『完結』ラウンドテーブル ~世界を救うはずだった勇者パーティの尻ぬぐいをすることになった~   作:やーなん

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序章
神の卓上


 

 

 いらっしゃいませ、皆々様。

 この度は私の卓へのご参加いただき感謝の極みでございます。

 

 参加者は四名ですね。

 それではキャラクターを作ってください。

 

 ふむふむ、全員女性で作りましたね。

 年齢も同じくらいで職業もバランスが取れてらっしゃって素晴らしい。

 

 ああ、でも、出身国は近辺に集まっていてシナリオが組みやすくて私にも配慮がなされてある。

 国ごとに受けられる恩恵は違うのですが、この地域でこの組み合わせは鉄板ですね。

 

 次に能力値ですが、……おやおや、素晴らしい!! 

 全員が平均以上の能力値!! これは魔王を倒すのも夢ではありませんね!!! 

 

 取得される技能の取り方も皆様話し合いの末だからでしょうか、隙が無い!! 

 

 

 さてさて、それではお待ちかね、大惨事……もとい、経歴表ですが……ッ!? 

 これはこれは、彼女達は数奇な命運の元に生まれたようですね。

 各々特徴があってよろしいと思いますよ? 

 

 

 さて、キャラクターが完成した所で、プレイヤーの皆様は不要になったので始末させて頂きます。

 

 ザシュ、バシュ

 

 

 え? プレイヤーが居ないのに、どうやってシナリオを始めるのか、ですって? 

 なになに、心配ございません。

 

 ほら、プレイヤーなら。

 これからいらっしゃるじゃないですか。

 

 ほら、ほらほら、やってきましたよ。私のシナリオの参加者が。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「何なんだ、これは……」

 むせ返る血の臭いと惨状に、俺は瞠目した。

 

 

 俺は魔王軍との戦いに破れ、落ち延びてきた冒険者の一人に過ぎなかった。

 魔物の軍勢から逃げ延びるため、偶々見かけた遺跡らしき場所に逃げ隠れた所、悲鳴が聞こえて慎重に奥の様子を確認しに行った。

 

 そして、最奥に有ったのは四人の女の死体だった。

 争った形跡があり、それぞれ別の方法で殺されていた。

 

 高貴な身分と思われるドレスの女は魔法で打ち抜かれていた。

 女騎士と思わしき女は頭部に損傷が見受けられた。

 メイスを持った女僧侶は首を真一文字に切り裂かれていた。

 魔法使いらしいローブの少女は魔法を放った相手の最後の抵抗により胸を刺し貫かれていた。

 

 まさしく惨状だった。

 お互いにお互いを殺しあった結果、全員が死んだという悲劇が起こったのだろう。

 

 

「なんてことだ……」

 そしてその一人には見覚えが有った。

 

 魔法をその身に受けて必殺の一撃を繰り出す高貴なるこの女性。

 この国の姫君だった。

 

 遠くからでしか見たことは無かったが、その戦いぶりは“白百合の剣姫”と称えられるほどの強さを誇っていた。

 俺の憧れの人だった。いや、剣士なら誰もがあこがれる最強の剣士なのだ。

 

 今この世界を席巻せんと蹂躙する魔王に対抗できる数少ない人材だったというのに。

 彼女を殺し、同士討ちとなったほかの三人も、その装備から同格の面々だというのが見て取れる。

 

 俺はこの惨状にこの世界の終わりを予見した。

 

 

 その時、まばゆい光がこの部屋を覆った。

 部屋の奥の祭壇に設置されていた宝玉らしき物体から発せられる光だった。

 

「これは!!」

 なにか言いようの無い巨大な何かが、圧力と成って俺の体を締め付ける。

 この感覚と比べようの無いモノだが、昔組んだ召喚士が使役する精霊を呼び出す時に似ていた。

 呼び出されるのは、精霊などとは比較にならない強大な存在であるのが本能で理解できた。

 

 やがて光は収まり、そして。

 

 

 

 

 

「じゃんじゃじゃーん!!!」

 馬鹿みたいに明るい声が部屋の中に木霊した。

 

 

「超ウルトラ救世女神ちゃん、呼ばれて飛び出て即参上!! 

 遥か遠い異世界から、哀れな子羊を救うため、アルティメットな救いを、貴方にお届け!!」

 現われたのは、意味不明なポーズを決めた頭の緩そうな女だった。

 

 女神を自称するくせに、黒い装束に黒塗りのとんがり帽子というどう見ても魔女としか思えない格好をしていた。

 

 

「あれ、即参上というか、ここ惨状? 

