シュヴァルツェスマーケン もう一人のアイリスディーナ 作:ダス・ライヒ
「通報通り、彼奴らの宇宙船を発見しました。ですが、連邦が先に見付けたようで…」
「ぬぅ、愚民共に後れを取ったか…! おのれ!」
数分前、同じくマリが人海戦術で無理やり雇い入れた脱走兵や盗賊類などの者達より通報を受け、メイソン騎士団は保有するドゴス・ギア級宇宙大型戦艦一隻とハーフビーク級戦艦を初めとした数隻の護衛艦と共に駆け付けていた。
艦橋内にて、赤いサーコートを身に着けた騎士の部下から連邦軍に先を越されたことを知った隊長は、腰かけている椅子の肘掛を怒り任せに叩く。
そんなこの部隊の長を務める騎士に、参謀を務める丸刈りの頭の騎士は、逆に好機であると伝える。
「ですが、レバンテス殿。これは好機であります。彼奴等は機動兵器においては我々を上回り、更には数十名の英霊を従えているとの情報ですが、連邦が我らを楽にするために必死に戦っております。疲弊したところで我らが仕掛ければ…」
「ほぅ、楽にアガサの者どもが取り逃した魔女を捕らえることが出来ると」
「はい、おっしゃった通りであります」
その好機である理由を述べれば、レバンテスと言う騎士は直ぐに参謀の考えを見抜き、それを当てて見せた。
参謀は言った通りであると答えれば、双眼鏡を取り出してマリのVF-31Fジークフリートが連邦の追跡艦隊に向かったのを確認する。
追跡艦隊より出撃したイオクの重装備の部隊を迎え撃とうとした瞬間だろう。
先の話と同じく、マイクロミサイルは重装備の増加装甲でほぼ防がれてしまった。埒が空かないと思ったマリが、ミカルの指示の後に母艦まで後退していく。
一部始終を艦橋から見ていた赤の騎士たちは、今こそが出撃のタイミングであると判断する。
「魔女のバルキリーが母艦まで後退しました。今こそが出撃する時では?」
「うむ、連邦の雑兵共が、群れること以外に役に立つことが分かった。では、出撃しよう。それと、これは我が隊が‟自力‟で発見した物だな?」
参謀に問われたレバンテスは、捕縛対象を疲弊させてくれた連邦軍に感謝しつつ、出撃の命を出す。
だが、その前にやるべきことがあったのか、通報者たちを見ながら艦橋内にいる者達にあることを問い掛ける。
それは自分たちが通報を受けず、自力でマリを発見したかだ。
どうやらマリを裏切った通報者達を亡き者にし、捕縛の功績を自分たちメイソン騎士団の物にしようとするハラだ。
「はい、我々が捕縛対象を連邦の追跡隊と交戦している所を目撃。連邦より先に対象の捕縛するため、機動兵器で出撃しました」
「ふむ、そうだな。でっ、この我が乗艦であるドゴス・ギア級大型戦艦モーリックの艦橋に居る薄汚い者達は誰だ?」
「ど、どういう事だ!? 俺たちはあんた等にあの女の居場所を…! それに報酬を支払ってくれるって約束したじゃねぇか!?」
これを聞いた通報者達は、慌てふためいてレバンテスに抗議した。
だが、レバンテスは最初から通報者達を始末する予定であり、報酬など硬貨一枚たりとも払うつもりなど無かった。
「はい、我が艦に忍び寄った賊でございます」
「ならば切り捨てぃ! ここ以外でな!」
「はっ!!」
「い、嫌だ! 止めてくれぇ! は、離せ!」
「か、金は要らねぇ! だから殺さないでくれぇ!!」
レバンテスに問われた部下の一人が答えれば、彼は通報者達を処刑するように命じた。
通報者達が命乞いをする中、赤い鎧を着ている騎士たちは問答無用で彼らの髪の毛を掴み、艦橋から出て行く。
数分後、喉元を剣で描き切られた通報者達の遺体が宇宙に放り出され、無限の暗闇である宇宙の中を彷徨い始める。
邪魔者が居なくなったところで、レバンテスは搭載している機動兵器の出撃を命じる。
「よし、邪魔物は居なくなった! 搭載している機動兵器を出撃させよ! 下級兵共は奴らの進路を塞げ!!」
