シュヴァルツェスマーケン もう一人のアイリスディーナ 作:ダス・ライヒ
「数が多い!」
黒いガンダムが地上に現れる一時間ほど前、地球の衛星軌道上にワルキューレの追跡艦隊と共に居るジュリエッタは、圧倒的な物量で迫る連邦軍艦隊の迎撃に追われていた。連邦軍は圧倒的な物量によるゴリ押しで、損害に構わず前進して来る。幾ら叩いても、無限に湧き出る水の如く機動兵器が出て来る。
連邦や同盟対策の為に待機させていたM1アストレイ、高性能機MSのジンクスⅣやレギンレイズ、バルキリーのVF-25Aメサイア、VF-31Aカイロスでも対応に追われ、被弾する機が目立っている。
対する連邦軍はヘビーガンやGキャノン、シャベリン、ダガーL、ウィンダムと量産機ばかりだが、ATのスコープドック、PTの量産型ヒュッケバインMkⅡ、モビルアーマーのメビウス、戦闘機のセイバーフィッシュや大型戦闘機のロングソード級戦闘機、連邦製バルキリーなども投入され、数も多い。それに宇宙海軍のパイロットが乗っているのもあり、苦戦を強いられる。流石のF90ガンダムに乗るジュリエッタも、連携を取って攻撃して来る連邦軍機に手を焼いていた。
「鬱陶しい!」
叩いても出て来る敵機に、ジュリエッタは新たに機体の左腕に装備されたワイヤーアンカーを射出して高速で移動するメビウスを捕まえ、ビームライフルを乱射しながら向かって来るヘビーガンに向けて投げ付けた。
投げ付けられたMAを受けたヘビーガンは、メビウスに装備されたままの有線誘導式対艦ミサイルの爆発に飲まれて大破した。
『野郎、ガンダムに乗ってるからって調子に乗りやがって!』
『オハイオ小隊! あのガンダム野郎に集中砲火だ!!』
ストライクガンダムのエールパックを付け、鮫のようなマークを付けたウィンダムに乗るパイロットは、同じマークを付けた二機の僚機と共に、ジュリエッタのF90ガンダムに連携を取りながら攻撃する。
この攻撃をジュリエッタは避けるが、更にGキャノンやシャベリンの小隊規模による攻撃も加わり、反撃できず、避けるので必死になる。
「くっ、精鋭ですか…!」
敵が最初に戦ったUCA軍のパイロットよりえらく違う練度を誇るパイロットだと分かれば、ジュリエッタはショートランサーを放とうとするシャベリンに向け、アンカーを発射して捕まえる。
『馬鹿野郎が! わざわざ当たりに…っ!?』
捕まえたのを確認すれば、放たれたランサーを紙一重で躱し、一気に近付いてジュリアンソードを突き刺した。
『フォーメーションが!?』
『慌てるんじゃねぇ! 奴の思う…ぐぁ!』
あのシャベリンを倒せば、敵の動きは一瞬だけ乱れた。
この隙にジュリエッタは素早く手近な敵機Gキャノンを撃破し、続けざまに鮫のマークを付けたウィンダムの一機を撃破する。三機の友軍機を秒単位で撃破したジュリエッタのガンダムに対し、連邦宇宙海軍のパイロット達は動揺を覚える。
『乗っているのは、ニュータイプだってのか!?』
『どうする?』
『各小隊とも僚機をやられた! 今の状態で挑めば全滅だ! 後退して再編だ!』
『了解!』
このまま行けば全滅だと判断した隊長機は、直ぐに後退を選んで母艦へと帰投した。それに続いてか、追跡艦隊を攻撃していた連邦軍の部隊も後退していく、
「退いたか…」
敵が退いたことで、ジュリエッタは一息つこうとしたが、敵が休ませるわけが無く、次なる敵機の増援が無線機より報告される。
『各機へ通達! 敵降下部隊を確認! 降下地点はポーランド方面! 手の空いた部隊は直ちに対処してください!』
