シュヴァルツェスマーケン もう一人のアイリスディーナ   作:ダス・ライヒ

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シュヴァルツェスマーケンとの接触は、七話目からとなります。


序章
1979年のポーランドへ 前編


 あれから数カ月後、ルリの居場所を占い師の老婆より得たマリは、VF-31Fジークフリートを駆ってそこへ向かった。

 途中、各地でルリを探すように命じた元ナチスの超人兵士、ジグムント、ジークフリート、ジークリンデの三名と合流。他にも金か無理やり従わせた連邦や同盟の脱走兵、傭兵、マフィア、ごろつきなど、イマイチ信用できないミカルとリンダも合流した。

 

「やれやれ、僕の信用も落ちたな」

 

「だって、あんた行った後の所しか案内しないんだもの」

 

「そうかい。で、彼らはどうする?」

 

「用済みだから、解散。ほら、行って良いわよ」

 

 連邦軍の艦艇を襲撃して制圧し、そこで情報を照らし合わせ、確実にいま向かっている場所にルリが居ることを断定すれば、数合わせに集めた脱走兵と傭兵、マフィア、ごろつきなどは既に用済みなので、ここで解散命令を出した。彼らは何も言わずに帰って行く。

 だが、これが面倒な追手を招くことになる。その者達はマリに扱き使われたことに恨みを抱いており、それに金に目が眩んでおり、彼女を追っている勢力に通報したのだ。

 そうとは知らず、マリ一行は西暦1979年のポーランドへと向かった。

 

 

 

「標的確認! 西暦1979年の地球へ向かっている模様!」

 

「ガセネタかと思いきや、本当に居たかマリ・ヴァセレート! 通報者にはそれなりの報酬を約束させておけ!!」

 

 マリを発見したのは、宇宙軍の第9艦隊指揮官兼第51機甲師団名誉師団長であるイオク・クジャンだ。

 彼は私兵状態の第51機甲師団全戦力を動員し、同じく通報を受けて駆け付けた複数の宇宙軍や宇宙海軍の戦隊、海兵隊の航空二個大隊と共にマリ一行を全力で追跡する。

 

「標的、射程距離に入ります!」

 

「よーし、照準が合い次第、直ちに主砲発射! その後にMS隊を発艦させ、マリを捕らえる! かのマリ・ヴァセレートを捕らえるのはこのイオク・クジャンであるッ! 艦長、全速前進だッ!!」

 

『はい、イオク様!!』

 

 レーダー手がマリの乗っているVF-31Fに主砲の射程距離まで近付いたことを報告すれば、彼女を捕らえるのは自分だと豪語し、指示を飛ばす。

 艦長に全速前進を命じ、現在、乗艦している師団本部を兼ねている戦艦をマリに追い付けさせようとするが、他の宇宙軍や宇宙海軍の高速艇、護衛艦や駆逐艦に追い抜かれる。

 

「い、イオク様! 宇宙軍79戦隊と宇宙海軍14戦隊の護衛艦や駆逐艦、高速艇に追い抜かれております!!」

 

「おのれ、手柄を横取りする気か!? 急ぐのだ!!」

 

「無茶です!」

 

「搭載している高速艇を発艦させます!」

 

 部下からの報告でそれが分かれば、イオクは慌てて追い抜くようにと言うが、乗艦している戦艦は艦隊戦と空母の機能を兼ね備えた型であり、高速航行するような機能はついていない。

 それが無理なことを操舵手が言えば、艦長は搭載している高速艇を発艦させた。

 

『レフト1、2、直ちに発艦せよ! 遅れを取るな!!』

 

 ハンガーでアナウンスが響き渡る中、小型の連邦軍の高速艇に乗員が乗り込めば、直ぐに発艦してマリ一行の追跡に入る。

 追い抜いた宇宙海軍の護衛艦がマリ一行の宇宙船を射程距離に捉えていたのか、戦闘が行われていた。

 護衛艦に張り付いていたジェガンJ型は、固定具を解除してから1979年の地球へ向かう宇宙船に向けて攻撃を行う。

 