「はっ! レッドソード並びレッドランサー、レッドアックス、レッドメイス、レッドイーグル各隊は直ちに出撃せよ!!」
レバンテスの命令に応じ、指示を受けた部隊は母艦より発艦準備を行う。
先陣を切って出撃したのは、可変MSであるムラサメを中心に編成されたレッドイーグル隊だ。飛行形態のままカタパルトに装着され、そのまま打ち出される。
次に変形機能を持たない各騎士団で主力となっているグレイズやレギンレイズは、推進剤節約のためか、ゲターと呼ばれる無人輸送機に二機ずつ乗り込み、しっかりと固定してからカタパルトで打ち出され、マリの母艦である宇宙船目掛けて飛んで行く。
赤い粒子を撒き散らすジンクスⅢやアヘッドも同様であり、その無人輸送機で戦場へと向かう。
『各隊、全機発艦を確認しました! 新記録でございます!』
「ふん、我らメイソン騎士団はアガサの者共よりも早く出撃できてこそ当然。して、下級兵士共は?」
『何分、新顔が多いので、出撃に時間が掛かっております!』
「いつも通り、一人を見せしめに殺せ! そして彼奴等の前面に速やかに展開するのだ!」
『はっ!』
映像通信より見える部下から全機が素早く出撃を終えた報告に満足したレバンテスは、次に下級兵士たちの出撃状況がどうなっているか問う。
その問いに対し、部下は新米が多くて時間が掛かると答えれば、一人を見せしめに殺して急がせろと告げる。
下級兵士とは、ワルキューレが倒したか崩壊させた勢力の捕虜達を使って編成された部隊だ。扱いは消耗品同然であり、主に弾除け同然で前線に投入される。連邦軍と同盟軍の前哨戦で全滅に近い損害を受けたが、連邦や同盟の多過ぎる捕虜で再編された。
新顔は新たにワルキューレの降伏した多過ぎる連邦や同盟の将兵らであり、彼らは味方を殺すために再び戦場へ立たされている。
反連邦・同盟戦線と呼ばれる連邦や同盟に絶望した将兵らや故郷を蹂躙され、占領された将兵達で編成された大規模な部隊がワルキューレに存在するが、下級兵士に回された者達は古巣に対する憎しみを持たない者達ばかりだ。
そんな下級兵士たちは解体予定となっている旧式の機動兵器や鹵獲機に乗せられ、赤い騎士たちに脅されながら出撃していく。
バルキリーもあるが、VF-4ライトニングⅢやVF-11Cサンダーボルトなどの旧型機ばかりである。
彼ら下級兵士は先にマリ達が向かっている1979年の地球の前面に展開し、その進路を妨害する。
機動兵器が搭載できない旧型の戦闘艦もそれに加わり、捕縛対象に対する網を張る。
布陣が出来たところで、レバンテスは自分の艦隊に、連邦軍の追跡艦隊へ向けて牽制射撃を行うように告げる。
『下級兵士共の出撃は間もなく終える所です!』
「よろしい! ならば我らの仕事をするぞ! 砲門開け! 敵追跡艦隊へ向けて牽制射撃だ! 我が艦載機を援護するのだ!!」
「はっ! 砲術長、主砲開け! 目標は敵追跡艦隊! 牽制射撃だ!」
レバンテスが艦長に牽制射撃の命令を出せば、艦長は直ぐに復唱して砲術長に指示を出す。
指示に応じ、ドゴス・ギア級大型戦艦は僚艦であるハーフビーク級戦艦と共に連邦軍の追跡艦隊に向けて砲撃する。
この砲撃で先行していた数隻の駆逐艦や護衛艦が撃沈し、イオクの部隊の艦艇は引き下がり始める。それと同時に発艦した赤の機動兵器部隊はマリの仲間たちと会敵し、交戦を始めた。
「レッドランサー隊、捕縛対象と交戦開始!」
「よし、一機に畳みかけてしまえ!!」
[newpage]
時間は現時点に戻り、赤の機動兵器部隊に纏わりつかれたマリ一行は、その赤の騎士団より投降勧告を受けていた。
『こちらはメイソン騎士団十八番隊! マリ・ヴァセレート、直ちに我らに投降せよ! さもなくば貴様の母艦を撃沈する!!』
『こ、今度は赤い奴らが来たぞ!』
