動物園に行く日の朝6時にあたしは目を覚ます。
ビリーと出かける為の準備には時間がかかるのだ、等という乙女的な理由ではなく純粋に動物公園に行くのが楽しみで早く目が覚めた。
思った以上にあたしは今日のハイキングを楽しみにしているようだ。
仕事抜きでの外出自体がとても久しぶりだ。
とりあえず、新鮮な合成食品を温めながらニュースを確認する。
来年のオリンピックの記事が大きく取り扱われている。
外に目を向けると曇りがちなシアトルにしては珍しく快晴で雲一つない。
ビリーと話した日に園内のレストランについて調べたけど、あまり美味しくはないらしい。
規模に対して小さく昼時は大変混んでいて、外に出るにも近くにあまり店はないらしい。
なので、通り道にあるオーク料理店クラシスグロンでお弁当を頼んでみた。
ビリーにオーク料理が好き化聞いたことはないが、レベッカも好きだったし問題はないだろう。
本日の服装は若草色のワンピースにデニム風のアーマージャケット、足元は歩くことを考えて鹿革風の合成レザーのブーツだ。
一応胸元にはキャバリエセーフガードも仕込んでいる。
そんなことをしていると外からハーレーの爆音が響いてくる。ビリーが到着したようだ。あたしはコムリンクに戸締まりを指示すると駐車場に向かう。
ビリーの服装は安定のライダースーツにコンバットブーツ。
右手のクローム剥き出しのサイバーアームが厳つさを増している。
彼と行って動物公園に入れるのだろうか。
出かける前にビリーがまたハーレーの素晴らしさについて語りだしたが無視してアメリカーに乗り込んだら諦めて付いてきた。そこまで拘るものなのだろうか。
フォートルイスの動物公園まではだいたい1時間程度かかる。
タコマのクラシス・グロンまではオーク料理の話やオーク文化の話になった。
ビリー自体はオーク文化に拘りは無いらしいが何でも美味しく食べれるらしい。
とはいえ、姉のレベッカの影響でオーク語であるオァゼットは習わされたらしい。
あたしは習いたいなと思いながら、また教えて欲しいと話をしているうちにクラシス・グロンへ。
親友のミーシャから結婚の素晴らしさについて力説されるが、生返事を返してランチをゲット。
今日はいろいろなものを聞き流す日なのだろうか。
そしてビリーがプレイしてるオンラインゲーム、メイジデュエル1のプレイ画面を共有しながらゲームの話を聞きつつ車を一路南に走らせる。
タコマの市街を抜けると徐々に樹木が目立ち始め原生林の中の道路といった風情となる。
フォートルイスは他の街区とは違う特色がある。
基本的にシアトルが特別区となった際に周辺地区が組み込まれた形で成立している。
その行政単位は基本的に過去と変わらない。
しかし、このフォートルイスは元々はタコマの一部であった。何故ここが分割されたのかと言うとバーレーンとなったプヤラップの影響でタコマまで治安崩壊を起こすことを防ぐ為であると言われている。
そもそもだが、フォートルイスは元々はアメリカ陸軍の基地の名前だったのだ。
1916年地元のビジネスマンによって軍事基地の建設を要望され、それに応えた形で成立したのがフォートルイスであり、米軍の訓練基地として米軍の練度を支えてきた。
そして近くに成立していたマコード空軍基地と統合していった歴史がある。
この流れから必然的に陸軍や空軍の影響力が強かった地区であったのだ。
シアトル特別区のフォートルイス地区となったことで元から多かった軍関係者の住民が増えメトロプレックスガードや企業軍の誘致が行われることになる。
結果治安維持のために警察権を軍警察が担う軍事地区が出来上がったというわけだ。
伝統的に区長を軍関係者が努めたりと独特の土地柄である。
また、様々な技術を投入して公害対策を行うことで近隣からの工業汚染を阻止し、清浄な空気と潤沢な自然、そして軍による安全と第6世界では貴重な資産の揃った地区となっている。
確かにこれだけ自然が豊富な場所であればバイクで走るのも気持ち良かったかもしれない。
もちろん、そんなことは口に出してやらないが。
そんなことを考えながら車を走らせていると駐車場が見えてくる。
その向こうにはまるで国境の検問のように厳つい動物公園の入口であるセキュリティゲートが見えてきた。
さて、素直に入れると良いのだけど。