「っ!? あいつ等は囮! 直ぐに…!」
旗艦に居るオペレーターからの知らせで、直ぐにポーランド方面に降下しようとする連邦軍部隊の攻撃に向かおうとするが、連邦軍の第二陣が現れ、行く手を遮られる。
第二陣はジェガンJ型にドートレス、ストライクダガー、セイバーフィッシュにメビウス、スコープドックと言う余りにも性能の低い装備の部隊であったが、第一陣よりも数は多く、サラミス改級巡洋艦まで前に出て来る。
絶え間ない波状攻撃と、補給を満足に行えないワルキューレの追跡艦隊は疲弊する。
「これじゃあ押し潰される! 増援は!?」
『増援は二十分後に到着予定! それまで持ち堪えてください!』
「二十分も持ちそうにありませんって!」
ウジャウジャと出て来る連邦軍の艦載機やMSにMA、ATやPTにジュリエッタが増援はまだかと問うが、オペレーターは二十分持ち堪えろと返してくる。レーダーで表示しきれない数の敵機が殺到している。その数を相手に二十分は持たない。撃破されていく友軍機が目立ってきている。このままではジリ貧だ。
改めてジュリエッタは、連邦軍の恐ろしさをその身で理解した。圧倒的な物量でワルキューレの追跡艦隊が押される中、降下部隊は次々とポーランド方面へと降下してく。
降下部隊はガイアセイバーズのガレムソンが率いる第一MS連隊だ。連隊のMS全機は最新鋭機で編成されており、あの地球の人類の戦術機では太刀打ちできない。かくして、この世界の人類の行く末は、地上に居るマリたちに託された。
BETA集団をビーム砲で一掃した黒いガンダムに乗るのは、ガイアセイバーズの一員であるバズ・ガレムソンであった。
彼が駆るガンダムの名はネオガンダム。宇宙世紀の次世代ガンダムであり、小型の15m級のMSであるはずだが、全長が二倍の30m程となっており、全身の黒い塗装も合わさって悪魔らしさが浮き出ている。三日月のガンダムバルバトスルプスレクスに近い。
そんなガレムソンが乗るガンダムの出現に、同士討ちをしていたワルキューレのMS部隊は、戦闘を中止した。
『あ、あのガンダムは…!』
『れ、連邦か…!?』
その黒いガンダムに視線が集中する中、一機のジム寒冷地仕様がそれに近付く。ネオガンダムは連邦軍所属機だ。近付くジムに乗るのは下級兵士、捕虜となった連邦兵が乗っているのだろう。
『ゆ、友軍か…? 助けてくれ! 私はバルート・ハボン少将だ! 関ケ原戦線でワイルドキャットの攻勢で配下の部隊は壊滅、私は残った兵と共に投降した。それからは奴隷の如く戦わされている! 貴官が来たのは、きっと神の思し召し違いない! 早くこの地獄から私を解放してくれ!!』
『お、俺もだ!』
『助けてくれ! 家に帰りたい!』
乗っていた下級兵士は元将軍だったが、解放戦線に入ろうとしなかったため、兵や下士官と同じ扱いを受けている。これに釣られてか、元連邦軍の将兵達が乗る旧型機がネオガンダムに殺到する。
『貴様ら! 脱走する気か!? 敵前逃亡は即時死刑だ!!』
恐怖で従わせているメイソン騎士団のグレイズやレギンレイズは、持っているライフルでジム寒冷地仕様やリーオーを撃破するが、戦線崩壊は止まらない。
そんなかつては連邦軍の将兵だった下級兵士たちに対し、ガレムソンは無慈悲にビーム砲の砲口を向けた。
『いや、まさか生きておりましたとは…無事で何よりです。ですが、閣下を含め、貴方がたは皆、公式の記録では戦死認定されております。ですから閣下らは既に死人であり、公式には存在しないのです』
『な、何を言っている!? 私は現にこうして生きておるのだぞ! 助けるのが筋であろう!!』
