シュヴァルツェスマーケン もう一人のアイリスディーナ   作:ダス・ライヒ

13 / 26
迫る同盟軍

 マリのVF-1Sバルキリーがグルビーのハンマーを食らい、ノイエハーゲン要塞へと墜落する中、宇宙にて地上に居る旅団を撤退する切欠を作ったジークリンデは、組み立てを終えたバルキリー、VF-25Sメサイアにアーマードパックを装備し、単機でグルビー旅団の母艦を襲撃していた。

 目標の母艦は連邦や同盟の空母の残骸を組み合わせた奇怪な再生艦艇であり、対空砲が針鼠のように設置されている。おまけにビームを撃つ単装砲も搭載されている。

 護衛艦は連邦や同盟から鹵獲した、あるいは再生したフリゲートだ。他にも複数の何処かの陣営の艦艇が見える。

 グルビー旅団はイオクから機甲一個軍団を借りているようだが、その部隊は同じくマリを追跡している同盟軍と交戦している。

 それを証明するかのように、ジークリンデから見て二時方向で連邦と同盟の宇宙軍の艦隊が交戦していた。

 

「増援に来る様子はないわね」

 

『どちらの陣営の敵機が何機か来る可能性があります。ご注意を!』

 

 キャノピーから見える連邦軍と同盟軍の艦隊が交戦しているのを見て、ジークリンデはこちらに来る心配が無いと呟くが、フランケンシュタイン号に居るノエルは警戒するようにと告げる。

 数は同盟軍の方が多く、イオクの派遣艦隊は余り長く持ちそうに無さそうだ。

 早く母艦に奇襲をかけ、地上のグルビー達を撤退させた方が良いと判断したジークリンデは、全ての兵装の安全装置を解除する。

 

「ヤー、直ちに攻撃を開始する。全兵装制限解除(オールウェポンフリー)

 

 機器を操作して全兵装を解除すれば、操縦桿を動かしてミサイルポッドの射程内まで機を進ませた。

 

『敵哨戒機並び防空警戒ラインに到着。気を付けて』

 

「見付けて貰わなきゃね。敵艦に照準」

 

 哨戒機か防空網に入ったことをノエルから知らされたジークリンデは元より見付かるつもりであり、手近な敵艦にミサイルの照準を定めた。

 哨戒機を務めている宇宙用リオンがこちらを発見すれば、コックピット内の警告音が鳴り出し、同時に敵艦が対空砲火を浴びせようと、対空機銃やミサイルの準備をする。

 既にミサイルは照準済みであり、他の敵機も纏めて照準すれば、直ぐにミサイル発射ボタンを押し込む。

 

「フォックス3!」

 

 ミサイルを発射する際にそう言えば、搭載されている各所のミサイルポッドから雨あられとミサイルが発射される。

 放たれた無数のミサイルは目標へ向けて飛んで行き、数機の敵機と撃破し、対空弾幕を張る敵艦へと向かっていく。

 ミサイルは小型な物であるため、破壊力は余りないが、敵艦に致命傷を与える事には成功した。ジークリンデはとどめに旋回式ビーム砲でとどめを刺す。

 

『敵の通信を傍受します。煩いですが、敵の動きが分かるはず』

 

 ノエルより敵の通信を傍受すると告げられれば、ジークリンデは無言で頷いて敵の攻撃を回避しつつ、無線機のボタンを押して敵からの無線を傍受する。

 

『ガイデ撃沈!』

 

『対空弾幕を厚くしろ! 敵機を近付けるな!』

 

『敵機は何機居る!?』

 

『分からん! とにかく後続機の可能性がある! 哨戒機は警戒しろ!』

 

『グルビー団長の手を煩わせるな! 我々だけで対処しろ!!』

 

 無線機から聞こえてくる声で、突然の襲撃に敵は少し混乱気味であるようだ。

 ジークリンデは地上のグルビーを母艦に戻すべく、更に攻撃を強めて遭遇する敵機を撃墜して敵の戦力を削る。

 

『ゴルドンをやらせるな! あの艦だけは絶対にやらせてはならん!』

 

『迎撃機を出せ! 連邦軍は何をやっている!?』

 

『同盟軍の数が多過ぎて増援を出せんらしい!』

 

『それでも正規軍か!? 早く撃墜しろ! 団長に面目たたん!』

 

 母艦を除く敵艦にダメージを与え、迎撃機を何機か落とせば、敵は更に慌てふためく。

 

『母艦に一定のダメージを与えれば、地上の敵は撤退すると思います』

 

「そろそろ母艦を狙う頃合いね。増援は出さなくて結構」

 

『はい』

 

 ユウキが母艦に一定のダメージを与えれば、敵は地上のグルビーに救援を要請するはずと言えば、ジークリンデは自分で事足りると答えて母艦に攻撃を始める。

 母艦に近付いた所で対空弾幕の激しさは増し、何としても近付けまいと必死になる。

 

『来たぞ! 近付けるな! 狙わんでいい!』

 

『ここで当てられてはグルビー様に恥をかかせるぞ! 何としても撃ち落とせ!』

 

 無線機より母艦の防衛を任された旅団の傭兵たちの声が聞こえて来るが、ジークリンデは対空弾幕を掻い潜りながら接近し、ビームやミサイルなどを撃って敵母艦に当てる。

 敵母艦の装甲は硬く、小型のミサイル程度では損傷を負わすことが出来ず、旋回式対艦兼対空ビーム砲でも対した損傷を与えられない。

 

「なんて頑丈さ!」

 

『クソッ! 接近を許した! 艦載機は甲板に張り付いて迎撃しろ!』

 

