シュヴァルツェスマーケン もう一人のアイリスディーナ 作:ダス・ライヒ
決戦が始まる中、連邦軍に寝返り、シュタージの秘密施設でマリを手中に収めた四百万以上の兵力で待ち受けるアクスマンは、部隊の配置はどれほど済んでいるのかを、隣に立っている連邦軍将校に問う。
「部隊の配置はどれくらい済んでる?」
「あと十分もあれば終わる。なんで、貴様などに従わなければならんのだ? 閣下、これはどういうことで?」
なぜ部外者のアクスマンに従わなければならないと、近くにいるエルランに問う将校であるが、彼は命が欲しくば従えと告げる。
なんせアクスマンは、自分が仕えるアナと同等の指揮権を持っているのだ。一介の将校や、将官ですら逆らう権限はない。
「いいから黙って従え。死にたくなければな」
「分かりましたよ。では、小官は失礼します!」
アクスマンに従うことに不満を抱く将校は、命令を実行するのを口実にして部屋を出ていく。四名の警護兵を除いて、部屋にはアクスマンを初め、エルランに拘束されているアイリスディーナの三名のみだ。将校が退室した後、アクスマンは更に指示を出すべく、近くの受話器を取り、ある場所へ繋げる。
「アロー、聞こえているか? 植民地海兵隊一個大隊分を当基地に寄越してもらいたい。これからおっかない女が押し掛けてくる。念には念をだ、海兵隊員のみならず、スパルタン一個小隊も寄越してもらおう」
「貴様、どれくらい要請するつもりだ!? もうISAやUNSC陸軍、他が二個軍集団もいるんだぞ! 過剰だ!!」
「何って? これから怖いフロイラインが押し掛けてくるんですよ。海兵隊に守ってもらわなやきゃ。それに心強いスパルタンにもね。彼女に私の元職場を潰してもらうつもりだったんだろ、ベルンハルト?」
過剰とも言える戦力を要請するアクスマンに対し、エルランは過剰だと言うが、彼はアイリスディーナを見ながらそれ程の戦力が必要だと答える。
事実、先のマリの戦闘力は連邦軍が要警戒人物指定に匹敵する物であり、止めるにはそれほどの戦力が必要とされる。アクスマンは軍人ではないが、目の前でマリの力を知ったので、アイリスディーナは彼女を使って元職場のシュタージを潰そうとしていたと考えている。
これにアイリスディーナは自分の考えが見抜かれたことを隠すためか、鼻で笑う。
「だとしたらどうする? あの女は誰にも従わないさ」
「その反応からすると、図星かな? なに、私が君なら彼女を最大限に利用する。肉体関係を使ってまでな。彼女は、同性愛者だ。それに精神的には未熟だ。その手の人間はコントロールしやすい」
マリは誰にも従わない。
そう言うアイリスディーナに対し、アクスマンはマリが同性愛者であると見抜き、更には精神的に未熟であるとまで言い当てた。どうやら尋問の際のマリの口調で、分かったようだ。
「不老不死と言うことも分かっている。だが、いくら不老不死とはいえ、数百万の軍隊には勝てない。何前何万回も死ねば、精神的に苦痛となり、気が狂ってしまう。そこが我々の勝機だ」
アクスマンはさらに続け、数百万の兵力ならばマリに勝機があるとまで言う。いくら不老不死でも、精神的に未熟なので、何前何万回も殺せばこちらに屈服すると思っているようだ。
だが、マリはその程度で屈服したりしない。ルリの為なら何万回死のうとも、再会を果たすために何度も挑む精神力を持っている。アクスマンはそのことを知らないのだ。
彼女に抱かれ、それを理解しているアイリスディーナは、勝ったと思っているアクスマンに向けてマリには勝てないと告げる。
「その程度であの女に勝てると思っているのか? お前は勝てない、断言しよう。あれは人ではない。BETAよりも更に、否、神に等しい存在だ。お前はそれと敵対した。それは敗北を意味する…!」
このアイリスディーナの言葉に、アクスマンは眉をひそめる。
自軍はこの世界の各国が一斉に総動員した戦力なのに、負けるというのだ。それもたかが強大な力を持っただけの女に。いくら不老不死でも、命が幾つあっても足りない戦力だというのに、あの現実主義のアイリスディーナが、自分らが勝てないと断言している。
これにアクスマンは洗脳を疑う。それもそのはずだ。かのアイリスディーナがここまで言わせるのだから。
「随分と買い被っているな。そんなに彼女が好きなのか? なに、直ぐに結果はわかるさ。我々の勝利という結果にね」
自分らが勝てないというアイリスディーナに、アクスマンはいつもの余裕を失いかけたが、彼女の主張は余りにも馬鹿らしいので、鼻で笑って一蹴した。
