シュヴァルツェスマーケン もう一人のアイリスディーナ 作:ダス・ライヒ
基地が襲撃される一時間ほど前、ベルリンへと移送されたマリとアイリスディーナは、そこでまた別々に尋問を受けていた。
二人ともそれぞれ別の尋問室に移され、そこで敵に関する情報に対しての尋問を受けている。アイリスディーナはベアトリクスが担当し、マリは連邦軍らが担当する。
だが、連邦軍の将校等は勝手にベルリンに移送したことがエルランに知られたのか、ただマリを身動きが出来ないように拘束して、彼が直接来て尋問を行う手筈となっている。数分間、薄着で壁に拘束される中、ようやくエルランが尋問室に到着し、ようやく尋問が始まる。
「ご苦労だったな。だが、黙っていた罰で昇進はなしだ」
マリを捕らえた将校らに対し、ケースを持参したエルランは昇進を推薦しないと言えば、彼らは申し訳なさそうに顔を曇らせた。
一個師団どころか、一個軍まで動員して捕らえられなかったマリが、こうも簡単に捕まるのは何か狙いがあるのではないかと思い、エルランは護衛と捕まえた将校等も含めて出て行くように告げる。
「よし、部屋を空けろ。全員だ。監視カメラも止めておけ」
「えっ!? ですが、相手は…」
「良いから早くしろ。命が欲しくばな。これから軍事機密の中でトップシークレットをするのだ。連中の盗聴器は外してるな?」
「は、はい。無論、外しております…」
「なら、出て行け」
どうやら連邦軍の中では一部の者にしか知られていないアナから、マリに会せるように言われているのか、エルランは出て行くように告げる。意味の分からない将校らは疑問を口にしたが、エルランは聞くことなく盗聴器も外しているのかと小声で問えば、将校は外していると答えた。
機密情報の漏洩の恐れがない事が確認できると、エルランは早く出て行けと告げる。これに将校等と護衛は従い、尋問室にはマリとエルランのみとなった。
だが、相手はドイツ民主共和国を陰から支配する国家安全保障局シュタージ。この尋問室で連邦軍に外されたのはダミーであり、本命の盗聴器を意外な所に仕掛けると言う二段構えの手を使って相手を騙した。それを仕掛けたのはベアトリクスである。アイリスディーナが居る尋問室から、連邦軍の秘密を盗み聞こうとするベアトリクスは、同期を尋問しつつ、ヘッドフォンを片耳に当てる。
「さて、私と二人となったな。まずはあの御方がお前と話したいと仰っている。否が応でも面を合わせて貰おう」
盗聴されているとは気付かないエルランは、鞄から特殊な画面が付いた通信機を取り出し、それを机の上に置いてマリと話せるように配置した。
彼がスイッチを入れれば通信機は起動し、画面に連邦軍を陰から支配する人物、コンスタンティナ・アナ・カポディストリアスが映る。彼女の姿を初めて見たマリは、顔立ちが自分の探しているルリとやや似ていることに驚きの表情を浮かべる。画面の向こう側に居る謎めいた美女は、マリに向けて挨拶を行う。
『初めまして、マリ・ヴァセレート。私の名はコンスタンティナ・アナ・カポディストリアス。貴様の追っている小娘の身内だ』
挨拶を行った美女からは、ただならぬオーラが画面越しにも伝わって来る。おそらく自分と同じ類、何百年も生きる人間だとマリは直ぐにオーラで理解した。
『早速貴様に問う。我が軍門に下らぬか?』
ルリの身内である事を明かしたアナは、マリに自分の軍門に下るように告げる。
いきなりの勧誘にマリは驚いたが、連邦軍に入る気など毛頭ない。直ぐに床に唾を吐き、軍門に下る事を拒否する。
「いきなりそれ? 受け狙い? 入るわけないでしょ、あんたのクソ軍隊なんかに。それよりそんな用件で私に会いたかったの? 他には? 考えてないの?」
「貴様、カポディストリアス様を侮辱するか!」
拒否したマリは、更に侮辱的な言葉を画面の向こう側に居る女に向けて告げる。これにエルランは激怒するが、アナは止める。
『止めろ、奴の安い挑発だ。乗る必要はない。本当に私がお前を必要とする理由を話そう』
