シアトルアイショット   作:CanI_01

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正論とそれぞれの事情

ソイカフェとソイティーの良い香りが広がる。もちろん合成フレーバーだが、あたしには自然に感じられる良い香りだ。

 

「で、なんで複雑なの?」

 

ソイカフェで軽く唇を湿らせるミーシャ。

 

「そもそも治安が悪いと感じる原因はどこにあるの?」

 

治安とは何か。

 

「一番大きいのは自分が事件に巻き込まれたり目撃することよね。後はメディアの情報で事件が頻発してるとかよね。」

 

チクリとした違和感を感じる。

何かが違うような。

 

「そう、大きいのは事件の頻度。例えば誰かが大怪我している、殺されている。

それを目撃したり、巻き込まれたり、聞いたりする。

そういった共有するイメージなのよね。

もちろん、イメージを想起させる原因はあるから普通はある程度連動してくるわけだけど。」

 

確かに当然そうなるはずだ。

でも具体的な数字に現れないのはなぜだ?

 

「つまり事件は起きてるけど、事件として処理されてないと言うこと?」

 

にやりと悪い笑みを浮かべるミーシャ。

 

「そう。タコマのナイトエラントは通報から48時間以内に事件の分類を行わない事で有名なの。

彼らは解決できるかどうか、解決する意味があるかを考えてから、それが事故なのか事件なのか割り振るわけ。」

 

唖然。

普段は比較的犯罪に対して厳格な軍曹と関わっている性で、どうしてもナイトエラントに腐敗のイメージを持てないでいる。

 

「それは確かに治安イメージと統計データがずれるはずよね。」

 

その言葉にミーシャはしてやったりと牙を剥いて笑う。

 

「てのが、わかりやすい理由ね。」

 

すでに結構込み入ってないのかしら?

 

「これに犯罪組織の抗争が絡んでくるのよ。」

 

犯罪組織に関しては今までほとんど絡んで来ていないため本当に苦手だ。

 

「元々タコマは日本人を含めて東洋人の多い街なのは知ってるわよね?」

 

軽く頷く。

タコマにはシアワセの北米本社もあるし昔から日本人が多い。

また、チャイナタウンもあることからもわかる通り中国人も多い。

 

「と、なるとエスニックシンジケートとしてヤクザが幅を効かせるようになるわよね?」

 

確かに海外で同郷の者に会うと安心する気持ちはわかる。

とは言え犯罪者と取引するのには、どうも、抵抗がある。

 

「理屈はね。でも、犯罪者と取引するものなの?」

 

ミーシャが疲れた笑みを浮かべる。

 

「必要があればね。この必要さに犯罪者の抗争が絡んでくるわけよ。」

 

頭の中には最近リメイクされた禁酒法時代のマフィアトリデオが浮かぶ。

 

「でも、結局それで支払ったお金が犯罪組織の活動資金になるわけでしょ?」

 

嫌そうな顔をするミーシャ。

 

「それはその通りだけど、払わないと仕事にならないなら仕方ないじゃないの。」

 

あたしは今ひとつ状況を理解できないままに問い続ける。

 

「でも、明確に犯罪行為なら流石にナイトエラントも無視はできない訳でしょ?」

 

「明確ならね。安いメニューで長時間居座る客や態度の悪い客、そんなのが増えたり近所での喧嘩とかが増えたりする訳よ。食品配達ドローンが何故か到着しないとかもあるわね。」

 

確かに少しの支払いで嫌がらせが無くなるなら安いものだが、何かすっきりしない。

ミーシャもあたしの葛藤が理解できるのか少し寂しそうな顔をしている。

 

「まあ、立場が違うから理解してくれとは言わないけど、ダニーからそんな目は、向けられたくないわね。」

 

あたしはどんな顔をしているのだろうか。

友人を犯罪者として糾弾するかのような顔をしてるのだろうか。

 

「ごめんね。ちょっと頭整理してから、また連絡するわ。ご馳走様。」

 

あたしは悄然と立ち上がる。

 

「気持ちはわかるけど、わかってほしくて、ごめんね。」

 

あたし達は顔を見合わせくすりと笑う。

 

「大学時代にもよくあったわね。」

 

ミーシャも懐かしそうな表情を浮かべる。

 

「そうね。あなたは昔から頑固だから。」

 

「ふふ。また、連絡するわね。」

 

そして、オンラインで支払いを済ませあたしは店を出る。

考えをまとめないといけない。

 




エスニックシンジケート
今回の話では民族的な結束による犯罪組織のこと。
シャドウラン世界ではオークなどの種族で固まっている犯罪組織やギャングもエスニック系と呼ばれるので注意が必要。
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