 余りの硬さにジークリンデが悪態を付く中、敵の艦載機は甲板に張り付きながら迎撃して来る。

 これを彼女は操縦桿を巧みに動かして躱し、邪魔な敵機だけを撃破してまだ開いている発進口に向けて両翼に搭載していた対艦ミサイル全てを撃ち込む。敵は慌てて発進口のハッチを閉めようとしたが、ミサイルの方が早く、撃ち込んだ六発の内、二発が艦内に侵入して何処かに着弾して爆発を起こした。

 

『第八ブロックに被弾! 火災発生!!』

 

『直ちに火を消せ! それと早くあいつを撃ち落とせ!』

 

 損害は負わせたが、救援を呼ばせるにはまだほど遠い。直ぐにノエルよりエンジン部を狙うことを進められる。

 

『余り大した損害では無いようです。エンジン部を攻撃すれば、敵は救援を呼ぶはず!』

 

 彼女の言う通りに、ジークリンデは対空砲火を躱しながらエンジン部に向けて飛んだ。

 先ほどより対空弾幕は激しさを増したが、超人兵士が操縦する高性能バルキリーに当てることは困難である。

 少し掠りながらも敵母艦エンジン部に辿り着いたジークリンデは、旋回式ビーム砲と残っているミサイルを全て十基もある敵艦エンジン部に向けて撃ち込む。

 

『第五エンジン並び第十エンジン部損傷! 航行不能!』

 

『クッ! 正規軍はどうした!?』

 

『以前、同じ回答が返って来るばかりです!』

 

『ちっ、それでもクジャン公の兵士か! やもえん、グルビー団長に救援を!』

 

 十基あるエンジンスラスターの内、五基を破壊すれば敵母艦は航行不能に陥った。

 これによりグルビー旅団の兵士たちは、地上に居る旅団長に救援を呼ばずにおえなくなる。

 

『地上からの報告です! 狙い通り、地上に居た敵は母艦の方へ引き返して来ます。作戦成功です!』

 

「帰投する。直ぐに現在地を移動して! 合流ポイントに待機!」

 

 ノエルからの報告で地上に居たグルビー等が救援のために地上を離れたと聞けば、ジークリンデは直ぐに撤退行動を取る。

 敵はせめて自分等に救援を呼ばせたジークリンデのバルキリーを撃墜しようと躍起になるが、身軽となった彼女のバルキリーに追い付けず、そのまま取り逃がしてしまった。

 安全圏まで辿り着いた後、ノエルより再び無線連絡が入った。ジグムントたちが合流ポイントに集結中と、マリがノイエハーゲン要塞へ墜落した事だ。

 

『地上に居たジグムント隊も合流ポイントに集結中です。ですが…』

 

「何か問題が?」

 

『マリちゃん、いや、マスターがノイエハーゲン要塞に…』

 

「そう。暫くした後に増援を出さないとね」

 

『えっ、心配じゃないんですか?』

 

「不老不死だから大丈夫。それより連邦軍や同盟軍を警戒して」

 

『は、はい…』

 

 マリが墜落したことに、リンダと同じ反応を見せるノエルに対し、ジークリンデは同じ超人兵士の二人と同じく不老不死なのだから心配する必要はないと答えた。

 これにノエルはリンダと同じく三人の超人兵士等にやや嫌悪感を抱く。ユウキも聞かされた時は同じ反応を見せていた。

 

 

 

 一方でノイエハーゲン要塞へ搭乗機と共に墜落したマリは、意識不明のまま要塞に居た兵士たちに捕まり、独房に入れられていた。気が付いた時は独房の中に居ることに、驚きの声を上げた。

 

「えっ! ここ何所!?」

 

「気が付いたか。お前があの戦闘機のパイロットだな?」

 

 目を覚まして声を上げた直後、それを待っていたNVAの兵士、否、将兵の敵前逃亡を防ぐために配置されていた保安隊の政治将校は、マリが先ほど乗っていたVF-1Sバルキリーについて聞いて来た。

 今の彼女の状態はパイロットスーツを脱がされ、囚人が着るような目立つ色の服を着せられている。既にマリは拘束されていたのだ。

 マリは質問を無視し、これまでの経緯を思い出す。

 グルビーの発言に激昂して感情的になってしまい、山のように大きい機動兵器が振るう巨大なハンマーを受け、その衝撃で気絶した。

 気絶している間に搭乗機が、この要塞へと墜落したようだ。現在は政治将校たちからの尋問を受けている。

 

「どうした、聞こえんのか? さっさっと答えろ!」

 

 怒号を掛ける政治将校に対し、マリは詠唱を素早く済ませて幻術の魔法をかけた。後ろに居る銃を持った三人纏めてだ。

 幻術が完全にかかり、目が虚ろになった四名を見て、マリは自分を解放するように命令する。

 

「お前たちは私を解放する。今すぐに」

 

「我々はお前を解放する、今すぐに」

 

 政治将校たちが命令通り、マリを独房から出せば、彼女は四名の保安隊の中から自分の背丈にある制服を探す。

 

「あんたは服を私に渡す」

 

「俺はお前に来ている服を渡す」

 

「ついでに装備一式」

 

「装備一式、持っていけ」

 

 自分と同じ背丈の保安隊員を見付ければ、その男から制服を脱がせ、更に装備一式を渡させる。

 パンツを脱ごうとしたが、直ぐに止めて、四人に独房へ入るように命令する。

 

「あんた達は独房に入る」

 

「我々は独房に入る。よし、みんな入れ」

 

「ついでにカギを渡す」

 

「あっ、鍵か。持っていけ」

 

 独房に四人が入ったのを確認すれば、マリは戸を閉めて施錠する。

 手に入れたのはPM-63RAK短機関銃だ。囚人服から保安隊の制服に着替えたマリは、弾薬ポーチらを身に着けて収容所から出ようとしたが、待ち受けていたNVAの兵士達に銃口を向けられる。

 

「おい、あんた。あの戦闘機のパイロットだろ? 保安隊の奴らはどうしたんだ?」

 