 ま、いいや。貴方は何か私に願うことはなぁい? 

 折角呼び出されたんだから、サービスするけれど?」

「だ、誰がッ!!」

 俺は咄嗟に剣を抜いた。

 

「ま、惑わされないぞ、魔女め!! 

 女神を騙るなど、おこがましいぞ!!」

 切っ先は震えていた。実力差なんて本能が理解していた。

 

「……興味深い術式、協力的な上位存在を呼び出す為の魔術装置なのね」

 その女は俺の敵意など意にも介さず、自分を呼び出したであろう宝玉を手の甲で叩いた。

 

「本来なら私みたいな? 超絶最強女神を呼び出すなんて不可能な規模だけど? 

 面白そうだから来てあげたのよ。実際この世界、詰む寸前みたいだし。抑止力的なこの世界の意思が後押しとかされたのかも」

 そして、女はくるりと俺の方をむいて、にこりと笑う。

 

「で、何か願うことは決まった?」

 有無を言わせようとははしない、確認の為の言葉だと直感で理解した。

 

 

「し、信じられるか!! お前が願いを叶えるなどと!!」

「あ、信じない? そう、そうなんだ。

 別に? 私も信用されない相手からお願い事されても困るし? 

 そう言うことならちょっと勿体無いけど帰りますね。さようなら」

 すると、その女は急速に気配が消えていく。

 その姿が徐々に透き通り、そして……。

 

「待て、待ってくれ!! 本当に、本当に願いをかなえてくれるのか?」

「あ?」

 その、あ、には濁点が付くほどどすの効いたものだった。

 彼女は笑顔のまま消え去ろうとしていたが、かなり激怒していた。

 

「呼んでおいて私のことが信じられない、だけどいざとなったら待て? 

 それはちょっと虫が良すぎませんか? 私ってば女神ですから。機嫌を損ねた相手には容赦しませんし大嫌いになります」

「では願う!! 『待ってくれ、機嫌を直してくれ』!!」

「ふーん」

 彼女は若干いぶかしんだが、すぐににこりと笑った。

 俺が必死に懇願しているのが分かったのだろう。

 

「女性に心変わりを迫るなんて随分と失礼な話ですが、まあいいでしょう。

 だけど貴方はこれで願い事を使ってしまいました。どうします?」

 彼女は祭壇に乗って足を組んでこちらを見て笑っている。

 

「まず、貴方は誰なのですか?」

「なるほど、まずは私が誰なのか知りたいと。良いでしょう!!」

 その女はニヤリと笑うと、ぴょん、と立ち上がり。

 

「遠い世界の壁を越え、呼ばれたからには慈悲を与える!! 

 慈愛と救世の超絶究極なパーフェクト女神、アンズライールとは私のことです!!」

 どどーん、と効果音まで自分で言いながら変なポーズを決める自称女神。

 

「つまり、この世界には存在しない神性なんですよ」

 俺が余り分かってなさそうな顔をしていたからか、慌てて彼女は付け足した。

 

「女神様、とお呼びすればよろしいのでしょうか」

「そんな堅苦しい言い方しないでいいですって!! 

 故郷では『二代目』と名乗っていたので、そう呼んでも良いですし、気軽にあずにゃーんって呼んでも……」

「じゃあ、アンズ様」

「……まあ、いいですけど」

 心情的に二代目とは呼びたくなかったので、俺はそう呼ぶことにした。

 

 

「さて、この世界はどうしようもなく詰んでいます。

 私が読んだところあと数日でこの世界は滅ぶでしょう」

「そんな……でも、分かるんですか?」

「ええ、だって私は『全知ってほどじゃないけど全能』にして、『運命の女神の権能』を有しています。

 流れ的にそこの四人が魔王と戦って打ち倒すシナリオっぽかったようですが……」

 そう言って、アンズ様は四人の死体を見下ろし。

 

「どうしようもないくらい死んじゃってますねー」

 けらけら、と笑った。

 

 

「そんな、では、彼女らを生き返らせるとかは出来ないんですか!?」

「勿論、『出来ますよ』」

 彼女は断言した。

 

「やっぱり……え?」

 そこは出来ないと言われるのかと思った。

 

「いえ、死者の蘇生くらい余裕ですよ。神様ですから。言ったでしょう、全能だって。

 だけどこのまま彼女達を復活させたとして、この有様ではねぇ……」

 彼女の言いたいことは分かる。

 このまま彼女らを生き返らせたとして、殺し合いの続きをするだけだろう。

 

「貴方の力で魔王をどうにかできないのですか?」

「ふーむ」

 すると、彼女は支柱に自身の彫像があしらわれた天秤を取り出した。

 