「どいつもこいつも、私の邪魔ばかりして!!」
投降勧告を行う赤の機動兵器部隊に対し、マリは苛立ち始める。
メイソン騎士団の乱入はイオクを初めとする連邦軍の追跡隊も予想外なのか、攻撃を止めてこの場で様子を窺う。
『な、なんだあの赤い連中は!?』
『レッドナイトです! 好戦的な連中でいつ撃ってくるか分かりません!』
『ならば奴らより先に!』
『お待ちを! 奴らはあのような振る舞いですが、一人当たりの腕はMS我が一個小隊分に匹敵します! イオク様はお下がりを!』
イオクがまた突っ込もうとしたが、メイソン騎士団の騎士たちの腕前を知る熟練の部下たちに止められる。
だが、他の連邦軍部隊はお構いなしに攻撃を続行する。
『いきなり出て来た赤い連中が、なんだってんだ!』
『性能も数もこっちの方が上なんだ! 皆殺しにしてやるぜ!』
『連邦の雑兵風情が! 我らメイソン騎士団に敵うと思っているのか!?』
自分等の母艦が砲撃される中、搭載機は構わず数の多さを生かしてメイソン騎士団に襲い掛かったが、返り討ちにされるばかりであった。
連携を取った戦法で三機一隊となって一機の赤いMSに攻撃する連邦軍機であるが、一瞬にしてフォーメーションを崩され、数秒の内に三機の連邦軍機は火達磨と化す。
そこからは虐殺状態と化し、連邦軍の将兵達は戦意を失い始める。
『な、なんだこいつらは!? 情報と違うぞ!?』
『威張り散らしてるだけの能無しじゃないのか!?』
『誰が動く的だなんて言ったんだ!?』
どうやら連邦軍はプロパガンダでワルキューレを過小評価しており、将兵達に楽に倒せる敵であると誇張していたようだ。
そのプロパガンダを疑うことなく信じていた将兵らは、話が大きく違い過ぎることを知って恐怖し、あろうことか逃げ出し始める。
『い、嫌だ! 話が違う!! 俺は逃げ…』
『逃がすか!』
余りにも違い過ぎる騎士たちの腕に、連邦軍機は逃げようとしたが、メイソン騎士団は逃がすはずが無く、逃げようとしたジェガンJ型の背中を、メイソン騎士団のジンクスⅢがランスで突き刺して撃墜した。
駆逐艦や護衛艦も同様であり、沈みゆく船から逃げようとする脱出艇まで、メイソン騎士団は容赦ない追撃を掛けて撃墜していく。例え機体から脱出したパイロットでさえも、赤い騎士たちは機体の手でパイロットを掴み、握り殺す。
『奴等め、遊んでやがる…!』
『な、何ちゅう奴らだ! まさか次は俺らを狙うつもりじゃねぇだろうなっ!?』
『残虐極まりない連中ね…!』
この虐殺劇を見ていたジグムント、ジークフリート、ジークリンデはメイソン騎士団に対し、嫌悪感を覚える。
イオクの方は次々と落とされる味方を見て、激昂して突っ込もうとしていた。
『おのれ野蛮人! このような蛮行をイオク・クジャンの前で! なにをする!? 離せ!!』
『おやめください! イオク様! 幾ら我らでも奴らに敵いませぬ! 本隊の到着を!!』
無論、部下に止められ、本隊が到着するまで自分の部隊がある位置まで後退し始める。
連邦軍の追跡隊が退いた所で、メイソン騎士団の機動兵器部隊は次なる標的をマリたちに向ける。
『ふん、準備運動にもならんわ。さて、先の見せしめはご覧になられたか? マリ・ヴァセレート公。我らに歯向かえば、連邦の愚民共と同じ末路を辿ることになりますぞ』
『ゴルザーの言う通り、武器を収め、我らと同行なされよ。貴殿の手下どもは無傷で保護いたすことを約束しようぞ』
先の虐殺劇は、マリに対する見せしめであったようだ。
周囲を包囲し、再び投降勧告を行うメイソン騎士団であるが、これ程の惨劇を見せられても、マリが首を縦に振ることは無かった。
「ばーか、あんたみたいな雑魚相手に調子こいてる連中についてくるわけないでしょ。もっとも、あんた等が私より強いなら、ついて来ても良いけど」
