シアトルアイショット   作:CanI_01

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電子の猫たちは電気猫の夢を見るか?

あたしはコホンと一声入れ話し始める。

 

「旅の中で出会ったとある騎士の武勲詩でございますにゃ。

かの者は赤錆の騎士と呼ばれる勇敢なる騎士にゃ。

自らの鎧よりも人民を愛する慈愛の騎士にゃ。

その身を顧みず人々の盾となる鉄壁の騎士にゃ。

戦場に立てば一騎当千、破城の騎士にゃり。」

 

今あたしの肉体を守っていてくれているだろうアクセルホーンの顔を思いうべながら語り始める。

 

「かの赤錆の騎士は旅の中、イタズラに村人を殺しもて遊ぶ怪物の噂を耳にするにゃ。

村人は貧困に喘ぎ明日の生命を考え絶望するにゃ。

赤錆の騎士は村人を憐れみ、かの怪物を打ち倒すと約束するのにゃ。

かの騎士の力がいかに優れたりとも怪物と出会えなければ打ち倒せぬにゃ。

そこで騎士は一計を案じるにゃ。

近隣の旅する猫に触れ回らせたにゃ。

かの騎士は万夫無双の騎士ながら月の加護を受けており、新月の夜には力を失うと。ゆえに騎士は新月の夜には身を隠す、とにゃ。

怪物はその言葉に騙され新月の夜に赤錆の騎士に襲いかかるにゃ。

赤錆の騎士は仲間を集め迎え撃つにゃ。

そして激闘の末怪物を打倒したのにゃ。」

 

ファンデーションがどれほど現実感があっても、ホスト内部の情報のやり取りを脳が処理して現実だと誤認させているに過ぎない。

本来あたしには物語を語る能力などない。

だけど、ファンデーションならソフトウェアの構文を思い浮かべれば物語となる。

不思議な気分だ。

 

「なかなか波乱に満ちた旅をしておるにゃ。面白い話であったにゃ。褒美を取らすにゃ。願いを言うが良いにゃ。」

 

バステトがコントロールノードなら、これはまたとないチャンスだ。

まだデータトレイルの追跡は不十分だけど仕掛けてみよう。

 

「この神殿の案内をお願いしたく存じますにゃ。」

 

その言葉と同時にあたしはファンデーションのマップを要求するコマンドを送る。

コマンドを送った瞬間世界が凍りついた。

メモリーの過負荷による一時的なフリーズ、応答不能状態。それに類似した状態だとあたしは直感した。

彼女はコントロールノード、いや、ノードですらないようだ。

永遠とも一瞬とも言える須臾の間。

再び世界の処理が進む。まるで何もトラブルなど起きていないかのように。

 

「良かろう。侍従を1人つける故に聞きたいことを聞くが良いニャ。」

 

冷や汗をかきながら、薫風香る謁見の間を侍従と共に後にする。

侍従は丸々とした三毛猫で機嫌良くニコニコとしている。

 

「では、どこを案内しますかにゃ。」

 

「一通りの部屋を見てみたいにゃ。」

 

「お安い御用にゃ。」

 

神殿は中央に大回廊とも呼ぶべき大きな通路が中央に走っている。

最初あたしが歩いてきた場所だ。

涼し気な空気が循環し混み合っているにも関わらず不愉快さを感じさせない。

これもバステトの加護なのだろうか。

 

最初に案内されたのは無数の貫頭衣が吊るされ、試着室のようなブースのある部屋だ。

この部屋は回廊と比べると少し暖かい。

 

「ここは休憩室でくつろげる服に着替える部屋だにゃ。休憩するかにゃ?」

 

「元気だから平気だにゃ。」

 

