シュヴァルツェスマーケン もう一人のアイリスディーナ   作:ダス・ライヒ

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これ、大丈夫っすかね?


新たなる刺客

 戦局が安定した後、フランケンシュタイン号に戻った一同は、NVAの派遣軍が本国へ撤収したとの情報を得た。

 

「なんで撤収するんだ? ワルキューレがあれだけ滅多やたらにダインスレイブやらナパーム弾をぶち込んだのに。何があったんだ?」

 

「おそらく別の戦線でBETAの攻勢が始まったんだろう。北欧か南部の辺りだ。作戦は西側のNATO軍と米軍、ソ連軍主体で続行される。東側の殆どは祖国防衛のために本国に撤収だ」

 

「まぁ、あの状況じゃ西側だけで十分ね」

 

 ジークフリートは東側が撤退したことに疑問に思えば、ジグムントは別の戦線でBETAの攻勢が始まったと答える。ジークリンデはポーランドの状況を見て、西側の軍だけで十分だと口にする。

 彼女の言う通り、自分等とワルキューレのおかげか、海王星作戦は順調に進んでいる。もっとも、彼らは事の顛末を知っているので、今は本国に戻って祖国防衛戦線に編入されたシュヴァルツェ・マルケンをどう守るかの議題に入る。

 

「では、勘違いして第666中隊に襲い掛かる馬鹿共にどう対処するかだ」

 

 議題に入ったジグムントは、現在いるミーティングルームの中央に置かれた机の上に地図を置き、ドイツの首都であるベルリンのゼーロウ高地に指差した。

 

「ゼーロウ高地じゃねぇか。そこがどうしたってんだ?」

 

「どうやらこの世界でも、ゼーロウ高地の戦いが行われるようだ。敵は第1白ロシア方面軍や第1ウクライナ方面軍では無いがな。それでも、ソ連軍が投入した兵力以上のBETAの大群が押し寄せる。対するNVAだが、中央軍集団や第9軍の無いヴァイセルク軍集団のみと言った戦力だ」

 

 ジークフリートの問いに、ジグムントは第二次世界大戦末期のゼーロウ高地の戦いに準えて、ゼーロウ高地の状況を答えた。

 それと同時に、連邦軍や同盟軍、あるいはワルキューレを初めとした異世界の勢力による介入を懸念する。

 

「それはさて置き、我々が戦うのはBETAでは無く、我々と同じイレギュラー達だ。奴らはどんな兵器を使って来るかは不明だ。ワルキューレの方は空気を読んでくれるが、連邦や同盟の二大勢力はなりふり構わずに最新鋭兵器を惜しみなく投入して来る。他の非正規軍やならず者は特に。その為、ジェスタ以下の機動兵器で対処する」

 

「またジェスタか。ウィンダム使っていいか? あれなら大丈夫だろう」

 

「あぁ。お前が撃墜されなければ」

 

 自分等と同じイレギュラーに対しては、ジェスタ以上の機動兵器を持って対処すると言えば、またジェスタを使うジグムントに対し、ジークフリートは鹵獲したウィンダムを使っていいかと問う。

 これに撃墜されないくらいの実力なら、乗っていいとジグムントが言えば、ジークフリートは頭を掻いた。

 ジークフリートはジェスタの性能の限界に嫌気が差して言ったことだが、ジークリンデはウィンダムでも十分にあの世界に影響することが無いので、その意見に賛同した。

 

「ウィンダムなら、問題ないんじゃない? 彼らも何度も撃墜されているのを見てるから」

 

「ふむ、一理あるな。幸い、ウィンダムは履いて捨てる程の在庫がある。専用のジェットストライカーの再生も十分に終わった。光線級の対空射撃に注意していれば、連邦や同盟に十分対処できるな」

 

「へっ、やったぜ」

 

 この世界の住人であるアイリスディーナ等は、ウィンダムが何度も撃墜されているのを目撃しているので、対した性能が無いと判断しているだろうと思って、ジグムントは当てにならないはずのジークフリートの案を採用した。