「14戦隊のMS隊、敵艦と交戦開始!」

 

「おのれ! 海軍は宇宙では無く海に居ろ!!」

 

 宇宙海軍の部隊が交戦を始めたことを知らせれば、イオクは海軍に対して怒りをぶつける。

 この後、次々と足の速い艦艇で編成された友軍部隊に追い抜かれていく。

 理由はイオクの第51機甲師団が重武装の数隻の戦艦と揚陸艦で編成されており、足の速い敵を追うには不向きな編成だ。第9艦隊より数人の艦長が自分の船と共に随伴しているようだが、旗艦を護衛するための艦艇ばかりであり、追跡には適していない。

 

「我が方、続々と友軍に追い抜かれていきます!」

 

「ぬぅ、偵察艇を持ってくるのだった!」

 

 味方に追い抜かれる報告を聞き、自分の艦隊から足の速い艦艇を持ってくるべきだったと後悔する。

 イオクを追い抜き、マリ一行に追い付いた連邦軍の部隊は、警告も無しにマリの仲間たちが乗る船に向けて発砲した。

 

 

 

『軍隊がいきなり発砲して来たぞ! あんたらは何をやったんだ!?』

 

『警告も無しに! どうやら君は連邦を怒らせたようだな!』

 

『連邦を怒らせたって!? 全く、近ごろの若いもんは! 直ぐに後先考えずに当たり散らす!!』

 

 イオクの追跡隊を追い抜き、手柄欲しさに襲って来た連邦軍に対し、宇宙船の船長である老人は何をやったと問えば、共に艦橋に居たミカルは連邦を怒らせたと答えた。

 事実、マリは自分の目的とその場の感情で連邦軍に幾度となく損害を与えて来た。同盟軍も然り、彼女は双方合わせて二個軍相当の被害を与えている。これで双方に追われないのがおかしい。

 

「あいつ等、簡単に裏切っちゃって」

 

『そこらの素人を使うのは反対だと言ったが。人海戦術に頼った結果がこれだ。ジークフリート、ジークリンデ、連中を迎撃するぞ! 機動兵器を操縦できる英霊も出すんだ。そして組み立てた機動兵器に乗せろ。宇宙船に張り付かせれば、砲台代わりになる。出来ないものは砲座に着かせろ』

 

 通報したのは自分が恐喝紛いで雇い入れた者達であると分かり、マリが怒りを覚える中、ジグムントは反対していたのに、結果が今の状態であると告げれば、ジークフリートとジークリンデに迎撃に出ると告げる。

 他に宇宙船に乗船している数十人の英霊にも、ジグムントは指示を出した。

 

『ヤヴォール! ストライクで迎撃に出る!』

 

『よし、俺は…MSかバルキリーがあるか?』

 

『あんたの? あんたのはまだ組み立ててないわ。取り敢えず、ジムⅡで我慢してちょうだい』

 

『じ、ジムだとッ!? このかっちょいい俺様がヤラレ王のジムだと!? なんで俺のVF-31Jを組み立ててねぇんだ!?』

 

『仕方ないじゃない! 向こうがばらして渡すから!』

 

 指示に応じ、ジークリンデがメガミ人の武装勢力から受け取ったストライクガンダムで出撃すると言えば、ジークフリートは自分用に買っていたとされるマリが乗っているVF-31系統の一つJ型は無いかとリンダに問う。

 だが、購入の際にばらした状態で受領しており、しかも組み立てていないと言うありさまだ。

 更にこの船で戦闘が可能な機動兵器は、既に時代遅れとなったMSのジムⅡくらいしか無い。これにジークフリートは怒りをぶつけるが、リンダは売った武装勢力が悪いと返す。

 

『ジークフリート! 何をしている!? 旧式とは言え、対空砲代わりにはなるだろう。早く搭乗しろ!』

 