砲口を向け、視認が口を喋るなと言わんばかりの事をガレムソンが言えば、下級兵士たちは怒りの声を上げる。
下級兵士たちとなった連邦兵たちを助けるなと毛頭も無いガレムソンは、怒鳴り声を上げてビーム砲のエネルギーをチャージする。
『煩い死体共だ! 敵に降伏し、忠誠心を忘れて尻尾を振る貴様らなんぞ、軍事法廷に賭けるまでも無いわ! わしが直々に裁いてくれる!』
『う、うわぁ!? や、止めろ! 俺たちは味方だぞ!!』
『止めろぉ! ワァァァ!!』
怒鳴り声と共に放たれた強力なビームで、必死に助けを請う今は下級兵士の連邦兵達は消し去られた。
それを見ていた他の下級兵士たちやワルキューレの将兵、メイソン騎士団の騎士たちは戦慄する。旧型機に乗るワルキューレのパイロットらは、今の装備では太刀打ちできぬと判断し、機体を放棄して次元転移で母艦に帰投した。
この即時判決を、随伴して降下して来たグルビーが咎める。
『ガレムソン大佐、これは流石にやり過ぎではないか? 奴らは裏切り者とは言え、戦う意志は見せず、投降して来た。法定の判断に任せれば良かろうって』
『フン、傭兵の分際で正規軍のやり方に文句をつけるか。金を貰っているのだろ? ならば口を挟むな!』
『なんとも横暴な佐官よ』
専用機に乗るグルビーに対し、ガレムソンは黙らせた後、無謀に自分に挑んで来る複数の赤いグレイズに標的を向ける。メイソン騎士団のMS隊だ。通常のグレイズやグレイズシルトが、様々な近接武器を持ってガレムソンのネオガンダムに挑む。
『雑魚共が! わざわざ死に来たか!』
ホバー移動で接近して来るグレイズに対し、ネオガンダムに乗るガレムソンはビーム砲を撃とうとチャージを始めた。
専用の120mmライフルやバズーカを持つグレイズにレギンレイズは、突撃する部隊の援護を始める。何発もの弾丸が命中するが、ネオガンダムの装甲には傷一つ付いていない。
『なんて重装甲だ!』
『接近戦で関節部をやるぞ! 援護を続けろ!!』
接近戦で関節部を狙うしかないと判断したメイソン騎士団は、接近戦を挑む部隊は接近し、援護射撃を行う部隊はそれを続ける。
『連隊長、迎撃できますが?』
『いらん。この程度の敵、わし一人で十分よ!』
控えているドートレスⅡやバリエント、空戦パックを付けたウィンダムに乗るパイロット達より、接近する敵機の迎撃をして良いかと言う問いに、ガレムソンは一機で十分と言ってから、先陣を切って斧を叩き込んで来るグレイズを左手で捕まえる。
『うぉ!?』
『いま助ける!』
捕まった友軍機を助けようと、他のグレイズやグレイズシルトが関節部に攻撃を仕掛けようとしたが、ビーム砲の砲身に弾き飛ばされる。捕まえたグレイズを地面に叩き付け、そのまま強く踏み付けて撃破する。
ナノラミネーター装甲を持つMSを踏み潰したネオガンダムに対し、騎士たちは戦慄し、恐れおののき始める。
『グレイズを踏み潰しただと!?』
『ナノラミネーター装甲だぞ!?』
『フン、幾らビームを弾く装甲とで、このネオガンダムの攻撃は防げんわ!』
起き上がって再び援護射撃や接近戦を挑むメイソン騎士団のMS隊に対し、ガレムソンはチャージが完了したビーム砲を、援護射撃を行うグレイズやレギンレイズの部隊に向けて放つ。
『うっ!? き、機体が! 溶ける…!?』
ビームに強い耐性を持つナノラミネーター装甲であるが、これ程の強力なビームを浴びせられては流石に持たない。ビームを受けたグレイズやレギンレイズは溶解し始める。
友軍機が溶かされたことに接近戦をする部隊は、仇討ちをするべくネオガンダムに挑む。