 性能の限界が近いジェスタよりも、性能が二大勢力の現行機以上で、履いて捨てるくらいはあるウィンダムを使った方が良いのだ。ジェガンもあるが、売却用にしておく。

 ウィンダムに決定したことで、次なる議題であるシュヴァルツェ・マルケンの護衛に入ったが、肝心のマリの姿が何所にもない。

 

「次は第666中隊の護衛だが…」

 

「マスターはどこ行ったんだ? 居ないと何にもならねぇぞ」

 

「ミカルは知ってる?」

 

 ジークフリートがマリの居ないことを言えば、ジークリンデはミカルに何所へ行ったのかを問う。これにミカルは無言で知らないとジェスチャーを取る。

 ジグムントは大凡の行き場所は大体わかるので、マリが居るとされるのはシュヴァルツェ・マルケンの駐屯基地であると告げる。

 

「大体察しが付く。おそらく第666中隊の駐屯地だ」

 

「あぁ、確かに」

 

「あっ? 何の話だ?」

 

「大体想像がつくだろう」

 

 マリの行き先が第666戦術機中隊の基地であるとジグムントが言えば、共にあの場にジークリンデは直ぐに理解する。知らないジークフリートは、何のことかと問えば、ジグムントは大体の想像ができるだろうと言えば、彼は納得した。

 

 

 

 マリがシュヴァルツェ・マルケンの基地に行っている頃、損害を負ったユリアナの師団に代わり、新たな追跡部隊が彼女らの居る世界に現れた。

 規模は五十隻以上の宇宙艦隊であり、連邦艦隊との艦隊戦で傷付いた追跡艦隊の旗艦に、新しい追跡艦隊の提督が乗艦して来る。これを、包帯を巻いたユリアナと師団の幹部らが出迎えた。

 して、新たな追跡艦隊の提督は、白髪に丸っこい眉と言う平安貴族のような女性だ。だが、着ているのは着物では無く、派手な軍服で、腰に日本刀を帯刀すると言った女武者だ。金髪の男女で編成された同じく派手な軍服に身を包んだ親衛隊と共に、連絡艇から降りて来る。

 

「出迎えご苦労。貴官らに代わり、女狐の追跡の任を賜ったカルタ・イシューである!」

 

 いきなり挨拶を交わしたカルタに対し、ユリアナたちは驚き、数名がざわつき始めた。

 そんな奇抜な女武者は敬礼しているユリアナに近付き、転属命令の内容が書かれた書類を渡す。

 

「貴官らの機甲師団の転属先だ。そこでゆっくりと再編に励むが良い」

 

「命令書、受理しました。まだ一戦しか交えておりませんが、マリ・ヴァセレートは油断ならない女です。勝てるかどうかも怪しいし、それに彼女を狙う勢力が多い。臨機応変で柔軟な対応が必要です」

 

「警告ご苦労。だが、このカルタ・イシューが来たからには、あのマリおバカさんって言う女狐は檻の中も同然。士官学校を卒業することなく死んだ貴殿では、荷が重すぎたようだな」

 

「…っ!」

 

 マリはただ者では無く、倒せるかどうか怪しいと警告するユリアナに対し、彼女の実力を見たことも無いカルタは、生前のユリアナが士官学校を卒業もせずに死んだことを理由に失敗したと煽る。

 それが癪に障ったユリアナは、思わず腰のホルスターにある自動拳銃を引き抜こうとしたが、その煽られて撮った迂闊な行動をカルタに笑われる。

 

「フン、やはり小娘であったが。私が剣を抜くのが先か、貴殿が拳銃を抜くのが先かの決闘でもするか? だが、憲兵に見られている。再編の地で頭を冷やすと良い。では、帰るぞ!」

 

「…クソッ!」

 

 更に愚弄されたユリアナは、母艦へ連絡艇で帰って行くカルタに苛立ち、被っている帽子を床に投げつけた。

 新たな刺客、カルタ・イシューの追跡の手が、マリに伸びつつあった。ユリアナは配下の師団と共に再編を行うためにこの世界から撤収したが、ジュリエッタを初めとした一部の部隊は、カルタの指揮下に入り、引き続きマリの追跡任務を続行した。

 

 

 

