シアトルアイショット   作:CanI_01

57 / 90
ワイルドライフ 猫の女神

「しかし、フェニックスが燃えるところ見たかったよな。」

 

「見たかったけど、鳥を驚かせるのも可愛そうなのよね。」

 

あたし達は益体もない話をしながら山岳地帯を目指す。

山岳地帯の手前には休憩エリアが用意されており、山岳地帯の風景を眺めながら一休みできるようになっている。

 

ソイカフとソイバーを自販機で買い、一休みする。自販機はソイバーのバリエーションが少ないから楽しくないのよね。

 

商品を取り上げ、振り向いた瞬間ガタリと自販機が商品を吐き出す音がする。

 

誤作動だろうか? 習慣的にマトリックスを見回すとかすかに残る電紋。

テクノマンサーが食料調達に行ったのかもしれないが、何故この場所なのだろうか。

小銭を惜しむにしても、あまりにもリスクが高い。

あたしは追加で落ちてきた商品を気づかないフリをしつつ、商品取出口に意識を集中する。

愉快犯でなければ取りに来るはずだ。

ビリーが何か言ってるが後回し。

 

並行してあたしはARにアイコンをオーバレイさせる。

 

そんな中周囲の草むらでなにかの動く小さな物音がする。

猫か野鳥だろうか? 今は関係がない。

草むらの中に隠蔽されたアイコンがちらりと見える。

かなり巧妙な隠蔽であり、あたしも最初の物音がなければ気が付かなっただろう。

最近の猫の首輪はGPSがついている。

そこでふと違和感を感じる。

 

どうして身元を明らかにするための首輪が隠蔽されているのだろうか?

 

「どうした?」

 

「あのアイコンよ。何かなと思って。」

 

あたしの言葉にビリーはアイコンを探すが見つけられないようで、首を傾げている。

 

「どこだ。」

 

「ほら、そこよ。」

 

もしかすると可動式のセキュリティカメラかセキュリティドローンかもしれないと考え足を向ける。

 

ガサリ。

 

その瞬間何かは突然動き出す。

奇妙なことにまるで光学迷彩を身に着けているかのように周囲に溶け込んでいる。

あたしは過去に聞いたネットロアを思い出す。

テクノマンサー能力を発現した動物テクノクリッターの物語。

そして、あたし達ではサブマージョンしても身に着けることのできないような特別な能力。

その1つにARのホログラムを纏い、その姿を隠すというものや人の記憶を改竄してペットとして人の家に住むなどの話があったはずだ。

 

あたしが慌ててARを消すと草むらから悠然と姿を現し自販機を目指す黒猫の姿が見える。

猫は慣れた動作で自販機からソイバーを取り出すと、ソイバーを咥えて歩き去る。

 

「ね、ねこ。」

 

あたしが我に返った時には、その姿はどこにもない。

 

「そう言えば野良猫が動物園に紛れ込んで飼育されている動物の餌を狙うなんて話もあるな。」

 

ビリーは野良猫に気がついてすらないようだ。

 

「そうみたいね、野良猫ってどこでもいるのよね。」

 

あたしは心の平穏のためにさっきの猫がこの動物園のセキュリティを破らないことを切に願うのだった。

 




テクノマンサーの猫
4版のクリッターサプリ『Running_Wild』や5版のコアクリッターハンドブック『Howling_Shadows』掲載のバステト/BASTETです。
人間以外がテクノマンサーに発現しない理由は何もないとのこと。
ちなみにイラストは4版のほうが可愛い。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。