一方で勝てるはずのない戦いに挑むため、出撃したマリは、アイリスディーナの代わりに戦術機のMiG-21指揮官機型に乗り、彼女が率いるはずであった第666戦術機中隊ことシュヴァルツェ・マルケンまで率いて、アクスマンが待ち構えるシュタージ・ファイル保管されている場所まで向かっている。元シュタージの戦術機部隊であるヴェア・ヴォルフまで伴って。
なぜアスクマンの場所が分かったのかは、マリが性行為の際にアイリスディーナに仕込んだと答えれば、ある者は顔を真っ赤にして、ある者は呆れた。
そんなことを気にせず、マリはシュヴァルツェ・マルケンの面々の心情を考えず、中隊長機に乗り込み、アクスマン等こと連邦軍が待ち構える集積施設へと向かっている。レーダー網に差し掛かろうとする時に、マリはアイリスディーナの如く救出隊全機に無線連絡を行う。
「各機に通達。もうすぐ連邦軍の警戒線に入る。いつものレーザーヤークトと似たような物だわ。でも、ビームが雨みたいに飛んでくるから注意してね」
『適当過ぎるだろ。全く、なんでこいつが大尉の機体に』
『駄目ですよ、テオドールさん。この人がいなかったら、私たちは生きてないんだから』
『そうかい? 他は見殺しにしてるけど』
「まぁ、言われてないことだし。ほら、集中しないと死ぬわよ」
『…了解!』
テオドールはマリが自分らを指揮することに悪態をつく中、恩義を感じているカティアは注意する。テオドールにシルヴィアも同意する中、マリは長距離ビームが飛んでくる可能性があるから、戦闘に集中しろと言えば、一同は集中する。グレーテルも政治将校としてマリに苛立っていたが、状況が状況なので従うことにした。
『貴様に従うなど癪であるが、今だけは従ってやる。後で覚えておくが良い』
「はいはい」
『貴様、本来は私が指揮するはずだったのだぞ! それを貴様のような何処の誰かもわからぬ奴に…!』
「でも、出来ないでしょ? みんなも納得してるじゃん」
『ちっ、お前が本物のベルンハルト同志大尉なら…!』
本物のアイリスディーナ・ベルンハルトなら良かった。そのグレーテルの意見はあのベアトリクスも同意しているのか、自分の本心を秘匿通信でマリに打ち明ける。
「なに?」
『あんたみたいな似ても似つかないお嬢ちゃんじゃなくて、本物のアイリスと飛びたかったわ。まぁ、無い物強請りね。早く、本物を助け出しましょ』
「なに、嫌味? まぁ、生きてもらわなきゃ困るんだけど」
『どういうわけで異世界からアイリスたちを助けに来たかは知らないけど、あんたが居なかったら今頃全滅してたところね。じゃあ、先行するわ。あんた等は自分の上司を助けるのに集中しなさい』
本心を打ち明けた後、ベアトリクスは自分の隊と共にマリたちの前に出た。その後、連邦軍の守備隊と交戦状態に入る。それと同時に盗聴している連邦軍の無線連絡が、無線機より聞こえてくる。
『ポイントイースト1-4に敵部隊を確認! 敵襲だ! 直ちに迎撃態勢を取れ!』
『敵機視認! はっ、博物館行きのガタ落ちだ! つまり移動標的だ! 撃ちまくれ!』
『ファックしてやるぜ!』
『だいぶ舐められているな』
盗聴器より自分らを舐め腐った声が聞こえる中、シールドライガーで随伴しているジグムントはこちらを見誤っていると判断する。
その間違いを正してやろうとしてか、バーサークフューラーに乗るジークフリートは、ミサイルの武装を持っている機体に乗る者たちに一斉射撃を命じる。
『だったら間違いを証明してやるぜ。ミサイルを持ってる奴全員に告げるぜ。派手にミサイルをぶっ放せ、一斉にな。連中に一泡吹かせようぜ』
『了解! ミサイル、安全装置解除!』
『標的、展開中の敵部隊! 一斉射後、各機自由戦闘!』
『イエッサー!』
VF-11Cサンダーボルトに乗るヴァイスらがミサイルの安全装置を解除したと報告すれば、修復されたフリーダムガンダムに乗るジークリンデは標的を展開中の連邦軍部隊だと知らせる。それに合わせ、同じバルキリーに乗る柿崎やその他の者たちもミサイルを同じ標的に合わせ、発射命令を待った。
『全機、照準完了!』
「全員聞いてる? ミサイルが着弾した後に突入するわよ。あいつ等、突っ込んできたら怯むから、BETAよりもやり易いかもよ」
『もっと具体的な情報はないのか!?』
この無線を聞いていたマリは、ミサイルが着弾後に突入すると告げた。交戦する連邦軍部隊に対しては、こちらの突撃に怯むはずだとも言う。余りにも具体的な物ではないため、グレーテルは具体的に言えと隊を代表して言った。これにマリは苛立ちながら答える。
