シアトルアイショット   作:CanI_01

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パレードの終わり

幸いドローンにまつわる事故やトラブルは何も起きなかった。

後でドローンを解析したところしっかり爆弾が搭載されており、場合によっては死者が出るレベルの代物だったのだが水際で食い止めたというわけだ。

後から知らされたところ、あたしが爆弾を見つけた時点で実行犯のミカエルはマカリスターさんが雇ったランナーチームにより捕獲されていたらしい。

もし、彼らの対応が無ければ爆弾ドローンを1つ発見した時点でリモートで爆破されていたことだろう。

自分の勇み足が皆を危険に晒したと言う事実が爆弾発見に沸き立っていた気持ちに冷水を浴びせ、恐怖すら湧き上がる。

 

とは言え、この時のあたしはまだその事実を知らず揚がったテンションに乗って次々にドローンを無力化していた。

恐らくミカエルの確保が無ければマカリスターさんから何かしらの警告があったのだと思う。

 

何はともあれ無事ドローンを除去し飼い主に褒めて貰おうとする犬のようにマカリスターさんのところに云って冷水をぶちまけられた気分になったわけだ。

もちろん、マカリスターさんも悪意があって言っているのではないのはわかるのだが。

 

「責めてる訳じゃないんだ。どのリスクを取るかの話だったからな。

良くやってくれたし、迂闊な指示を出せば連鎖爆発もあった。それを阻止したセンスは最高だ。

ただ、覚えていて欲しいんだ。」

 

あたしは泣きそうになる心を押し殺し笑顔を浮かべる。

 

「ありがとうございます。とりあえず今日は結果オーライと言うことですね。」

 

そんなあたしの心情を見透かす様に、マカリスターさんは微笑む。

 

「そのとおりだな。賭けも嬢ちゃんの勝ちだ。俺が破産しない程度に行く店選んで誘ってくれ。」

 

あたしは大きく頷く。

 

「わかりました。では、あたしはパレード追いますね。また、連絡します。」

 

そして、あたしは駆け出した。

悔し涙が流れ出す前に。

 

とは言え、パレードから随分遅れているのも事実でのんびり歩いていてはパレードの終着に間に合わない。

片手落ちとは言え、あたしも守ることに貢献したパレードだ。せっかくならフィナーレは見届けたい。

祭りを楽しむ人達をかき分けパレードの終着点であるクライングウォールを目指す。

 

クライングウォールはビクソンビルディングの地下に描かれた壁画だ。

2039年に起きた激怒の夜の風景をその惨劇を生き延びたオークやドワーフの画家によって描かれた陰鬱で闇を塗り固めたような作品だ。

幅12m高さ6mの長大な壁画で見るものにまざまざと激怒の夜の凄惨さを痛感させる。

この地下は観光地であり、教育施設である。

恐らく今日のパレードに参加している学生たちもエレメンタリースクール時代に遠足で訪問していることだろう。

それなりに広い施設ではあるがパレードのメンバーと聴衆を全て収納できる規模はない。

だから、今日はパレードの終着はこのビルの前でこの壁画をAR投影した状態でウイリアムが締めの話をして終わりだろう。

 

そんなことを取り留めなく考えながら進んでいるとパレードの音楽が聞こえ、姿も見えてきた。

どうやら間に合ったらしい。

 

テロなど知らず楽しそうに必死で楽器を演奏する子供たちを見ると不覚にも涙がこぼれる。

少なくとも、あたしはこの子達の笑顔を守る役には立ったのだ。

 

そして、パレードは終わりウイリアムの言葉が聞こえる。

 

「風化させない。忘れない。生かしていく。そのように意識して特別に何かするのではなく、皆が共に良き隣人と感じることができれば素晴らしいと思います。今日という日がその足がかりになると私は信じています。」

 

本当に一歩づつ進んでいかないと。

 

さて、仕事は終わりにしてお昼にしよう。

ミーシャの店もそろそろ暇になっていることだろう。

 

あたしは軽い空腹を感じながらお目当ての旧友の店を目指して祭りの喧騒に背を向けるのだった。

 




クライングウォール
『Seattle2072』より。
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