『グレイズが…! おのれ、よくも!』
近接攻撃を挑む騎士たちであるが、ビームを撃ち終えたネオガンダムは、砲口を手近なグレイズに向けて突き刺し、低出力の零距離射撃で撃破すれば、左手で二機目を殴り付け、ビームサーベルを突き刺して撃破する。
三機目を蹴り飛ばして、倒れた瞬間に胴体を強く踏み付け、機体が動かなくなったのを確認すれば、足を離して残っている残敵を調べる。
『古臭い敵機と赤いアホ共の処理は貴様らに任せる。捕虜はいらん。行け!』
『はっ! 全機、掃討戦だ! すべて平らげろ!』
残りの敵の排除を部下たちに任せれば、ガレムソンはマリが乗って居そうな機体を探した。
最新鋭機による下級兵士たちが乗る機動兵器の掃討戦が行われる中、グルビーは飛んでいるフリーダムガンダムを指差し、あれがマリだと知らせる。
『大佐、あのガンダムだ! あのガンダムにあの女が乗っている!』
『ほぅ、あのガンダムか…! どれ、試してみるか!』
様子を見て、ガレムソンのネオガンダムの弱点を探していたマリであったが、グルビーに見付かっており、既に攻撃が始まろうとしていた。
先に攻撃したのは、仇討ちに燃えるグルビーだ。ネオガンダムがビーム砲で攻撃する前に、グルビーの大型機動兵器が搭載火器全てを撃ちまくる。
『あの女をやるのは、このグルビーだ!』
「馬鹿が来た!」
凄まじい弾幕をマリは軽やかに避け、時に避けながら反撃するが、狙いが定まらない。そればかりか、ガレムソンが乗るネオガンダムまでが加わる。
少し掠ったが、戦闘にも機動にも何の支障も無いので、避けながら近付いてやろうとした。だが、グルビー旅団の機動兵器までやって来る。
『旅団長! 我らにも!』
『止せ! お前たちでは…!』
前に出て来た三機の部下たちに対し、グルビーは止めるが、案の定、ビームサーベルで切り裂かれて全滅した。
グルビー旅団が装備している全ての機動兵器は、ナノラミネーター装甲が施されていたようだが、マリは関節部を斬ったのだ。通常、あの僅かな時間で斬れるかと思うが、マリの反射神経は、常人どころかボクサーすら逸脱している。そんな人間離れした彼女こそ、出来るのだ。
『畜生! よくも!!』
『止せ、前に出るな!』
『これがあの女の実力か』
グルビーの部下たちがやられていく様を見て、マリの実力が分かったガレムソンは、弱点を探すため、仇を取ろうと前に出る部下たちを敢えて止めない。
『気持ちは分かる! しかしいたずらに突っ込んでも死ぬだけだぞ!』
部下を止めるべく、グルビーが必死に静止する中、マリはグルビーの戦士としての冷静さを奪うべく、部下たちに襲い掛かる。
地面をビームで撃って行きを蒸発させた目晦ましを作り、その間にマルチロックオンをして、グルビーの部下たちが乗る機動兵器を出来る限り収める。全て収めれば敵が動く前に放ち、全機にダメージを与える。ナノラミネーター装甲の為、撃破には至らないが、混乱している間に一気にサーベルで切り裂いて撃破していく。
『りょ、旅団長! ウワァァァ!!』
『これ以上はやらせるか!!』
味方が撃破されていく中、激昂したグルビーが向かって来るが、大振りの斧を振り下ろそうとした瞬間、マリは離脱しようとする旅団の機動兵器を捕まえ、改造され、原形を留めない大型機動兵器の前に出す。
『ぬっ!? 卑怯な!』
『旅団長! やってください! 覚悟は出来ています!!』
自分事やるように告げる部下であるが、グルビーは迂闊に手が出せない。
