『完結』ラウンドテーブル ~世界を救うはずだった勇者パーティの尻ぬぐいをすることになった~   作:やーなん

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その女は気高く美しい。
彼女の盾は人々は守り、脅威への刃となる。
部下達も慕われ、 公明正大。



六の目

 

 

 思うに、俺は考えが甘かったのだと思う。

 

 最終的にあの場に居合わせれば惨劇を止められるかもしれない? 

 馬鹿が、そもそもあそこに居なかった自分が、どうして止められようか。

 

 俺は考える。

 もしかしたら、前回の魔王討伐の成功は、『ズル』に相当するのでは? と。

 

 いかに正当な手順を踏もうとも、初手から王手を打とうともそれが褒められる勝利ではないからだ。

 勝負は過程にこそ価値があり、結果の勝敗は確かに意味はあるだろうが、それは相対的なものでしかないのだ。

 

 仮に俺が姫様以上に強くなり、単身魔王に挑みこれを討ち果たしたとして、女神が現われこう言うのだろう。

 

「残念ですが、この先の未来はありません。ノーフューチャー!!」

 そう、世界が救われるのは結果でしかない。

 

 彼女は言っていたではないか、理由を知るために過去へ戻っている、と。

 では、手を変えなければならないだろう。

 

 俺は自由に動かせる金を数え、行動に移した。

 

 

 

「父上、風の噂できいたのですが、バルハルト卿が養女を迎えたとか」

 夕食の席でこのことを口にしたのは、俺が14を迎えた頃だった。

 

「なぜお前がそのことを知っている?」

 父上はワイングラスを回しながら、表情を変えずに言った。

 

「父上の怠っているご近所への挨拶回りをしていれば、自ずと聞こえる話ですよ」

「……うむ、それは耳が痛いな」

 俺達の住む屋敷は王都でも貴族街に位置している。

 時間と金を持て余したご婦人がたの話し相手をすれば、その程度の噂話は余裕で手に入る。

 

 ただでさえ、バルハルト卿は結婚もしていないので婿養子としては有望株なのだ。

 多くの名家が彼を一代で終わらすことを惜しんでいる。

 

 そして俺は、更に正確な時期を求めた。

 バルハルト卿の屋敷の周辺を根城にするゴミ漁りや靴磨き、ドブ浚いなどに小金を握らせ、イリーナ殿が出入りするようになる時期を把握したのだ。

 この辺の手管は今はもう懐かしい冒険者時代にとった杵柄である。

 

 その結果、ごく最近、ちょうど俺が14歳になった頃に彼女はバルハルト卿の屋敷に出入りするようになったことが分かった。

 

 

「奴が養子を貰ったことは、私も少なからず驚いているよ」

 その様子から、父上も耳にはしていたのだろう。

 

「時期からして、騎士団に入れる為に引取ったのだろう。

 余程有望なのかそこまでは分からないが、少なくとも騎士神に憧れた夢見がちの類ではないだろう」

「なるほど。では今から手合わせが楽しみですね。

 可能なら、いずれ姫様とも剣を交えたいものです」

「ははは、こやつめ」

「本気ですよ。私は姫様のようになりたいので」

 俺が本気でそう言っているのが分かると、父上はこう言った。

 

「そうだな。お前も姫様のような人望を得られるのならこの上ないことだ」

 

 

 

 

 

 

 選抜試合当日、俺は時間があれば城の方を見て、姫様の姿を探していた。

 もしかしたら、こちらを見ていてくださるかもしれない。

 

「選考試合の最終戦を始める!! 