アナは少し置いてから、マリを必要とする理由を明かす。
『私の妹、神々に勇者と持てはやされた小娘を殺すことだ。お前と私が組めば、奴を殺す条件が整う。さすれば憎き神々は倒れ、全ての異次元の世界は人の物となる。どうか? 私と組めば、私と共に全ての次元に置いて新たなる統治者となれる。お前もかつてはそれを願って、次元に侵攻…』
「ふざけるな! そんなに私が協力するはずないでしょ! そこで待ってなさい! 今からあんたを殺しに行くわ!!」
ルリを殺すのにお前が必要だと、身内殺しを、それも愛する人間に向け、何も思わず頼むアナに対し、マリは怒りの感情を爆発させる。
暫くしてから拘束を自身の魔法で解除してアイリスディーナを救出するつもりであったが、感情的になってそれを忘れ、エルランとアナが見ている前で解除してしまった。安全かと思われていたエルランは驚愕し、殺されると思って尻餅をつき、更には失禁までする。
「ひっ! ヒィィィ!?」
「どうしまし…わっ!?」
拘束具を破壊した音は外にも鳴り響き、待機していた警備兵らが尋問室に入り込んで来た。完全に固定している筈の拘束具を容易く解除しているのを見て、エルランと同じく驚愕する。
だが、彼よりも早く手にしている自動小銃の安全装置を解除してマリに向けて発砲を行う。熟練の兵士並の速さで狙いを付け、即死レベルの二発の銃弾を放ったが、マリが張った魔法障壁は全てを弾いた。
「うっ、うわぁぁぁ!!」
何度も訓練した通り、しっかりと狙いを付けて撃ったはずだが、相手には聞かなかった。
恐怖した警備兵らはマリに向けて自動小銃を乱射するが、弾かれるばかりだ。
「邪魔!」
恐怖して銃を乱射する警備兵らに対し、マリは魔法の力で彼らが携帯している弾薬を爆発させる。
一瞬にして下半身だけを残して死んだ警備兵らの死体を見て、エルランは更に恐怖してうずくまる。返り血を浴びたマリは少し頭を冷やしたのか、アイリスディーナの事を思い出し、アナよりも先にルリを見付けるべく、鍵である彼女の救出へと向かう。
「か、カポディストリアス様! お助けを! 私をお助け下さい!!」
後ろで怯えきって泣き喚いているエルランが通信機を掴み、画面の向こう側に居るアナに助けを求めているが、当の彼女はマリが断ったことに、他の味方が悪かったと思って首を傾げている。
自分の部下が殺されそうな状況に置かれているが、アナにとって元帥であるエルランも、使い捨ての道具にしか過ぎないのだ。恐怖しきって自分の主君に助けを求めるエルランを放っておき、マリは壁を破壊してアイリスディーナの元へ急いだ。
連邦にルリを見付けられる前に、アウトサイダーの条件を満たして先に見付けるために。
そんな常識離れした彼女を、密かに連邦軍に寝返ろうとしているアクスマンは、額に汗を浸らせながら出て来る。
「なんとも現実かと思わせるような超常現象の数々だな。あれは人知を越え過ぎている。下手をすればBETAよりも恐ろしい」
『何者だ?』
「おっと、ハロー。私はハインツ・アクスマンと申す者。以後、お見知りおきを」
通信機からアナに何者かと問われたアクスマンは、自分に取って未知の強大な勢力に入り込むために、賭けに出ることにして、彼女に向けて挨拶を行う。
画面越しとは言え、アナはこの日和見主義者の男を一瞬で殺す力を持っている。アクスマンもそれを承知しており、冷静さを保って自分の有能さをアピールする。
「どうでしょうか。この私に、マリ・ヴァセレートなる人物の捕縛を任せてみてはいかがですかな?」
『ふむ、機会主義者か。そこの怯えて助けを請うクズよりは使えそうだ。貴様に権限を与える。エルランの部隊、好きに動かして良い。コードブラックと言えば、通じる』
「えっ? カポディストリアス様、いきなり何を…!?」
このアクスマンの言葉にアナは結果を気にせず、少々の期待を寄せて日和見主義の男にエルランの権限を与えた。