まだ動く部下の機体が、マリのフリーダムガンダムの背後から襲い掛かろうとするも、彼女は来ることが分かっていたかの如く、背後から迫る敵機のシールドを突き刺し、シールドに蹴りを入れて貫通するまで押し込み、完全に無力化させる。更には盾にしていたグルビーの部下の機動兵器をぶつけ、その機体に一斉射を行って大型機動兵器を撃破しようとした。
「効かない!?」
『ぬぅぅ…! もう許さん!!』
それでもグルビーの大型機動兵器を撃破できない上、そればかりか傷一つ付いていない。どんな装甲材質だろうか。気にはなるが、今は攻撃を避け、ジグムント等の援軍が来るまで持ち堪えるしかない。
激昂したグルビーの大振りを躱しつつ、ガレムソンのネオガンダムにも警戒する。おそらく手の内を知って、こちらが消耗したところで仕掛けてくる腹だろう。マリはそう見抜いて、攻撃を躱して狙いを定めさせないように動き回る。
『私を忘れて貰っては困る!!』
「あっ、居たんだ」
動き回って敵の攻撃を避ける中、ユリアナのガンダムエクシアが参入した。ガレムソンのMS隊が止めようとしていたが、長剣に切り捨てられる。
他にもメイソン騎士団の残りや隊長機も居た。騎士たちもまた、連邦軍のMS隊を撃破しながらガレムソンの元へ突撃する。
『まだ残っていたのか。あいつ等め、この程度も始末できんか!』
自分の部下たちが残敵の掃討も出来ないことに腹を立てつつ、ガレムソンはメイソン騎士団の残りと交戦を始める。その中には、追跡部隊の隊長機であるグレイズリッターも含まれていた。
グルビーの集中砲火を回避するマリは、ドートレスⅡを切り裂いたユリアナのガンダムエクシアに合流する。直接無線をするため、マリは周りの敵機を撃破してから、機体の左腕をエクシアの右肩に触れる。
『何のつもりだ!?』
「私に死なれちゃ困るんでしょ? まずはあの魔改造機、やるわよ!」
『何を勝手に!? ちっ、やるしかないようだな!』
勝手にグルビーを倒そうと言って、こっちの言い分も聞かずに魔改造機に攻撃を仕掛けるマリに対し、ユリアナは従ってターゲットであるはずの彼女と連携を取る。
自分を狙っている女なのに、攻撃は引き付けてくれるので、ユリアナはマリがグルビーからの攻撃を引き付けている間に接近する。
『隊長! あの緑の粒子のガンダムはお任せを!』
『任せた! この女はわしがやる! 連邦などにやらせん!!』
『そう簡単には行かぬか…!』
まだ撤収していない部下たちは、マリへの攻撃に夢中なグルビーをフォローするべく、部下たちはユリアナを阻み始める。
連邦軍機には手間取っていたが、改造し過ぎてバランスの悪いグルビー旅団の機動兵器は、ユリアナ専用にチューンされたガンダムエクシアには敵わず、あっさりと斬り捨てられる。時には背中にマウントされたビームサーベルを突き刺し、立ち向かう敵機を無力化していく。
自分に立ち向かって来た全機を何とか仕留めれば、巨大なグルビーの魔改造機に接近して、長剣をマリのフリーダムガンダムを撃ち落とすのに躍起になっている魔改造機の胴体に突き刺そうとした。
『っ!? 奴は囮か!!』
『気付かれた!?』
だが、相手は歴戦練磨の傭兵。
懐から近付いてくる敵の存在を、戦場を渡り歩いてきた長年の感で気付き、機体に過剰なまでに搭載されたサブアームをユリアナのガンダムエクシアに向けて振り下ろす。
その数は十本。十本の手に握られた武器はどれも近接用の武器が握られている。あと十本の手があり、それにはマリのフリーダムを撃ち落とす為の射撃用の武器が握られていた。十本の武器を叩き込まれたユリアナのガンダムは回避が間に合わず、地面に叩き付けられ、右手に握られていた長剣が離れて飛んだ。