 アラン・クリファ、そしてイリーナ・バルハルト。前に出よ」

 俺の淡い期待は露へと消えたのだ。

 

 俺はイリーナ殿と向き合い、お互いに礼をする。

 

「バルハルト卿のご息女と手合わせ願えるとは光栄です。

 かの御仁の勇名は父からかねがね窺っています」

 もはや定型句とかした挨拶を述べ、次の文言を構えていると。

 

 

「ギルバード様にご子息が居るとは知りませんでした」

「……え?」

 俺は意表を突かれた。まさか彼女が言葉を返してくるとは。

 

 これも彼女の副官にして欲しいと頼んだ『女神のお陰か』。

 故に彼女の興味を引くことが出来たのだろう。

 

「言葉は剣にて語りましょう。審判が睨んでおられる」

「そうですね」

 そうして、俺とイリーナ殿の試合は始まった。

 

 

「(……む?)」

 俺は強烈な違和感に襲われる。

 俺とイリーナ殿の試合は既に60合を超えて剣を交えている。

 少々長引いた前回ですら、その半分で終わっていた。

 

 俺は時間が戻るたびに経験や技術はともかく、肉体は子供の頃まで戻る。

 その度に鍛えなおしているが、今回は前回や前々回ほど鍛えられなかった。

 だが俺は、赤鷲騎士団の中隊長クラスの実力のまま、過去に戻っているのだ。

 

 この時点でのイリーナ殿には荷が重いが、俺が弱かった初回はともかく、彼女は実力に加えて類まれなるセンスと幸運で俺を打ち破った。

 

 だが今回の彼女は、過去二回とのいずれと比較しても、『弱かった』のだ。

 まるで、過去二回の彼女から何かが抜け落ちたかのように。

 

「負けぬ。私は負けぬぞぉ!!」

 それでも勝負が成立しているのは、イリーナ殿の恐るべき執念だった。

 彼女の鬼気迫る気迫は、これまでには無かったものだった。

 

 何だ。

 何が違う。

 

 俺は何を見落とした。

 

 

 お互いに80合を超えて、疲労もピークに達したときだった。

 俺は、女神の溜め息を聞いた気がした。

 

 

 からん、からん

 

 

 

「え……?」

 俺は、負けていた。

 

 俺は地面に尻餅をつき、イリーナ殿に切っ先を突きつけられていた。

 お互いに息も絶え絶えになり、肩で息していた。

 

「勝者、イリーナ・バルハルト!!」

 審判がそう宣言した。

 

 

「いい試合だった。

 一歩間違えれば、どちらが勝つか分からなかった」

 そう言って、イリーナ殿は兜を外すのも忘れて俺に手を貸してくれた。

 

「……ええ」

 俺は頷き返したが、そうは思わなかった。

 そう、『この選抜試合、彼女が優勝で決まっているのだ』

 

 俺が多少の幸運程度で彼女を勝たせることが出来ないと判断されたのか、女神が直接介入して終わらせたに違いなかった。

 俺が勝ってしまうと、致命的な食い違いが起こってしまうのだろう。

 

 そのこと自体には、不満は無かった。

 だけど俺は、釈然としない気分で赤鷲騎士団へと配属された。

 

 

 

 

 俺達は別々の部隊に配属されたが、イリーナ殿が頭角を現すのはすぐなので、俺が副官に抜擢されるのはそう掛からないだろう。

 だが俺はそれではダメだと思って、機会を窺っては彼女に近づくことにした。

 

「おや、イリーナ殿。奇遇ですな」

 俺は王城内に設置されている合同教会へと来ていた。

 教会の内部は無数の神像が並んでおり、それぞれの信仰する神々への祈りを捧げることができる。

 

「……」

 俺は彼女に話しかけると、イリーナ殿は祈りの姿勢のまま横目で俺を睨んできた。

 祈りの邪魔をされたことを怒っているのだろうか。

 

 俺は両掌を見せて悪かったと、示して数歩下がった。

 やがて、祈りを終えた彼女が立ち上がった。

 

「意外ですな、てっきり貴方は光の神か騎士神を祭神とされているのかと」

 俺は彼女の前にある報復の女神の神像だった。

 彼女の業種からして、噛み合う恩恵を頂ける神ではなかった。

 

 彼女はあの剣の冴えでありながら、専門は剣士ではなく仲間の盾となる重装戦士だった。

 攻撃を受けた相手に対する痛みを増すといった加護を与える報復の女神とは相性はあまりよくない。

 

 雑魚相手ならばそれでいいが、強敵相手だと盾職は守りに専念しなければ一瞬で部隊が瓦解するのである。

 主祭神は変更に時間が掛かる為、盾職には許されない“遊び”であった。

 

 

