シアトルアイショット   作:CanI_01

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竜と竜の確執

あたし達はその後簡単な根回しだけを行い鷲の爪部族に関する放送を行った。

ミツハマが関与している証拠も手に入っておらず、あくまでも環境保護の側面からの主張をすることしかできない拙速な物だ。

とは言え投資が進み既得権を主張される前に動く必要があったため仕方のないことだった。

 

この放送が世間に与えた影響はほぼ皆無、もしかくはネガティブなものとなってしまった。

あたしもそうだがグレートゴーストダンスや竜脈の話がピンと来ず、アクショントリデオの設定だと認識されたり、酷い話では妄想扱いされたり、と散々たる状態だ。

あたしの視聴者の多くはメタヒューマンの人権に興味があるが環境にはそごまで興味がないのだろう。

今回の襲撃とミツハマの関与を関連付ける証拠があれば、少数派を殺戮し資源の独占を狙うというわかりやすい話になるのだが、その証拠が見つからないのだ。

ビリーやトロ吉の協力で状況証拠は揃うのだが決定的な証拠が足りない。

 

あたし達が手を出しあぐねているとマトリックスから意外な情報が飛び込んできた。

 

「ゼーダークルップ(SK)社がサーリッシュシーへの援助を表明。

本日SKはサーリッシュシーへの大規模な援助を表明しました。戦略統括部のブリオー部長によると、これまで北米の竜脈の安定化に貢献したサーリッシュシーの苦境を知り援助を決定したとのです。

この援助は半年前に壊滅した鷹の爪部族の復興支援を目的とし、最近存命が確認された同部族のシャーマン名義の復興支援財団として委託するものです。

同社CEOからは以下のようなコメントが出されています。これまでの我々の行動は他人の耕した畑のものを食べながら、その農地の管理者に敬意を払わないような不躾なものであった。我々はその反省から資金援助を行う物である。

その詳細については……」

 

あたし達は唖然とした顔でそのニュースを眺めていた。

 

「部族のシャーマンってあなた以外にもいるの?」

 

ふるふると子犬のように頭をふるアイヤナ。

 

「いませんし、初耳ですよ。ど、どういうことでしょうか。」

 

「偽物なのか、何らかの陰謀なのか。」

 

一体どういうことなのだろうか。

その時あたしのコムリンクが鳴る。

相手のコムコードは知らないものだ。

 

「はい?」

 

ARにはドワーフの男性が映る。

彼は髭を蓄えた40代のドワーフで、柔和な笑みを浮かべ仕立ての良いスーツに身を包んでいる企業の関係者だろう。

 

「突然の連絡失礼いたします。私はゼーダークルップのハンス・ブラックハウスと申します。」

 

あたしは慌てて通話を仲間たちのコムリンクと共有する。

彼は名乗ると同時に認証コードを送信してくる。

偽造されたものでなければ、彼がゼータークルップの社員であることは間違いなさそうだ。

ビリーが何かに驚いている。

知り合いなのだろうか。

 

「始めまして、ブラックハウスさん。どうやって私の番号を?」

 

ブラックハウスは申し訳なさそうな顔で言葉を返す。

 

「これは失礼しました。弊社のCEOがシアトルにいらっしゃる友人のウルビア様より伺いました。女性への突然のご連絡配慮が足りず申し訳ございません。」

 

あたしの視界にビリーからのメッセージが届く。

 

「ハンス・ブラックハウスはゼーダークルップのジョンソンが好んで使う名前だ。噂ではロフビルが好んで使う偽名でもあるらしい。」

 

シュレディンガーのロフビルとか、笑えない冗談だ。

とりあえず、ウルピアに連絡先を教えたか確認のメールを打とう。

 

「いえいえ、ウルピアが連絡していてくれれば良かったのですが。ところで、どのようなご要件でしょうか?」

 

アイヤナ絡みなのだろうと思いながら問いかける。

 

「実は弊社のCEOがサーリッシュシー関係のウエスト様の放送を拝見して大変感銘を受けております。つきましては何かお手伝いできることはないかとご連絡差し上げた次第でございます。」

 

何の意図があるのだろうか。あたしもかのゴールドドラゴンから評価されていると自惚れる程おめでたい性格ではない。

狙いはアイヤナだろうか。

アイヤナが手元に文字を書く。

 

「先程の報道の件を確認してください。あたしのことは気にしなくて大丈夫です。」

 

ふむ。

 

「天下のゼーダークルップからお話をいただけるとは光栄です。もしかすると御社から出されたプレスリリースに関係のある動きなのでしょうか。私と協調しているシャーマンのアイヤナは聞いていないとののとなのですが。」

 

ブラックハウスは大仰に頷く。

 

「おお、すでにご存知でしたか。本来はアイヤナ様の了承をいただいてから公表するつもりでしたが、広報部がCEOの指示を受けて勇み足を踏んでしまいまして。」

 

そう言うことになっているのだろう。

 

「大企業ですと仕方のないことですね。それで私にはアイヤナを紹介して欲しいと?」

 

「そうですね、ご紹介いただけるようであれば、弊社からの支援をお約束いたします。確実なところでは資金援助やサーリッシュシーとの交渉への協力、場合によってはミツハマを企業法廷へ提訴することまで視野に入れて調整しております。」

 

アイヤナが大きく頷く。

 

「ちょうど横にアイヤナもおりますので、通話に加わって貰いますね。」

 

「アイヤナと申します。過分なお話ですが、私には何も返せる物がございませんが。」

 

「プレスリリースでも申し上げた通り我々は滞納していた賃料をお支払いしたいだけですので、何かを要求するつもりはございませんよ。また、村の方が不当な人身売買の犠牲に合っていると聞いておりますので、その救出もお手伝いいたしましょう。」

 

アイヤナは確かに覚悟を決めたようだ。

 

「わかりました。そのお話お受けさせていただきます。」

 

「それは良かったです。我社のCEOに失敗を報告するのは命がけなものでしてね。詳細は改めてお打ち合わせさせてください。」

 

「承りました。」

 

そして、ブラックハウスは朗らかに笑う。

 

「さて、ウエストさん。今回の件でお役に立ちそうな情報がございましたので共有させていただきますね。こちらの資料はナイトエラントにも提供しておりますので活用するのであれば鮮度の良いうちにどうぞ。」

 

彼はそう告げるとデータと今後の連絡用のアドレスを伝え通話を切った。

資料はあたし達がどうしても見つけることのできなかった今回の襲撃犯とミツハマを繋ぐ金の流れを示す資料だった。

この資料とあたし達の集めた状況証拠があればミツハマに疑義を挟むことぐらいは可能だろう。

あたしはそのあとナイトエランとの軍曹に話を聞くと同じ資料がゼーダークルップより提供されており、ナイトエラントはこの資料を事実として捜査に乗り出すようだ。

一応あたし達が握っている資料も提供しておいた。

 

あたし達は緊急放送を行うことになった。

ゼーダークルップの支持表明もあり、また人身売買にメガコーポが関係している疑いもあり、なかなかの波紋を投げかけることができた。

これを受けてミツハマの支援は一旦ペンディングとなった。

これからが長い戦いの本番となるだろう。

ゼーダークルップの意図に踊らされているのは不満ではあるが、理想だけでは生きていくことはできない。

 

少なくともアイヤナは部族のシャーマンとしてサーリッシュシーに帰っていくことになった。

簡単に決着は付かないだろうが、少なくとも彼女は晴れ晴れとした顔で旅立っていった。

 

あたしはあたしの戦いを進めるために気合を入れ直すのであった。

 

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