 一方で、新たな刺客が来たことも知らず、マリはシュヴァルツェ・マルケンの駐屯基地であるペーゼーバー基地の付近にカマクラを魔法で作り、その中で温かい防寒着で身を固め、呑気に温かい紅茶を啜っていた。

 

「まだ帰ってこないかな」

 

 時より基地の方を見て、ベルリンに向かったアイリスディーナ等が帰ってこないか双眼鏡で見ていたが、まだ帰ってこない様子だ。帰ってこないと分かれば、再び紅茶を嗜み、机の上に置いてある自分で作ったクッキーを上品に口にした。

 連絡機であるヘリのローター音が聞こえると、直ぐにマリは外に出て双眼鏡で帰ってきたことを確認する。煩い政治将校であるグレーテルの姿が無い事から、彼女は本部に戻ったようだ。状況が落ち着くまで、マリは残っている紅茶を飲み干し、暫くしてから自分が指定した場所へ足を運ぶ。

 

「?」

 

 そんな中、周囲を警戒しながらリィズの姿を見たマリは、自分の姿を消す魔法を使って彼女の背後へ近付こうとする。

 どうやら自分のボスである国家保安省に、密談場所を探って来いと言われて基地の周辺をうろついているようだ。防寒着を羽織って密談に使えそうな廃墟を探し回るリィズの背後からマリは近付いて目隠しを行い、子供のように問いかける。

 

「だーれだ?」

 

「えっ!? まさか…あのお姉さん…!?」

 

「正解!」

 

 近付いて来たマリに、リィズが二年前の事を思い出せば、彼女は姿を現して自分だと答える。

 

「な、なんでここに…!? まさか…!」

 

「まぁ、あの時は言われてやったことだけど。それより、ここで何してるの?」

 

 まさかここで再会するとは思ってもみなかったリィズは、マリの事を神が自分を救いに天より使わした者、即ち天使であると思ってしまう。

 天使の前では何もかもお見通しだと思っているのか、リィズは洗い浚いの事をマリに話す。

 

「私の上司であるベアトリクス・ブレーメ少佐より命令された通り、アイリスディーナ・ベルンハルト等が使う密談場所を見付けろと命令されて探索しています。天使様」

 

「天使様…? へぇ、命令されてやってるの。命欲しさに?」

 

「はい。私は天使様に生かされて以降、彼女の元で働いております。亡命しようとした私には、これくらいの事をしなければ生きていけません。私は命欲しさに、命令で国家の敵とされた人を幾人も殺めてしまいました。何人かの男と寝たことがあります。天使様、私は天国へ行けますか?」

 

 マリを完全に天使だと思っているリィズは国家保安省の機密を洗い浚い話した後、急に懺悔をし始める。

 それを聞いていたマリは、少々の同情を覚えたが、自分の苦い経験や同様の経験をした少女や女性たちの事を思い出し、自分が先に処女を取ったことに、何を考えているのか誇らしく思う。常人には一切できぬ理解できぬ感情だ。

 

「許すわ。言われてやった事でしょ? 全ての罪は国家保安省、シュタージの上層部に科すわ。同じ目を貴女の上司に遭わせようかしら?」

 

「あ、ありがとうございます! それと、これは大丈夫なんでしょうか? 私は義兄であるテオドール・エーベルバッハに恋心を抱いております。いくら血が繋がっていなくとも、これは大丈夫ですか? 天使様」

 

 こんな事を考えているマリを天使だと思っているリィズを、許した。更に義兄であるテオドール・エーベルバッハの事を愛してしまったことまで告白する。

 処女を捧げた自分では無く、自分が気に食わないテオドールに恋心を抱いたリィズに対し、マリは今まで処女を奪って来た女性たちと数日ほどしか持たなかった、或いは初夜で終わった、身体だけの関係に留まった事を思い出した。

 貴女もそうなの?