「はいはい、自分らが常に優勢で勝てると思ってる連中。こっちが思い切って仕掛けたら勝てるわ。この旧型機でも、勝てる見込みはある」
『へぇ、勝てる見込みはあると。じゃあ、アクスマンに一泡吹かせられるわね』
敵からすればこんな旧式でも、勝算はあると言ったマリに、ベアトリクスは笑みを浮かべる。シュタージを潰し、自分の居場所を奪ったアクスマンに一泡吹かせられる。それだけで、彼女の士気は上がる。
戦術機に乗る全ての者たちが、この言葉を聞いて勇気づけられた。アイリスディーナが言えば、どれほど士気が上がっていた事だろうかと、テオドールや彼女と共に数々の死の危機を乗り越えてきたシュヴァルツェ・マルケンの面々は思う。
カティアやリィズ以外の者たちはそう思っているのだろうとマリが思う中、上空の編隊を組んで飛んでいる八機のVF-11Cがミサイルを発射した。
発射された多数のミサイルが連邦軍の対空砲火で落とされていくが、敵を浮足立たせることには成功した。そのままジークリンデのフリーダムガンダムや、ジークフリートのバーサークフューラーの荷電粒子砲による一斉射撃が行われる。その効果は絶大であり、敵軍は混乱状態に陥る。
『敵部隊は混乱しているぞ! 体勢を立て直す前に、一気にたたみ掛ける!』
「聞いたわね? 全機、突入せよ!!」
『了解!』
ジグムントが敵部隊の体勢の立て直しに手間取っている間に一気に畳み掛けると言えば、マリは隊に突入命令を出した。全員が応じれば、先行しているベアトリクスのヴェア・ヴォルフ大隊が先に仕掛ける。
『敵機接近!』
『撃ち落とせ! たかが博物館集団に負けるな!!』
先行して攻撃してきたMiG-23の一個大隊に対し、浮足立っている連邦軍のドートレスやストライクダガー、アロザウラーは反撃が遅れ、瞬時に十五機も撃破される。
多数の爆発が起こる中、雪原仕様のスコープドックもまともな反撃も出来ずに撃破されていく。更にはジグムントのシールドライガーの攻撃も入り、第一防衛ラインは呆気なく突破された。残っている連邦軍機は、空のバルキリーの編隊やジークフリートのバーサークフューラーにやられる。マリが率いるシュヴァルツェ・マルケンが来なくとも、敵の第一防衛ラインは突破できた。
『たかがガタ落ちの集団に何をしているんだ!? 早く迎撃しろ!』
第一防衛ラインに展開していた部隊があっさりと全滅したことで、連邦軍部隊の士気は低下しかかったが、指揮官の一言ですっかりと持ち直し、数に任せてマリ等に襲い掛かる。
地上と空からの同時物量攻撃だ。恐ろしい数のストライクダガーやドートレス、アロザウラー、コマンドウルフ、カノントータス、スコープドックが地上を埋め尽くし、空はヘビーガンやGキャノン、ジェムズガン、バリエント、ダガーL、ウィンダム、プテラス、ダブルソーダ、レイノスが埋め尽くしている。
通常兵器部隊も軌道兵器と同様の数であり、物量でマリたちを圧し潰そうという魂胆だ。
『何あれ…!? BETAみたいな数じゃない!!』
『あんなの、突破できるの!?』
『異常すぎるぞ! BETAを遥かに上回っている!!』
『数が多すぎる! ここは…』
レーダーの反応が赤で埋め尽くされるほどの数を見たシュヴァルツェ・マルケンの面々は怯んだが、マリの一声で正気に戻る。
「ここで退いたら、BETAにも負けることになる! あんたらがついて来なくても、私は一人でもやるわよ!」
『へっ、言ってくれるじゃないか! こんな数、レーザーヤークトに比べれば…!』
『ベルンハルトさんなら、この数も恐れずに行くはず!』
マリの言葉に感化されてか、テオドールとカティアは気を取り直し、突撃砲を無数の連邦軍部隊に向ける。他の者たちも感化され、BETAよりも圧倒的な連邦軍に立ち向かう。
『ふん、あんな物量! 幾度もBETAを退けてきた我がNVAの敵ではない!』
『もう逃げるのは止めよ!』
『よく言うじゃないか…! これは退けないね!』
「アイアイが居なくても大丈夫そうね。じゃあ全機、[[rb:兵器自由使用 > オールウェポンズフリー]]! 奴らに黒の鉄槌を!」
『了解!』
全員の士気を更に高めれば、マリは代表して先に上空を埋め尽くす連邦軍部隊に攻撃した。この後に僚機が対空射撃を行い、多数の連邦軍機を撃墜する。その後から柿崎らのバルキリー部隊がガンポッドの一斉射撃を行い、数十機も落とした。
たかが数十機も落としたところで、連邦軍の数が減るわけではない。直ぐに百倍返しの反撃が来る。空と地上からの雨あられの攻撃にマリとシュヴァルツェ・マルケンは躱すが、ヴェア・ヴォルフのMiG-23は躱しきれずに被弾して撃破される機が目立ち始める。