『なんでお前はドラケンⅢでジークリンデはガンダムなんだよ!? 俺は…』

 

『ゴタゴタ言うな! 今は一機でも出すべき事態だ! 早く固定具を外して乗り込め!』

 

 旧式のジムⅡに乗りたがらないジークフリートに対し、ジグムントは早く乗るように伝える。

 この様子をマリは無線で聞く中、ジグムントは外に居る彼女に対しても指示を出す。彼女が乗るVF-31Fには、空間戦用のスーパーパックが装備されており、搭載しているミサイルポットは全弾装填済みである。

 スーパーパックの上位であるアーマードパックもあるが、残念ながらそれは宇宙船の中だ。

 

『我々が出撃する支援をしてもらいたい。頼めるか?』

 

「えぇ、敵がワンサカ来てるし。しっかり手伝ってもらわないと困るしね」

 

『頼んだぞ』

 

 ジグムントからの指示に応じれば、マリは後方の宇宙船に襲い掛かる連邦軍機に対し、ミニガンポッドによる機銃掃射を浴びせて一機を撃墜する。

 VF-31Fは今まで乗っていたVF-25Fとは勝手が違ったが、マリは数十分ほどで手足のように機体を動かすことに成功し、自分に向けてビームライフルを乱射する数機のジェガンに、VF-31系統の特徴であるマルチパーパスコンテナの収納されているビームガンポッドを撃ち込む。

 前を見て操縦しつつ、後方の敵を撃つと言うかなり難しい作業であり、一機を戦闘不能に陥れただけだった。

 

「やっぱりこれは出来ないわ」

 

 ファイター形態での後方の敵に対する攻撃は難しいと判断し、ガウォーク形態に変形させ、両腕のミニガンポッドと背部のコンテナのビームガンポッドによる掃射を浴びせ、撃ち漏らした数機のジェガンを撃破する。

 他に宇宙船に取り付いている連邦軍機を追い払えば、ジグムントとジークリンデが乗る機動兵器が出撃した。その後からジークフリートのジムⅡが出撃し、宇宙船に張り付いて対空砲代わりに宇宙船に近付いてくる敵機の迎撃に当たる。

 ジグムントが乗っている機体は反統合系の企業が作った可変戦闘機、Sv-262ドラケンⅢだ。ファイター形態は、スウェーデンの古いジェット戦闘機であるドラケンに似ている。性能はVF-31と五分かそれ以上であり、一瞬にして数機の連邦軍機が撃墜された。

 

『な、なんだあのドラケンみたいなのは!?』

 

『早過ぎる! さっきの前進翼のも段違いだ!』

 

 瞬く間に数機の友軍機が撃墜されたことで、連邦軍が混乱する中、ジグムントが駆るドラケンⅢの後より発進したストライクガンダムのビームライフルによってまた二機が撃墜される。

 

『あんな重装備なのに、なんでこんなに動けるんだ!?』

 

 ジークリンデが乗るストライクガンダムも、連邦兵等にとっては脅威であった。

 そのストライクガンダムのパックは、統合兵装ストライクパック、通称I.W.S.P.だ。

 このパックはストライクの三種を同時にした万能型兵装であり、先の惑星「織姫」でマリがストライクパック全部乗せよりある程度の重量は減っているが、それでも複雑な火器管制とバランスの悪さは相変わらずであり、実戦向きでは無い。

 これを扱いきれるのは、ナチスが全力で作り上げた三名の超人兵士一人であるジークリンデな物だ。

 彼女は次々と出て来る連邦軍機を、レールガンや単装砲、ガトリング砲で撃墜していく。

 

『くそっ、たかが三機に! あの二機の可変戦闘機は我が軍の可変戦闘機隊に当たらせろ! MS隊とPT隊はあのガンダムタイプの対処だ! あのオンボロ船の解体もやらせろ!!』

 