 そう口には出さず、自分が悪かったことを薄々理解して、リィズの事を諦めた。もっとも、マリにはルリが居たからこそ諦めた事だが。

 

「まぁ、血が繋がってないから良いんじゃないの? それで、離したくないの、貴方は?」

 

「はい、お義兄ちゃんを私に留める方法はありませんか?」

 

「留めたい? 何故?」

 

「…お義兄ちゃんの好みであるアイリスディーナ・ベルンハルトが居ますから…あぁ、貴女とソックリな人です、天使様。最初見た時、貴女様と思いましたが、色々と大きいので別人と分かりました」

 

「えぇ、そうなの」

 

 リィズの告白で、マリはテオドールが自分を見る目がやや好意的だった理由が分かった。

 どうやらテオドールは金髪碧眼、ふくよかな女性が好みの様だ。リィズが洗い浚い話したことで、どんな目に遭わせてやろうかと思ったマリであったが、後回しにして、彼女のどうテオドールを留めておく方法を教える。

 

「分かったわ。その方法をお教えしましょう。来て」

 

「…はい」

 

 方法を教えるべく、マリはリィズについてくるように伝えた。少々の迷いがあったリィズであるが、天使であるマリなら上司に対する言い訳を考えてくれると思い、彼女のあとに続いた。

 来たのはマリが待つために拵えたカマクラ。二人以上が入れるほど広く作られている。初めてカマクラを見たリィズは驚き、これが何なのかを問う。

 

「あの、これって…?」

 

「カマクラよ。日本の東北で雪の時に作る雪の家なの。中は温かいわよ」

 

「日本の家なんだ…」

 

 マリの説明で、リィズはカマクラを日本の家の一種と捉えたようだ。

 そんな彼女に案内されたカマクラの中は意外と暖かく、人が一人、それも若い女性が作ったとは思えない程に広かった。もっとも、マリが魔法で作り上げた物だが、リィズはまるで小屋の中に居るような錯覚を覚える。

 

「小屋みたい…」

 

「まぁ、ちょっと魔法とかそう言うのを使って作ってるけど」

 

「魔法を空想じゃ無かったんだ…」

 

 正直にマリが魔法で作ったと言えば、リィズは空想の物である魔法が本当に実在したと思い始める。もっとも、マリからすれば西暦70年代の科学力で月に移住出来て、戦術機と言うロボット兵器を動いている時点で魔法としか思えないが。

 そんなリィズに、マリはベッドを指差して男を虜にする術の練習をしないのかと問う。

 

「でっ、練習するの? しないの?」

 

「…します! 私、お義兄ちゃんを取られたくない!」

 

「(可愛い…!)」

 

 この時のマリから見たリィズは、とても可愛く見えただろう。

 そのまま二人は互いの衣服、下着も全て脱ぎ、互いの唇を貪り合い、舌を絡ませた後、ベッドの上に横たわり、行為に及んだ。

 

 

 

 呑気と言うべきか、マリがリィズと性行為に及んでいる頃、衛星軌道上にて、新たな追跡者、カルタ・イシューは自身で編成した艦隊を率いて、再び地球へ攻撃を掛けようとする同盟軍艦隊に奇襲を仕掛けようとしていた。

 カルタの艦隊は騎士団が殆ど独占しているハーフビーク級戦艦を中心に編成されており、後方には軽空母を初めとした空母群と護衛艦群が控えている。

 

「敵艦隊、射程距離に捕捉しました!」

 

「フン、密集隊形とは。まるでこちらに撃ってくださいと言っているような物ね」

 

 自身が乗艦する旗艦の艦橋にて、レーダー手の女性兵士から敵艦隊を射程距離に捉えたとの報告を受け、敵艦隊の隊形を見たカルタは、こちらに撃ってくださいと言わんばかりの隊形と見る。

 事実、同盟軍艦隊はマリが居ると言うか、アイリスディーナの基地に地上部隊へ降下させるための護衛隊形を取っている。未だにアイリスディーナを、マリだと思っているようだ。

 攻撃を受けることを敵は予想しているが、大口径の主砲を有する艦隊の攻撃には備えておらず、生前は高い練度を誇る艦隊を率いていたカルタからすれば、撃滅の機会である。数はカルタ艦隊より三倍の数であるが、殆どが降下部隊を輸送する輸送艦や降下艇なので、大口径の主砲を要する艦艇による艦隊攻撃を受ければ一溜りも無い。

 

「制宙権を取らずに降下とは! 実戦経験の無い宇宙兵に経験を積ませるには絶好の機会ね! 砲術長、主砲斉射! 弾種は対艦用徹甲弾! 僚艦は我がイシューが第一射後に艦砲射撃を敢行せよ!」

