シアトルアイショット   作:CanI_01

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今回はギャング回なので三人称視点です。


グロウシティの花火大会

昨日と同じ今日。今日と変わらない明日。世界は繰り返し時を刻み、変わらないかのように見えた。そう考えるのは人として当然のことだ。

それは戦乱を飯の種とし、硝煙の風呂に入っているような傭兵であっても変わらない。

とは言え、バーレーンの中でも特に治安の悪いグロウシティで資産価値のあるメガコーポの警備を請け負ったにも関わらず、それを日常とし慣れてしまったホテルウラジオストクはプロとして落第点だろう。

 

最初の異常に気がついたのが誰かすら判らない。

ただ等しく混沌の海に叩き込まれ仕事ではなく生存の為の闘争を余儀なくされたのだ。

 

ある者は偶然施設内のロックが解除される音を耳にした。

ある者は施設外から重低音の排気音が無数に鳴り響くことに気がついた。

ある者は施設外に無数の人物が行進するような音を聞いた。

 

何かあればシステムアラームが鳴るだろうと誰もが考え確認を怠った。

人々は最後の安寧を貪った。

 

そして決定的なトラブルが持ち上がる。

 

搬入時にトラックなどを入れるための正面ゲートの隔壁が静かに開放される。

 

「あれ? 今日搬入予定はないんじゃないか?」

 

この期に及んで重要度に気づかぬ傭兵達。

降り注ぐ銃弾により状況を理解する前にその肉体が切り裂かれる。

入口の警備、いや無様に立ち尽くしていた傭兵達は銃の猛射により物言わぬ死体へと変わる。

そのまま銃弾の雨をばら撒きながら赤とオレンジのライダースーツに身を包んだ一団がバイクにより突入してくる。

これこそまさに現代の騎馬突撃。

またたく間に正門前に詰めていた傭兵は打ち払われる。

405ヘルハウンドは奇声を上げながら目標の武器庫を目指す。

室内をバイクで走るなど当然と言わんばかりに。

その後に続くのは緑のライダースーツのバイカー。

彼らは野外の掃討こそ機乗で行うものの突入時にはバイクから降りる。

自分たちは愚かではないのだ。そんな顔をしながら。

 

裏の搬入口から突入するオークやトロールを中心とした軍団。

その先頭を颶風のように駆け抜けるのは赤錆色のチェインメイルを身に着けたアクセルホーン。

傭兵が体制を立て直す前に、脅威を理解する前に、アクセルホーンがポールアームで薙ぎ払う。

傭兵達が遠距離から射撃により制圧を狙えば、アクセルホーンの背後からラスティッドスティレットが制圧射撃により傭兵の頭を抑える。

そして傭兵達が気がついた時には目の前に死の颶風が迫り赤い血煙へと変えられていく。

その背後から青ざめた顔をしながら必死で走り抜けるか細いヒューマン女性。

対ホストの戦闘に意識の大半を持っているからだろうか。その足取りからして危なっかしい。

決して荒事に向いていないダニーだ。

 

途中でトロール達は二手に別れる。

ホストの物理拠点を目指す赤錆と黒の集団と物資庫を目指す赤の集団。

 

赤錆と黒の集団はダニーを庇いながら傭兵達を蹂躙し、赤の集団は物資庫を目指し肉の波濤と化し進撃する。

 

その後ろから落ち着いた足取りの黒とオレンジの集団が続く。

彼らはトリック・オア・トリートの掛け声と共に腰に下げた火炎瓶を周囲にバラマキ、何が楽しいのかケタケタと笑っている。

そして生存者を見つければ火炎放射器で焼き払う。

たまに火炎放射器に傭兵の銃弾が命中し火炎放射器の燃料に引火し爆発する。

しかしハロウィーナーズはその爆発すら予定通りの余興であるかのように爆笑しながら突き進む。

 

イーボが手を入れたとは言え建物は数十前の建築物であり、自動消火システムも停止している。この建物が燃え始めるまでさほど時間はかからない。

火が回れば傭兵達が徹底抗戦など行うわけもなく、皆が逃げ惑う。

逃げる研究員を背後から撃ちコムリンクを奪うのはファーストネイションだ。

被害を抑えるには確かに効率的な方法であろう。

それがワイルドキャット直伝の軍隊戦闘術と呼ぶかは疑問は残る。

どちらかと言う野盗の所業だ。

 

そんな狂乱と炎に明け暮れる研究所のサーバー室に到着したのはダニーとラスティッドスティレットの面々。

 

「いくつかの研究員のコムリンク踏み台にしてホストのアーカイブ調べてみたんだけど、元になってる研究資料が見つからないのよね。」

 

首を傾げるダニー。

普通はそこの研究の大本になるデータだ、もう少し簡単にアクセスできるようにしているはずなのだが、そこにアクセスできないのだ。

 

「本社のホストに保管されていて、こっちにはコピーされてないのでは?」

 

ポールアームを素振りするアクセルホーン。ホストを粉砕したくて仕方のないようだ。

 

「そんな感じでも無いのよね。ただ、アクセスできる人を凄く制限してるのよね。」

 

迷いを振り切るように頭を振るダニー。

 

「やっぱりファウンデーションに潜るしかないかな。じゃあ、アクセルホーン、この古いホスト叩き壊してもらっていいかしら?」

 

ケロリとした顔で決断するダニー。

 

アクセルホーンは嬉しそうにホストに突撃し粉々に粉砕をする。

 

ファウンデーションに潜るリスクとメガコーポの機密資料を手に入れる可能性を比較してで機密情報の誘惑が勝利したようだ。

ダニーはアクセルホーンに肉体が意識を失う旨を伝え危なくなった逃げるタイミングを任せると告げ、VRモードへと切り替える。

 

がくりとダニーの体から力が抜ける。

慌てて支えるアクセルホーン。

炎と混乱の夕べはまだまだ続きそうだ。

 




ファーストネイション
嫌な組織という設定は私の個人的な感想。
世界的なNANギャングに育て上げたという野望を持って誰とでも組み、誰でも裏切るスタイルからの印象です。

ファウンデーション
この辺の説明は次回にまとめて行います。
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