自分の権限が会って数分すら立っていない男に委譲されたことに、エルランは間抜けな声を上げる。まさかとは思うが、連邦を陰から支配する女に権限を委譲されたことに驚くアクスマンであるが、断れば殺されると思って感謝の言葉を述べる。
「ありがたき幸せ! このアクスマン、必ずやご期待にお応えします! では、これにて失礼!」
感謝の言葉を述べた後、アクスマンは早速アナの期待に応えるべく、落ちている無線機を使ってベルリンに駐屯している連邦軍部隊に、貰った権限を使って指令を出す。
「全部隊に通達、私はハインツ・アクスマン。コードブラック発令。全部隊、直ちにアイリスディーナ・ベルンハルトを拘束せよ。障害は友軍であろうと排除し、任務を遂行せよ。繰り返す、コードブラック発令…」
コードブラックとは、連邦軍内において規定されたレッド、ブルー、イエローに次ぐ四つ目の優先命令暗号の一つである。言うなれば、このコードが発動すれば、そのコードを持つ任務を優先されるのだ。
例えば、コードレッドは全てを殲滅せよと言う暗号である。ブラックは、アナが連邦軍に規定させた特定の人物の命令に軍を従わせる命令暗号である。
このコードブラックが発令されれば、直ぐに従うように頭に叩き込まれているエルランが率いる全連邦軍部隊の将兵等は、初めて発令されたコードブラックに動揺したが、動揺しながらも指示に従う。
「コードブラックって…?」
「お前ら何をしている!? 早く命令を実行しろ!」
「はっ!」
初めて聞くコードブラックに兵士たちは動揺したが、コードシリーズの暗号命令に拒否権が無い事を知っている将校らは直ぐに実行するように喝を飛ばす。これに兵・下士官等は従い、邪魔をするシュタージを排除しつつ、命令されたアイリスディーナの拘束に向かう。
連邦軍は装備も物量も全て上回っており、秘密警察組織のシュタージでは全く歯が立たない。次々と警備兵らはUNSC陸軍やISAの歩兵部隊、機動歩兵に制圧され、アイリスディーナの居る尋問室まで近付かれる。
「なんだこいつ等!? 味方じゃないのか!?」
「とにかく、同志ブレーメから奴らをここに近付けるなと言われている! 喋っている暇があったら応戦…」
「っ!? うわぁ!」
味方であるはずの連邦軍が突如となく撃って来たのに対し、臨機応変にベアトリクスは迎撃を命じたが、兵の練度も桁違いであり、尋問室は真先に制圧された。アイリスディーナを捕らえに来たのは、機動歩兵とISAの軽歩兵の混成部隊だ。ISAの軽歩兵らはクリアリングを済ませ、直ぐに扉に張り付いて突入を行う。
「うっ!?」
「同志!? ぐわっ!」
尋問室内で立て籠もろうとしていたベアトリクスは、余りの敵の制圧速度の高さに対応できず、突入の際に爆破されたドアの破片を受けて倒れ、倒れた彼女に動揺した部下は射殺された。突入したISAの軽歩兵らは直ぐにアイリスディーナを確保し、無線機でそれを知らせる報告を行う。
「こちらブルースクワッド1-1、目標確保。繰り返す、目標を確保した。直ぐにそちらへ連行する」
『了解、ブルースクワッド1-1。直ちに連れてこい、味方の被害が拡大している』
「なんだって?」
それを本部に報告したところ、早く連れてこいと催促が返って来る。理由は他の部隊、機動兵器部隊も含めてマリの足止めを全力で行っているが、感情的に怒りに燃える彼女の前ではやられまくるばかりだ。
『畜生! 何なんだこの女は!? ビームも効かないぞ!』
『とにかく撃て! 撃つんだ! アイリスディーナとか言うのを捕らえ、アァァァ!?』
『どうした!? うわっ!? なんだこれは!? アァァァ! 助けてくれぇ!!』
ダガーLに乗るパイロットらはビームカービンを撃ちまくるが、マリがコクピット内に発生させた弦に呑み込まれて息絶える。
当のマリは魔法障壁を張りながら前進しており、攻撃が弾かれるばかりだ。精々成功していると言えば、彼女を苛つかせることくらいだろう。
「しつこい…! しつこい、しつこい! しつこい! しつこいしつこいしつこいしつこい!」
