シアトルアイショット   作:CanI_01

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継承したものの重さ

翌朝あたしは8時半にのっそりと目覚めた。

結局あの後あたしは三杯飲んでしまった。

ベッドに入った時間は思い出したくもない。

途中からマオさんも飲み始めてまるでガールズバーのような雰囲気になっていた。

タキガワさんも止めてなかったから本当に友達が遊びに来てただけなのだろう。

酔ったマオさんはタキガワさんに酷く甘えていた。どっちが年上かわからないというか、長年の友達だと一目でわかる中の良さだっな。

 

そんなことを考えながら準備をしているとマザーオブメタヒューマンのアンジェラからコムコールが掛かってきた。

 

「おはよう、ダニー。メールの件で連絡させてもらったけど、今大丈夫?」

 

アンジェラは良く眠れた声をしている。

あたしは寝起きのがさついた声で返事をする。

 

「早速悪いわね。このあと打ち合わせがあるから、今話を聞かせてもらえると助かるわ。」

 

アンジェラが少し笑っている。睡眠不足なのがばれたのだろうか。

 

「結論から言うとエルフへの反発はそれ程主流ではないみたい。メールにも書いていた鷹の爪部族のシャーマンがエルフで、カウリッツ族内部ではかなり慕われていたみたいね。もちろん、アンチ派もいるし、ティルタンジェルとの前線を担う武闘派に多いから危ない感じはあるわね。こんな話で良いかしら。」

 

アイヤナは慕われていたのね。確かに彼女からは人の良さが滲み出ていた。

 

「ありがとう。欲しかった情報だわ。また、仕事手伝わせて貰うわね。」

 

「ふふ、情報分の働き期待してるわね。」

 

彼女はそう言って、コムコールを切った。

 

あたしはアンジェラと話をしながらオートクッカーに濃い目のソイカフを入れさせる。いつまでも眠たい声をしているわけにはいかない。

そして、何とか予定の10時には、しっかりと目を覚ましレディゼルダの所に到着した。

昨晩に訪問する旨のメールは送信しており、朝のうちに承諾の返事も帰ってきているので、アポイントもバッチリだ。

 

ビリーとあたしが店内に入るとすでに2人は店内におり、レディゼルダがサイフォンを使ってコーヒーを入れている。

レディゼルダは飲み物に手間を惜しまない。

以前理由を聞いたら美味しい方が幸せな気分になれるでしょ?と当然のように言われ敵わないなと痛感したものだ。

今日のコーヒーも朝だからだろう。

 

「おはようございます。良い香りですね。」

 

レディゼルダがおっとりと微笑む。

 

「ふふふ、良い豆が手に入ったからお裾分けね。」

 

ソイカフではない天然のコーヒーとは。

 

「良い物をすいません。」

 

そして、あたし達はアイヤナの現状についての報告を行った。

一通り話し終わったが彼女は何かを考え込みながら、あたし達に礼の言葉を述べる。

少なくとも安心している訳ではなさそうだ。

 

「レディゼルダの意見を伺いたいのですが、あたし達の部族の土地がカウリッツ族の聖地だと言う話を聞いたことはありますか?」

 

レディゼルダは即答する。

 

「噂ぐらいかしら。もちろん、タリスレッキングでお邪魔したことがあるから普通の場所ではないと思っていたけど。」

 

何かを考え込むアイヤナ。

 

「北米西海岸に流れる竜脈の大きな物がフッド山、レイニア山、セントヘレナ山の溶岩ネットワークを中心に広がり、スー国のイエロースプリングの温泉のネットワークと連結しています。」

 

レディゼルダはそうねといった顔をしている。魔法使いにとっては常識なのだろうか。

 

「グレートゴーストダンスでは、この竜脈に干渉して大災害を引き起こしました。」

 

確かに今あがった山々はグレートゴーストダンスで噴火をしている。

 

「あたし達の領域はこの竜脈の結節点に当たるのです。なので、うちの部族は科学技術を遠ざけ、我々の私怨の為に荒らした竜脈を慰撫するため生きてきたのです。」

 

あたしにとって天変地異とは人の預かり知らぬ領域だと思っていたが、彼女にとっては違うのだろう。

 

「今の私は誰でもないアイヤナとして自由に生きることができると教えていただきました。反面、先代から引き継いだものを見捨てても良いのかという迷いもあります。」

 

レディゼルダが静かに微笑む。

 

「竜脈の管理者にお会いしたのは私も初めですね。正直なところ、あなたが後悔しなくても良いようにするべきだと思いますよ。少なくともあたしは、そう生きてきました。駆け落ちした時も、旦那の敵を討った時も。」

 

駆け落ちに敵とは、また不穏な話だ。

この人も波乱の中に生きてきたのだろう。

 

「決断することは御自身にしか出来ませんからね。この年寄りはその決断を手伝わせて貰いますよ。」

 

アイヤナはまだ迷っている、いや、考え込んでいるようだ。

あたしも素直な気持ちを告げるべきだろうか。

 

「あたしは社会のルールを変えたいと思ってる。これはルールを作る側と対立することで無力感に襲われることも多々あります。死にかけたことも1回や2回ではありません。」

 

アイヤナは真摯にあたしの言葉に耳を傾けている。

 

「だから、自分の身を第一に考えても良いと思います。」

 

「でも、ダニーさんは、それでも戦い続けていますよね。」

 

あたしは大きく頷く。

 

「許せないからです。他人を踏みにじって当然だと考える世の中が。だから、この身を賭けて挑んでいます。我ながら酔狂な話ですよ。」

 

苦笑いをする。

助けようとした相手から罵られたこともあるし、誰も助けることができずに死にかけたこともある。

それでも、引くことができないのは愚かと言われても否定はできないだろう。

 

「だからこそ、アイヤナの決断を尊重しますよ。そして、そのためのお手伝いもね。」

 

「北米が壊滅してから後悔するぐらいなら、ミツハマに喧嘩を売る方が楽かもしれませんね。」

 

グレートゴーストダンスの竜脈を守るためと言う言葉を旗印に、あたし達はミツハマと対立することを決定した。

あたしにできることなど、たかがしれている。

それでも、彼女の願いを叶え、弱者が踏みつけにされることに否と強く言える世界とするためにできることをしていこう。

 

とりあえず、ウルピアを巻き込むことにしよう。




龍脈/TYPE D: DRAGON LINES
『Parageology』より。
龍脈を描いた地図が載っていて面白いです。
5版のデータは『Street_Grimoire』参照です。

ちなみにグレートゴーストダンスとの関係や結節点に関する設定はオリジナルです。
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