シアトルアイショット   作:CanI_01

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と、いうわけで外伝です。
いろんな人たちにカメラをパンしながらでかい事件を扱う感じの展開を予定です。
ちなみに、この話ではボストンロックダウンは起きませんのでご安心ください。


外伝 麗しき姉妹愛は世界を救う
2075年7月5日 UCAS ボストン ナイトクラブアヴァロン


ボストンで最も暑くなる7月。

夕方から振り始めた雨はかなりの勢いで振り続けている。

比較的湿度も低いボストンでは、この雨も気持ちの良い雨だと歓迎している雰囲気すらある。

ボストンのミュージックシーンを支えるランドーンストリートであっても、その歓迎ムードに変わりはない。

彼らの場合は、これから踊ればどうせ濡れるのだと言う感覚なのかもしれない。

 

そのようなランドーンストリートの、いや、ボストンの女神と称されるナイトクラブ、アヴァロンは今日も熱狂的なライブを繰り広げている。

かつては小規模なナイトクラブであったアヴァロンだが、2005年の震災によりランドーンストリートか壊滅した際に大規模なエンターテインメントとビジネスを兼ね備えた大規模なナイトクラブへと改修された。これを機にメジャーアーティストからインディーズまで幅広くカバーしながら、踊り、食事ができ、アルコールが飲めるナイトクラブとしてアップデートしボストンに君臨し続けてきた。

 

そんなアヴァロンのメインステージを狂乱の渦に巻き込んでいるのジョニー・バンガー。

現代のブリティッシュロックを牽引するインディーズアーティストだ。

彼の看板曲である『I do what I want/自身の望むままに』は曲名であると同時に彼の生き方そのものである。

そんなロッカーがメジャーとなることは難しくジョニーは自身のレーベルを立ち上げるために金を集めているという訳だ。

バックバンドを固めるのはジョニーのコンポーズや楽曲提供により世界のトップシーンに躍り上がったアーティストから、ジョニーのアパートに転がりんこんでいるアマチュアまで種種雑多なメンバーながら、ジョニーにとってのベストメンバーで構成されている。

普段は海外ライブなどしないジョニーがボストンでライブを行う。これにより北米のファンは発狂しチケットは即完。

このプラチナムチケットを手にしたファンが詰め込まれたメインホールはまさに狂乱の坩堝と化している。

 

隣りのダンスフロアーでは、地元のインディーズバンドが曲を演奏し様々な欲にまみれた群衆が踊り狂う。

 

そんな欲望渦巻くアヴァロンのオーナー室では反面重苦しい空気に包まれていた。

オーナー室は5メートル四方程度の部屋であり、奥には濃い色をした木製のデスクが置かれアロハシャツを着た巨漢のトロールが腰掛けている。

部屋の天井近くには、これまでアヴァロンでライブをした有名アーティストである、Jガイルズバンド、エアロスミス、マリア・マーキュリアルなどのフォトプリントが飾られている。

 

部屋の中央にはローテーブルとそれを囲むようにソファーが置かれており、そこには3人の男女が腰掛けている。

1人はヒューマンの20代の男性。Tシャツにジーンズといったラフな格好をしている。

その横には艷やかな黒髪をポニーテールにまとめたヒューマン女性が目を閉じている。首のデータジャックと手元のデッキが繋がっているのとからVRでマトリックスに潜っているのだろう。

3人目はオークの男性で全身これ筋肉と言わんばかりのサムライだ。彼はローテーブルの周りをウロウロと歩きまわっている女性を心配そうに眺めている。

唯一歩きまわっている女性は短く借り揃えた黒髪と猫のような瞳、そしてデータジャックが印象的な人物だ。

 

ラフな格好をしたヒューマン男性が歩き回る女性に声をかける。

 

「ヴァル、少し落ち着きなよ。」

 

歩き回っている女性がただでさえ猫のようで吊り目がちな目を更にあげ

言い返す。

 

「もう、連絡が途絶えて2日になるのよ? 犯罪被害の生存率を考えたら」

 

「だからこそ、アリアドネの姉妹団に助力を求めたんだろ? そろそろ、こっちに集中してくれ。」

 

奥のトロールが大きく手を打ち鳴らす。

 

「タロンもヴァルも言いたいことはわかるが落ち着け。どうぜ、ジョニーのライブが終わるでは俺たちも動けないんだ。姉妹団は信頼できるんだろ?」

 

ヴァルが軽く頷く。

 

「少なくともシアトルに根を張ってる魔女団だから、あたしが行くよりは伝手はあるはず。」

 

「なら、信頼して任せて、こちらの仕事を集中して片付けた方が現実的だ。だろ?」

 

「そうね、ネオネット絡みのランだものね。片手間にはならないわね。」

 

タロンが頷く。

 

「そうだな。じゃあ、ジョニーのライブも終わりそうだ。ブリーフィングの準備と行こうじゃないか。」




ランドーンストリート
実際にあるストリート。
第六世界ではネオネット本社などが並ぶボストンの経済地区のすぐ近くにある高治安地区。

ナイトクラブ、アヴァロン/Nightclub Avalon
かつて現実に実在したナイトクラブ。現実では2007年に閉鎖されている。
第六世界では2005のアメリカ西海岸を襲った震災で壊滅し、大保なナイトクラブへと改築されている。
それをダンケルザーンがいつのまにか買収し、彼の遺言でブームに継承されたらしい。

ジョニー・バンガー/Johnny Banger
ブリティッシュロックアーティストにしてランナー。
今回の小説ではタロンたちと何らかのランを行うついでにボストンでライブした設定。
『No Future』より。

タロンと仲間たち。
小説『Crossroads』『Ragnarock』『The Burning Time』より。
一応『Lockdown』を見てアヴァロンが健在なのは確認済み。
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