それから、俺たちはイベント当日を迎えた。俺が無事に完成させた曲をみんなに渡し、振り付けなどを一緒に考えながら今日まで切磋琢磨してきた。ダンスも歌も問題は無い。後は本人達の気持ち次第だろう。
朝学園に集合したあと、電車に乗りイベント会場に向かった。着いた時には既にたくさんの客と出場するスクールアイドルで、ごった返していてマジで人に酔いそうになった。
そのまま俺たちはステージ裏まで行き、俺は出る順番の確認と事前確認、みんなは衣装に着替えに向かった。数分後、俺は確認を終え、みんながいる控え室に戻ってきていた。そこには既に衣装に着替えたみんなの姿があった。
「お?もう着替え済んだみたいだな?中々似合ってるぞみんな!」
「あ、あんまりジロジロ見ないで・・・・・・恥ずかしいから・・・・・・」
「な〜に恥ずかしがってんの歩夢〜!もうここまで来たら覚悟決めないと〜!」
「そ、そそ、そうですよー!恥ずかしがってる暇があるなら少しでも振り付けの見直しとかしておかないと!あはは・・・・・・」
「かすみさん?震えてるけど大丈夫?」
「もりろん!」
・・・・・・噛んだな。ま、初めてのイベントだしな。無理もないか。他のみんなも何処か顔が引き攣ってるし・・・・・・仕方ないな。
「なにびびってんだよ?お前らは今まで散々この日のために練習してきたんだろ?体ボロボロになる程。そんだけやったお前らなら絶対にいいステージに出来るさ!なにも心配すんな。失敗したら・・・・・・骨は拾ってやる」
「ちょっと!?何で失敗する話なんてするんですか!?しかも骨って、かすみんは別に死にに行くわけじゃ・・・・・・」
「・・・・・・かすみさん。隆斗さんは別にそのように言ってるわけでは無いと思いますよ?」
「相変わらずお前はバかすみんだな〜」
「だからそんなあだ名つかないでくださいってばーー!!!」
みんな「あはははは!!!」
控え室内にみんなの笑い声がこだました。あの笑顔を見る限り、どうやら緊張は取れたみたいだな。
「さて、そろそろ時間だ!最後に俺から言えるのは・・・・・・自分に自信を持って、最高のパフォーマンスをしてこい!そして最高に楽しいステージにして客に自分の存在を見せつけろ!」
最後にみんなの気を引き締めるために、檄を飛ばした俺。それを聞いたみんなは、笑顔は浮かべているがさっきまでの引き攣ったような笑顔ではなく、心の底からの笑顔を浮かべていた。
「行くぞ!」
みんな「おーー!!!」
俺たちの初陣が今、幕を開けた。
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結果として、そのイベントは俺としては合格点をみんなにあげる程良かったものとなった。流石に優勝どころか入賞も出来るかどうかってとこかなって思ってたんだが、まさかの
「まさかせつ菜としずくが入賞するなんてな・・・・・・正直びっくりしたわ」
「・・・・・・何でそこで露骨に私の方を見るんですか?もしかして私・・・・・・入賞するなんて思われてなかったですか?」
「ぶっちゃけ?」
「先輩ひどいです〜!」
も〜!っとグイグイ詰め寄ってくるしずくを押さえつつ、今日のことを振り返っていた。今回入賞した2人はもちろんのこと、他のみんなももっと練習と経験を積めば入賞どころか最優秀賞を狙えることも夢じゃ無いほどの実力を持っていることを改めて実感できた。
「とは言っても・・・・・・今回は残念だったわね〜・・・・・・」
「かすみんだって・・・・・・良いライブできたと思ってたのに〜〜」
「まぁまぁ、良い経験ができたんだから良いんじゃない?」
「そうそう。楽しかったんだからそれで良いじゃ〜ん」
「まだまだ愛さん達はこれからだって!みんなから”期待”されてい”きたい”よね〜!”きたい”だけにね!」
「うん!もっと頑張る!璃奈ちゃんボード【メラメラ〜】」
今回のイベントの感想は人それぞれか・・・・・・。そりゃそうだよな。誰だってこう言ったステージでは良い成績を残したいと思うもんだし、ソロでやってるだけあってライバル意識も強い。その意識がプラスに働くかマイナスに働くか分かんないが、それも含めて今後俺がサポートしていくとするか。
「そういうこった。まだまだ始まったばっかなんだし、今日の結果を踏まえて今後に生かしてくぞ。とにかく、今日はお疲れ!・・・・・・ほら、歩夢もいつまでも落ち込んでるなよ?」
「うん・・・・・・」
さっきからずっと俯いたまま一言も発せずにいた歩夢。歩夢も決して変なライブをしたわけではなかったけどな?これは、後で問い詰める必要ありだな。それを決行することを決めた俺はみんなが着替えを終えるまで、外で待機をしているのだった。
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「それで歩夢。お前、何か悩んでるだろ?」
「・・・・・・え?」
駅でみんなと別れた後、俺と歩夢は2人で帰路についていた。その際、俺は歩夢に唐突にさっきのことを聞いていた。