『き、貴様! どうやら先の雑兵共と同じ末路を辿りたいようだな!! だが貴様は不死身だ! 死ぬことは無い! 捕らえた後、不死身であることを後悔させてくれるわ!!』
『あぁ、やっちまったよ…この俺様のバルキリーが出来ていないっちゅうのに…!』
投降勧告に挑発で答えたマリに対し、ジークフリートは自分が乗ろうと思っていたVF-31Jジークフリートに乗れず、また死ぬのではと思ってしまう。
挑発で激昂した騎士が乗るグレイズが、マリのバトロイド形態であるVF-31Fにモーニングスターを叩き付けようとスラスターを吹かして突っ込んで来る。
あからさまに避けられる攻撃をマリは避け、背中に蹴りを入れ込んで両腕のミニガンポッドを撃ち込むも、グレイズはナノラミネーター装甲なので、実弾は全て弾かれた。
『ナノラミネーター相手では!』
『俺もこんなベニヤ板なMSより、そっちの方に乗りたかったぜ!』
ミカルがVF-31Fの装備ではナノラミネーター装甲を持つMSには勝てないと言う中、ジークフリートはジムⅡよりもその装甲を持つグレイズに乗りたいと悔しがる。
『効かんわ!!』
反撃に出るグレイズに対し、マリは放たれる打撃を軽やかに避け、今度は二振りのナイフで胴体を斬り付ける。
ただ斬り付けただけでなく、装甲が薄いとされる関節部などだ。関節部を斬り付けられ、真面に動くことが出来なくなった赤いグレイズは、直ぐに撤退を始める。
『か、関節部が!』
『おのれ、思い知らせてくれる!!』
戦闘不能になった赤いグレイズがジンクスⅢに母艦まで連れていかれる中、メイソン騎士団のMS部隊は一斉にマリ達に向けて攻撃を始める。
そればかりか、進行方向に網を張らせていた下級兵士らのバルキリーまで差し向けて来る。
『くそっ、奴らバルキリーまで持って来たぞ!』
『連邦軍ならどうにかなるが、ワルキューレ相手ならこの数はキツイな! 柿崎、出られるか!?』
『おっ、遂に俺の出番かな? まぁ、大船に乗ったつもりでいてくれ! バーミリオン3、じゃなかった。柿崎、出撃します!!』
更なる敵の増援を見たミカルは、組み上がったVF-1Aバルキリーに空間戦闘向上装備であるファウストパックを装着させて出撃させようとした。
乗っているのは低級の英霊である柿崎速雄だ。生前でも彼はこの機体に乗った(?)とされ、扱いに離れている。
ミカルが出撃を要請すれば、待っていたと言わんばかりに柿崎はファイター形態の自機のスラスターを吹かせ、前面より向かって来る敵機の迎撃に向かった。
他にも下級兵士等と同じVF-4ライトニングⅢも組み上がったので、乗り方を教えた英霊に乗せようかと思ったが、ジークフリートが乗りたいと言って来る。
『組み上がったわ。誰か代わりに…』
『俺だ。俺を乗せてくれ。こんな博物館入りより、そいつの方がマシだぜ。なんたってバルキリーだしな』
『そうか。では、代わりの者に乗せよう』
『ありがとよ』
このジークフリートの頼みに、ミカルは乗った事も無い素人を乗せるより乗り方を分かっている者に任せた方が良いと判断し、彼にVF-4ライトニングⅢを任せた。
尚、下級兵士とジークフリートの搭乗機とも最終生産型であるG型である。ワルキューレが連邦軍と初めて交戦した際は現役であったようだが、性能の差でか、全て退役になったようだ。
二機の旧式では心持たないと判断してか、最新鋭の高性能バルキリーであるSv-262に乗るジグムントがジークフリートと柿崎の方へ回る。
『そんな旧型二機じゃすり潰されるのがオチだ。加勢するぞ』
『おいおい、この俺はシミュレーターじゃ…』
『俺だって英霊だって…』
『それがどうした? 模擬戦と実戦は違う。お前たちは抜けた機を撃墜しろ』
ジグムントが戦おうとする二名に指示を出す中、同じ最新鋭のバルキリーに乗るマリは依然として騎士たちが駆る機動兵器と交戦していた。