苛立つ余りマリは更に感情的になり、背後から大量の武器を召還し、それを目に見える敵に向けて放ち続ける。この攻撃は一瞬にして地獄絵図と化し、マリを足止めするために向かわされた連邦軍部隊の損害は拡大するばかりであった。
「嫌だ! 俺は死にたくない! 死にたくない!!」
「おい、逃げるな! ま、待ってくれ!!」
味方が惨たらしく殺されていく光景を見て、連邦兵等の士気は低下し、逃げ出す者まで続出する。
その隙にアイリスディーナの元へ進むマリであったが、既に彼女は連邦軍に確保されてしまい、アクスマンの手中にあった。上空を飛んでいるUNSCの多目的輸送機であるペリカンに乗り、後部ハッチより確保したアイリスディーナをアクスマンは見せびらかす。
『一歩遅かったな、フロイライン! あと少し早ければ囚われの姫を救えたのに! おっと、感情的になって攻撃するなよ? 彼女が死んでしまうぞ』
拡声器からマリを挑発するように告げるアクスマンであるが、彼女はルリの事を考えて攻撃しない。アクスマンもそれを承知であり、更に挑発を続ける。
『彼女を返してほしくば、シュタージ本部内でヒントを探せ! 私の居場所が分かるはずだ! 頑張れよ!』
引き渡し場所を伝えることなく、アクスマン等が乗るペリカンは飛び去った。
マリは追跡装置の類を付けようとしたが、アクスマンもそれを予想してか、シュタージの本部に向けてビームを撃つように指示を出していた。間に合わず、シュタージ本部は連邦軍の攻撃で吹き飛ばされる。一つばかりでは無い、ベルリン中のシュタージ本部がアクスマンの一声で破壊された。更にはマリの居る所まで向け、アクスマンは攻撃を命じる。
「あの女のいる場所も砲撃しろ」
「まだ味方が…」
「それくらい構わんだろう。粗末な損害など気にする必要はない。コードブラックだ、早くしろ」
「了解…!」
まだ味方の退避が間に合っていないが、アクスマンは構わずやれと告げる。これに連邦軍の将校はコードブラックには逆らえず、味方ごとマリの砲撃を命じる。命令は直ちに実行され、マリの居る場所も砲撃が開始される。まだ味方が居るのだが、お構いなしだ。この味方諸とも巻き込む砲撃に、マリは周りに魔法障壁を張って防御した。
自分の義兄、テオドールに拳銃を向ける職員に、手にしている短機関銃の銃口を向けたリィズは、引き金を引いて発砲した。一度に何十発物弾丸を発射する弾丸は、テオドールを撃とうとした職員に命中し、彼の胸を引き裂いた。
「貴様!」
突然、味方を撃ったリィズに対し、職員は手にしている拳銃を向けたが、テオドールは素早くナイフを抜いて職員の足を切り裂き、首を一突きにしてトドメを刺す。
リィズもファルカ以外のシュタージ職員に向けて銃撃を行い、制圧していく。テオドールもそれに加われば、突然の裏切りで対応が遅れたシュタージの職員や武装警察の警官らは全滅する。
「リィズ、お前…」
「何も言わないでお義兄ちゃん。私は、あの人に言われて」
「あの人? 一体誰に吹き込まれた?」
「一緒に居てて気付かないの? ベルンハルト大尉にそっくりな」
「あいつか」
なぜシュタージを裏切ったのかを問われたリィズは、マリに言われてやったと答える。これにアイリスディーナに似ていると言われて、ようやくマリであると気付いたテオドールは、裏切らせたのは彼女だと分かった。
「なんで言う事を聞く? 異世界だの神だの訳の分からないことを言う女だぞ」
「私はあの人に救われたの。それにあの人はシュタージなんて目じゃない。BETAだって滅ぼせるよ、多分」
素性も分からず、自分にとっては訳の分からないことばかりで、十五歳の少女のようなマリの言う事を聞くのかをリィズに問う。
マリに心酔し切っているリィズは、自分等を恐怖させたシュタージなど目では無く、BETAすら容易に滅ぼせるとまで答えたので、テオドールは茫然とした。
「あの、私は…私はどうなるんですか…?」
「あぁ、忘れてた。この場でお前は…」
