シアトルアイショット   作:CanI_01

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それぞれの事情

同刻、ダウンタウン ナイトエラント中央署

 

黙々と事務処理をしているカティ。

コムリンクから呼び出し音が響く。

連絡相手はカレン・ワード。ナイトエラントのシアトル署長だ。

カティと署長の間には通常の指揮系統であればかなりの人数がいる。直接連絡があるとは普通の対応ではない。

 

「はいガンダーソンですが。」

 

落ち着いたような、少しいらだったようなワード署長の声。

 

「ガンダーソン巡査部長。あなたの報告書確認しました。コリン・ディビスについては現在潜入捜査中です。捜査を阻害しないようにしてください。」

 

コリン・デイビスはダニーから送られてきた顔写真のナイトエラントだ。

 

「誘拐組織のですか?」

 

「機密事項に該当するので詳細は話せません。本来は彼が潜入捜査していることも話せないのですが、あなたはこれを伝えないと捜査しかねないので特例として伝えています。」

 

違和感が残る。ワードが直接連絡するような話だろうか。

 

「わかりました。小官はこの件について関与いたしません。」

 

受諾の返事にも関わらずいらだちが増したようなワードの声。

 

「大変結構です。引き続き励んでください。」

 

ぷつりと切れる通信。

 

「あの馬鹿め変なやまに首突っ込んだな。」

 

昼休みまで普段通り仕事をこなし、ランチに。

今日は出動も、なさそうだ。恐らく1日書類仕事だろう。

 

同刻、プヤラップバーレーン サニーサルボス

 

閑散としたゲームセンター。設置されているゲームの多くは昔ながらのレトロゲームで、一部ARゲームも並んでいる。

早朝と言う事もあり客はほとんどいない。

 

その閑散とした店の奥でアーケードゲームで対戦しながら会話を交わす二人の男性。

 

「と、言うわけで人探しをしているんですよっと。エンゾの兄貴もお好きでしたよね、ダニー・ウエスト。」

 

話しかけているのは、そして軽く技を決めたのは、ランナーのトロキチだ。

相手の男もヒューマンながらトロキチに負けない筋肉を持つ男だ。

 

「そりゃあ、俺だってダニーちゃんの手助けはしてやりたいけどな、立場があるからなー。」

 

チラリと手元にある冷めきったピザに目を向ける。

 

「何もファミリーを動かして欲しいとは言ってませんよ。ちょっとした情報だけでもお願いできませんかねっと!」

 

エンゾのガードが間に合わずクリーンヒットしKO。

 

「ちっ。ラグリやがった。」

 

勝敗に拘りもないのかもしゃりとピザをかじる。

 

「まあ、判る範囲だけだぞ。資料よこせ。」

 

データを送るトロキチ。

 

「確定ではありませんが、ダニーを誘拐した3人はカタギのようなのですが、共通して登録されていた連絡先がそこのコミュニティセンターだったんですよ。

で、さっきダニーから届いた現在地も場所が一致するので確定なんですが、ここについてご存知ですか。」

 

エンゾはコーラをぐびり。

 

「地下に監禁施設持ってるコミュニティセンターとか嫌だねぇ。そう言う仕事はプロに任せれば良いのにな。」

 

どうでも良い事を呟きながらデータを調べていく。

 

「フィニガンに保護料は支払ってるようだが、えらく払いが良いな。ナイトエラントのパトロール中の休憩場所として契約しているとあるな。」

 

嫌な顔をするトロキチ。

 

「つまり、ナイトエラントがいる可能性があると?」

 

エンゾが首を横に振る。

 

「常駐していると思った方が良いだろうな。」

 

肩をすくめるトロキチ。

 

「ヒューマニストのクズをぶちのめすだけの簡単なお仕事とは行きそうにないですね。」

 

「フィニガンはここに絶対に近づかないように言われてるようだな。だから、俺たちが襲いかかることはないから安心しな。」

 

「せめてもの安心ネタですね。」

 

トロキチは残りのピザをまとめて口に押し込み席を立った。

 

「じゃあ頑張って来ますので、マフィアの神様にでも祈っといてくださいな。」

 

「おう、父なる神の加護があらんことをーってな。」

 

同刻 レントン シダー河川公園

 

