優勢だぜ!!」

 

「……ッ!!」

 

スピーカーをオンにして。話の一字一句を全て聞かせた。

 

「どうやら、お仲間さんが大変みたいですことよ。助けに向かわれなくてよろしいのですか。」

 

「………α1、戦況はどうなってるの」

 

…隊長!敵の作業員の奴ら、全員武装しています!!くそっ、EOSの火力に押されて、これ以上の被害は作戦の失敗も同然です。即刻、仕切り直しの許可を!!?

 

「……いいわ。総員撤退して、パーティエントランスまで後退、後続と合流を待ちます。」

 

「……。」

 

「聞いた通りよ。今回は痛み分けにしてあげるから、そこどいてくれないかしら。」

 

「……ッ」

 

 セシリアの目がこちらに向く。判断を仰いでいるのだろうが、正直このまま戦闘を続けても利はない。

 

「……どいてやれ。だが、次は絶対にない。」

 

「ええ。今度こそは、確実に打ち抜いて見せますわ。 よろしくて?…お・ね・え・さ・ん」

 

 傷と汚れにまみれた笑顔で、彼女はそう言ってのけた。それをどう受け取ったのか、彼女は振り向かないまま、たった一言言葉を残した。

 

 

 

「私はミラ。あなたたちを殺す女の名前、次は絶対に仕損じないから。」

 

 スラスターを吹かし、女は…いや、ミラはその場から消える、恐らく撤退する歩兵を連れて外に出ていくのだろう。

 

 

「……ああ、ひとまず、負けは しなかった……」

 

 

 

どさっ

 

 

 

 

「……」

 

思考が妙に重い。久々の戦闘でよっぽど疲れたのか。

 

 視界が暗くなる。遠くのセシリアがISを解除し、心配そうにこちらに近づいてくる。

 

セシリア、どうしてそんなに心配そうな顔で

 

…ああ、涙を流して、またチェルシーさんにイジられるじゃないか。

 

 横向きになった世界に疑問を持たず、ダリルの意識はふっと吹くように消え入る。

 

 

 

「嘘です、ダリルさん! ダリルさん!!!」

 

 

 




戦闘を一回終わらしました。だが、まだここでは終わりません。じかいもなるはやで頑張ります故


最近、好きな作家に評価いただいてすんごい嬉しい。書き手になってよかったなと思う瞬間でした。
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