 東側の特有の戦車帽を被った髭面の男に問われたマリは、周囲の状況を見て銃を棄てて答える。

 

「独房に入れた」

 

「信じられねぇ、一体どんな魔法を…」

 

「あっ! 貴方は!!」

 

「おい、嬢ちゃん! そいつは!」

 

 余りの率直な答えに、信じられない男は手にしているMPi―K突撃銃の安全装置を外し、引き金に指を掛けようとしたが、周りを押し退けて飛び出して来た少女に驚き、引き金から指を離して止めようとした。

 その飛び出して来た少女に、マリも驚く。何故なら守るべき対象であるカティア・ヴァルトハイムだったからだ。マリの元に辿り着いたカティアは、直ぐに彼女が敵でないことを周りに訴えかける。

 

「皆さん、彼女は敵じゃありません!」

 

「敵じゃないだって!? 一体どこに証拠があるんだ!」

 

 必死に訴えるカティアであるが、そんな単に敵じゃないと言われて信じるほど要塞の者達は単純では無い。

 証拠を見せるためにカティアはマリと初めて会った時の事を話したが、それで信じるほどのお人よしでは無いのだ。当のマリは必死で訴えているカティアの姿を見て、可哀想だと思って自分が敵でないことを自ら口にする。

 

「私は貴方たちの敵じゃないわ。そのつもりなら、ここに居る全員、三十秒以内に皆殺しにしてるけど」

 

「そ、そんな事言ったら…!」

 

「こいつ! 一体何を言って…」

 

 疑われるようなことを言うマリに対し、カティアは必死で止めようとするが、彼女はその証拠を見せるために、リーダー格の髭面の男に目にも止まらぬ速さで接近して喉元に刃を突き付けた。

 

「ほら、こんな風に…」

 

「なんてこった、どうやら俺たちは魔女を拾ったらしい…! みんな、銃を下ろせ」

 

 ナイフを喉元に突き付けられ、更に髭を無精に剃られた男は、要塞の兵士達に銃を下ろすように告げた。

 全員が銃を下ろしたのを確認すれば、マリはナイフを仕舞ってここが何所なのかを問う。

 

「それでよし。でっ、ここ何所?」

 

「俺はクルト・グリーベル。でっ、ここはノイエハーゲン要塞だ。恥ずかしい話、曹長の俺が要塞司令官だ。将校はあの政治将校を除いて居ない。あんたはここに何しに?」

 

「自然の成り行き」

 

 リーダーはクルト・グリーベルと名乗り、自分から上の階級の者は戦死するか、後方へ運び出されたと答えた。

 次にマリは何をしに来たと問われれば、自然の成り行きで来たと答える。これにはクルトや少女、それにカティアも首を傾げる。

 

「まぁ良い。取り敢えず、要塞でも案内しよう。そこの嬢ちゃんもまだだしな」

 

 クルトはカティアの案内も含め、マリにも要塞の案内を始めた。

 まず案内したのは、負傷兵で溢れる救護所だ。度重なるBETAとの戦闘で疲弊しており、激痛に魘される声がそこら中から聞こえて来る。

 

「こんなに…!」

 

「度重なるBETAとの戦闘で十人単位、酷い時には百人は出る。重傷の奴らはBETA共に包囲される前に将校共と共に後方へ送られた。残っているのは戦える軽傷の奴らだけだ。幸い、医療品は残してくれた」

 

 治療を受けている負傷兵等を見てカティアが心を痛める中、マリは気にも留めなかった。これにクルトは、マリの機体が墜落した時にも負傷兵が出たことを伝える。

 

「あんたは知らんだろうが、墜落した時に何人か負傷したんだ。申し訳ないと思え」

 

「…ごめん」

 

「けっ、イラつく女だぜ」

 

 これにマリは全く謝意の気持ちも込めず、適当な態度で謝罪すれば、クルトは苛立ちながら煙草を加え、先端に火を点けて喫煙する。

 次に案内されたのは兵器庫だ。多数のT-62戦車やその他東側の戦闘車両がずらりと並んでいる稼働しているのは少ないようだが。周りは分厚いコンクリートで覆われていた。

 近くには燃料や弾薬類が置かれ、いつでも補給が出来るようにしてある。

 

「すごい、本当に要塞なんですね」

 

「あぁ、ここは他の要塞陣地から孤立している。包囲されるのが当たり前だからそう言う作りになっている。ここを突破されるわけにはいかんからな」

 

「どうしてです?」

 

 カティアが兵器庫を見ながら言えば、クルトはこの要塞は包囲される前提で作られた物であると告げた。

 包囲される前提で作られた要塞に対し、カティアが訳を問えば、クルトは紫煙を吐いた後に監視塔がある方向を見ながら口にする。

 

「ついてこい、見りゃあ分かる」

 

 このクルトが言った意味を、マリは即座に理解した。

 

「あれって、まさか…!」

 

「そう。我らが祖国、ドイツ民主共和国の首都、ベルリンだ。今ごろは暖炉が効いた温かい部屋で、暖かい食事を食べている頃だろう」

 

 監視塔を登り、カティアが見た方向にあったのは、東ドイツの首都ベルリンであった。

 ここから見えると言う事は、ベルリンが近い証拠であり、この要塞の陥落は即ち首都は丸裸同然である。マリが要塞の兵士達が死守命令を受けている意味を即座に理解した。だが、肝心の上層部は増援すら送ってこない。

 

「戦場とこんなに近いなんて…!」

 

「政府が疎開を禁じているからな。そんなことをすれば、負けを認めているようなもんだ。しかもシュタージの所為で誰も文句を言えない。プロパガンダや幻想にすがって日常を続けようとしてるんだ。最近では薬物なんかが流行ってるらしい。俺たちがやられたらあそこは戦場になる。だから俺たちは死に物狂いで叩かなくちゃならない」