「仮定する、私が魔王を消去する場合」

 彼女がそう言うと、天秤の片方がかたんと限界まで下がった。

 

「私がデウス・エクス・マキナすると秩序が崩壊してこの世界が消滅するっぽいですね。

 私の女神としての権限を越えたことは出来なさそうですね」

「では、座して滅びを待てと?」

「そうは言いません。

 ですが、やり方を変えればどうにかなるとは思いますけれど」

 彼女はうーん、と唸ると、何かを思いついたのかパンと手を叩いた。

 

 

「実は私、運命の女神としての権能以外に『魔術神としての権能』も有しているんです。

 私の秘術で貴方を過去に送って見せましょうか?」

「え、そんなことが可能なのですか?」

「だって全能ですから。ですが間違ってはいけません。

 例え、『貴方を過去に送ったとしても結果を変えることはできない』のだと」

「え、それはどういうことですか?」

 俺が尋ねると、彼女は神妙に頷いた。

 

「執筆中のまま楽譜を演奏する馬鹿は居ないでしょう? 

 つまり世界とは、始まりから終わりまでの道筋が決まってから誕生し、滅びるのです」

 それは衝撃的な言葉だった。

 

「それでは、魔王がこの世界を滅ぼすのも決まっていると言う事なんですか? 

 それでは過去へと戻る意味が無いのでは?」

「いいえ、この世界に迫る破滅はシナリオの破綻による棄却。

 意図されない滅びなのですよ。だから、どうにかできるのです」

「では、つまり、それをどうにかするには……」

 俺はゆっくりと視線を下げ、どうしようもなく死んでいる四人を見下ろした。

 

 

 

「ええ、『滅びを回避するには、この四人に魔王を倒してもらう他無い』のです」

 女神は笑みのままに断言した。

 

 俺は愕然として膝が崩れ落ちた。

 

 

「ふむふむ、女神が与える試練としては丁度良いかもしれませんね。

 私はいつも願いをかなえる際に、必要な障害を与えます。そうして辻褄が合わないといけないのです」

「俺に、どうしろと……」

「……貴方は、この世界の救済を願いますか? 

 であれば、この超絶救世女神アンズライールは貴方にその手段と方法を授けましょう」

 慈愛の笑みを浮かべたまま、彼女は言った。

 

 

「……そんな大層な物じゃない」

 俺はポツリと呟いた。

 そして、無残な死に様を晒す姫君の手を取った。

 

「俺は騎士になりたかったんだ。

 憧れの女性の下とまでとは言わないけれど、出来る限りその近くまで行きたかった。

 だけど自分の才能の無さに嫌気がさして、挫折して冒険者なんていう日雇い仕事。

 本当なら、俺は姫様に仕える騎士になりたいって願いたい!!」

「それぐらい、余裕ですけど? 

 なにせ、大勢に全く影響が無い程度の変化ですし」

 つまり結果は微塵も変わらない、運命の女神はそう言った。

 

「私は個人の運命に干渉できます。

 役割を被せる事なんて造作も無いですし、才能ですら思いのままです。

 だって『貴方が何をしたところで、何も変わらない』んですから」

 俺は無力だと、運命の女神はそう言った。

 

 

「──―それでも、『俺はこの人たちの一助になりたい』!!」

「素晴らしい」

 俺の願いを、彼女は賞賛した。

 

 

「その願い、私が飽きるまで付き合いましょう。

 私は貴方を過去に送ります。そして、『この四人の死の運命を回避するべく、原因を探る』のです」

「はい」

「そこで間違えてはいけません。

 ……『貴方は何も解決できない』のだと。

 ではどうすればいいのか? それは原因を探れば、自ずとそれが分かるはずです」

 

 急速に、意識が遠のいていく。

 まるで水の底に溺れるかのように。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さて、と」

 彼が過去へと消えるのを見届けると、女神は水平より僅かに傾いた天秤の上がっている方に何かを放り投げた。

 

 からん、からん

 

 それは、六面ダイス。

 一の目を示そうとしたそれは、何かに引っ張られるように二の目を示した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 




※『 』の中の台詞の内容は全て真実である。

つまり、『女神は全てを語っていない。』
つまり、『女神は本当の目的を隠している。』
つまり、『女神は嘘をつかないし、意図的に主人公たちを誘導し騙したりはしない。』

つまり、『女神は黒幕ではなく、悲劇の原因でもない。』


―――――

某所で完結させると宣言してモチベが続かなくて放置してたのが拙作です。
作者の環境変化からの心境が変わり、供養の為にこちらに手直しして再掲載することにしました。
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