「で、これからどこ行くんだ?」
「浦女かな。他のみんなにも隆斗くんの事紹介したいからさ?いいよね?」
「元々Aqoursに会うために来た訳だし、むしろ大歓迎だな。そうしてくれ」
朝食を摂った後、俺は千歌と果南さんに連れられて、浦女(千歌達の通う女子高校)へと向かっていた。何でも俺をAqoursに紹介したんだとか。千歌の旅館からは少し離れた場所にある浦女だったが、特段疲れるような距離ではなかったため、特に問題なく浦女へと着くことが出来た俺たちだった。
「隆斗って虹学に通ってるんでしょ?虹学って聞いた話だとすっごく大きな学校なんでしょ?うちの学校と比べてどう?」
「デカさならこの学校の倍以上はあるな。それに生徒数も馬鹿みたいに多いからクラスもめちゃくちゃ多いな」
「うへ〜・・・・・・わたしだったらちょっと嫌かも?そんなに人が多いとこって好きって訳でもないし、うるさそうだから・・・・・・」
「千歌ってそういうとこ好きだと思ってたわ。そういう見かけだし?」
「どういう意味!?」
「ほらほら?そんなとこで喋ってると他の子に迷惑だよ?早く中に入ろ?」
「果南ちゃんが話振ったんでしょ!もうっ!」
果南さんと千歌が学校の中に入っていくのを、俺は”校門の前”で静かに眺めていた。なんで入らないかって?そりゃ当たり前だ。何せ・・・・・・。
「隆斗?どうしたの?早く来なよ?」
「そうだよ。みんなに会いたいんでしょ?」
「お前ら・・・・・・忘れてないか?ここ・・・・・・
「「あっ・・・・・・」」
忘れてたとでも言わんばかりに顔を強張らせる二人に、内心でため息を吐いた俺だった。俺が浦女の敷居を跨がないのは単純に俺が男でここが女子校だからだ。流石に女子しかいない学校で男の俺がお邪魔するのは気が引ける。ある意味、俺が中に入ったら色々と問題になることは間違いないからな。・・・・・・最悪不法侵入で逮捕されても不思議じゃないぞ?・・・・・・ったく、俺的にはここで俺を待たせ、校舎から他のAqoursのメンバーを連れてくると思っていたんだが、こいつらと来たら・・・・・・。
「た、多分大丈夫だよ・・・・・・多分?」
「・・・・・・俺に『女子校に無断で入り込んだ、エロくて変態のダサかっこ悪い男学生』っていうレッテルを貼らせたいのかバカ千歌?」
「バカってなに「あんっ?」・・・・・・すいません。確かにそれはまずいよね・・・・・・ん〜、そうすると、どうしよっか?」
「いや、普通にみんなをここに連れてくれば良いだけの話でしょ?それなら問題無いはずだけど?」
「それだっ!果南ちゃん頭良い!!」
千歌はそう叫ぶと同時にすぐさま校舎内へと入っていってしまった。思い当たったらすぐさま行動・・・・・・ある意味おもしろい子だな千歌って・・・・・・馬鹿っぽいけど。
「ごめんね〜?千歌って普段からあんな感じだから。でも、そんなあの子だからこそあたしたちを支えてくれたり、引っ張っていってくれたりするんだ。だからあたし達もあの子のことは同じメンバーとして・・・・・・友達として認めてる。ちょっと頭の回転が遅いのが玉に瑕だけど・・・・・・」
「千歌と一緒に俺に女子校の門を潜らそうとしてたあんたも人のこと言えない気がするんだが?」
「(ギクッ)そ、それは成り行きで・・・・・・じ、じゃああたしもみんなのこと呼んでくるね!待っててねー!」
明らかに動揺した果南さんは、千歌同様にピューッと校舎内へと入っていった。あの様子だと果南さんもおそらく・・・・・・考えるのはやめとこう。とりあえず俺は、その場で二人が来るのを待つことにするのだった。
それから数十分後、スマホをいじりながら待つ俺の元に二人が他のAqoursのメンバーを連れて戻ってきた・・・・・・んだが、見たところ二人を含めて何故か4人しかいなかった。確かAqoursって9人グループだよな?
「お待たせ〜!連れてきたよ〜!」
「ああ、それはありがたいんだが・・・・・・なんでそれだけしか居ないんだ?まだ学校に来てないのか?」
「うん、そうらしいんだ。だからとりあえず居た二人を連れてきたって訳。というわけで、先にこの子達だけに自己紹介してくれる?」
うん、だよな。一瞬うちの時みたいにメンバーが離脱してるっていう事態になってると思ったけど、流石にそれはなかったようでホッとした。よし、とりあえずこの二人に自己紹介を・・・・・・って、ん?
「あれ?君たちって千歌と一緒にいた・・・・・・」
「うん!そう!あの時私と一緒にいた・・・・・・」
「お前に聞いちゃいねーわ」
「話してる最中なのにひどくないっ!?」
「まあまあ・・・・・・はい、そうです。あの時は助けてくれてありがとうございます」
「ろくにお礼も言えずにごめんなさい。改めて、助けてくれてありがとうございました」
「おう、サンキューな」
二人が連れてきたのは、俺がナンパから助けたあの時、千歌と一緒にいた女の子二人だった。二人もここの生徒だったんだな。
「自己紹介してなかったな。俺は虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会の部長をやってる鈴木隆斗です。今回はAqoursに会いにここまで来ました」
「そ、そうなんですね。あ、私は2年の桜内梨子です。よろしくお願いします」
「私は2年の渡辺曜。よろしくです!」
「よろしく。2年ってことは俺とタメな訳だし、敬語はいらないぞ?」
「「2年生だったんですか!?」」
「・・・・・・」
千歌と全く同じ反応をした目の前の二人にまた心の傷を抉られた。・・・・・・やばい、泣きそうになるんだが?
「千歌・・・・・・泣いていいか?」
「泣かないで!?二人も多分わたしと同じ理由だと思うからさ?」
「えっと・・・・・・なんかごめんなさい?」
「気にすんな。もう慣れたし・・・・・・ぐすん・・・・・・」
「その様子だと全然そうは思えないんだけど・・・・・・」
目尻に涙を溜めつつも、何とか下に落とすことは防げた俺は、二人にもっと話を聞こうと少し距離を詰めようとした・・・・・・んだが・・・・・・。
「ま、それはいいや。でさ・・・・・・」
「「っ!」」
「はっ・・・・・・?」
何故か二人がみじろぎ、俺から一歩距離を取るように下がった。・・・・・・何でだよ?
「何だ?どうした?」
「いや・・・・・・その・・・・・・」
「き、気にしないで?ちょっと驚いただけだからさ?」
そんなにおろおろしながらそう言われても気にせずにはいられないんだがな?でも本人達は気にすんなって言ってるわけだし、下手に詮索しないほうがいいか。
「・・・・・・なら良いけどさ?他のメンバーはもうそろそろ来るか?」
「多分そろそろ来ると思うけど・・・・・・」
「じゃあ少しだけ待たせてもらうわ」
とりあえず、メンバー全員が揃うまで待つことにした俺は、その場で少々待たせてもらうことにするのだった。