マッコード空軍基地にほど近い場所にある高級スパ、フォートルイス・サウナ&ホリスティックレストセンター。
杉の木で作られたサウナや岩盤浴、そして全身マッサージやヘアトリートメントを含むフルセットのスパメニューで人気のあるスパだ。
ジョイントタスクフォースの倉庫をでたマリアは侍女のアデーレと合流し、ここに来ていた。
戦闘で得た傷の手当はすみ、その傷はすでにほとんの治っている。
彼女たちはここの常連であり、エステメニューが彼女達の美しい肌や髪の毛を支えているのだろうか。
今は2人ともシャワーを浴びて汗を流し、素肌の上に天然素材のバスローブを羽織っている。
楽しげに話しながら歩く様子は仲の良い姉妹か友人のようだ。
「アデーレは心配のしすぎですよ。」
アデーレが大きくかぶりをふる。
「何を言うのですかお嬢様。うまく衝撃はいなせていましたが普通なら即死するような打撃です。後でウェアに不具合が出たら致命的なトラブルになります。」
マリアはクノイチから放たれた手裏剣を思い出し身震いする。
「確かに今思い出しても恐ろしい一撃でした。完全に不意をつかれていたら助からなかったでしょうね。」
「だからこそ、メンテナンスを怠ってはなりません。仮に気がついても不調があれば後れを取ることになりかねません。」
マリアは渋々と言った風情で頷く。
「わかりました。とりあえず今日は検査だけをして、食事にしましょう。」
アデーレは我が意を得たりと頷く。
「もちろんです。レストルームに食事を用意するように手配しております。しっかりとした物が食べたいかと思いましてNAN料理を手配しました。」
マリアが微笑む。
「良いですね。バッファローのステーキを食べたい気分です。」
アデーレは綺麗に頭を下げる。
「それはようございました。では、私は準備をしております。」
「ふふふ、お願いね。次のお肌のメンテナンスは一緒に受けるわよ。」
「かしこまりました。」
マリアは1人エステルームへと入る。
ここのスパには1つ大きな秘密がある。
本当に資産を持つVIPに対してのみ提供されるサービス。
それは身体改造クリニックが地下に隠されているのだ。
もちろん非合法のクリニックだ。
しかし、ターゲットが富裕層である、ここのクリニックはうらぶれたストリートのクリニックとは違う。
施設は大病院と高級ホテルを足し合わせたような豪勢なものだ。
その入り口がエステルームの奥に隠されている。エステとして身体改造の時間と秘密を確保するのだ。
マリアは慣れたものでありエステルームの奥でエステシャンとして登録されているストリートドクの案内で地下へと進む。
エステシャンは怜悧な美貌のエルフ女性だ。ドクターとしてもエステシャンとしても腕の良い人物だ。
「ドクターすいません、急なお願いをしてしまいまして。」
ドクターは楽しげに笑う。
「構わないわよ。トラブルは早めに見えたほうが対処は楽だからね。」
マリアがドクターの顔を見て、少し懐かしそうな顔をする。
「どうしたの?」
「いえ、レアンカにも昔同じことを言われまして。」
ドクターが苦笑する。
「いとこだから、似るのかしらね。さあ、ベットに寝て状態を見せてちょうだい。」
ドクターは怪しく微笑みマリアをベットへと誘う。
マリアはバスローブを脱ぎ一糸まとわぬ姿でベットへと横たわる。
ベットに周りに設置された様々なセンサーがマリアの状態をスキャンし、並行してオンライン状態のサイバーウェアがレポートを提出する。
そのような状態が10分程度続いただろうか。
ドクターが口を開く。
「データは取れたわ。ざっと見た限りだと緊急性の高いトラブルはないわね。でも、ゴリラと格闘戦でもしたの? 骨格補綴の疲労度が跳ね上がってるわ。」
マリアは楽しげに笑う。
「メタ差別で訴えられるわよ、ドクター。あたしがやりあったのはオークのお嬢さんよ。」
「あたしとしたことが失言をしたわ。こんの打撃を何回も受けたら内部破損もあり得るわ。ナノマシンでの補修プログラムが最近開発されたけど、試してみない?」
マリアは肩をすくめる。
「リスクがなければ。」
「リスクのないものなんか存在しないわよ。でも、リスクはオペと同程度っていうポメリャ公国で開発されたばかりの技術よ。」
「では、また時間のある時にお願いしても良いかしら。今はナノマシンよりも食事が欲しいのよね。」
ドクターは楽しそうに笑う。
「カロリーを取らないと治るものも治らないわね。またメールするわ。」
そう話すと2人は再び地上へと上がり別れた。
簡単なエステを受けた客とそのエステシャンのようにして。
フォートルイス・サウナ&ホリスティックレストセンター/Fort Lewis Sauna/Holistic Center
Seattle 2072より。
ちなみにアメリカでは日本のスーパー銭湯は韓国風スパと呼ばれる模様。
ポメリャ公国/Duchy of Pomorya
ドイツ連邦共和国(AGS)内部の公国。
バルト海沿岸にありエルフの公爵家3つにより支配されている。
ちょこちょこ出てきているルドミラ・レアンカの所属していたレアンカ家は、この3家の1つ。
バイオテクノロジーなどで有名。