『こんなことで!』
凄まじい弾幕を躱しつつ、ベアトリクスのMiG-27アリゲートルは地上のストライクダガーの頭を蹴飛ばし、続けざまに搭載している全ての突撃砲を乱射して固まっている連邦軍機数十機を一気に殲滅する。
他の僚機も同様に進路上の連邦軍機を片付け、シュヴァルツェ・マルケンの進路を開ける。
旧型機ともいるMiG-21指揮官機型に乗るマリも、上空からの三機編隊で襲い掛かるウィンダムのビーム攻撃に機体を回転させて躱して、通り過ぎる三機に突撃砲の掃射を食らわせ、三機を一度に撃墜した。更には突撃砲下部の滑走砲をダガーLが二機重なったと同時に撃ち込み、二機を一発で撃破した。
これには敵味方も驚きの声を上げる。
『一発で…!?』
『二機同時撃破だと!?』
『こんなの、大尉には出来ない!』
『本当に博物館送りなのか!?』
見せた芸当に、マリは己惚れることなく地上で並んで走行してくる61式戦車やリニア・タンク、スコーピオン戦車を立て続けに撃破して、更に爆発反応装甲付きの盾のブレードを、ドートレスの胴体に突き刺して無力化する。
凄いのは彼女だけではない。シールドライガーDCSに乗るコマンドウルフやアロザウラー、レイノスら十数機を数秒ほどで片付け、更にはヘビーガンの胴体をレーザーファングで噛み千切り、棒立ち状態の数機をビームキャノンで撃破した。
ジークフリートのバーサークフューラーは寄進如く暴れ、何十機もの機動兵器が黒煙を上げて雪原の上に横たわっている。その数は増える一方だ。
上空のジークリンデが駆るフリーダムガンダムは、フルバーストを続けて上空のバルキリー隊の仕事を奪うかのような戦果を挙げている。そのバルキリー隊も負けじと頑張っている。対峙している連邦軍が可哀そうに見えてくる。
『な、何がどうなっている!? 奴らは全部合わせて二個大隊だぞ! さっさと潰せ!』
大したこともない数に、圧倒されている守備隊を見た指揮官は、更に数を増員して圧し潰そうとするが、単にやられていくばかりだ。流石のアクスマンも、これには冷や汗をかかずにはいられない。
『はぁぁぁ!!』
アリサが得意とする長刀での接近戦で、ヘビーガンを切断して撃破した。
テオドール機は短刀を投げナイフのように投げ、上空から仕掛けようとするバリエントに命中させて撃破する。他の僚機も連携を取り、徐々に連邦軍機の数を減らしていく。
『この数だぞ!? なんでこいつら逃げねぇんだ!?』
『お、俺たちが圧倒されている!?』
たかが数十機の機動兵器に、自分ら圧倒的な数の連邦軍が押されていることに将兵たちは怯み始める。敵の防衛部隊の士気が低下したところを、マリは逃さず、一気に突入を命じる。
「敵は怯んでる。今よ! 全機突撃!!」
そう言ってスラスターを吹かせ、部隊を先導して敵陣の奥深くまで突撃した。
『撃つな! 誤射が起きる!』
無数の敵機が地上と空に居るが、誤射を気にしてか、下手に撃てずに見ているだけだ。対するマリたちは、一方的に撃って良い。
「シュヴァルツェ1より全機へ! 乱射しながら突撃! 今ある弾倉の分は撃ち尽くしなさい!」
この指示に応じ、撃てないでいる連邦軍機に向けて容赦なく撃ち始める。一機、また一機と敵機が撃たれて倒れていく中、遂に目的のシュタージ・ファイルが保管されている施設が見えた。
『目標、視認!』
「もう少しね…」
『っ、敵機!!』
「そう簡単には行かないわね」
施設が見えたところで、敵の練度が一気に上がった。
雑魚ばかりのパイロットではなく、精鋭のパイロットが駆る機動兵器部隊がやって来たのだ。肩にはISAやUNSC、それに植民地海兵隊の所属を表すマークを付けたジェガンD型やグスタフ・カール、量産型ヒュッケバインMkⅡが襲い掛かってくる。地上からはコマンドウルフやシールドライガー、各勢力の精鋭らが乗る機動兵器が、マリ等に襲い掛かる。
『来たぞ、もうここからは楽はできん。気を引き締めて戦え!』
向かってくる精鋭部隊に対し、雑魚を数機片付けたジグムントは気を引き締めるように警告した。
短刀でGキャノンを切り裂いて撃破したベアトリクスは、見事な連携を組んで攻撃してくる海兵隊の機動兵器部隊に対し笑みを浮かべ、操縦桿を動かして短刀を仕舞、突撃砲を右手に持たせて迎撃する。
『ちょうど物足りなさを感じてた所だわ。さて、本番に行きましょうか!』
迎撃しながら敵の攻撃を回避し、ジェガンD型一機を撃ち落とした。
海兵隊員やISAのパイロットらは、最新式とも言える友軍機を落とした旧型機ともいえるMiG-27を駆るベアトリクスに対し、恐れおののき始める。