「無論、私の主祭神は騎士神だ。

 だが私とて、誰かを憎みたいときだってある」

 そんな実益面ばかり見ていると、イリーナ殿は寂しげにそう言った。

 

「対抗神というわけではないのですね」

 この世界の信仰の制度として、人間は二種類の神を信仰できる。

 

 主祭神は言わずもがな、その人物の信仰する神のことだ。

 人間なら九割近くが何かしらの神を祭神に据えている。

 

 対抗神とは、ここ数百年で出来た比較的新しい信仰の形なのだ。

 欲深な人間の浅知恵とも言える。

 人間は神々からもっと加護を得るべく、畏れの力を加護として得る方法を発明した。

 

 それが対抗神であり、主に自分が恐れる神を据える。

 例えば火が怖いのなら火の神を対抗神に据えて、耐火の加護を得るのである。

 

 無論、主祭神のそれとは微々たる物でしかないのだが、主祭神との組み合わせによっては意外な効果を齎したりもする。

 例えば、騎士神と魔術神は仲が悪く、この組み合わせだと対抗神にした方が対抗意識を燃やして加護が効力を増すのである。

 なので、この二柱は鉄板の組み合わせなのだが。

 

「私に魔法技能は無いからな。

 対抗神は当然、魔術神だ」

 当たり前だと言わんばかりにイリーナ殿は言った。

 魔法への対抗力を高めるのには魔法使いでもなければ難しいので、騎士神を祭神にする者は魔術神を対抗神に据えるのが有効だとされている。

 彼女の隙のなさは信仰にまで現われているようだった。

 

 

「貴殿はどうなのだ?」

 イリーナ殿は俺を見た。

 

 俺はこの大陸でも少数派の無神者だった。

 冒険者生活ですれてしまった俺には、神という不確かな存在を信じられなかったのだ。

 

 だが、それも過去の話だ。

 

「私は天秤の女神を主祭神とし、天秤の女神を対抗神としています」

 主祭神と対抗神は同じでも良いのだ。

 本来、対抗神は建前はともかく、畏れに対する自らの試練として位置づけるように作られたのでそういうことも可能なのだ。

 

 そして、俺の信仰するアンズ様は俺に試練を与える存在でもあるからだ。

 

「天秤の女神か。聞いたことはないが、がめつそうな女神だ」

「ええ、だから私の部隊は光の神の信者ばかりで肩身が狭いのですよ」

 イリーナ殿はきっと両替商の秤を思い浮かべたのだろう。

 天秤に細工されていそうという点では同意しよう。

 

「この大陸におわす神々は数十ではきかないからな。

 マイナーすぎると変な目で見られるのは仕方がない」

 そう言って彼女は苦笑した。

 最悪、実在しないと思われたのかもしれない。

 

 その点、光の神は最大手の神だ。

 人間から格上げされた神は逸話こそあれど、教えなどは残さないことは多い。

 

 光の神は神々の盟主とされており、人々を導いたと教典には書いてあるらしい。

 そして何より、分かりやすい恩恵がある。

 

『光の神の信者は、アンデッドにならないのだ』。

 彼らは死ぬと光の神の下へと導かれて召されるから、らしい。

 

 アンデッドの処理はどの国も頭を悩ませる問題だ。

 国として光の神の信仰を推奨する所もある。

 

 

「それでは、私はそろそろ失礼する」

 取り留めのない世間話を終えると、イリーナ殿は去って行った。

 

 俺も適当な神像の前で祈ろうかと考えていると、あるところを見てギョッとした。

 頭まで深々とローブを被った魔術神の横に並ぶように、天秤を持ったアンズ様の神像が置かれていたからだ。

 

 彼女の自己主張の強さに若干呆れながらも、俺は彼女に祈りを捧げるのだった。

 

 

 

 

 

 程なくして、魔物たちの動きが活性化しだした。

 問題なくイリーナ殿の副官に抜擢された俺は、北部へ向けて行軍の準備を行っていた。

 

「アラン、こちらの準備は終わったぞ」

「こちらもです」

 俺ともう一人の中年の下仕官と一緒に出立の準備を終えると、あとはイリーナ殿の到着を待つばかりなのだが。

 