『まさか敵と共闘するとは…! 理解できん奴! だが、これで奴も…! うっ!?』
ユリアナのガンダムエクシアを仕留め、邪魔物は居なくなったと判断したグルビーであったが、マリはその一瞬の隙を逃さず、関節部にビームサーベルを突き刺した。動力部に突き刺された所為か、グルビーの魔改造機の両腕が動けなくなる。
『彼奴め、動力部を狙うとは! ぬぁ!!』
動力部を突き刺されたグルビーは、まだ動くサブアームでマリのフリーダムを振り払い、地面に叩き付けることに成功したが、叩き付けた場所はエクシアの長剣が突き刺さっている場所だ。これが彼の命取りとなった。
直ぐにマリは長剣を見付け、操縦桿を動かして右手に長剣を握らせ、引き抜いてグルビーの魔改造機に斬り掛かる。二本のビームサーベルは突き刺したままだ。
サブアームの弾幕を躱して懐に近付けば、振るわれる魔改造機のサブアームを切り裂き、腰のレールガンとウィングのビーム砲を間近で撃ち込んで装甲の一部をへこませる。そこへ長剣を突き刺し、奥深くまで突き刺す。
『なっ!? き、機体が動かない! やられたのか!? 動けぃ!!』
「まだ生きてるの!? なら!」
機体が大き過ぎるためか、撃破には至らず、機能停止した程度であった。乗っているグルビーは、機体を必死に動かそうとしていた。
ならば、徹底的に全ての火力をぶつけるまでだ。
そう思ったマリは、装甲坂を切り裂いてから一定の距離を取り、フレームを露出状態にすれば、そこへフルバーストを叩き込もうとする。
自分のボスを守ろうと、グルビーの部下たちが必死に止めようとするが、戦闘不能となったエクシアに乗るユリアナが指示を出しているのか、レイリィの砲撃で阻まれる。流石にナノラミネーター装甲は機械部には施されておらず、圧倒的な火力を撃ち込まれたグルビーの魔改造機は誘爆し始める。
『機体が…! このグルビー、ただでは死なんぞ!!』
ご自慢の魔改造機が爆発する中、グルビーは脱出装置を起動させたのか、それを使って機体より脱出した。
『グルビー団長を守れ!!』
撃ち落としてやろうかと思ったが、砲撃に晒されながらの部下たちの決死の援護攻撃に遭い、被弾して雪原に足を着けた。
部下たちはそのままマリを討ち取ることが出来たが、レイリィの砲撃に晒されていた所為か、撤退を選んでこの場から離脱した。フリーダムガンダムの最大火力を撃ち込まれたグルビーの魔改造機は、遂に爆発する。一体、どんな動力源を使っていたか分からないが、原形を留めない程に吹き飛んだので、分からず仕舞いだ。
「やっと終わった…!」
しつこいグルビーを殺し損ねたが、魔改造機の撃破には成功した。そう安堵するマリであったが、まだガレムソンのネオガンダムが残っていた。
『中々の高性能なガンダムだな…! だが、もう限界と見える…! 後は赤子の手をひねるより簡単よ!』
どうやら共倒れになるのを見計らっていたようだ。ガレムソンにはメイソン騎士団のグレイズやレギンレイズを中心としたMS隊が挑んだが、全滅していた。まだ動いている隊長機のグレイズリッターが居たが、友軍機が持っていた槍を胴体に突き刺されて完全に無力化される。
榴弾砲による砲撃は続いているようだが、さっきから着弾する榴弾の数が減っている。おそらく、持ち込んで来た榴弾のストックが無くなってきているのだろう。
万事休すの状態だ。
『傭兵にしては、大分持った物だ。まさかここまで楽をさせてくれるとは。報酬を払ってやりたいくらいだ!』
「あんたなんて、私が万全だったら余裕なのに…!」
