シアトルアイショット   作:CanI_01

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穏やかな夕べ、不穏な話

恥ずかしがりやの巨人亭は内部も落ち着いた雰囲気で落ち着いた店内が好感を持てる。

客席の多くはテーブル席で四人がけの席が10席程、バーカウンターもある。

アルコールの種類は多いが今はバーカウンターには誰も立っていない。

夜になるとバーテンダーが来るのかシェフが兼任しているのかはわからない。

特に店内の照明を担うランタンスタイルの灯りが落ち着いた夕食に最適だ。

店内に入ると資料整理のためか、座って作業をしていたドワーフの女性が立ち上がりあたし達に声をかけてくる。

 

「いらっしゃい。3人ですか?」

 

「ええ、そうよ。」

 

「では、こちらに。」

 

あたし達は落ち着いた奥の4人席に通される。

メニュー自体はイタリアンがベースのようで海鮮類を多用した料理とサラダの種類が豊富なことが目につく。

もちろん、スー族料理をうたっていることもあり、肉料理はバッファローをモチーフに果物や野菜と合わせた物も種類が多い。

特に種類が豊富なのはペミカンだ。

元々のペミカン自体は砕いた果実と挽き肉を混ぜ、油で固めた保存食だ。

食べるときにお湯で溶けば簡単にスープが出来上がる。

この店ではスープとしてのペミカンもあるが、様々な果実と混ぜたフルーツハンバーグとしても提供している。

今ペミカンハンバーグに使用しているフルーツはイチゴらしい。

 

とりあえず、取り分けサイズで夏野菜のサラダ、エイブラムスロブスターのクリームパスタ、マルゲリータピザ、そして人数分のペミカンハンバーグとペミカンスープをオーダーする。

 

「とりあえず、お腹いっぱいにしてから、話しましょ?」

 

そんな訳で、とりあえず食事を進めることになった。

と、いうかした。

 

サラダはトマトやトウモロコシ、キュウリにアボカドを、刻んだ品だ。遺伝子改造されているのかほんのりとした甘みもあり、シンプルにオリーブオイルをかけただけにも関わらず、青臭さも感じずに食べることができる。

 

「こいつは甘くて食いやすいな。」

 

エイブラムスロブスターのパスタは世界一美味しい危険生物と呼ばれるエイブラムスロブスターのほぐし身をふんだんに使ったクリームパスタだ。

エイブラムスロブスターは群体で活動し、甲殻は銃弾を弾き、精神攻撃を仕掛けてくる危険生物だ。

それでも、この味を味わうと危険を冒してしまう人の気持ちはわかる。

このロブスターのほぐし身を濃厚なクリームソースと合せ、タリアテッレに絡めながら食べることの至福。

クリームソースはカルボナーラ風なのか卵の風味も感じる。

 

美味しいロブスターを食べると人は無言になるというが、まさにその通りになった。

 

マルゲリータピザは先程の遺伝子改造トマトをふんだんに使ったピザだ。

ビザ生地にはミルクの旨味を濃縮したようなバッファローのモッツァレラチーズに甘みの強いトマトがのり、カリッと香ばしく焼かれたビザ生地に乗っている。

トマトはこのピサの為に作られたかのように酸味と甘みのバランスがよく何枚でも食べることができそうだ。

 

ペミカンハンバーグに使用しているイチゴは酸味の強い物を選んでいるのかバッファロー肉の臭みをうまく消している。

そしてミンチにすることでバッファロー肉の硬さを緩和しその旨味だけを味わうように配慮されているようだ。

 

そんなことを考えながら食べているとあっという間に食事はなくなった。

肉を食べたがっていたビリーも満足そうな顔をしている。

 

デザートにガトーショコラとホットコーヒーが来たあたりで、そろそろ話でもという段取りになった。

 

「でも、どうやって誘拐先から脱出してきたの?」

 

アイヤナはガトーショコラの端を切りながら応える。

 

「よくわからないのです。突然監禁先が騒がしくなって静かになったんです。」

 

襲撃でも受けたのだろうか。

 

「恐る恐る騒ぎのあった方を見るとみんな殺されていて。とりあえず逃げるなら今しかないと思って逃げ出してきました。」

 

ニュースにはなってないわね。

さて。

 

「まあ、不幸中の幸いってとこかしらね。一応さっきニュースを確認した限りだと元の村は壊滅してるみたいなの。だから、あなたがサーリッシュシーに戻るのに協力するというのはあまり現実的ではなさそうだわ。」

 

アイヤナは少しショックを受けた顔をしているが思ったよりは落ち着いている。

覚悟はしていたのだろう。

 

「そうですか。覚悟はしていました。村がなくなったら何をするか、考えたこともありませんでしたね。」

 

ショックを受けていないというよりは呆然としているというのが事実だろうか。

 

「シャーマンなら仕事を選ばなければ、何かしらの仕事はあるとは思うけど。」

 

ちらりとビリーに目を向ける。

 

「荒事が得意だったり、命の危険があっても報酬を優先させるならシャーマンを探してる知り合いはいるな。」

 

アイヤナは濡れた子犬のようにブルブルと頭を左右に振る。

 

「そんなことができれば攫われたりはしませんよ!」

 

彼女の雰囲気からしてそんな気はしていた。

 

「なら平和的な仕事ね。そう言えばレディゼルダが人を探してなかったかしら?」

 

「仮に探してなくても彼女に相談して悪いことはないだろう。」

 

「私は判断がつきませんので、お二人にお任せします。」

 

あたし達はデザートを片付けレディゼルダの店があるダウタウンへと車を進めることにした。




エイブラムスロブスター/ABRAMS LOBSTER
『Running_Wild』や『Howling_Shadows』より。
美味しくて硬化装甲を持ち、恐怖のパワーをふるうエビ。
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