『な、なんだってんだ!?』
『あんなコイン機で、あの数を突破したのは本当らしい…!』
『ふざけやがって! 俺たちはやられ役ってか! 引きずり降ろして細切れにしてやる!』
コイン機、即ちガタ落ちの機体である敵機に、自分らがやられるのが我慢できない連邦軍の優等生たちは、連携を組んで攻撃し始める。
数を生かした連携だ。一機が囮をして、二機が囮に夢中な敵機を攻撃して撃破する。その精鋭部隊の戦法で、ヴェア・ヴォルフの脱落機が徐々に増える。瞬く間に、一個中隊がISAや海兵隊の機動兵器に撃墜された。
『えっ!? きゃぁぁぁ!』
『第三中隊、全滅です!』
『こいつら、強い!』
「もうそんなに!? 誰か回れない?」
ヴェア・ヴォルフ大隊の一個中隊が全滅したことで、マリは誰か援護に回れるか戦いながら無線連絡を行うが、誰も援軍を得て持ち直した無数の連邦軍機の対処に精一杯で応じられない。
『こちら柿崎! 無理です! 敵が、敵が多すぎて!』
『無理だっての! こいつら、助っ人が来たからって、調子に乗りやがって!』
『駄目だ! 敵の士気がいきなり上がった! 背中を見せれば、こっちがやられる!』
『数が多い! そっちでなんとかやって!』
「あんた等、最強の兵士じゃないの!? もう!」
柿崎は除き、最強とも言えるジグムント、ジークフリート、ジークリンデの三名が、雑魚相手にてこずっていると返ってきてか、マリは苛立ちながら上空から空襲しようとするダブルソーダ数機を撃墜した。
連れてきた手練れたちも、無数の連邦軍機に取り囲まれて支援に迎えないようで、自分の中隊で行くしかない。だが、連邦軍がそう簡単に向かわせてはくれない。いつもの隊形を維持して前進しているのを、ISAの飛行隊に見られてしまった。
大隊規模のレイノスの編隊だ。直ぐに見つけるや否や、ISAはシュヴァルツェ・マルケンに襲い掛かる。
『こちらファルコンリーダー、練度の高いコイン機の隊形を発見した! あれがCOG機と思われる! 強襲する!!』
『こちらファルコンコントロール、了解した! スカルファイターにもやらせる! 残しておけよ!』
『へっ、残すかよ!』
そう本部に報告してから、編隊を組んでシュヴァルツェ・マルケンに強襲を仕掛ける。機銃掃射やビームによる攻撃だ。
『十二時方向、空から来ます!』
「全機、防御して! 足を止めるな!」
カティアの知らせで分かれば、マリは全機に盾で防御するように命じ、全機は盾で空襲を防ぐ。一個大隊分のレイノスの掃射を耐えれば、旋回しようとするレイノスに、背部の突撃砲の掃射で反撃する。その反撃で数機が被弾し、雪原に落下していく。
『えぇい、しぶとい奴らだ! ファルコンリーダーより各機へ! 今度は背中をやる! 対空砲火にビビるな!』
一機も落とせず、こちらに被害が出たことでファルコンリーダーは苛立ったのか、もう一度旋回して仕掛けると告げ、旋回しようとした。
『敵編隊、もう一度仕掛けてくる!』
『どうする? 背後から襲われれば一溜りもないぞ!』
「本当に誰か来れないの?」
『無理って言ってんでしょう!』
クリューガーの知らせに、グレーテルが背後から襲われれば一溜りもないと言えば、マリは慌てて空戦部隊から誰か来られないかと問うが、誰もが連邦軍機に取り囲まれて行けないと返してくる。
これにマリは中隊の誰かが犠牲になると思ったが、思わぬ援軍が空から来た。
『ファルコンリーダー、お前の直上にアンノウンが!』
『なにっ!? 全機、散会! 散会しろ! うわぁ!』
本部からの知らせで、直上から来る思わぬ援軍に気付いたファルコンリーダーであったが、間に合わずに全機が撃破された。その思わぬ援軍とは、カルタ・イシューが駆るガンダムベレトであった。
突如として現れたガンダムタイプのMSに、連邦軍の将兵らは恐れおののき始める。なんたって伝説のMSであるガンダムが、自軍の敵として現れたのだ。そんなのを相手にすれば、自分らが完全にやられ役となる。
ガンダム伝説を知らない連邦軍参加勢力は、カルタのガンダムベレトに襲い掛かる。
『何がガンダムだ! たかが一機のMSだろうが!』
ISAのパイロット一人が、自身の駆る量産型ヒュッケバインMkⅡで襲い掛かった。結果は予想の通り、あっさりと返り討ちにされた。カルタのガンダムベレトが振るった大太刀でバラバラにされたのだ。
これにはその場にいる全員が戦慄を覚え、勝てるのかと思い始める。そんな彼らには目も暮れず、カルタは足を止めて固まっているマリのMiG-21に視線を向けた。
