朝から松浦さんとのランニング勝負を存分に堪能し、最終的に朝っぱらから大声で二人で言い合いをしていたことを千歌のお母さんにこっぴどく叱られた後、俺は朝食を摂るため、部屋に戻ってきていた。千歌は着替えてくると言って自分の部屋に戻り、松浦さんは・・・・・・なぜか俺の部屋まで来ていた。
「何であんたまで来てんだ?」
「え?だって千歌の知り合いだっていうキミのことをあたしは全く知らないし、キミともっとちゃんと話してみたかったからかな?」
「暇人か?」
「違うからっ!・・・・・・って、大声出したらまた叱られちゃうよね。・・・・・・とにかくさ?まずはキミのことを教えて欲しんだ。話せる範囲でいいから教えて?」
「まぁ・・・・・・いいけどさ」
そんなわけで、俺は松浦さんに簡単に自己紹介とここに来た目的を話した。最初は黙って聞いていた松浦さんだったけど、俺がここに来た目的を話した辺りで、その表情はなぜか徐々に明るくなり始めた。
「何でそんなににやついてるんだ?」
「え?だって・・・・・・”あたし達”Aqoursに会いに来たって言ってくれたから嬉しくってさ〜。つい嬉しくなっちゃって・・・・・・」
・・・・・・この展開、千歌の時にもあったな。という事はこの人もやっぱり・・・・・・。
「松浦さんもAqoursのメンバーだったんだな?・・・・・・ったく、そうならそうと早く言ってくれりゃいいのに」
「言う暇無かったんだよ。ごめんごめん。あ、後あたしのことは”果南”で良いからね?そっちの方が呼ばれ慣れてるし」
「じゃあ、果南さんで」
話に区切りが付いたところで、先ほど運び込まれた朝食に手をつけた。アジの干物が脂が乗っていて美味くてご飯が進む!やっぱ海沿いの旅館はこうでなくちゃな!
「・・・・・・」
「(もぐもぐ)・・・・・・ん?どうかしたか?」
朝食を口に運びながらふと視線を感じた俺は隣に座っていた果南さんを見た。だが、よく見てみるとこの人が見ているのは俺ではなく、目の前にある俺の朝食だと言うことに気がついた。・・・・・・あ〜、そう言うわけね?何となく察した俺は、干物の一切れを果南さんに差し出す。
「少し食べるか?食べたいんだろ?」
「・・・・・・へっ!?い、いや・・・・・・誰もそんなこと言ってないけど?」
「よだれ垂らしながらこっちを見てたあんたに言われても何の説得力もねーけど?」
「よだれなんて垂らしてないから!!ただ少しお腹が空いて・・・・・・あっ」
果南さんが何か言い訳を話そうとした直後、俺ではない誰かの腹の音が部屋中に鳴り響いた。俺じゃないとすれば、もういるのは果南さんしかいない訳で・・・・・・。
「あ〜、身体は素直だな」
「う〜〜・・・・・・男の子に聞かれるなんて・・・・・・不覚・・・・・・」
「果南さんでもそんな顔できるんだな?」
「そんな顔って・・・・・・どんな?」
「今みたいな照れた顔。果南さんって意外としないのかなって思ってたけど、そんなことなかったわ」
「っ・・・・・・」
ぼんっと音が出そうなくらいに、果南さんの顔が真っ赤に紅潮する。
「ほらっ、遠慮しないで食べていいからさ?」
「・・・・・・えっ?隆斗が食べさせてくれるの?それはさすがに・・・・・・」
「果南さんが考えてる事は何となくわかるけど、こんな程度で俺が果南さんにやましい感情抱く訳ないからな?」
「・・・・・・なんか女の魅力がないって言われてるみたいで腹が立つんだけど?」
「何だよ?可愛いとでも言って欲しいのかよ?」
「〜〜〜っ!!も、もういいっ!!」
さらに顔を真っ赤にさせた果南さんは俺の差し出したアジの干物に豪快に食らいつくと、そのままそっぽを向いてしまう。その光景は何と言うか・・・・・・面白いと言うか・・・・・・可愛らしいと言うか・・・・・・言うとまた怒られそうだからやめとこう。その後、朝食を食べ終わった俺は果南さんと共に千歌を待つのだった。