 せっかくコネで元帥まで昇進したイオクを追い抜いたのに、的のように味方が撃墜されていくのを見た追跡隊の指揮官は、連邦製の可変戦闘機にマリのVF-31FとジグムントのドラケンⅢの対処に当たらせ、主力であるMSとPTにジークリンデのストライクガンダムと、ミカルとリンダが乗る宇宙船の対処の命令を出す。

 この命令に応じ、ロシアの戦闘機であるSu-27に似た連邦製の可変戦闘機部隊が二機の高性能バルキリーに集団で襲い掛かるが、連邦のパイロット達は上手くバルキリーを乗りこなせていないのか、動く的のように撃ち落とされていくばかりだ。

 

『せ、性能が違い過ぎる! やっぱりバルキリーで連中と戦うなんて無理なんだ!!』

 

『こっちは最新鋭機だぞ!? 奴らの方が上なのか!?』

 

『死にたくねぇ! 俺は逃げるぞ!』

 

 次々と撃破される連邦のパイロットは、性能頼りのパイロットばかりなのか、撃墜される前に逃げ出す者まで続出した。

 機動兵器の一種とは言え、可変戦闘機同士での戦闘は完全にオリジナルの世界が作った二機のバルキリーが圧勝していた。連邦軍は数ばかりであって、パイロットの練度が低い所為であるが。

 だが、変形できない人型同士での戦闘は、マリ一行に不利であった。

 

『お、おい! 戻って来い! まるでハエに集られる肉の気分だぜ!』

 

『こっちも迎撃しているが、霧が無い!』

 

 ジークフリートからの救援の要請で、無数の連邦軍機に集られている宇宙船に駆け付けようとするジークリンデであるが、彼女の方にも連邦軍機が蠅のように集っており、救援には向かえない。

 

「雑魚の相手はあんたに任せたわ」

 

『なにっ!? 幾ら相手が雑魚でも、バルキリー二個大隊と数隻の戦闘艦の相手は! くっ!』

 

 機動兵器の肝心の補給源である宇宙船が破壊されてしまっては元も子もないので、マリは無数の敵機と数隻の高速艇の相手をジグムントに任せ、バトロイド形態で二機の連邦製バルキリーを両腕のコンバットナイフで撃破してから宇宙船の救出に向かった。

 バトロイド形態では間に合いそうも無いので、機体をファイター形態へ戻し、邪魔な敵機を撃破しながら救出に向かう。

 

『十時方向から敵機接近!』

 

『対空機銃かミサイルで叩き潰してしまえ!』

 

 進行方向に宇宙船を撃沈しようと、護衛艦が迫って来たが、彼女は操縦桿を動かして複数の対空ミサイルを軽やかに避け、雨あられの対空弾幕を一発も当たることなく避け切り、エンジン部に背部のコンテナに収納してあるガンポッドのビームを撃ち込む。

 発射されたビームは真っ直ぐ飛んでエンジン部に命中し、エンジンは暴走を始める。

 

『うわぁぁぁ!? 操舵不能!!』

 

『い、嫌だ! 死にたくない! 助けてくれぇ!!』

 

 エンジンが暴走した敵艦は、そのまま何処かへと飛んで行き、やがて轟沈した。

 敵艦を沈めたマリは、続々と出て来る敵を排除しながら母艦へと急行する。どれほどの敵が来ているか分からないが、先に発見したイオクの部隊はまだこちらに追い付いていないようだ。

 

『畜生が! わらわら出てきやがって!』

 

 一方で宇宙船に張り付いて迎撃を行うジークフリートのジムⅡは、ただ単にビームライフルを連射しているばかりだ。もっとも、それがこの戦闘で一番のロートル機であるジムⅡの役割だが。

 彼が連射しているおかげか、ジムⅡが居る左舷には連邦軍機は近付いていない。右舷の方は宇宙船の持ち主である老人の妻が銃座に着いて応戦しているようだが、余り敵機を追い払えていないようだ。おかげで敵機が右舷に集中しつつある。