その返事に頷くと侍従は次の部屋へと案内する。

隣はまるで部屋全体が陽だまりのようにポカポカとした部屋で貫頭衣を着た無数の猫たちが思い思いの姿勢で惰眠を貪っている。

この猫溜まりに飛び込みたい誘惑を振り切り、あたしは次の部屋への案内を頼む。

そして、皆の食事を作っており食欲の湧く匂いに満ちた台所やバステト様の素晴らしさを説く説法室、神殿の守護を担う騎士団、猫のミイラが並ぶ墓所。

猫たちは各部屋を行き来してるもののそれ以外には各部屋を行き来する存在がピンとこない。

 

猫がデータトレイルかとも思ったが猫たちの動きとファンデーションのノードのデータトレイルは一致しないようだ。

本当に意地悪なファンデーションだとこれ見よがしにある施設とは関係ない場所がノードであることもあるらしい。

あの酷暑の砂漠の探索をするなどと考えただけでげんなりとする。

 

酷暑? 何でこの神殿の温度はこんなに快適なんだろう?

 

「ねえ、何でこの神殿ってこんなに過ごしやいのかにゃ?」

 

三毛猫は良くぞ聞いたと言わんばかりに満面の笑みを浮かべる。

 

「バステト様のご加護だにゃ。アメン神の力を借りた宝具、風喚びの角笛が各部屋にあるのにゃ。この角笛は誰も吹かなくても常に風を出して快適な部屋にしてくれるにゃ。」

 

確かに言われてみれば各部屋にあった気がする。

 

「角笛をもう一回見てもいいかにゃ?」

 

角笛を確認し風の流れを確認していく。

するとピタリとノードのデータトレイルが一致した。

ならアーカイブノードは墓所だ!

 

「でも、墓所には角笛無いのにゃ。」

 

アーカイブはデータを受けるだけだし、風も流れこむだけだ。

角笛がある方がおかしい。

 

「ここは猫があまりこないからにゃ。代わりに死者の安寧を保つために鎮めのアンクがあるにゃ。これのおかげで死者は冥府で幸せにしてるのにゃ。」

 

アンク!

そうだ、このファンデーションのノードは角笛なんじゃない。バステトの宝具なんだ。

この推論が正しければアンクがノードに当たるのだろう。

 

「あたしも死者の安寧に祈りを捧げる為にアンクに触っても良いかにゃ?」

 

「もちろん。死後の安寧に興味のない猫はいないにゃ。」

 

そして、あたしはアンクを掴み祈りを捧げながらデータ検索を仕掛ける。

また、世界の凍りつく雰囲気を感じたが、ここまでくれば関係ない。

あたしは力押しで必要なデータを探す。

そして、イーボがミツハマから提供を受けたマスターデータとザビアー博士の書いた反共振力を集積するためのプログラムを確かに見つけた。

これさえ見つけてしまえばファンデーションに用はない。

あたしはそのまま猫たちのフィッティングルームを抜け、陽だまりの中で無数の猫がすやすやと気持ち良さそうに眠る部屋の角笛に触れファンデーションからの脱出を強く願う。

その瞬間あたしの視界はブラックアウトし、再び現実感が戻ってくる。

もう、あたしの体は毛皮には覆われていない。

目の前には心配そうな顔をしたアクセルホーンがいる。

まだイーボの施設内にいるようだ。

 

「戻ったか、ダニー!」

 

「ええ、心配かけたにゃね。すぐに逃げるにゃ。」

 

アクセルホーンは今の緊迫した状況も忘れて爆笑する。

 

「にゃって。新しいキャラ立てか?」

 

そこであたしが無意識に語尾ににゃと付けていたことに気づく。

ちょっと、いや、かなり、恥ずかしい。

 

「色々あるのよ! 逃げるわよ!」

 

そして、あたしは照れ隠しに走り始める。

アクセルホーンは収まらない笑いのまま、あたしをあっさりと追い抜き露払いと言わんばかりに加速する。

 




ファウンデーション関係は次回リプレイ載せるので、ゲーム的な部分に関してはそちらをどうぞ。
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