「遅いですね、どうしたのですかね」

「分からん、が……城内が騒がしいようだな」

 城門前で待機している我々から見ると、城の方が騒がしいのが良く分かる。

 武官も文官も問わずに走り回っているのだ。

 

 部下達もその様子に困惑の色を浮かべる。

 俺達もどうすればいいか分からずにしていると、イリーナ殿が城内からやってきた。

 

「小隊長、出立の準備は完了しております!!」

「……中止だ」

「……は?」

「中止だと言った!!」

 困惑する下仕官に、イリーナは怒鳴り散らすように言い放った。

 

「一体どういうことなのですか? 

 城内の方も騒がしいようですし……」

「それについては緘口令が敷かれている。

 私も事態を把握できないが、どうやら情報が錯綜している。この状況での出立は出来ない!!」

 イリーナ殿は、軍務の邪魔をされたからか俺達が見たことがないほど苛立っていた。

 

「総員、待機を命じる!! 

 指示があるまで自室に待機せよ!!」

 それだけ言うと、イリーナ殿は踵を返して去って言った。

 

「どういうことだ……」

 俺の呟きは、ここに居る全員の胸中を代弁していた。

 だが、俺の場合はそれだけではない。

 

 過去二回、こんな騒ぎは経験したことがなかった。

 そう、今回の逆行は今までと違う。

 

 凡その筋書きはあっているが、細かい所が違いすぎるのだ。

 

 

 結局、俺達の出立は二日も遅れることとなった。

 

「おい、姫様が刺客に襲われたって本当か?」

「俺はかどわかされたってきいたぜ」

「姫様に限ってそれは無いだろ」

 部下達は行軍の最中、そんな噂話を口にしていた。

 

「私語は慎め」

 俺が注意するが皆は、だって納得できないだろう、という表情をしていた。

 その通りだった、なぜならあの時、自分達も怪しまれたからこそ自室待機なんて命令が出たのだ。

 

「無駄口を叩くな、遅れた分は我々で取り戻すのだ」

 イリーナ殿にまで叱咤され、部下達は首を縮こます。

 

「とは言え、無理しても仕方ありませぬ。

 今日は次の村で休み、国境へと参りましょう」

「そうだな」

 同僚の下仕官の言葉に、イリーナ殿は頷く。

 

 

「大変です、隊長!!!」

「どうした!!」

 すると、先行していたスカウト技能持ちの部下が馬を走らせ戻ってきた。

 

「目的地の村付近で、魔物の軍勢を確認!! 

 進路からして、村を襲うのは明確です!?」

「なんだと!?」

 その報告に、皆の表情が真っ青になった。

 

「急ぐぞ!!」

 とは言え、この部隊は歩兵ばかりで、馬に乗っているのは斥候と俺と下仕官、イリーナ殿くらいだ。

 

 目的の村への到着は、四半日を要した。

 残念ながら、手遅れだった。

 

 

「許さない……」

 憤怒の表情の、イリーナ殿が呟く。

 

 目の前には悲鳴と火を放たれた村、そして人々を蹂躙する魔物たち。

 

「皆殺しだ、この世の魔物は一匹残らず根絶やしにしてくれる!!」

 激怒するイリーナ殿に続くように、俺達は村へと突入した。

 

 全てが終わった後、残ったのは焼け跡だけだった。

 

 

「確認作業を終えました。

 住人の殆どは逃げる間もなく襲われた模様。

 そして、逃げ切れた者は皆無……全滅です」

 全ての死体を確認できたわけではない。

 だが、被害状況から言って、生存者は皆無の可能性が濃厚だった。

 

「くそッ、くそッ、くそッ!! 

 もっと早く、もっと早く出立できていれば!!」

 イリーナ殿は何度も焼け落ちた壁を殴りつけた。

 

「お止めください! 