今日も人通りの多いシダー河川公園。

白のマーメイドラインのワンピースを着たマリアは桜を見ている風情でそぞろ歩く。

背後のアデーレとの会話はサブボーカルマイクだ。

 

「フィクサーからの情報ですか?」

 

小さく頷くアデーレ。

 

「はい。ランナーからの情報らしいのですがレントンのコミュニティセンターの地下にゼーダークルップの社員が囚われている、と。」

 

視界にオーバレイされるコフィンのような所に囚われているスミス氏の画像。

タイムスタンプはつい先程だ。

 

「撮影者の位置的に見て、撮影者も囚われているわね。スミス氏の救出作戦に便乗したいと言うところでしょうか。」

 

「恐らくは便乗できれば程度の意図と小銭目的ではないかと。」

 

地面に目を走らせる2人。

マリアのイヤリングが静かに落ちる。

流れるようにイヤリングを拾う動作で地面を調べる。

わずかな血痕。

 

「ここで襲撃されて連れ去られたと言う感じですかね。」

 

「恐らくは。」

 

周囲を見回す。

 

「ここから連れ去るなら車ですか。駐車場に入れても入れなくても目立ちそうなのですが、ナイトエラントからは何の情報もありませんか?」

 

「ございません。確かにシダー河川公園で暴行事件があるとナイトエラントへの通報があったようですが、巡回警官が駆けつけた時には通報者も被害者も姿はなかったようです。」

 

首をかしげるマリア。

 

「ナイトエラントにしては妙に手際が悪いと言うか、やる気が無いというか。不思議な感じですね。」

 

「念の為ジョセフがコミュニティセンターについては調べています。」

 

まるでタイミングを合わせたかのようにマリアの視界にジョセフからのメールがオーバレイする。

ナイトエラントの小隊が常駐していること、セキュリティホストを持っていること。

つまり、大変面倒であること。

 

「致し方ありません。今日の夜にでも侵入しましょう。FRTが到着するまでに脱出すれば問題はないでしょう。潜入ルートが見つかれば連絡ください。」

 

昼頃 プヤラップバーレーン トロキチ達の住居

 

「つまり、ナイトエラントの小隊が駐留していて、地下の1室がマジカルロッジになっている。マトリックスホストも多分あるからダニーの支援もあてにならない、と。」

 

エルとトロキチは一旦家に戻り打ち合わせ中。

目の前の机にはコンビニで買ったソイカツレツが並ぶ。

 

「ナイトエラントかアレスの秘密研究所じゃないの、ここ。」

 

カツをモグモグ。

 

「そうなるとダニーは非人道的な実験の被験者だな。」

 

ムシャムシャり

 

「どこの映画の設定なのかしらーって感じよね。ダニーは下手に動かないで鍵だけ開けてもらうのが良いかもねー。」

 

そんな情報交換の中トロキチのコムリンクが鳴る。

相手はカティだ。

 

「へい。MIBのトロキチです。」

 

一瞬の沈黙。気を取り直して話し始めるカティ。

 

「警告だ。お前たちの絡んでる件はナイトエラントのプロジェクトだ。手を引いた方が良い。現地には正規スタッフも常駐しているぞ。」

 

肩をすくめるトロキチ。

 

「あいさー。参考にさせてもらいまーす。」

 

プツリと切れるコムリンク。

 

「嫌だねぇ、本当に。」

 

「本当に嫌ね。とりあえず優秀なデッカーの協力は得られそうなのがせめてもの救いかしらね。」

 

「ダニーにご執心の奴が多いから今回は味方が多いな。」

 

「そうね。まあ、その分失敗されたら恨みをだいぶ買いそうだけど。」

 

彼らはそのまま食事を済まし情報とアイテムの調達のために再び街に繰り出していく。

 




エンゾ
プヤラップ地区のマフィアを取り仕切っているカポであるエンゾ・ギアネリー。
ダニーとの関係はオリジナル。
Seattle Sprawl Digital Box のキャラクターカードより。

フィニガン
レントン地区を縄張りにしているマフィアファミリーであるフィニガンファミリーのこと。

サブボーカルマイク
のどに取り付けるマイク。
慣れると外に声を出さずに会話ができる。

マジカルロッジ
その術者の様式の結界として機能する。

MIB
メン・イン・ブラックの略。
ただの悪乗りのジョークで意味はない。
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