『見付けたわよ、マリお馬鹿さん。ここが年貢の納め時よ!』
『またあいつか!?』
前搭乗者よりも余りに動きが良すぎるMiG-21を見て、カルタはその中隊長機にマリが乗っていることを理解したようだ。直ぐに大太刀の刃先を向け、ここが年貢の納め時だと告げる。見たことがあるテオドールは、直ぐにカルタの存在に気付いた。
そんなガンダムベレトに連邦軍もまた容赦なく集団で襲い掛かるが、一騎当千の戦闘力を誇るガンダムフレームであるベレトの前では、スクラップになるばかりであった。
『あ、あれがガンダムの力か…!』
残骸と化した友軍機を見て、連邦軍の将兵らは恐れおののき始める。雑魚を一掃したカルタは、こちらに構えるマリとシュヴァルツェ・マルケンに薙刀の刃先を向け、再び宣戦布告を行う。
『この私をコケにした罪で、もう投降は許さないわよ! 不死身であることを後悔させてあげるわ!』
『おい、あいつの登場を予定してたのか?』
「えぇ、期待してたけど。まさかこうもあっさりと…」
テオドールからカルタの介入は予定のうちであるのかという問いに、マリはそうであると答えたが、流石にこのど真ん中に降りて来て、連邦軍機を一網打尽にするなど思いもしなかったようだ。
全力で叩き潰す気満々のカルタのガンダムベレトに対し、何を考えてか、カティアのMiG-21が前に立ちはだかる。
『カティアちゃん、何をやって!?』
『ん? そんな博物館送りの旧型機で私と決闘でも申し込むつもりかしら?』
前に立ちはだかる自分らか見れば、博物館送りの戦術機に対し、カルタは呆気に取られて攻撃もしない。そんなカティアは自分らを黙って行かせてくれるように、怒り心頭のカルタに交渉を始める。中々肝が据わった物だ。
『あの、私はカティア・ヴァルトハイム、いや、ウルスラ・シュトラハヴィッツです! ヴァセレートさんに怒っていることは申し訳ありません。代わりに私が謝ります! ごめんなさい!』
『こ、こいつ! 何を言っている!?』
『謝る!?』
『何言ってるの!? カティアちゃん!』
そんなカティアは自分の真の名まで明かし、突撃砲を置いてマリの代わりに謝ると言えば、彼女の予想外過ぎる行動にカルタは困惑する。その謝罪は味方すらも困惑させ、マリですら何も言えなかった。
とんでもないカティアの行動にカルタは驚きの余り動けずにいたが、連邦軍がそんな謝罪に付き合ってくれるはずもなく、シュヴァルツェ・マルケンごと潰そうと一斉攻撃を仕掛けてくる。
海兵隊とISA仕様の重装備のスコープドック一個大隊による一斉射撃だ。更にこの一斉射撃にMSやPTのミサイル攻撃も加わる。
『何を固まっているか知らんが、攻撃のチャンスだ! 博物館送りと一緒に吹き飛べ!!』
『しまった!?』
「ちっ、こいつら! 可愛い子が謝ってるのに!!」
マリが最後に言った後に、一同はミサイルの嵐に呑まれた。
遅れてやって来たカルタ親衛隊と護衛部隊は、この攻撃でカルタ・イシューが死んでしまったのではないかと思い始める。
『いっ、イシュー様が!?』
『いくらこの攻撃でも…!』
流石にこの攻撃では、いくらガンダムフレームのガンダムベレトでも持たない。
そう思っていたが、予想は爆炎が晴れてから覆される。
ガンダムベレトの名前の由来、ソロモン七十二柱の十三番目の悪魔ベレト。詳細は省き、簡単に説明すればよく怒る大魔王であり、礼儀正しく恋愛専門の悪魔だ。これほどカルタ・イシューに似合ったガンダムはそうは居ない。
ベレトのみに搭載された特殊性能は、その名の通り搭乗者の怒りで自機の真の性能を解放させるものである。まだマリを捕えていないと言う怒りで、真の力を解放したカルタが駆るガンダムベレトは、連邦軍の精鋭たちが放った無数のミサイルを迎撃しきったのだ。更に恐ろしく、マリとシュヴァルツェ・マルケンの戦術機に殆ど損傷を与えずに。
『み、みミサイルを…!?』
『全部やりやがっただと!?』
『私たち、生きてます!』
連邦軍の将兵らがありえぬ光景に驚愕する中、カティアはあの状況で生きているという奇跡に歓喜する。
そんなことはお構いなしに、搭乗者の怒りで本来の性能を解放させたガンダムベレトは無数の連邦軍機に襲い掛かる。
『ぬぅぅぅ…! うぅぅぅッ!!』
『か、カルタ様が!?』
『怒っている! 怒っています!』
『な、なんだってんだ!?』
カルタ親衛隊の面々が怒る上司に近付くまいと離れる中、怒りのオーラを纏って襲い掛かるガンダムベレトに、無数の連邦軍機は一斉射撃を行う。