 気持ちは皆も同じです!!」

「うるさい、放せ、放せ!!」

 怒りの余り錯乱しているイリーナ殿を羽交い絞めにして、何とか彼女の自傷を止める。

 涙を流し悲しんでいるのは部下達も同じだった。

 こんな時だからこそ、毅然とした態度を取ってほしかった。

 

「……ふぅ、ふうぅ……夜営の準備をしろ!!」

 イリーナ殿はそれだけ言うと、表向きは平静さを取り戻した。

 

 

 夜営の準備を終え、焼けた村を歩き回りイリーナ殿の姿を探す。

 

 彼女はすぐに見つかった。

 玩具みたいな木刀と盾を持って死んでいる小さな女の子を抱きしめていた。

 

「騎士神は貴殿を賞賛するだろう」

 誰もが無謀だと言うだろうその少女の健闘を、彼女は称えていた。

 

 

「……情けない所を見せたな」

「いえ、初任務でこの有様なら当然でしょう」

 俺に気づいたイリーナ殿にそう言った直後、俺は闇夜に光る目を見つけた。

 

「危ない!!」

 俺はイリーナ殿を押しのけた。

 その直後、無数の矢が俺に向かって降り注ぐ。

 

「アラン!?」

「敵襲……です、どうか……みんなへ……」

 彼女を庇い、その身に無数の矢を浴びた俺は熱を失っていくのを感じながら、イリーナ殿に伝えられることを伝えた。

 

 完全に油断していた。

 夜襲は魔物ばかりの魔王軍の十八番だというのに。

 

 同じ手で何度も部下を失ったというのに。

 俺は自嘲しながら、息絶えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「この世界の宗教というのは面白いですね」

 俺は目覚めると、あの場所へと戻ってきていた。

 

「信仰する神は教えではなく生き様で選び、憧憬と尊敬を持って敬い奉る。

 少々ファッションじみているところは気に入りませんが、これも文化の違いという奴ですか」

 アンズ様はどうやらご機嫌のようだった。

 

「私の試練を受け入れ、そしてそれに立ち向かう為に私を選ぶ。

 ふむふむ、そう言えば私ってちゃんとした信者とか居ませんでしたね。

 我が師は崇められることを嫌悪しましたが、これはこれで悪くない」

「貴方はやはり人間神でしたか」

「こんな俗っぽい自然神は居ないでしょう?」

 天秤の女神はころころと笑った。

 

「我々にとって、神に自身の名を教わることは最高の名誉なのです。

 太古から、神々は己の名を地上に残さなかった。人々の争いの原因になるからと」

「ええ、そうですね。私のところはそれで血みどろでしたよ。

 私自身もそれなりに苦労しました」

 俺には宗教で血みどろの争いなんて想像できずに馬鹿馬鹿しい思いだが、アンズ様は万感のこもった溜め息を吐いた。

 

「だから私の神は貴方なのです」

「やだ……この世界の連中ってばちょろすぎ……」

 アンズ様は両手で口を覆ってそんなことを嘯く。

 この方は神々の名を知ることが出来るのがどんな最高位の司祭にも許されないことだと分かっていないのだ。

 

 

「それで、次はどうします?」

 きを取り直して、アンズ様は俺に問う。

 

「イリーナ殿に勝ちたいです」

「それは、私の力で勝ちたいということですか?」

「いいえ、自分の力で正々堂々と戦い、勝ちたいのです」

「ふむ……」

 アンズ様はひと房だけの緑色の髪を弄ると。

 

「いいでしょう。

 次の逆行で、貴方の勝負自体に介入はしません。

 ですが、何も意味はありませんよ?」

「意味は有りますよ。父の剣が最強だと証明できる」

「……ぷくく」

 アンズ様は可笑しそうに笑った。

 

「ええ、いいでしょう。頑張りなさい」

 その言葉と共に、俺の意識は急速に沈んでいく。

 

 

 

 

 

 

 

 

「その可愛げに、私も報いましょう」

 女神は六面ダイスを弾く。

 

 からん、からん

 

 大きく傾いた天秤の皿にそれが落ちると、異様なことに両方の皿は水平に保たれた。

 出た目は、四だった。

 

 

 

 

 

 

 

 




※『 』の中の台詞の内容は全て真実である。

つまり、『今回は説明回。』
つまり、『信仰はTRPG的に実益とフレーバー要素。その人間が何を重要視しているかを表している。』

つまり、『だが、あの四人はTRPG的にガチビルドである。』
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