VIP専用のバーチャル会議室。
丁寧に整えられた日本庭園に静かに鹿威しの音が鳴り響く。
そんな日本庭園の中に設えられた野点の席。
大きな朱の和傘が立ち上がり、その下には茶釜で湯が沸きこぽこぽと音をたてている。
そんな茶釜の横に背筋を伸ばし張り詰めた表情で正座をする老女が1人。
その姿は玉津桜その人だ。
以前のミーティングで身に着けた華麗な桜花紋の着物ではなく白装束に身を包んでいる。
処罰を待つ姿そのものだ。
そこにログインしてくるのは三浜敏郎。
ミツハマのCEOであり、玉津の唯一の上司だ。
敏郎は30代後半の外見をし、ミツハマブランドの高級スーツに見を包んでいる。
特徴的なのは明らかに機械化していることのわかるサイバーアイとクローム剥き出しの右腕のサイバーアームだ。
常にミツハマの最新鋭のサイバーウェアを身に着けており、広告塔としても機能している。
その姿を認めると玉津が頭を地面にペタリとつける。
「三浜様、お待ちしておりました。」
敏郎は鷹揚に頷き、ドサリと腰を下ろす。
「ああ、頭をあげろ。今回の件は玉津さんの責任を問うつもりはない。」
玉津は伏せていた上半身をあげ口を開く。
「誠にありがとうございます。」
「結果的に損益分岐点は超えてないしな。それに今回正規の手続きを通して社内決済を通した案件だ。これでお前さんの責任を問うならあっという間にミツハマ上層部はスカスカになっちまう。」
その言葉に玉津の険しい表情が幾分和らぐ。
「あと、その辛気くさい服もいつものにしちまいな。」
玉津は軽く頷くと白装束を桜花紋の美しい着物へと切り替える。
「で、本題はなんだ?」
そう元々今回のミーティングは玉津が敏郎に依頼してセッティングしている。
「三浜様と我々部門長の間に立ちグランドプランをたてる部署の設立を具申したく存じます。」
敏郎は軽く頷き続きを促す。
「今回のように技術部門主導で筋を通されますと、我々のような地区部門でのコントロールは困難です。そこで地域部門のヤンエグを中核とした部署を用意いただけないかと考えた次第です。」
「確かにな。本社のマーケティング部門の試算では数年のうちにゼーダークルップの順位が下がる。金ピカ竜は道楽に享じ過ぎたのさ。」
「そのためでしょうか、最近かの企業は以前よりも北米の利権に牙を突き立てようとしてきております。」
「うむ。だからな今後中央統制を強める必要はあるとは思っていた。」
「では。」
「ああ。数年以内には形にする予定だ。名前は世界一を目指すってことで、壱にする予定だ。」
「ありがとうございます。」
「また、お前さんたちには無理を言うがよろしく頼むぜ。」
「お任せください。」
その言葉を受けて敏郎は立ち上がる。
玉津は再び頭を下げる。
「そうそう、今回うちの看板に泥を塗ったバカ共の掃討は13課に命じておいた。近々社内清掃は終わるだろう。変わらず励んでくれ。」
「はっ。」
そして、敏郎はログアウトする。
本社で現実に戻った敏郎は軽く息を吐く。
社内体制の刷新となると父親である“猛虎”三浜大河を納得させねばなるまい。
その為の行動を考えるとわずかに気が重くなる。
とは言え前に進むためには致し方ない作業であろう。
三浜敏郎/Toshiro Mitsuhama
『Corporate Download』より。
壱/Ichi
internal councilの略らしい。
『Power_Plays』より。
“猛虎”三浜大河/Taiga “Tiger” Mitsuhama
『Corporate Download』より。
ミツハマの中興の祖。