昨晩ケイトやシリアンニ、キング、チェンなどに任務達成の報告をしたエルとダニーはサークルファームに滞在していた。
トロ吉とマラキは女の園での滞在が落ち着かず2人をサークルファームに送り届けた後帰宅している。
疲れ果て惰眠を貪るエルとダニーはにこやかな笑みを浮かべるケイトに叩き起こされる。
現在時刻は朝の5時。
まだ外は真っ暗だ。
「おはよう。朝ですよ。」
寝ぼけ眼の2人。
「おはようございますぅ。」
とりあえず義務的に挨拶を返すダニー。
「姉様もう少し寝かせてくださいよぉ。」
布団に潜り込もうとするエル。
「何を言っているのかしら、エル。薔薇の摘み取り手伝ってくれるのでしょ?」
エルは自分の軽口を後悔した。
確かに流れでそんな約束をしている。
「手伝いますけどぉ、明日では駄目ですか?」
ケイトが怪しく笑う。
「駄目よ。今大地には昨日の魔力が満ちているわ。この大地から摘み取った薔薇は良質な原質になるわ。加工も手伝って貰うわよ。」
エルは諦観の笑みを浮かべる。
「承りました。お手伝いさせていただきますよー。」
「これはあなた達のためでもあるのよ。汚染された魔力に侵された魂を浄化するには清浄な魔力に触れるのが手早いのよ。」
それまで他人事として、ニコニコしながら話を聞いていたダニーの顔がひきつる。
「“達”? あたしもですか?」
「もちろんよ。あなたも汚染領域に突入したのよね、謎のアーティファクトを身に着けて。」
2人はここで気がつく。
ケイトはかなり怒っている。
自分の妹が謎のアイテムのリスクを考えずに使用したことに。
故にこそ最も過酷で効率的な浄化の儀式に参加させようとしているのだろう。
それに気がついた時点でダニーに断る選択肢はなく、疲れた笑みを浮かべる。
「わかりました。よろしくお願いします。」
「ありがとう。一緒に摘み取り作業したなら、あなたも姉妹よ。」
この提案はダニーにとっての悪い話ではない。
スノホミッシュはヒューマニストの街だ。
それも身内意識が強く、その差別はなかなかに外部からは見えない。
そんなコミュニティに深く根付いた姉妹団に身内として受け入れてもらえる。
今後の活動におけるメリットは計り知れない。
反面、来年以降の摘み取りも呼ばれるのだろうなというほのかな予感も感じる。
「よろしくお願いします。薔薇の摘み取りは初めてなので色々教えてください。」
頭を切り替え初体験が少し楽しみになっているダニーとすでに経験済みでげんなりしているエル。
「もちろんよ。さあ朝食でも食べながら姉妹団の皆を紹介するわ。」
そして3人は連れ立って食堂に向かう。
シアトルの平穏が守られたことを体感しながら。