流石にVF-31シリーズの元の持ち主であるワルキューレなのか、その性能と装備の威力は知っており、ナノラミネーター装甲を持つグレイズ系統のMSを前に出して攻撃を仕掛けて来る。
同じくミカルが乗っているVF-25Gも持っているためか、グレイズやレギンレイズを前に出して攻撃を仕掛けて来た。
「ちっ、硬すぎて…!」
『駄目だ! こいつ等はこの機体の特性を知っている!』
『くっ、エネルギーが…!』
元の持ち主相手に、マリ達は苦戦を強いられていた。ストライクガンダムに乗るジークリンデもまた、機動性が低いI.W.S.P装備で宇宙空間を高い機動性で飛び回るジンクスⅢやアヘッド、ムラサメに苦戦を強いられる。
『ふん、所詮は素人の集まりよ。残りは宇宙船を抑えろ! 前方に突っ込んだ三機はいずれ弾薬を消耗してやられるだろうて!』
『はっ!』
グレイズリッターに乗る指揮官は、このまま行けばいずれ勝利は自分らの物となると判断し、対空弾幕を続ける宇宙船の拿捕を、待機している残りのジンクスⅢやムラサメ部隊を命じた。
それに応じ、複数のランスを持ったジンクスⅢは乗っている無人輸送機から飛び出し、宇宙船に向かっていく。三機ほど脇に兵員を乗せた小型艇を抱えている。ムラサメは飛行形態に変形し、散開して宇宙船へと向かう。
向かって来る複数のジンクスⅢに対して、宇宙船に搭載されている対空砲と張り付いている三機ほどのジムⅡがビームを撃って近付けないようにするが、ジンクスⅢに乗る騎士たちはそれを避けつつ、じわじわと宇宙船までの距離を縮める。
『はっ! そんな攻撃が我らメイソン騎士団に通じる物か!』
雨あられと飛んでくる対空弾幕を避けつつ、宇宙船へと迫る。
『よーし、この程度のオンボロ船、エンジンにミサイルをぶつければ…!』
『っ!? 三時方向よりビーム砲!?』
先行していたムラサメが宇宙船をミサイルの射程に捉えたところで、ミサイルを撃ち込もうとしたが、側面から来た高出力のビームで一機が被弾して爆散した。
騎士が駆るグレイズやグレイズリッター、レギンレイズを相手にしていたマリがビームの飛んできた方向を見れば、遠くの方に数えるのも嫌になるくらいの宇宙船が居た。
攻撃してきた辺り、宇宙船は軍艦なようで、そこから無数の艦載機がこちらに目掛けてミサイルと共に向かって来る。
「なにあれ…!」
『あ、ありゃあ同盟軍だ! おたくらは同盟軍にも狙われているようだな!』
通報者は各地に散らばって通報していたので、惑星同盟軍がやって来てもおかしくない。
だが、やって来たのは千隻以上の大艦隊だ。マリ一人に対しこの大艦隊はおかしいとしか言いようがない。宇宙船の船長である老人は、厄介ごとを持ち込んだマリに対し文句を漏らす。
メイソン騎士団や連邦軍も同盟軍の大艦隊の襲来に気付き、大艦隊が来る方向に視線を向ける。
『なんと恐ろしいことか! もう一息の所で、宇宙の愚民共の大群とは!?』
『男爵、どうします!? 我が隊のみでこの大群の相手など…!』
『雑魚相手にこれほどまでの雪辱を呑まされるとは…!』
凄まじい物量で迫る同盟軍の艦隊を見て、メイソン騎士団の騎士たちは悔しがる。
連邦軍も同様であり、数で劣る自分らでは勝てないと判断し、撤退の準備を始める。
当のイオクは、無理を押し通しでもマリの所へ行こうとするが、もちろん部下たちに止められる。
『イオク様! お止めください! あの物量を相手では!!』
『離せぇ! ここで退いてはカンチャーナに顔向けできん!!』
サッカのスラスターを吹かせ、マリのVF-31Fに向かおうとするイオクを、部下たちの機動兵器が全力で止める。
一方でもマリ達も、数えるのが馬鹿らしくなるほどの物量で迫る同盟軍に対し、絶望しきっていた。
『な、なんじゃこの数は!? どう見ても俺らに対しての戦力じゃねぇぞ!!』