 

『敵船の右舷に回れ! 弾幕が薄いぞ!』

 

『おい、婆さん! しっかりしてくれ! そっちの方に敵機が多いんだからな!』

 

『あたしゃが現役の頃より多くてたまらんわい』

 

 敵機を迎撃しながらジークフリートは右舷を担当する老婆にしっかりやれと言うが、流石に老体の砲兵にこの数は対処しきれないだろう。

 次から次へとやって来る敵機の迎撃に追われ、老婆の疲労は次第に高まるばかりだ。

 そんな老婆をフォローする為、ミカルは整備が終わったバルキリーであるVF-25Gメサイアの発艦準備を行う。スーパーパックが装備されている。

 

『各部、計器に異常無し…VF-25Gメサイア、発艦する!』

 

『あっ! てめぇ! なんでそんなのがあるんだ! あるんなら俺が乗ってたのに!』

 

『いや、こいつはバルキリーの中では珍しく狙撃仕様だ。君では扱えんさ』

 

『な、何を!』

 

『とにかくあの老婆では持ち堪えられない! 出撃する!』

 

 VF-25系のバルキリーで出撃すると言えば、その存在を知らずにジムⅡに乗せられていたジークフリートが突っかかって来る。

 そんなジークフリートに対し、VF-25Gに乗るミカルは自分が乗るのはバルキリーでは珍しい狙撃仕様で自分にしか扱えないと答え、右舷で必死に迎撃する老婆を助けるためにファイター形態で出撃した。

 

『う、うわぁ! またバルキリーが! しかも死神だ!!』

 

『お、俺は嫌だぞ!』

 

 VF-25はワルキューレの宇宙軍が良く使っているのか、それを見た連邦兵等は恐怖して戦意が下がり始めた。

 どうやらそのバルキリーに多くの連邦宇宙軍の機動兵器や艦艇が葬られているようだ。それを証拠に脱走する者が続出する。

 

『な、何を怯んでいる! 敵はたかが一機だぞ! 蜂の巣にしてしまえ!!』

 

 逃げる機が居る中、ミカルは一機で突っ込んできているので、それに気付いた隊長機は逃げる友軍機を止め、一斉射撃を行う。

 

『そう都合よくは行かないか!』

 

 物事は都合よくいかないと愚痴を漏らし、雨あられとくるミサイルやビームを回避しつつ、ミカルはキャノピーから見える全ての敵機を照準すれば、スーパーパックのマイクロミサイルと両翼のミサイルを撃ち込む。

 戦闘機形態の敵機より放たれた無数のミサイルに恐れをなしたジェガンやヘビーガン、ダガーL、量産型ヒュッケバインMkⅡなどの連邦軍機は直ぐに回避行動を取るが、避けきれずに次々とミサイルに当たって火達磨となって行く。

 これで半数以上は倒したが、まだイオクの師団の主力と追跡に優れた高速艦艇が残っている。

 

『さて、艦艇の排除をするか。狙撃する! フォローを頼む!』

 

『了解!』

 

 敵艦の残骸近くまで来てからガウォーク形態にしてブレーキを掛けた後、ミカルは機体をバトロイド形態に変形させ、専用の狙撃銃の銃身を残骸に乗せ、狙撃するとジークリンデに告げた。

 狙撃態勢に入ったVF-25Gの支援を行うため、ジークリンデのストライクガンダムは近くに向かい、邪魔しようとする戦闘機類の排除を行う。

 

『さて、久々の機動兵器での狙撃だが…』

 

 自分らの宇宙船を必要以上に追跡する連邦軍の駆逐艦の動力部に照準を合わせつつ、久々の機動兵器に乗っての狙撃の感覚をミカルは思い出す。

 

『よし、覚えているな。君たちも不運だな、こんな任務を押し付けられて』

 