 

 自分たちがなぜ逃げ出さずに死守命令に従い、戦っている理由を明かせば、カティアは不安げな表情を浮かべた。

 

「私たちは要塞を一分一秒でも長く持ち堪えさせるための捨て駒で、消耗品ってわけ」

 

「だがそれで良い。あの灯を守れればな」

 

 そんなカティアに少女兵士が言えば、クルトは彼女の頭を撫でながら言った。

 マリは自分たちを捨て駒扱いしている上層部に対し、逃げ出せばいいのにと言い出しそうになったが、クルトは言う事を分かっているのか、言わないでくれと無言で伝える。

 その時、一人の伝令が知らせに来る。

 

「曹長!」

 

「なんだ、またBETAか?」

 

「いや、違う! 空から、空から!!」

 

「空?」

 

 伝令がいつもの違う様子を見せるので、クルトは空を見上げれば、マリからすれば見たことがある物、カティアやクルトから見れば見たことが無い物がやって来た。

 

「な、なんだこりゃあ!?」

 

「あいつ等がBETAを! BETAをやっつけてます!」

 

 それを見たクルトは驚きの声を上げる。空からやって来た物は、同盟軍の艦隊であった。輸送して来た地上軍の部隊を要塞周辺に降下させ、包囲しているBETAをミサイルやビームで一掃している。

 伝令は何処かの救援が来たと思っているが、マリからすれば最悪な状況である。連邦のみならず、同盟軍にも追われているのだから。それも、十万単位の戦力で追跡されているのである。過剰としか言いようがない。

 

「不味いわね」

 

「不味いって何がだ?」

 

「あんた等みんな殺されるわよ」

 

 マリが言った言葉にカティアは首を傾げ、クルトは彼女の目でBETAよりも危険な災難が降り注いだと確信した。

 

 

 

「惑星同盟軍地上軍降下部隊、ノイエハーゲン要塞周辺に展開! 数は推定二個軍団以上!」

 

「おいおい、たかが女一人に十万はヤバ過ぎだろ!」

 

 宇宙のフランケンシュタイン号にも、要塞を包囲する形で展開する同盟軍の地上部隊の情報が届き、ユウキからの知らせでジークフリートは数に驚きの声を上げる。

 ジグムント等はマリ救出とファムにカティアの救出も兼ね、異世界の勢力の襲撃も予期して要塞に高性能機で降下する予定であったが、惑星同盟軍の登場により大幅に予定は狂う。

 投入された兵力は尋常では無い。あの地球の両陣営は直ぐに核ミサイルの準備をしている頃だろう。

 

「どうする? 流石に二個軍団相手じゃ私たちでも厳しいわ」

 

「そうだぜ。あんな数の生前じゃどうってことねぇが、ロボットやらビームとか撃ってくるんだぞ。命が幾つあっても足りねぇよ」

 

 幾ら自分たちでも、多勢の二個軍団相手ではキツイと言うが、かといってあの世界の各国が軍隊を総動員しても、惑星同盟軍には勝てないだろう。連邦軍も期待できない。

 

「とにかく、今ある戦力を総動員して救出に向かうしかないが、それでは地上の国々に目を付けられてしまう。BETAが大量発生でもしてくれればいいが」

 

「BETAに頼る? 悪い冗談ね。そう都合よく大量発生するとでも?」

 

 悩んだジグムントはBETAに頼るしかないと言ったが、ジークリンデはそう簡単にBETAが来てくれるわけが無いと告げる。

 そもそも自分等の思い通りにBETAが動かせれば、苦労せずに事を進めている。暫く対策を考えたジグムントは打開策の為、マリにフリーダムガンダムかVF-31Fジークフリートを渡すしかないと判断する。

 

「やもえん、マスターにフリーダムかVF-31を渡すしかあるまい。それもフル装備でな」

 

「そいつは禁じ手じゃねぇのか? 同盟軍を追い払えたとしても、世界中から注目されちまうぜ」

 

「もうとっくに注目されている。さぁ、我々もフル装備で降下しよう」

 

 禁じ手を使うことに、ジークフリートは異議を唱えたが、ジグムントは同盟軍があんな行動に出た時点で注目されていると伝えれば、皆が納得してマリの救出のために出撃の準備に入った。

 

 

 

 要塞周辺のBETAが同盟軍の降下部隊によって一掃された後、後続は要塞を包囲する形で展開し、更には攻撃まで開始した。

 救援が駆け付けたと思った兵士たちは助かったと思ったら一変、絶望への淵へと再び叩き落とされた。

 

「例の女を探せ! ブリーフィングで見せたこの女だ! この女以外は要らん! 射殺していい!」

 

 同盟軍の傘下勢力の一つ、ヘルガスト軍の将校は左腕の危機を操作してマリのホログラムを出し、彼女を捕らえるように傘下の将兵らに告げる。

 コヴナント、キメラ、ローカスト、その他諸々の宇宙国家軍の将兵らもマリ一人を捕らえるために要塞へと突入していく。多数の機動兵器は要塞を包囲したまま待機している。

 

「や、止めろ! やめてくれ!」

 

 攻撃で生き延びた兵士は命乞いをするが、ガスマスクを着けた兵士たちは容赦なく手にしているアサルトライフルで射殺する。

 これを受けて要塞の兵士たちは手持ちの火器で抵抗するが、敵軍の装備は自分等より遥か上を行く物であり、突入して来る敵兵等に次々と殺されていく。投降したところで、同盟軍の将兵らは容赦なく射殺されるだけだ。

 一階から先は異星人の軍隊に蹂躙される中、地下からはローカスト軍による攻撃が始まり、地下へ逃げた兵士たちは次々と殺されていた。

 

「金髪ノ、グランドウォーカーヲ探セ!」

 

「な、なんなんだこいつ等は!?」

 