『我々を倒すついでに、この世界を手中に抑えるつもりだろう。諦めるしかない。ヴァセレート、撤退の用意を』
『流石にこの数じゃ、弾薬が幾らあっても足りないわ。撤退を』
「うるさい…! VF-31用のアーマードパックがあったでしょ? あれを出しなさいよ。反応弾もあるんでしょ?」
元ナチスの超人兵士三名が恐ろしい物量で迫る同盟軍を相手にするのは不可能だと判断し、マリに撤退を進めたが、もう少しでルリに会えることを諦めきれない彼女は、母艦に向けてアーマードパックの要請をする。
どうやら一人であの大艦隊と戦うようだ。戦おうとするマリの判断と、反応弾が自分の宇宙船にあると聞いた老人船長は驚きの声を上げ、彼女に向けて怒鳴り散らす。
『あ、あんな大艦隊と一人で戦う!? それにわしの船に反応弾だと!? お前らなんて危ない物をわしの船に運び込んだんだ!? お嬢ちゃんを助けると聞いて、わしの命を張る勢いでここまでつきあったというのに…! わしはもう降りるぞ!!』
反応弾の恐ろしさを知っている老人は、自分の船にそれを載せたことに怒りを現し、ここから逃げようとしていた。
老人が自分の一団から降りると聞いたマリは、頭を抱えてどうやってこの状況をくり抜けるか苛立ちながら必死に考える。
「なんでどいつもこいつも私の邪魔ばかりするのよ!? あぁ、もう! なんでこう裏目に出るの!? 私に一体何の恨みがあるのよ!?」
遂に運に見放されたか、マリは苛立ちながら打開策を考えるが、どう考えても思い付かない。出る結論は撤退する以外に無かった。
『マリ、もう駄目だ! 撤退するんだ! いくらアーマードパックでも、この数相手では!』
『そうよ! ルリちゃんは勇者よ! それに信頼できる強い仲間も居る! これ程の数、必ず退けるわ!!』
ミカルやリンダにこの場から撤退するように言われるマリだが、混乱状態である今の彼女には二人の言葉は入ってこない。
やがて同盟軍の先発隊がマリ一行を捕らえた瞬間に、ご都合主義か、奇跡とも言うべき事が起こった。
『な、なんだありゃあ!?』
『これは、まさか…!? 次元震!? こんな時に!?』
幾つもの世界を融合させる原因を作り出した次元震が、このタイミングで発生したのだ。
次元震とは、自然災害を上回る大災害だ。奇跡か運でも良くない限り、決してその死から逃れることは出来ない。
一番にも脱出しようとしてか、メイソン騎士団と連邦軍、同盟軍は戦闘を止めて一目散に撤退し始める。
『は、早く逃げなければ! あれに呑み込まれた一巻の終わりだ!』
『な、なんだとォーッ!? それじゃあ早くずらかろうぜ!!』
『みんな早くわしの宇宙船に乗り込めェ! 次元転移を行うぞ!!』
そんな大災害に見舞われたマリ一行は直ぐに逃げようとしたが、発生した次元震が近すぎた為、逃れることは至難の業だった。
その証拠に、同盟軍の大艦隊は次元震の影響で宇宙空間に発生した様々な災害を受け、壊滅状態に陥る。連邦軍の追跡艦隊もこの災害に巻き込まれ、幾つかの艦艇が大破し、操舵不能と化していた。
『おのれ、逃さんぞ!』
『イオク様! もう無理です! 母艦に戻ってください!!』
『は、離せ! 止めろお前たち!』
一方でのイオクは、こんな状況でもマリを捕らえることに諦めがつかないようだったが、部下たちに無理やり母艦まで連行された。
『マリちゃん、何してるの!? 早く戻って!』
リンダが早くマリに母線に戻るように言ったが、彼女はこの状況を何らかの好機と捉え、1979年の地球へと降り立とうとした。
『だ、駄目だ! 舵が効かん! 呑み込まれる!!』
『うわぁぁぁ!!』
『きゃぁぁぁ!!』
だが、マリを含める一行は次元震で発生したブラックフォールのような時空の亀裂に呑み込まれ、この世界とは違う何処かへと転移させられた。