 

 カルタが指示を出せば、通信手の女性兵士は直ちに艦隊に命令を伝える。その間に照準が完了したと副官が報告すれば、カルタは一斉射を号令する。

 

「主砲、手近な敵艦に照準完了!」

 

「一斉射撃開始!」

 

 この号令と共に、カルタの艦隊は同盟軍の艦隊へ向けて一斉射撃を行う。

 大口径の主砲、それも貫通力が高い徹甲弾による一斉射だ。同盟軍の艦艇は次々と轟沈していく。まるで花火のようだ。カルタ艦隊が放った一斉射で、一気に同盟艦隊は大損害を被った。旗艦をたまたま撃沈したのか、敵艦隊は混乱し始める。

 

「敵艦隊、混乱しているようです。どうやら敵旗艦を撃沈したようですが」

 

「マグレ当たりね! これは運が良いわ! さぁ、そのまま撃滅よ! とにかく撃ちまくりなさい!」

 

「はっ。各艦、艦砲射撃を続行せよ!」

 

 大混乱に陥った敵艦隊に対し、カルタは喜んで艦砲射撃を続行する。この時、レーダー手は敵艦載機が接近していることを知らせた。

 

「レーダーに反応、我が艦隊に接近する機影アリ! 敵の艦載機かと思われます!」

 

「ちっ、どうやら付近に空母が潜んでいたようね。対空射撃! 弾幕を張りなさい! こっちの防空部隊の発進はどうなってるの?」

 

「現在、バルキリー隊が発艦準備中です」

 

「遅い! 堅牢堅固はどうしたの!? もう、こちらからMSを出しなさい! 早く!」

 

 敵艦載機部隊の接近に対し、後方の空母群が防空部隊の発進準備をしていると副官が答えれば、カルタは激怒して自分の艦からMSを出すように告げた。

 直ぐにスクランブルに備えて待機していたグレイズやグレイズリッターが発艦し、対艦装備で飛来して来る敵艦載機部隊に向かう。僚艦らも続々と発艦していく。

 敵の数は防空部隊より多かったが、練度は低いために次々と撃墜されていく。カルタの人選に狂いは無いようだ。グレイズを中心とした防空部隊が防衛隊形を取って迎撃していれば、敵艦載機部隊は勝手に自滅して、残りは母艦に退き始める。

 

「敵艦載機部隊、80パーセントを撃破! 撤退を開始!」

 

「フン、烏合の衆だわ。こんな敵を相手に退き際になるなんて」

 

 同盟軍の練度の低さに、カルタは先の慌てようは何処か、余裕を見せてこんな敵に押されているワルキューレに呆れ返った。

 だが、先の事は忘れておらず、自分の艦隊は再度の訓練が必要だと実感する。

 

「この艦隊戦が終わった後、再度訓練が必要なようね。完璧にしなければ、マリおバカさんは捕らえられないわ」

 

 自分の艦隊の練度の低さを痛感しつつ、カルタは敵艦隊が戦意を損失するまで攻撃を続けた。

 

 

 

 衛星軌道上で同盟軍艦隊が虐殺される中、待ち合わせの場所である廃教会へ現れたアイリスディーナに対し、マリは紅茶を熱い一口飲んでから、彼女の前に立った。

 ここへ呼び出したのは、密談でも無く、マリの単なる個人的な用である。

 

「一人?」

 

「あぁ、外を見張っている。凍え死なないか心配だが」

 

「…大丈夫、凍え死ぬほど低温じゃ無いわ。ショカ・コーラを食べてたら大丈夫。持たせてる?」

 

「持たせてる。ちなみに戦時教育の為、衛士は訓練を一部省いている」

 

「まっ、今の状況じゃそうなるわね」

 

 アイリスディーナが見張りに出させている部下たちが凍え死なないか心配だと口にすれば、マリは人が凍死するほどの気温では無いと答える。次にマリが身体を温めるための菓子は持たせているかと問えば、持たせていると答え、衛士は雪中訓練を省いているとも告げた。