「さっき控室でお前ずっと俯いて何か考えてただろ?考えてることでもあるんなら俺に相談してみろよ。何だ?ライブで不満なとこがあったとかか?」
「・・・・・・ううん。そうじゃないんだ。そうじゃなくて・・・・・・その・・・・・・」
言い澱んだ歩夢。この様子だと、ライブの話ではなさそうだな。
「私・・・・・・みんなと争うなんて・・・・・・耐えられないよ・・・・・・」
「は?何言って・・・・・・」
「同じ同好会の仲間なのに、何で敵同士になって争わなきゃいけないの?せっかく自分楽しいステージにして良い成績残したとしても、それのせいで誰かが・・・・・・仲間のみんなが悲しむ姿なんて想像したくない。そんなことしてたら、いずれまた同好会がバラバラになっちゃうんじゃないかって思っちゃうと・・・・・・怖くて・・・・・・」
「・・・・・・(はぁ〜)」
これには流石の俺も内心溜息を吐いた。確かに昔から仲間意識が強くて思いやりのある歩夢の気持ちもわかる。誰しもが勝利を掴める訳ではなくもちろん敗者もいる。それは分かるんだが最初に言った事に関しては・・・・・・今回それは全くの筋違いだ。だから俺は・・・・・・。
(ポコッ)
「痛っ!?何でここでチョップするの!?何か変なこと言った!?」
「ああ言った。むしろもう一発行きたいぐらいだな?」
「痛いからやめてよ〜!」
どうやら自分の間違いに気付いてないみたいだな。しょうがないな・・・・・・。
「・・・・・・ったく。歩夢のそういうとこは昔からまるで変わってねーな。
「・・・・・・え?」
「おまけに敵でもない。いいか?お前とあいつらはライバルだ。お互いに競い合って、お互いにレベルを一緒になって高め合っていくライバルという名の仲間だ。誰かが悲しむだ?そんなのみんな分かってる。そんなことを承知の上でみんなはスクールアイドルを目指すって決めてるんだからな。同好会がバラバラになる?そんなこと俺がさせねぇ!せっかくお前やみんながスクールアイドルを目指せる場所ができたのにそこを壊させなんてぜってーにさせねぇ!」
「隆くん・・・・・・」
「だからさ?もうあいつらのこと・・・・・・敵だなんて言ってやるな。大事な同好会の仲間なんだろ?だったらこれからも仲間として、ライバルとして付き合っていけや。分かったな?」
俺が言い終わると同時に、歩夢の目から一粒の涙がこぼれ落ちた。次第にそれは次々と二粒、三粒となっていき・・・・・・。
「・・・・・・っと。今日は随分と甘えん坊だな〜」
「・・・・・・っ。ありがと・・・・・・ありがと隆くん。もう迷わない・・・・・・私はこの同好会でみんなと・・・・・・隆くんと一緒にスクールアイドルを目指すよ!・・・・・・っ」
「分かったから泣くなって。・・・・・・ったく、泣き虫なのも相変わらずだな〜・・・・・・」
俺の胸に顔を埋めながら静かに泣く歩夢を静かに抱きしめてやった。歩夢もこれをきっかけにもっとレベルアップするだろうな・・・・・・。
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「じゃあ、また明日な〜」
泣く歩夢を落ち着かせた後、俺たちは再び帰路につき、家の前で別れようとしてるとこだった。
「うん。今日はありがと隆くん。イベントもだけど・・・・・・さっきのことも、ありがと」
「久々に歩夢の泣き顔が見れたってことでチャラってことでいいぞ〜」
「っ!?もう!またそうやって〜〜!!」
顔を真っ赤にさせた歩夢の慌てようが面白く、つい声を上げて笑っちまったな。・・・・・・ご近所さん、すいません。
「ま、とにかく今日はお疲れ様!明日からも頑張ろうぜ!」
「うん!これからも頑張るよ!」
「おう!それじゃあな!」
「あ、待って隆くん!」
家の中に入ろうとする俺をなぜか呼び止めた歩夢。まだなにか話でもあるのか?
「ん?どうし・・・・・・た!?」
「・・・・・・」
(ちゅ・・・・・・)
振り返った俺が覚えたのは・・・・・・俺の横頬に柔らかな感触・・・・・・そして歩夢独特のお花の甘い香りだった。何が起こってるのか分からず、改めて見てみるとそこには、俺の頬に遠慮がちに口づけをする歩夢の姿があった。そして、すぐに歩夢は俺から離れた。
「歩夢?・・・・・・今のは・・・・・・」
「じ、じゃあ!また明日ね!」
「あっ、おい!」
俺が聞く前に家の中に入ってしまった歩夢。残された俺は呆然と立ち尽くすだけだった。
「(あんなことされたの・・・・・・初めてだな・・・・・・」
まさかの急展開!?イベント終わりに何やってんの!?って話なんですけど、初めて恋愛的な場面を出してみたくこんな感じにしてみました!
「そういえば、璃奈ちゃんのステージでつけてたあの【デジタル璃奈ちゃんボード】ってどうしたん?」
「前に愛さんが【機械弄り同好会】に掛け合ってくれて、その時にその人達に作ってもらったの」
「虹学の同好会と技術ってやべーな・・・・・・」