俺は気がつくと一面に緑広がる平原にたたずんでいた。
遥か遠方の山の山頂にはうっすらと雪が積もっている。
大昔のシアトルはここのように美しい自然を持っていたようだが、現代には残されていない。
間違いなく、ここはシアトルではない。
俺が呆然としていると頭上から声が響いてきた。
「ようこそ、ヴァルハラへ」
それは背中に純白の翼を背負った甲冑姿の女性だ。
その容貌は北欧系の整った顔立ちをしている。
ガキの頃に牧師の話で聞いた天使のようだ。
「ヴァルハラだと?」
「そうです。我らが主神たるオーディン様しろしめす地ヴァルハラ。
その外縁部にある試練の地と呼ばれる場所です」
意味がわからない。俺はカルトにでも拉致されたのか?
「混乱させてしまい申し訳ありません。
現世であなたは亡くなられました。」
「死んだ? 俺が?」
「ええ。最後の詳細は伺っておりませんが、この試練の地に来られていることを考えると勇士としてふさわしい戦いの中で亡くなられたものと思われます。」
ろくな生き方はしてないが死んだと言われると、もう少しと考えてしまうのは未練だろうか。
「で、俺はこれから地獄行きとか言われるわけか?」
正直天国にいけるようなご立派な生き方はしていない。
地獄行と言われた方がしっくりくるのが事実だ。
「とんでもありません。あなたには選択肢があります。
これからヴァルハラに入るための試練を受けるか、受けないかです」
輝くような笑顔で天使はとうとうと説明を続ける。
「ヴァルハラってのは何だ?」
「ヴァルハラは来るべきラグナロクにおいて巨人族と闘うためにオーディン様が勇士を集めている世界です。
ヴァルハラでは日々英気を養うために終わり無き宴が繰り広げられています。
そこではお酒も食事も、女性も思いのままです。
もちろん、勇士たるもの戦いを求めることもあるでしょう。
その時には悪辣な巨人どもの先兵を打ち払い、その実力を磨くこともできます」
ゴクリと喉が鳴る。
うますぎる話だが死後の世界だ、現実感がないのも当然だろう。
「あんたのような美人がいるのか?」
すると天使は鈴を転がしたようにコロコロと笑う。
「天上の美姫に比べれば私など醜女のようなものです。」
この天使でもこれまで出会った中で群を抜いて美人なのにもっと美人がいるだと?
それで俺の心は決まった。
「試練てのは何をすればよいんだ?」
俺の問いかけに天使は微笑み、俺に試練の内容を伝えた。
「試練とは勇士であることを証明するために巨人たちへと挑むことです」
「任せろ! さあ、俺はどこにいけばいい!」