『負け惜しみを! そのガンダムはもう死に体では無いか! 今ここでわしがとどめを刺してくれる! まぁ、貴様は不死身だから生きているが、アメーバ状態! 瓶の中に入れ込んで持ち帰れば良い話よ!』
ガレムソンはここまで楽をさせてくれたグルビーに対し、報酬を支払いたいと言えば、マリにトドメを差しに向かう。それでも強がるマリに、ガレムソンは悪足掻きと表して、ビーム砲を向ける。
マリにはまだライガー・ゼロが残されているが、ガレムソンのネオガンダムにどれだけ通じるか分からない。しかもガレムソンは、メイソン騎士団の騎士たちを全滅させる強者だ。機体の性能差もあって、この場で勝てる者は居ないだろう。
ジグムント等の増援は恐らく間に合わない。中隊が向かった方向にカメラと集音性マイクを向ければ、戦闘音が聞こえて来る。向こうにも連邦軍の部隊が来ているようだ。
『目覚めた先は、おそらく実験棟の中であろうな。では、それまで眠るが良い!!』
「ここで死ぬのか…! 私は…!」
ビームのチャージが完了し、発射される間際で、大破した機体より這い出たユリアナは、死を覚悟した。
砲口からピンク色の高出力のビームが発射される直前、上空よりビームがネオガンダムに向けて飛んでくる。直ぐに気付いたガレムソンは、ビームを撃つのを止めてビームを躱す。
『な、何者だ!?』
即刻チャージ済みのビームを、攻撃が来た方向へと向けて撃ったが、撃破どころか当たらなかった。
「あ、あの機体は、アストレア…? それにノワール、アスタロト、グリープまで…!」
ユリアナは上空より現れ、ガレムソンを攻撃した四機のガンダムを見て、それぞれの名を呟いた。
赤いのはガンダムアストレアで、黒いガンダムはストライクノワール、飛行機能を持たないガンダムがアスタロト、ビームランサーを持っているのがガンダムグリープだ。そんな四機のガンダムを見て、ガレムソンは思わず息を呑み、何者かと問い詰める。
『が、ガンダム!? それも四機も! 何所の馬鹿だ!?』
『あぎゃ! 馬鹿だってェ…? お前をぶっ殺しに来た死神だァ…! [[rb:宇宙 > そら]]に居た核攻撃部隊は全滅させたぜ、このハゲ!』
『なに、キリングの艦隊を全滅させただと!? フン、ハッタリを! たかが四機で出来るものか!』
『ここに俺らが居るのが事実だァ。ワルキューレの艦隊を襲ってる奴らも、今頃は敗走してるだろうなァ。あぎゃぎゃ!』
ガレムソンの問いに答えたのは、不気味な笑い声を上げるアストレアのパイロットだ。艦隊はキリングの事だろうが、どうやら核攻撃をエルランとガレムソンに黙って準備していたようだ。そこをこの四機のガンダムに壊滅させられたのだろう。
これをハッタリと鼻で笑うガレムソンに対し、不気味な笑い声を上げながら自分等が居る事がその証拠だと言う。それにワルキューレの追跡艦隊を襲撃している連邦軍の艦隊にも、四機のガンダムの仲間が来ているようで、今頃は連邦軍の艦隊は撤退している頃だろうと笑いながら告げる。
「なに、この笑い声…?」
四機のガンダムの救援は嬉しいが、アストレアに乗るパイロットの笑い声に、マリは恐怖を覚える。ガレムソンもその笑い声に嫌悪感を覚えていたのか、四機のガンダムに攻撃を始める。
『気持ちの悪い笑い声を上げよって! その笑い声を、二度と出来んようにしてくれるわ!!』
『やるのかぁ、ハゲ! 良いぜ、掛かって来いよォ!!』
向かって来るガレムソンのネオガンダムに対し、アストレアのパイロット、フォン・スパークは挑発して他の三機のガンダムと共に迎え撃った。