 床を突き破って次々と出て来るローカストに、兵士たちは恐怖を覚える。幾ら撃ち殺しても、空いた穴から続々とローカストが出て来て自分等を殺しに来る。

 地下からはローカスト、地上や上階からはコヴナントやキメラ、ヘルガスト軍の波状攻撃だ。陥落するのは時間の問題であろう。

 

「クソッ、あいつ等! 俺たちを皆殺しにしようってのか!」

 

「どうすんだ曹長? このままじゃ皆殺しだぜ!」

 

 次々と殺されていく戦友達を見て、兵士たちは突撃銃を片手に臨時要塞指揮官であるクルトに問う。

 

「BETAならどうにかなるが、奴らは知恵を持った奴らだ…! クソッ、第二防衛線まで後退するぞ! BETA用だが、要塞を爆破するしかねぇ! こいつ等をベルリンにでも行かせたら大惨事だ! 一人でも奴らを多く道連れにしてやる!」

 

 これにクルトは怒りを燃やしながら人類のため、この要塞の運命を共に迎える事を選んだ。同盟軍をベルリンに行かせれば、ここよりも恐ろしい参事が巻き起こると思ったからだ。

 指示に応じて兵士たちは所定の位置へと後退し始める。それを追う形で同盟軍の突入部隊が追跡する中、マリは単独で行動を取ろうとする。

 

「何しようってんだ? あんたには嬢ちゃんの中尉の脱出を頼みたいんだが」

 

「反撃に出るの。宇宙に居る私のサーヴァントが送ってくれそうだし」

 

「さ、サーヴァント…? それに反撃に出る? オツムの方は大丈夫か?」

 

 単独行動に出るマリに対し、クルトはどうするのかを問えば、彼女は反撃に出ると答えた。

 それに自分では聞き慣れない単語を使うマリにクルトは理解できず、この状況下で反撃に出ると言うので、頭の方は大丈夫かと問うが、返答せずに何処かへ消える。

 オドオドしているカティアに対し、ヴィヴィエンと言う少女は肩を叩いてファムが居る医務室を指差して連れてこいと伝える。

 

「何やってんの! 早くあんたも中尉を持って来て! じゃなきゃ死ぬよ!」

 

「えっ、は、はい!」

 

 従う形でカティアは意識が戻らないファムを連れて行くため、医務室へと向かった。

 一人、要塞内を駆けるマリは、何所からともなく自分の剣を取り出し、目に映る同盟軍の将兵に斬り掛かり、斬り捨てて行く。

 

「っ!? 居たぞ!」

 

 マリを見付けた同盟兵等は、直ぐに手にしている小火器を撃ち込むが、彼女は恐ろしく早く、躱されるばかりだ。接近を許した一瞬、この場に居る全員が斬り殺された。

 辺り一面が様々な色の血痕で染まる中、自分を見付けて機銃掃射を浴びせようとする同盟軍の戦闘ヘリ(ガンシップ)に対し、機銃掃射を華麗に避けつつ、空間より召喚した武器で撃墜する。

 六機目を撃墜したところで、死んでいる敵兵が落とした無線機から敵指揮官の声が聞こえて来る。

 

『第6小隊、応答しろ! まだ例の女は見付からんのか!?』

 

「全滅した。これからあんた等も殺す」

 

『だ、誰だ!? 貴様! まさか…』

 

 無線機を拾ったマリは、敵司令部に対し宣戦布告をしてから無線機を棄て、何所で拾ったのか、管理局のバリアジャケットを身に纏い、右手に剣と左手に短機関銃を持ちながら要塞内を駆ける。

 遭遇する同盟軍の将兵らに対しては容赦なく剣を振るい、銃弾を浴びせて次々と排除していく。当然ながら直ぐに自分の存在は知られ、戦力が集中して来る。

 

『居たぞ! 奴はあそこだ! 一個大隊を回せ!』

 

「アノグランドウォーカーダ! 行クゾ!」

 

「捕らえて昇進するぞ~!」

 

「我らがヘルガストの為に!」

 

 マリの居場所を知った同盟軍各将兵らは、一斉に彼女が居る区画へと集まる。要塞内で抵抗するNVAの兵士たちを放置して。

 余剰な機動兵器部隊も投入され、膨大な戦力がマリ一人の為に投入される。同盟軍は不老不死を、何としても手に入れたいようだ。

 

「このグラビトン、ぶげっ!?」

 

 ブルートが大振りのハンマーを振り下ろそうとした瞬間、マリは恐ろしい速さで接近し、柄打ちを腹に食らわせ、素早く胴体を切り裂き、返り血を気にすることなく自分に集まって来る敵兵等を斬り続け、撃ち殺し続ける。

 

「たかが人間の女如きに我らサンヘイリに勝てるはずが無い!」

 

 エリートがエナジーソードを抜き、同じくエナジーソードを持つエリートたちと共にマリに果敢に挑むも、斬撃を躱されて斬り殺されるばかりだ。

 先のエリートやブルート部隊を初め、グラント、ジャッカル、ハンター、ローカストのドローン、グレネーディア、カンタス、ブーマー、モーラー、ヘルガスト兵などが立ち塞がったが、マリの並外れた身体能力や剣術に魔法でやられていく。

 一個大隊ほどの人数が投入されたが、その全てがたかが女一人の前に全滅した。

 

「う、嘘だろ…!」

 

「一個大隊は居るんだぞ! 幾らアービターとは言えど、この数は倒せぬはず!」

 

 投入された一個大隊が全滅したのを見て、後に控えていた同盟軍の将兵らは恐れおののき始める。それを知った指揮官は次に、外で待機していたキメラを大量投入することを決定する。

 

『キメラを投入しろ! あの女は危険だ!』

 