 照準が定まった所で感覚を思い出したのか、トリガーに指を掛けて躊躇いも無しにそれを引いた。

 発射されたエネルギー弾は確実に駆逐艦の動力源を撃ち抜き、一撃で敵の駆逐艦を沈めた。

 それと同時にマリが駆け付けたが、既に自分の獲物が無くなっていることに来なければ良かったと後悔する。

 

「あら、もうあらかた片付いてるじゃない。来なければ良かった」

 

『いや、仕事はあるぞ。お嬢さん。今度は重装備部隊のお出ましだ』

 

 数十機以上のバルキリーの相手を押し付けたジグムントが心配なので、戻ろうとしたマリであったが、どうやらイオクの部隊に追い付かれたようだ。

 戦艦や揚陸艦から次々と重装備の機動兵器が飛び出してくる。攻撃機も重装備であり、要塞を吹き飛ばしてしまうほどの物だ。

 

『イオク・クジャン、サッカで出撃する!』

 

『イオク様! 何も貴方様が直々に出撃しなくとも!』

 

『煩い! これは私があの御方より直々に受けた命令なのだ! 私自らが実行せねばならん! 行くぞ!!』

 

『はっ!!』

 

 どうやらイオクも、砲撃戦仕様のPTである‟サッカ‟で護衛の親衛隊と共に出撃したようだ。そのベースは高機動で姉妹機の近接型を支援するためのPTであるが、影も形も無いくらいに改造されている。

 尚、サッカは惑星「織姫」の地上戦でもイオクが乗って出撃した機体である。彼の射撃の下手さでせっかくのチャンスを不意にした挙句、向かって来たマリのライガー・ゼロの踏み台にされた。

 

『地上での恨み、晴らさせて貰うぞ! でぁ!』

 

 敬愛する上司の命令遂行と地上での恨みを晴らすべく、イオクはサッカの主兵装であるレールガンを、ミサイルを撃とうとしているマリのVF-31Fに向けて乱射した。

 

「あいつは…! 動かないようにしなくちゃ」

 

 自分を殺したシュンのことは忘れたが、むやみやたらと乱射したイオクのサッカは覚えていたようだ。

 次々と飛んでくるレールガンの弾頭に気にせず、スーパーパックと両翼に搭載されたミサイルポッドの照準をキャノピーから見える全ての敵機に合わせる。

 イオクが乱射したレールガンの弾頭は、宇宙船に取り付こうとする味方の機動兵器や高速艇、護衛艦、駆逐艦に当たる。

 

『なんて誤射だ! 味方殺しのイオクか!?』

 

『あのクソッタレのイオクだ! 畜生が! 奴の誤射で死にたくねぇ!!』

 

 誤射された連邦兵達は、宇宙船から離れ始める。どうやらイオクは連邦軍の将兵から「味方殺し」と忌み嫌われているらしい。

 しかし当の本人はそのことは知らず、しかも部下たちは彼の気持ちを思って友軍の将兵らから嫌われていることを隠している。もう既に隠しようがない筈だが。

 イオクが盛大に友軍機を誤射してくれるおかげか、宇宙船に近付く連邦軍機は少なくなった。

 この間に照準を終わらせたマリは、搭載している全てのミサイルを照準した敵機に向けて放つ。

 

『うわっ!? ミサイルが!!』

 

『各機、落ち着け! 火力の低いマイクロミサイルだ! この装備なら大丈夫だ!』

 

 だが、放った全ての火力の低いマイクロミサイルであるためか、全ての連邦軍機を撃墜するには至らなかった。

 

「ちっ、なんであいつら…!」

 

『マイクロミサイル対策の増加装甲だ。おそらく通常のガンポッドも通じないだろう』

 

「ただでさえ数が多いのに…!」

 

 撃墜数が異常なまでに少なかったことに、マリが苛立つ中、情報屋であるミカルは連邦軍が既にマイクロミサイル対策を行っていることを伝える。

 ミサイル攻撃を生き延びたイオクの機動兵器部隊は、直ぐに突撃を行う。

 