 この惨状をアイリスディーナから聞いて、BETAに侵略されているなら仕方ないとマリは思う。前線は常に人手不足だ。敵の攻撃に備える為、補充は急がなければならない。

 

「それで、こんな外でするのか? 凍死するぞ」

 

「この教会の地下を温めてるわ。そこなら何時間でも…」

 

「…罰当たりな」

 

 マリがアイリスディーナを呼び出した用件とは、酷くどうでも良い性行為の要求であった。

 海王星作戦のレーザーヤークトの際、アイリスディーナはマリに協力を要請、その見返りとしてマリは性行為を条件に出し、無条件では決して従わないと返した。これにアイリスディーナは国家と自分の身体を天秤に掛ければ、後者の方が安いものと判断して条件を呑んだのだ。

 それを果たすために、アイリスディーナはマリの呼び出しに応じた。

 地下に降りれば、予め焚き火で部屋全体は温められ、防寒着が必要に無い程の温かさだ。

 幾ら廃墟とは言え、教会で性行為、それも同性同士。この社会主義国家の隠れ教徒であるアイリスディーナはマリに怒りを見せるが、当の彼女は祈っている神は助けてくれるのかと問う。

 

「神様は助けてくれるの? あんまり助けてくれる様子は見えないけど」

 

 この問いに対し、アイリスディーナは無言だ。マリはそんな彼女の機嫌でも取ったつもりか、ここは教会では無いと告げる。

 

「でもここは教会じゃないわ。神父もシスターも居ない、ただの廃墟よ。本物の教会はみんな西にある。教会に行ってお祈りしたいなら、早く統一する事ね」

 

「元よりそのつもりだ。でっ、何から始める?」

 

「えっ…?」

 

 教会に行きたいなら、東西に分かれたドイツを統一しろと告げるマリに対し、アイリスディーナは性行為の要求に応じた。

 次に上着を脱ぎ、ベッドに腰掛けるアイリスディーナは、何から始めれば良いとマリに聞いた。これにマリは驚く。

 

「あんた、セックス知らないの?」

 

「それは知っている。済まんが、社会主義国家でのフリーセックスは厳禁だ。恋人同士でも愛人でも無いのに、誰彼構わずやる奴は居ない。そんな奴は収容所送りだ。売春は法で禁止されているし、性に自由な西側じゃないんだぞ。一体、私を何だと思ってるんだ?」

 

 口を抑えて驚いた表情を見せるマリに対し、アイリスディーナは社会主義国家の人間だから自由に性行為をするのは御法度だと教えた。

 どうやらマリは、アイリスディーナが性に奔放な女だと思っていたようだ。同期に妖艶な美女であるベアトリクス・ブレーメが居るので、彼女と一緒に男遊びをしていると思っていた。

 翌々考えれば分かる事だが、アイリスディーナに対する嫉妬心の余り、自分が馬鹿にしている共産主義国の人間であることを忘れていたようだ。

 

「セフレ…」

 

「居ない。ついでに…恋人も…経験も、無い。接吻も無い」

 

「はっ…? そんな嫌らしい身体で、恋人も居ないしセフレも…経験なしの処女!?」

 

「そうだ、襲われたことも。シュタージの監視下でレイプする奴など居ない。愛人にもなったことも無いぞ」

 

 アイリスディーナがキスもしたことが無い処女であると顔を赤らめながら告白すれば、更にマリは驚いて両手で口を抑えて呆然とする。そんなマリの様子を、アイリスディーナは不思議がっていた。

 どうしたと思って聞こうとした瞬間、いきなりマリはアイリスディーナの唇を奪った。何の前振りも無しにキスして来たマリを、アイリスディーナは引き剥がして口を抑えた。

 

「…なにをする!?」

 

「本当に処女なんだ…」

 

 遊んでいそうな雰囲気のアイリスディーナの恥ずかしがる反応を見て、マリは本当に処女だと確信した。

 そんな彼女に対し、マリは自分の衣服のボタンを外し、自分の胸元を肌蹴させながらアイリスディーナに初めてのキスの感想を問う。

 

「初めてのキスの味は?」

 

「…柔らかかった」

 

「それだけ? ルリちゃんは柔らかくてあったかいって言ってたけど」

 