 その命令でキメラが投入される。それも全てだ。キメラが作った兵器も含め、輸送して来た全てがマリ一人の為に投入された。

 ブルズアイを初めとするキメラの小火器や重火器、兵器がマリに向けて放たれるが、今の彼女は要塞の兵士達から自分に注意を引き付けるため、全力を出している。

 服装はバリアジャケットから全力で魔力を出せる神々しい魔法衣装に変わっており、魔法の壁でキメラ軍の攻撃を防ぎながら目に見える全てに向け、背後の空間より召喚した無数の武器を浴びせる。

 

「な、なんだあれは…!」

 

「コ、コレハ…ナンダ…!?」

 

「か、神様…!?」

 

 マリの格好を見て、同盟軍の兵士たちは絶対に倒せない物と戦っていると錯覚する。

 そんなはずはないと言って、同盟軍は過剰な戦力を投入して排除せんと試みるが、マリが前に張った魔法の障壁の前に全てが弾かれる。その時、マリの耳にカティアの悲鳴が聞こえた。

 

『きゃあ!』

 

「カティアちゃん…?」

 

 それをまるで地獄耳のようにと言うか、魔法の聴力で聴いたマリは、自分に攻撃している同盟軍の将兵らに自分の幻影を見せ、攻撃が幻影に集中している間にカティアの元へ急ぐ。

 壁を突き破り、一気に彼女が居る方へと進めば、ファムを運んでいる最中にコヴナントのグラントやエリートに襲われているカティア達を透視で発見した。

 

「あれ、ちょっと似てないけど…」

 

「馬鹿者! この小娘は例の女では無い! そこに寝ている女もな!」

 

 グラントはファムをマリと勘違いしたようだが、エリートはしっかりと覚えており、違うと指摘する。

 担架を持っていた兵士たちが一瞬で殺され、怯えるカティアに対し、エリートは人違いとして殺そうとカービン銃を向ける。

 

「よし、次へ行く。こいつを始末してからな」

 

 カービン銃を向けられても、カティアは恐怖の余り動くことが出来ず、その場で震えるばかりだ。

 守備対象であるカティアがピンチになったので、マリは五秒間だけ時を止め、その五秒で現場へ駆け付け、カービン銃を持つエリートを剣で斬り殺してから時止めを解除する。

 

「うわぁぁぁ!? ほ、本物だァァァ!!」

 

 エリートが訳も分からず息絶える中、本物のマリが現れたことで、グラントたちは武器を捨てて逃げ始めた。

 

「こうなれば、死なば諸ともー!」

 

 一人蛮勇にも、両手にグレネードを持って自爆特攻を仕掛けるグラントが来たが、マリに蹴り飛ばされて壁に激突して爆発する。

 

「か、神様…じゃなくて女神さま…?」

 

 一体何が起こったか分からないカティアは、神々しいマリの格好を見て女神だと勘違いする。これにマリは自分が女神では無い事を告げ、ファムを抱えてクルト達と合流するように伝える。

 

「女神さまじゃ無いから。それよりそこの女を連れて要塞の奴らと合流しなさい。こいつ等の狙いは私だから」

 

「えっ、貴方が狙いなんですか? じゃ、じゃあよろしくお願いします!」

 

 何が何だか分からないカティアであったが、ここはマリに従った方が良いと思い、クルト達と合流する為、ファムを抱えてそこへ向かった。

 彼女が行ったのを見送ったマリは、同盟軍を迎え撃つために現場へと戻る。既に同盟軍はマリの幻影を攻撃していることに気付き、要塞内へと再び大挙して突入しようとしていた。

 また入られれば今度こそ終わりなので、マリは敵兵一人たりとも突入させまいと、魔弾や様々な魔法攻撃を行い、敵兵等を殺していく。やがて敵兵等が要塞内へと出れば、退いて行く敵を攻撃しつつ、それと同時に案内がてらに放った魔法道具で要塞内を監視し、同盟の将兵が残っていないかどうかを確認する。

 

「居ない! 一気に押し返す!」

 

 敵兵一人たりとも死体以外ないと確認すれば、全力で敵を追い返すために魔力を全開にして敵を攻撃し続ける。

 凄まじい魔法の攻撃で敵の士気は大いに低下し、グラントは逃亡し始め、勇猛果敢なエリートやブルートでさえ恐れを抱き、死を恐れないローカストも恐怖を抱き始める。キメラでさえ、改造される前の恐怖の遺伝子が呼び覚まされたのか、攻撃が緩んでいた。ヘルガスト兵や他の異星人の軍隊は震えるばかりである。

 

「お、俺たちが相手にしているのは…人間なのか…?」

 

「これだけの数だぞ…! なんで俺たちが押されているんだ…!?」

 

「まさか俺たちは戦っているのは、破滅の存在なのか…?」

 

 これ程の戦力を投入しているのに、同盟軍の将兵らは女一人を前に恐れる。

 部隊指揮官もまた恐怖し、まだ味方がいるにもかかわらず、無慈悲に機動兵器部隊に攻撃を命じた。待機していた機動兵器部隊は、上空と地上の通常兵器部隊と共にマリに向けて主兵装を一斉発射した。

 凄まじい爆風が巻き起こり、頑丈に出来ていたノイエハーゲン要塞は半壊寸前となる。巻き込まれた同盟軍の歩兵部隊は大半が死亡し、まだ息のある者はうめき声を上げ、失った四肢の部分を抑えて悶え苦しむ。

 してその効果は、ただ味方を殺しただけであり、マリは多少のダメージを受けていた物の、無傷に近かった。

 

「これ、ちょっときついかも…!」

 

 だが、この一斉射はマリにとって痛手あり、もう一度あのような攻撃を受ければ、倒される可能性は高かった。事実、マリは一斉攻撃を防ぐために魔力と体力を消費しており、息を切らしている。

