動物公園の駐車場は平日である性か比較的空いており簡単に車を停めることができた。
とは言え周囲を見渡すと学生のカップルや大きめのカメラを担いだ人が多い。遠足に来たのか騒がしい小学生達の集団もいる。少数ながら、あたし達同様に社会人のカップルも見受けられる。
まあ、あたし達はカップルではないが。
「これからが今日最大の難関ね?」
あたしは冗談めかしてビリーの声をかける。
「たしかにな。ダニー期待してるぜ。」
ビリーが意外と真面目な顔で返事をしてくる。もしかして本当に大変なのかしら。
エントランスに入ると注意事項がAR上にポップアップしてくる。
「当動物公園はUCAS陸軍施設であり当施設内では陸軍法が準拠されます。」
陸軍法の詳細についてのリンクがあるけど変な法律はないだろう。
「当施設内において武器の持ち込みは許可されておりません。お持ちの場合は武器ロッカーをご使用ください。」
とりあえず、武器は車に置いて来ようかしら。
ちらりとビリーに目を向ける。
「武器は構わないがデッキは手放さないぞ。」
「まあ、そうでしょうね。」
「サイバーウェアを使用しての犯罪行為は陸軍法に準じて処理されます。サイバーウェアをインストールされている場合ゲートを通らずに最寄りの職員にお声がけください。」
「どうせサイバーウェアで許可取らないとダメだし一緒よね。」
その他にも細々とした注意事項が流れていくが関係がありそうなのはそれぐらいだろうか。
いや、アルコール類の持ち込みおよび園内での飲酒は禁止らしい。
そして一通り注意事項が流れた後に入場料30ニューエンの表示と全てに同意するの文字。
あたし達は一旦車内に武器やアルコール類を置きに戻り係員に声をかける。
もちろん同意をタップした後にだ。
係員は穏やかな笑みこそ浮かべているものの、その眼光は鋭く独特の凄みがある。
後でビリーに聞いたところによると恐らく軍警察の人間だろうということだ。
私は気づかなかったが他にも4-5人は軍警察の人間がエントランスにいたらしい。
「はい、そのサイバーウェアですね。免許の提示をお願いできますか。」
ビリーが頷く。彼のARに提示許可依頼を示すアイコンが現れてるのだろう。
「はい、免許の確認できましたので大丈夫です。機能停止ソフトウェアの受入れをしてもらえますか。」
ビリーが嫌そうな顔をする。
あたしが肘で脇腹をつつくと再び頷く。
苦笑する係員。
そしてしばしの沈黙。ビリーはARでソフトウェアインストールの承認をしているのだろう。
「あとはこちらが園内での位置確認用のRFIDタグが入った腕輪となります。こちらを園内では外されないようにしてください。これでデッキの位置も確認しております。」
つまりハッキングして位置情報がバレたとききこのタグとの位置が一致すれば現行犯の証拠として扱えると言うことか。
まあ、今日は普通に遊びに来ただけだから問題ないはずだけど。
ちなみにあたしの腕輪はゲートを超えてから渡されるらしい。
「おう、わかった。手間かけたな。」
再び肘で脇腹をつつく。
よくあることなのか苦笑する係員。
「それではゲートを通って貰えますか。エラーが出れば処理をしますので。良い休日を。」
あたし達は店舗の入口の盗難防止のセキュリティゲートのようなピラーの立ち並ぶエリアを通り抜ける。
事前の申請と一致しているためか特にエラーアラームも鳴らずにあたし達は園内に入り腕輪が手渡される。
ゲートを超えるとARツアーの紹介がポップアップする。
ツアー毎に推奨ルートが園内マップと合わせて表示されている。
園内の全てを回るには急ぎ足で回っても閉園時間ギリギリになりそうだ。
正直あたしはノンビリクリッターを見てランチを食べることができれば良いのだが。
「何か見たいとこあるの?」
とりあえずAR画面の共有を行う。
お互い思考トリガーでポインティング可能だから情報共有はこれが早い。
園内は沼地、熱帯平原、温帯平原、熱帯雨林、温帯林、砂漠、山地のエリアにわかれている。
それぞれのエリアには、その環境を好むクリッターが生活をしている。
この領域の境界は音波フェンスで区切られており、危害を加えられることなくクリッターの観察を行うことができるようになっている。
人気のあるのは温帯林のバジリスクや夫婦のフェニックス、世界最大のカマキリウルズマンティス、山岳地帯のグリフォンやサンダーバード、温帯平原のユニコーン、沼沢地の巨大なワニなどらしい。
バジリスクをガラス越しに観察できるバジリスクトンネルは事故でガラスが破れており修理中らしい
もちろん、それぞれの場所には普通の動物達もいる。
「温帯林のウルズマンティスと山岳地帯のグリフォンかな。」
地図を見ると熱帯平原は入ってすぐで、その先に休憩用の広場がある。
熱帯平原をぶらっと回って、温帯平原でユニコーンを見て、お弁当を食べて温帯林でフェニックス見てから山岳地帯、お茶して撤退ってとこかしら。
「そう言えばユニコーンって見たことないのよね。じゃあ行きましょ。」
そしてあたし達はのんびり歩き始めた。