シアトルアイショット   作:CanI_01

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正義とその結末

あたし達4人はダウンタウンのストリップバー、チックラーズに来ている。

丸一日何も食べてないあたしとスミスさんの食事と今回の顛末について話しておきたかったらだ。

一応言い訳しておくと店の選択はあたしの趣味ではない。

密談に向いていて多少薄汚れていても入れて美味しい食事の店が良いと言ったところトロキチが薦めてきたのだ。

彼の伸び切った鼻を見る限り単に彼が来たかっただけなのかもしれない。

 

ちなみにポーパルバニーとは建物を出たところで別れた。

と、言うか声を掛けようとしたらすでにいなかった。

トロキチ曰く忍者みたいに壁を登って屋根の上に消えて行ったらしい。

 

「今回は迅速に対応してもらって助かったわ。危うく人を辞めるところだったわ。」

 

スミスさんと視線を交わす。

助かったからこそ冗談めかしていられるが他のコフィンを覗いた時には正直生きた気はしなかった。

 

「本当にありがとうございました。皆さんは命の恩人です。」

 

照れ隠しなのか、純粋な興味なのかトロキチはステージをガン見しており返事をするつもりはなさそうだ。

少し億劫そうにエルが口を開く。

 

「お気になさらないでください。これが我々の仕事ですので。もし、気になるようであれば何かのおりにご助力いただけると助かります。」

 

ステージでは半裸のヒューマン女性が踊っている。

ダンスのセットリストを見ると性別やメタタイプを問わない様々なダンスが予定されている。

もちろん一番多いのはヒューマン女性だ。

 

「お礼も兼ねてあたしが支払うから楽しんでちょうだい。スミスさんも慰労会と言うことでどうぞ。」

 

思い思いに、スミスさんは申し訳無さそうに、オーダーをする一同。

 

「今回の件のあたしなりの着地の話だけさせてもらって良いかしら。」

 

「美人記者は見た!警察にはびこる昆虫精霊の闇。って感じか?」

 

ウェイターから飲み物を受け取りながらトロキチが口を開く。

あたしがアルコールを我慢しているのに迷わずアルコールをオーダーしでやがる。

まあ、それは良い。

 

「どうしても、そう言ったB級感溢れる雰囲気になるでしょうね、正直に言えば。」

 

あたしはソイカフを一口飲む。カフェインが染みる。

その言葉にエルがフライトポテトを振りながら応える。

 

「アレスも全力でもみ消そうとするでしょうしね。」

 

「でしょうね。なので、今の所昆虫精霊については触れなくても良いかなと思ってるの。」

 

不思議そうな顔のトロキチ。

 

「せっかくのデカいネタなのにか?」

 

「今回の件で昆虫精霊について口外しないことを条件にレントンのヒューマニストが拉致監禁と人身売買に手を染めていて、それに協力していたナイトエラント隊員が良心の呵責に耐えかねて組織に自白したと言うカバーストーリーにできないかなと思って。」

 

不愉快そうに眉をしかめるエル。

 

「ダニーも強いものには巻かれるのね。」

 

あたしは肩をすくめる。

 

「今はね。現状の情報で暴露してもすり潰されるだけだもの。もちろん、ゼーダークルップが全力で支援してくれるのなら別だけど。」

 

慌てて首を横に振るスミス。

 

「私の権限ではシャドウウォーを起こすことはできませんよ。」

 

あたしも偶然出会った相手にそのまでを求めるつもりはない。

 

「もちろんです。ですので、今回は引こうかと。ただ、いくつか今回の件の資料を差し上げますのでご報告に使用してください。」

 

連絡先の交換を行いながら言葉を続ける。

 

「とは言え、少し資料を集めて何をしているのかは調べようとは思っています。」

 

人の悪い笑みを浮かべるトロキチ。

 

「その際には、また仕事頼むぜ。」

 

「頼りにしてるわ。」

 

かくして、事故から端を発したこの騒動は原理主義的なヒューマニストの暴走事件として処理されることになる。

とは言えアレスが何を目指しているのか、それに対してどのような答えを出すべきなのか私は探って行くことにした。

 

ただ、コフィンで見た人が徐々に異形へと変わっていく光景。

あれが人の正常なあり方であるとは思えない。

 

少し気になるのは今回手を借りたデッカーであるビリーからアレスが昆虫精霊に汚染されていると言う類の話が最近は特に増えているらしい。

何とも符号が取れているのが気持ちの悪いところだ。

 




チックラーズ
シアトル2072より。
マフィア参加のストリップバー。
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