 片膝をついて目の前に見える同盟軍の兵器部隊を見ながら、放棄された要塞の兵士たちとカティアやファムの事を考え、自分が頑張らねばと思って何とか立ち上がる。敵は先の一斉射が効果的だと判断し、再度一斉攻撃を仕掛けようとしていた。

 

『よし、奴は疲れているぞ! 全部隊、一斉射撃…』

 

 もう一度一斉攻撃を掛けようとした瞬間、同盟軍の一隻の地上戦艦が大破した。

 直ぐにマリはジグムント等が来たと思い、腰を下ろして安心する。

 

「遅いわよ…」

 

 そう言って、降りて来る自分のバルキリー、VF-31Fジークフリートを見た。

 

 

 

『遅くなったな。まだ戦えるか?』

 

 降りて来たのはジグムント等、自分のも含めて四機であった。

 ジグムントはバルキリーのSv-262ドラケン、ジークフリートはVF-31J、ジークリンデはマリが乗っていたフリーダムガンダムだ。

 マリがVF-31Fに乗っても四機であるが、現状の保有戦力では最高であり、数ばかりな同盟軍相手なら勝機はある。

 

「もう限界だけど…こいつら全部やっつけなきゃ駄目でしょ?」

 

「そうだ。それとシュヴァルツェ・マルケンの二機がこの要塞に居る二人の救出に向かった。彼らの救出を円滑にするため、我々が囮になるしかない。出来るか?」

 

「もう少し頑張らなきゃ」

 

 開いたキャノピーから顔を出すジグムントより、シュヴァルツェ・マルケンがカティアとファムの救出に向かっていると知らされれば、マリはパイロットスーツに魔法で着替え、自分の機体に乗り込み、機体を起動させる。

 その間に同盟軍機が殺到し、攻撃を加えているが、彼女が乗り込むまでジークフリートとジークリンデが補助に回る。

 

『早く乗れ! こんな数相手に出来ねぇぞ!』

 

「はいはい。こっちは一人で戦ってたのに」

 

 ジークフリートより催促の連絡を受ければ、マリは機体をバトロイド形態に変形させ、周囲に居る無数の敵機に攻撃を始めた。

 全ての火器、マイクロミサイルや両腕のガンポッド、コンテナのビーム砲を雨あられと発射して棒立ち状態の敵機を撃破し続ける。援軍にやって来たSv-262とVF-31J、フリーダムガンダムもまた、全ての火器を使って周囲に居る敵機を撃破する。

 

『な、なんて強いんだ!』

 

『この数だぞ! なんで勝てないんだ!?』

 

 的同然に次々と撃破されていく友軍機を見て、同盟軍のパイロット達は恐怖する。

 たかが四機に数十機もの機動兵器が、通常兵器も含めて手も出せずに撃破されているのだ。撃墜しきれないほど居るとは言え、パイロット達も同様を覚える。

 

『数だ! 数で押し切れ!』

 

 恐れるパイロット達に、敵指揮官は数の暴力で押し切るように指示を出す。これに応じて敵部隊は数に任せて攻撃し始める。

 凄まじい数であるが、四機相手に逆にやられていくばかりだ。決して同盟軍のパイロットが弱いわけでは無い、四人が強過ぎるのだ。

 十機、二十機と撃墜したところで、シュヴァルツェ・マルケンのテオドールとアネットが要塞に到着し、カティアとファムの救出に入る。

 

『この周波数であってるか? 二人を救出した! 他にも大勢いる! 出来るなら…』

 

『いや、待て! 新手がそっちにやって来る! 数は機動兵器一個大隊!』

 

『何所の勢力だ? 直ちに調べろ!』

 

 テオドールから無線連絡が入ったが、そこへミカルが割り込んで新たな敵の存在を告げた。

 剣で一気に三機もの敵機を撃墜したジグムントは、直ぐに何所の勢力か知らせるように伝える。上空でバックアップをしているミカルは直ぐ何所の勢力なのかを突き止めた。それはワルキューレであった。マリ達に知らせようと、証拠の画像を送って来る。

 

『不味いな、ワルキューレだ! VF-31系統が一個大隊分! 流石に最新鋭機相手には不味い!』

 

『VF-31だとぉ!? おいおい、流石にきついぞ!』

 

『幾らフリーダムでも、その数は相手に出来ない!』

 

 やって来た勢力はワルキューレで、バルキリーを運用していることから空軍だ。しかも自分等が使う同じバルキリー、VF-31Aが一個大隊分だ。

 雑魚ばかりな同盟軍はともかく、ワルキューレ空軍のVF-31一個大隊を相手にするのは幾ら四人でも流石に骨が折れる。

 ファイター形態で敵機を撃破し続けるジークフリートと、フルバーストを連発して多数の敵機を撃破しているジークリンデでは即座に撤退を選ぶ。ジグムントも決断は早く、無慈悲にテオドールにカティアとファムだけを救出して離脱するように無線連絡で告げる。

 

『お前の隊の二名だけを回収しろ。他は見捨てても構わん』

 

『なに言ってんだ!? まだ大勢残ってるぞ!』

 

『そうだよ! 要塞の人達だって、助けを待って…』

 

『相手が相手だ。我々ではどうにもならんのが来ている。従わぬ場合はお前たちの機体を破壊してでも従わせる』

 

『クッ…! あんたもその口か…! 俺が言えた事じゃないけどな!』

 

 これにテオドールとアネットは抗議したが、ジグムントは脅し付けて従わせた。

 マリは二機の元にガウォーク形態で近寄り、キャノピー越しからクルト達を見れば、全員がここに残る覚悟が出来ていることを確認した。

 カティアは要塞の者達を一緒に連れて帰るように言っているが、テオドールは聞かずに彼女とファムだけを機体の手に乗せて飛び立とうとしている。

 残っている同盟軍機は邪魔しようと襲って来ているが、マリに見付かって撃破されるばかりである。また新たなる敵の情報がもたらされる中、カティアとファムの二名の回収が確認されれば、ジグムントは撤収命令を出す。