この攻撃を怒りつつも躱しており、ガンダムベレトは目に映る連邦軍機を次々と薙刀でまとめて叩き切るか、内蔵武器であるレールガンやビーム砲を撃って掃討する。その姿はまさに虐殺だ。連邦軍機は抵抗するが、潰されるばかりである。空中に居ても、射撃兵装で撃ち落とされるだけだ。
ガンダムベレトの鬼神のような活躍で、ベアトリクスたちを圧倒していた脅威も無くなり、更に目標への進路が拓けたので、マリは巻き込まれる前に進むと告げる。
「全機、巻き込まれて死にたくなかったら動く!」
『りょ、了解!』
この言葉に、一同は前の中隊長の如く従った。
あんなBETAよりも脅威なMSに目を付けられれば、周辺で散らばっているスクラップの仲間入りを果たすだけだ。レーザーヤークトを何度も敢行した中隊の面々は直ぐに、それを理解して先導するマリの後へ続いた。
『こ、こっちに来るぞ!』
『撃て! 撃て! 近づけるな!!』
単独でガンダムベレトが暴れる中、シュヴァルツェ・マルケンの接近に連邦軍の将兵らは畏怖し始める。
あんな旧型機の編隊に、自分ら連邦軍が手も出せずに一方的にやられていくのだ。それだけで士気は落ち、中には戦線を放置して逃げ出す機も続出する。近接戦闘が行える距離まで接近すれば、中隊を阻んでいた全機が戦闘を止めて逃げ出した。
『なんだあいつら? 逃げ出したぞ。怖気づいたのか? 情けない!』
『羨ましいな、我が軍なら銃殺刑だ』
自分らを前にして逃げた連邦軍機にグレーテルが呆れ返る中、クリューガーは羨ましがる。
立ち向かう連邦軍機も居たが、中隊の前では案山子に過ぎず、一瞬で突撃砲の連射を受けて倒れるだけだ。最終防衛ラインも突破し、最終目標であるシュタージ・ファイルの保管所までたどり着いた。
だが、最終防衛ラインはここであったらしく、今度はガンダムタイプの量産機が出てくる。量産型F91を初め、正式採用機のレイダーやカラミティ、フォビドゥン、ハイペリオン、ガンダムヴァサーゴ、ガンダムアシュタロンが出て来る。さらにゴジュラスやケーニッヒウルフ、シャドーウルフまで居る。
『っ! さっきの奴と同じ!?』
「まさかガンダムがこんなに!?」
ガンダムタイプのMS部隊の登場に一同は驚愕したが、怯まずに突撃砲や滑走砲による攻撃を行う。的確な射撃であるが、敵ガンダムタイプには全く通じない。敵の装甲は突撃級よりも硬いのだ。戦術機の兵装では、全く太刀打ちできない。
『攻撃が通じない!?』
『どうすれば!?』
迫ってくるガンダムタイプや巨大ゾイドに対し、攻撃を続ける中隊一同はマリに問う中、彼女は見えたガンダムベレトに向けて攻撃を行った。これにテオドールは、更に注意を集めてどうすると咎められる。
『馬鹿! 何をやってんだ!?』
「鈍い奴ね。あいつにこの化け物共の相手をさせるの」
『大丈夫なのか? あんな更にやばい化け物をこっちに呼んで?』
『こっちも巻き込まれない?』
「あんた等がいつもやってることじゃん。生き残るために頑張って」
咎めたテオドールにカルタのガンダムベレトに、このガンダムタイプや高性能ゾイド集団の相手をさせると答えれば、経験豊かな隊員らから巻き込まれないのかと問われる。
これに、マリは臨機応変に対応しろと言わんばかりの答えを出した。直ぐにグレーテルからの必死な指摘が入る。
『なんだその適当な指示は!?』
『臨機応変にやれっての!?』
『これなら大尉の方が良かった』
マリに命を預けた面々が、その適当な指示に後悔する中、怒るカルタが駆るガンダムベレトが、シュヴァルツェ・マルケンのもとへやって来る。
『そこかぁぁぁ!!』
『き、来た!』
「全機、上空にジャンプして散会!」
邪魔な雑魚を一振りで一掃したカルタは、東側の第一世代戦術機の集団を見るなり、恐ろしい剣幕を浮かべて迫って来る。物の数秒で戦術機とガンダムタイプ、高性能ゾイドが入り乱れる戦場にたどり着き、その全てを薙刀の一振りで両断する。
振るわれた薙刀にガンダムタイプや高性能ゾイドが切り裂かれる中、マリは振るわれる数秒前に上昇して散会を命じれば、中隊全機は巻き込まれずに済んだ。
『この化け物! これでも食らえぇぇぇ!!』
「馬鹿! そいつにそれは効かない!!」
圧倒的な装甲のガンダムタイプやゴジュラスを切り裂く薙刀の振りを躱した中隊であったが、ここに来てアネット機が勝手にガンダムベレトに長刀で挑んだ。
上を取ったと見て、斃せると思ったのだろう。それだけであのガンダムを斃せると思っていないマリは止めようとするが、アネットは聞かずに長刀を振り下ろす。
『へっ…?』
『この雑魚がぁ! 邪魔っ!!』