 味の感想を聞いてか、マリはアイリスディーナの横に腰を下ろし、もう一度彼女の唇を奪った。今度はかなり強引に、それも官能的に。舌を入れ込んで相手の舌と絡ませ、経験の少ない彼女を快楽の渦へと引きずり込む。

 二分以上続ければ、相手から唇を離す。余りに夢中になり過ぎたのか、アイリスディーナは息を荒げていた。

 

「ハァ、ハァ、ハァ…」

 

「どう、ヤバめのキスは? 濡れちゃった?」

 

 問いかけて来るマリに対し、顔を赤らめているアイリスディーナは無言で頷く。そんな彼女にマリは更に追い打ちをかけ、着ている衣服のボタンを素早く外し始める。一瞬にして上着やアンダーシャツも含めてボタンは全て外され、マリより大きめの豊満なバストを包む下着が露わになる。

 自分も大きいが、更に大きい胸を見たマリは嫉妬したのか、その胸になるのは何を食べればそうなるのかを問う。

 

「…なに食べればこんなに大きくなるの?」

 

「十三の時から急に大きくなり始めた」

 

 十代前半から大きくなり始めたと答えれば、マリが目を細めながらアイリスディーナの胸を直視した。このマリの表情がアイリスディーナに取っては童顔も相まって愛らしかったらしく、顔を赤らめて思わず頭頂部に利き手を添えて撫でてしまう。

 自分と同じ金色のマリの長い髪は、高級なシャンプーでも使用しているのか、肌触りも良くかなり艶やかだ。その美しい艶やかな長髪は、アイリスディーナが十代の頃に戻らない限り手に入らないだろう。

 母親のような優しい表情を見せ、自分の頭を撫でるアイリスディーナに対し、マリは自分が子ども扱いされていることを嫌がったのか、彼女の胸を掴む。

 

「子ども扱いしないでくれる?」

 

「いや、すまない…つい…あっ…!」

 

 マリの精神年齢が低い所為か、怒った表情も可愛く見えてしまった。見ているとこちらまで恥ずかしくなるのか、目を背けるアイリスディーナであるが、自分の胸を揉むマリの手がだんだんといやらしくなり、思わず声を上げてしまう。

 下着越しなのにここまで感じるとなれば、直で揉まれればどうなってしまうのだろうかとアイリスディーナは考える。そればかりか、マリに身体を許しても良いと思い始める。

 

「子ども扱いした罰。一生忘れられない初夜にするから」

 

 胸を揉むのを止めたマリは、自分に身を許し始めたアイリスディーナに自分を忘れられないようにすると宣言して、着ている全ての衣服を脱ぎ始めた。上半身に身に着けている物全てを脱ぎ、形の良い乳房を露わにすれば、身構えるアイリスディーナを押し倒し、覆い被さってから再び唇を奪う。

 また舌まで入れ込み、快楽に溺れさせながら器用に自分より大きめのアイリスディーナの豊満な胸を包んでいる下着まで外す。露わになった豊満なバストは、僅かな動きで揺れる。キスを止めたマリはやや妬みつつも、その憂さ晴らしをするように顔を埋める。

 大きな胸に顔を埋めながら下半身にまで手を伸ばし、ズボンを含める下着を器用に全て脱がした。

 

「どう、自分より下の女に脱がされる気分は?」

 

 身に着ける物全てを剥して完全に全裸になってベッドに横たわるアイリスディーナに対し、マリは勝ち誇った笑みを浮かべながらその敗北感はどんな物かを問う。

 今の彼女は子供臭いマリの問いなどよりも、早く続きをして欲しく、自分の性器に手を触れながら相手を挑発する。

 

「そんな事より、今は身体が疼いている。私も今はお前が欲しい。あの発言は嘘か?」

 

「…嘘じゃないわよ! 良いわ、望むならそうしてあげる! 私の事を忘れられないくらい激しくしてあげるわ!」

 

 妖艶な笑みを浮かべるアイリスディーナの挑発に乗ったマリはその気になったのか、自分のズボンや下着を数秒足らずで脱ぎ捨て、三度目のキスをするために唇に触れた。

 その後、アイリスディーナはマリに激しく抱かれ、忘れられない初体験となった。

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