 

『今度は陸軍! 一個旅団分の機動兵器が降下した! これ以上、居続ければ脱出は困難になる!』

 

『よし、回収できたな! では撤収する!』

 

 命令と同時に信号弾を上げれば、機体をファイター形態にして母艦がある宇宙へと帰投した。その後をジークフリート機とジークリンデのフリーダムが続く。

 マリもまたアネットの視線を感じつつ、機体をファイター形態に変形させて共にノイエハーゲン要塞から離脱した。

 テオドールとアネット機もまた、同盟軍機に攻撃される前に要塞より撤退する。残された同盟軍の部隊は、後からやって来たワルキューレのバルキリー部隊や地上の部隊の攻撃を受けて壊滅状態となり、敗走しながら撤退した。

 

 

 

 戦闘終了後、マリを取り逃がしたワルキューレの部隊は、既に半壊したノイエハーゲン要塞に立て籠もるNVAの兵士たちと対峙していた。

 歩兵部隊が要塞内へと突入し、バリケードを設営して立て籠もるNVAの兵士達に対しマリは何所へ行ったのかを遮蔽物越しからドイツ語で問う。

 

『ここに居たはずの金髪の女は何所へ行った!?』

 

『そんな女、俺たちが知るか!』

 

 返答は銃弾と共に返って来たので、ワルキューレの歩兵部隊の将校は制圧するかどうかを女性指揮官に問う。

 

「知らないと一点張りです。制圧しますか?」

 

 将校に問われた女指揮官、ユリアナは戦うつもりは無く、ここにマリが居ないと分かっていたようだ。

 

「待て、無駄な損害が出る。それにもう対象は居ないようだ」

 

「居ないか。じゃあ、アカ共にミサイルを撃ち込みますか?」

 

「馬鹿者め、目の前の貴重な精兵を消すのか貴様は? ここは温かく迎え入れようじゃないか。白旗を用意しろ! 交渉に向かう!」

 

 中年の副官はミサイルで吹き飛ばすのかと問えば、ユリアナはクルト達を自分等ワルキューレに迎え入れるつもりのようだ。

 彼女が白旗の用意を出せば、直ぐに白旗を部下の一人が白旗を持ってユリアナの後に続く。手を挙げながらこっちへ来たユリアナと白旗を持つ部下に対し、立て籠もっているクルト達は首を傾げる。

 

「要塞の兵士たちよ! 我々は貴様たちと戦うつもりは無い! それより、我が陣営に来ないか!?」

 

 そう大声で告げるユリアナに対し、クルト達は警戒する。当然だろう、何か罠でもあるのではと思われてしまう。

 

「どうすんだ? もしかしたら…」

 

「いや、あれは多分…俺たちを迎え入れてくれる。あいつの目を見ろ、嘘は付いちゃいない。立派な指揮官だ…!」

 

「簡単に信用しろってか? 俺は反対だぜ!」

 

 クルトはユリアナの目を見て信頼できる者であると言ったが、上層部に見捨てられた他の要塞の兵士たちはそうでは無かった。

 互いに黙ったまま数分が経てば、ユリアナが先に口を開いて説得を試みる。

 

「貴様たち、その様子からして軍上層部より見捨てられたそうだな! 援軍が来ないのがその証拠だ! そんな軍や国家に貴様たちは従うのか!? 否、そんな党に忠誠に値するのか!? 忠誠するならば私を撃て! 生き残りたければ我らが陣営に来い! 選択は二つ、好きな方を選べ!」

 

 ユリアナの言葉に、クルト達はある思いがふと脳裏に浮かんだ。

 本気でNVAにベルリンを守る気持ちがあるなら、このノイエハーゲン要塞に頼もしい援軍を送り、将校たちを引き抜かなかったはずだ。送って来たのはたった二機の戦術機だけ。もはや自分等は切り捨てられたも同然だ。

 自分達が守るべきベルリン市民のことも考えたが、果たして本当に感謝しているかどうか怪しい。

 国家や党に対する忠誠心が揺らぎ始めたクルト達は、目の前の女が言う陣営とやらに入った方がマシであると思い始める。幸い、ここには自分等を監視する政治将校は居ない。独房所で死んだか、同盟兵に殺されたのだろう。

 彼らがワルキューレの軍門に下ろうとする判断を決定づけたのは、ある女兵士が言った言葉であった。

 

「私、もう帰る場所なんて無いからあの人達の言う陣営に入った方が良いと思う」

 

「おい、なに言ってる? 俺たち敵前逃亡罪で死刑だぞ!」

 

「なに言ってんだ。ここには政治将校も党のクソ野郎共も居ねぇよ。俺はあの女の言葉に従うぜ」

 

「…みんな」

 

 まだ迷いのある者は反対したが、ワルキューレの軍門に下ろうと言う意見が多かったので、クルトはヴィヴィエンを見る。どうやら彼女もワルキューレの軍門に加わる口らしい。

 ここでBETAに殺されるのを待つより、ワルキューレに入った方が得策と判断したクルトは手にしているMPi―K突撃銃を棄て、ユリアナの前に出た。彼女の言葉を聞いて、クルトはこの世界に未練を棄てたようだ。他の者達も同様である。

 

「あんたに従おう。どうせ俺たちはもう死んでいることになっているからな。国や党、お偉いさん方の為に死ぬのはごめんだ。それにこんな世界に未練もねぇよ。新しい故郷を紹介してくれよ」

 

「それで良い。バズ! 彼らを迎え入れろ! それから撤収の準備だ! 軍本部へ通達! 精兵一個中隊分の現地補充が出来たと!」

 

 ユリアナはマリを捕らえられなかったが、代わりに精鋭の兵士一個中隊分を手に入れることに成功した。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。