シアトルアイショット   作:CanI_01

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コードブレイカー

ダウンタウンの学生区にある我が家に帰り手に入れたデータに向き合う。

サイバーアイの画像はなかなかに長い。

BTLの売人でも写ってないか期待しながら解析ソフトを走らせる。

とりあえず、物のやり取りをしている画像の抽出で良いだろうか。

仮に犯罪の証拠がなくても日常的な行動範囲は見えてくるだろう。

 

彼がサイバーアイを入れたのは1ヶ月程前。

ストリートの荒事屋がスマートリンクの為にサイバーアイを入れることは珍しくはない。

ただ、あたしがログを見る限り、このサイバーアイには何のオプションも組み込まれていない。

一体何の為にサイバー化したのだろうか。

 

疑問に感じながら解析データを見ていくと彼はずいぶん古びた寄宿学校のような場所で生活をしている。

そして、一週間に一度程度のペースで徒党を組み強盗などのケチな犯罪に手を染めている。

奇妙なことに食事は全てオキアミ合成食で普通なら3日で吐き気がしてきても仕方ない代物だ。

しかし、こいつは強盗先で食料を見かけても見向きもしない。普通では考えられない行動だ。

 

そして出入金記録は完全に止まっている。

つまり、こいつは金も貰わずにタダ同然のオキアミ合成食を食べながら強盗を繰り返し逮捕された訳だ。

カルティストのような行動だが自己犠牲的な献身も感じない。

 

何かちぐはぐだ。

 

全てがマトリックスで完結すると考える程若くはないが、今回に限って言えばまだ何かあるとレゾナンスの囁きを感じる。

 

コムリンクのGPS情報と画像情報を照合して犯人の拠点を洗い出す。

場所はレドモントバーレーンにあるシェルブラント寄宿学校。

シェルブラントはカリフォルニア自由州に本拠地を置くマトリックスセキュリティー企業だ。ストリートの孤児を集めマトリックスセキュリティーの教育を施す慈善団体でもある。

ただ、最近の活動が見当たらないことから名義は生きている廃墟を犯人達が不法占拠しているのだろう。

 

走っているソフトを調べると大半はバックグラウンドで走る環境アプリだが例外もある。

ロードオブヴァルハラと言う聞き慣れないアプリだ。

ネットで調べても明確な情報は無く唯一の情報はとあるゲーム会社が開発していたが発売前に企業が倒産した幻のアプリと言うものだ。

当時のプレスリリースによると北欧神話の神オーディンに仕える勇士となり英雄を目指すARゲームらしい。

BTLジャンキーがゲームと現実の区別を失ったのだろうか。

 

ふと違和感を感じる。

ARゲームはスタンドアローンではプレイできない。ARデータを配信しているホストがあるはずだ。

当然やり取りの相手はアプリが知っているだろう。

 

あたしはアプリを解体するために気合いを入れることにした。

ただ、この気合いは良い方に裏切られる。

アプリは特段暗号化もされていなかった。まるで開発中のアプリをデモ用にコンパイルしただけのようだ。

 

ARデータをやり取りしている相手はレドモントバーレーンにあるホストのようだ。所在的にシェルブラントのホストだろう。

ただ、ARデータを読み込み視界と同期させるプログラムに見慣れないコードが含まれている。

何か他の機器に指示を出すようなコードではあるがこれだけでは意味が理解できなさそうだ。

 

ついでに軽くシナリオを洗う。

シナリオにはチュートリアル的なシナリオが10本程度あるだけでさながら体験版だ。

チュートリアルシナリオでは黒ドワーフの財宝を奪ったり、ゴブリンの巣穴を襲撃したりするらしい。

 

そこまで調べた時点で時計は深夜を回っている。

これだけ確定な情報があればナイトエラントが始末をつけるだろう。

 

明日にでも軍曹と連絡を取り報道するタイミングを相談しよう。踏み込みのタイミングで同行できれば良いのだけど。

 

あたしはそんなことを考えながら、まだ重いお腹を抱えシャワーを浴びるのだった。




シェルブラント寄宿学校/Shelbramat Boarding School
運営母体の詳細は『Threats』が出典。
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