ジリジリと時間だけが過ぎていく。
トロキチ達は今晩には仕掛けると言っている以上あたしにできるのは待つことだけだ。
ホストを制圧して悠々自適に脱出すると言う夢想にはまりかけるが、夢を見るべきではないだろう。
昼頃に妙にドロリとした水が差し入れられた。
睡眠薬入なのか、あるいは栄養成分いりなのか。
奇妙なのは、この水があたしとSKのドワーフにしか与えられていない。
すでに半日以上何も口にしていないことを考えると今晩の襲撃時に脱水症状を起こすかは微妙なところだろうか。
少しづつ飲んで行くのが無難だろう。わざわざ閉じ込めておきながら毒殺するとは考えられない。
水はぬるく生臭い。劣化した環境フィルターを通した水なのだろうか。少なくとも目に見える悪影響は出ないようだ。
襲撃は20時。今から仕掛けてしまうと最悪GODに目を付けられてしまう。1時間程度で2つの扉にマークをつけなければならないだろう。
15時
「清掃会社の許可証取れたぜ。」
「これでランナーを廃業して掃除屋ができるな。」
「まあスイーパーなんて呼ばれてた時代もあるしね。」
16時
「お嬢様。今回のターゲットである地下に繋がる通気孔がありました。増設工事の際の図面ですので信頼性は高そうです。」
「ありがとうございます。とは言えスミスさんが通気孔を抜けることができるとは思えませんので帰りは階段ですね。」
17時
「地下へのルートは階段、エレベーター、通気孔の3通りだ。」
「通気孔は通れないし、帰りはエレベーターが使えない可能性がある、と」
「確保の努力はするが降り口に警備員がズラリは嫌だろう?」
「まあな。そこまで行くとブタバコ入は避けられないだろうよ。」
18時
「さすが住宅街。良いコースが通ってますよ。」
「では、先にお食事のご用意をしてしまいますね。」
「お願いします。私は日没に合わせて動きます。」
「本日の日没は19時44分ですね。」
19時
「コリントクリーニングですよっと。」
カチリとロックが解除される。
「地元の互助関係は麗しいねー。」
掃除用具と共に館内に入り込むエルとトロキチ。
コリントクリーニングと長年の付き合いがあるせいか夜従業員不在の状態での入館作業が許されているのだ。
「とりあえず、掃除しながら状況確認していきましょ。」
「だな。」
同刻 レントンの屋根の上
レントンの街角で停車したセダンからするりと1つの影が滑り出る。
全身を覆うアーマージャケットにヘルメット、マスク。
その奇怪な人影は建物の配管に飛び上がり、懸垂の要領で体を引き上げる。
そして静かに飛び上がり屋根の上に飛び乗る。
まるで大地を走るようにレントンの屋根の上を駆け抜ける。
対象の建物に到着すると流れるような動作でぶら下がり通気口の入り口を開く。
そして、静かに通気口の中にするりと潜り込む。