振り下ろされた長刀はガンダムベレトの片手に軽く止められた。無理もない、パワーが違い過ぎるのだ。虫けらのような戦術機に刃を振り下ろされた怒りに燃えるカルタは、その長刀の刃を砕き、更には地面に叩き付けてアネット機を戦闘不能にする。
『キャアアア!』
『アネット!』
『助けに行きます!』
「馬鹿! 行っちゃダメだって!」
アネット機が戦闘不能される中、彼女を助けようとイングヒルトやカティアは救出に向かう。これにマリは止めるが、間に合わずにイングヒルト機はやられてしまう。撃墜は免れ、コクピットがある部分は無事であるが、中隊は二機を失った。カティア機はギリギリで避けたようだ。
そのままガンダムベレトと交戦状態に入る。薙刀を避けるが、カティアは反撃を行はない。
『このままじゃカティアが!』
「私が行く!」
攻撃を避けているが、第一世代機じゃいずれはやられるので、カルタが自分を狙っていることを知っているマリは、直ぐにガンダムベレトに接近した。気付いたカルタは、カティアを狙うのは止めてマリに薙刀を振るう。
その薙刀を振るう速さは銃弾並みであるが、マリは機体の性能をフルに使ってそれを躱した。躱した後は空かさずに突撃砲や滑走砲を撃ち込むも、至近距離でもベレトの装甲を打ち抜くのは不可能であった。即座に二撃目が、マリの戦術機に振るわれる。
『死ねぃ!』
「きゃっ!?」
回避する時間がないため、爆発反応装甲付きの盾で防御したが、薙刀は想定外の威力であり、盾を持っている左腕が衝撃に耐えられずに砕け、その凄まじい衝撃はマリが居るコクピットまで届いた。この衝撃でマリは額を打ち付け、切れて流血する中、基地の方まで吹き飛ぶ。
空を旋回していたレイダーガンダムにぶつかり、更にはカラミティガンダムの近くに、マリが駆るMiG-21指揮官機型は落ちる。
落ちてきた敵機に、カラミティは直ぐにとどめを刺そうとしたが、上空のレイダーガンダムやフォビドゥンガンダムを纏めて切り裂いたガンダムベレトが迫り、反撃する間もなく、薙刀に両断された。
『今度こそ、死ねっ!!』
一気に三機のガンダムタイプを破壊したカルタのガンダムベレトに、マリは臆することなく対人用に取っていた閃光弾を発射し、目を眩ませた。
『ぐっ!? 何処だ!?』
相手の目が眩んでいる内にマリは離脱して施設の近くに機体を倒れさせた後、既に限界の機体から飛び降り、無線機で中隊全機になるべくベレトと戦わないように、最後の指示を出す。
「中隊全機に通達。これが最後の指令よ。私はあんた等の中隊長を助けに行くから、生き残るためになるべくベレトを戦わせないで。それと私の仲間に、脱落機の護衛をさせるから、心配は無用よ」
『あぁ、中隊長は任せたぞ!』
『あんたに期待するのは癪だけどね。頼んだよ!』
『大丈夫! 天子様なら出来るよ!』
『そうです! ヴァセレートさんなら絶対にできます!』
『ふざけないでね!』
『絶対に助け出せ! 出なければ殺してやる! 分かったか!?』
最後の指示の後に、予め待機させている仲間に墜落したアネットやイングヒルトを助けさせていると言って安心させれば、交戦している中隊の者たちからアイリスディーナを必ず助け出すようにと釘を刺された。
「ばーか。私も生きてもらわないと困るのよ。ムカつくけど」
最後のグレーテルにマリは絶対に生きて助け出さなければ、ルリの居場所へ辿り着けないので、彼女も必至である。
そんな彼女を迎え撃つべく、植民地海兵隊の海兵隊員らは防衛線を張り、手にしているパルスライフルやスマートガン、分隊支援火器を撃ちまくる。更には重機関銃に二十ミリまで配置しており、それまで景気良く撃ってくる。練度は連邦軍の標準歩兵とは大違いであるが。
「アパズレが来たぞ! 撃て、撃て!!」
その弾幕は人間をミンチにする過剰な物だ。これに驚いたマリは遮蔽物に身を隠して強力な手榴弾を何処からともなく取り出す。安全ピンを外せば、弾幕に当たらないように姿勢を低くし、敵が集中している場所に向けて投げ込んだ。
『グレネード!』
その声の後に手榴弾が爆発を起こし、防衛線を張っていた海兵隊員に大損害を与えた。
この隙にマリは右手にM92F自動拳銃を、左手にはCZ75自動拳銃を持って体勢を立て直す前の海兵隊員らに突っ込み、抵抗しようとする残った海兵らを一気に制圧する。
衛士の強化装備のまま出てきたので、動くたびに彼女のFカップが揺れていた。アイリスディーナには劣るが、それでも男性の目を引くことは間違いないだろう。
「さぁ、待ってなさい」
出入り口の防衛線を張っていた海兵隊を全滅させたマリは。奥に居るアイリスディーナの元へ向かった。