自分を忘れていないかと問うファルカに対し、テオドールは落ちているPMマカロフ自動拳銃を拾い上げ、銃口を彼女に向けた。黙って見ているリィズは、自分の後輩であるファルカを射殺する物だと思ったが、テオドールは天井に向けて二発ほど撃った。
それからこの基地から失せ、名前を変えて何処かで暮らすように告げる。
「ここから失せろ。存在しない人間を演じるのは慣れてるだろ。早く失せろ、次は本気で撃つ」
テオドールが拳銃を向けながら脅すように言えば、ファルカは震え、一目散に二人の前から消えた。
なぜファルカを殺さず、逃がしたのかが疑問に思ったリィズは、拳銃の弾倉を引き抜いて、死体から満タンの弾倉を取り出して拳銃に装填するテオドールに問う。
「どうしてファルカを逃がしたの? あいつが言われた通りにするとは限らないよ?」
「言う通りにするさ。あいつにそんな度胸があるとは思えない」
リィズの問いに、テオドールは答えてから仲間の救出に向かうかどうかを問う。
「ついてくるか? 今なら許してもらえるかもしれない」
「うん! お義兄ちゃんと一緒なら!」
「よし、来い! こっちだ!」
ついてくるかを問えば、リィズは笑顔で答えた。これにテオドールは魂までリィズはシュタージに売ってないと分かり、笑みを浮かべて仲間が捕らえられている留置所まで、MPi-K突撃銃を持って駆け抜けた。
基地の襲撃から一時間後、救出隊はシュヴァルツェ・マルケンの隊員の救出に成功した。
その無線連絡がテオドールに届く中、アクスマンが連邦側に回り、ベルリンにあるシュタージの本部を全て砲撃で破壊させたのか、指揮系統を失った基地に居るシュタージは戦闘を放棄し、一斉に投降し始める。
連邦軍の駐屯部隊は被害が拡大したのか、撤退した。
「どういうことだ? シュタージが投降するぞ」
「何があった? 言え」
連邦軍が撤退してシュタージが投降して来たので、ジグムントは投降して来たシュタージの戦闘指揮官に問う。これに戦闘指揮官は、連邦軍によって倒されたと答える。
「我々の本部が連邦軍によって破壊された。ベルリンにある物全てだ。シュミット長官は砲撃で死亡し、指導者を失った我々はどうするか分からず、貴官らに投降することにした…」
「誰にやられた?」
「ベルリン派のアクスマンだと思う。奴は日和見主義者だから、デカい連邦軍に寝返ったと思う。俺たちはどうなる? 教えてくれ」
次に誰が連邦軍にシュタージを破壊させたのかを問えば、戦闘指揮官は心当たりがある人物であるアクスマンであると答え、これから自分等はどうなるかを聞いて来た。この国では全く無関係であるジグムントは、反体制派に良い処遇をしてもらうように願えと告げる。
「済まんが、私ではお前たちがどうなるか知らん。反体制派に、詫びを入れて許してもらうんだな」
「そんな…」
ジグムントから返って来た答えに、シュタージの戦闘指揮官は今まで国家や党に反する人間たちを弾圧して来たことを思い出し、反体制派に惨殺されるのではないかと絶望する。
中には拳銃を引き抜き、自殺する者まで居る。八つ裂きにされるなら、ここで死んだ方がマシだと思ったのだろう。そんな彼らを気にすることなく、無線機を持って来た者から受話器を取り、マリにアイリスディーナを救出できたかどうかを問う。
「聞こえているか? ベルリンでは、連邦軍の砲撃でシュタージが壊滅したと聞いた。ベルンハルトの救出は成功したか?」
マリから返事が無いため、繋がっているかどうか無線を持って来た者に問えば、フランケンシュタイン号に居るノエルから繋がっているとの連絡が入る。
『ちゃんと繋がっています。向こうが返答しないだけでは?』
「それもそうだな。兎に角こちらは全員の救出に成功した。成功しても、してなくても指定場所に合流しろ。最後の仕上げに取り掛かる」
ノエルからの返答にジグムントは納得しつつ、マリに指定した場所に合流するように告げてから無線を切った。こうして、マリ達のこの世界における最後の戦いが始まる。