『イオク様! これより突撃を行います! 貴方様は後方に…』

 

『なに、突撃? よし、我に続け!!』

 

『あっ、イオク様! お待ちください!!』

 

『余り前に出ては! 奴にやられます!』

 

 突撃をするため、イオクに後方に下がるように告げた部下であったが、彼は話を最後まで聞かずに勝手に突っ込んだ。

 突っ込んで来る敵機、イオクのサッカに対しマリは、機体をバトロイド形態へ変形させ、両腕のミニガンポッドを浴びせる。

 口径はVF-31AからBのカイロスは27mm口径であるが、CからSのジークフリートは25mm口径であるため、イオクのサッカの装甲は貫けない。これもイオクが持つ悪運のおかげか。

 

『うぉ!? その程度でこのサッカは!』

 

「ちっ、硬い」

 

『イオク様! お下がりください!!』

 

「こいつ等もウザい!」

 

 サッカの厚くて斜面上な装甲にミニガンポッドが弾かれるのを見て、マリは撃つのを止め、接近戦で仕留めようかとしたが、イオク親衛隊の邪魔が入り、イオク機から離れざるおえなくなる。

 近付こうとしても、イオク親衛隊と後続の師団所属の重装備の機動兵器部隊に阻まれて近付けない。ミカルも下がるように言って来る。

 

『下がれ! 残りの英霊たちに組み立てたばかりの機体で出撃させる。スコット、操縦方法は覚えているか?』

 

『アイアイサー!』

 

『よし、覚えているな。ジークフリートと同じように船から離れるんじゃないぞ』

 

『イエッサー!』

 

 言われるまでも無くマリが数に任せて突っ込んで来る連邦軍から下がる中、マリが同伴させている戦闘力が余り高くない数十人の内一人の英霊を、ミカルは組み上がったばかりの機動兵器に乗せて出撃させた。

 その組み上げた機動兵器はジムⅡであり、戦闘力が低いためにジークフリートと同じく砲台代わりにして宇宙船の護衛に着かせる。

 他にも機動兵器の操縦を教えた英霊が居るので、順次、機動兵器の組み立てが終わり次第、出撃させてようとする。一方でジグムントは、駆逐艦に向けてSv-262の特徴的な武器である折り畳み式の剣で敵駆逐艦の艦橋を切り裂いた。

 

『き、旗艦が!? 撤退だ! 撤退しろ!!』

 

『敵艦撃破! 敵は…後退したか。さて、次は重装備の部隊か…!』

 

 切り裂いて撃沈した駆逐艦が追跡隊の旗艦だったのか、多数の敵バルキリー部隊は撤退した。

 多数の敵機の相手をやらされて少し疲労していたジグムントは、次に重装備で母艦に迫るイオクの師団の対処に当たるべく、機体をファイター形態に変形させて向かおうとしたが、ここでまた新たな追跡者の反応をレーダーで感知する。

 

『ちっ、今度はワルキューレか。それも乱暴者の騎士団であるメイソン騎士団か…!』

 

 肩や目立つ場所に赤と黒の鷲の紋章を付け、赤い粒子を撒き散らす太陽炉エンジンを搭載したMS群をキャノピー越しから見えたジグムントは、直ぐにワルキューレの属する騎士団の一つ、それもアガサ騎士団と対なる大国レベルの戦力を持つメイソン騎士団であると分かった。

 他にもVF-25メサイアと兄弟機と言えるVF-27ルシファーや、グレイズやグレイズリッター、レギンレイズ、可変MSであるムラサメも見える。全機の共通点は、メイソン騎士団のシンボルである赤で塗装されている。赤の騎士団と言われるのは納得だ。

 その赤の騎士団は、西暦1979年の地球へ降り立とうとするマリ一行に向けて警告する。

 

『我らはメイソン騎士団! マリ・ヴァセレート! 大人しく我が騎士団に投降せよ!!』

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